151 【身内】狂花監獄BarreNwort3【R18G】
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視点:人 狼 墓 恋 少 霊 九 全 管
「議論をどう転がしたものか」
「センドウの二つや三つあれば便乗すればいいが」
「センドウするか?」
「嘘だよ」
「導師に死なれては困る」
「そっちの先導すんの?あんま気乗りはしない、……?」
「俺死んで何で困るんだ?自分が死ぬよりはマシじゃね?
実は滅茶苦茶死に慣れてますって言うならあれだけどよ」
「導師が死ぬと従者がつまらない」
「まあ従者も死にたくはないんだが」
「死に慣れてるわけでもないしな」
「賑やかで面白そうなのはわかるんですよねぇ」
思わずボヤいた。
「殺すぞ!」
「バラニ入れろバラニ!」
地獄耳がよく働いた。
「言ったじゃないですか、私の票は貴方に差し上げますって。
バラニ様でいいんです?」
「あと、殺さないでください。出来るだけ死にたくない、に変じました」
しれっとしている。
「んあ?思ったより愛されてたか?」
「今の時代にそんな死って怖いもんかとは思うけど」
「ま、進んで死にたいって奴も早々いないわな」
「とんだドMなら死にたいとかあんのかね」
「その場合でも通常の服役中、性質悪い看守にチョッカイ出せば割と簡単に死ねそうな気もするけど」
「……なんだぁ、わかりゃいいんだよ」
クールダウン。
「バラニでいいぜ!
オマエもまともなこと希望するじゃねえか、殺す理由ねえし殺さねぇよ」
いまのところ。
クールダウンしたので安心。
「了解しました。
それは有難いですね、殺す理由が出来ないことを祈っておきましょう」
軽ーい祈りを捧げておいた。
「は?自惚れんな」
「死んだことないから怖いんだよ」
「ドMがいてくれりゃこっちが死なずに済むんだけどな」
「名乗り出てくれドM」
「さて、次のおもちゃを決めましょうか」
投票会議が盛り上がっているうちに、話を進めておくつもりだ。
「ヴァレット、殺したい相手はいますか?」
「
わふぉん、わふぉん!
」
本日も鳴き声の練習。昨日よりちょっと響きが強そうかも。
上達度
86くらい。
「ころしたい?は、わかんないー。
たべてみたい気がする、は、ちょとあるけど、とっとく!」
意外かもしれないが、美味しいものは最後に残す派。
「トリガーは? すききらい、あるって言ってた。
とられないうちに欲しい、ある?」
あらゆるものが軽量化・小型化されている現代において、囚人の申請したものはどれも旧時代のアナログなものだ。旧時代であればたっぷり時間をかけて行われているチューニングが既に終えられているのは流石監獄といったところだろうか。
指先を弦にかけ、弾く。
指先をすり抜けていくと同時に鳴る音に表情を和らげた。
「
……ああ、これだ
」
囁くような呟きの後、椅子に腰かけ高さを調節する。両足をハープ――グランドハープ、あるいはペダルハープと呼ばれるクラシック向きの代物だ――下方のペダルにかけ、近くに置いた楽譜台に載せた楽譜をぱらぱらとめくる。
こちらに来て暫くしてから申請した中で演奏したいものを見繕っていたから、それを申請し直した。弾き語りならぬ引き歌いの曲を選んだ。
喉の調子を確認。死も病気も克服した時代だ、喉をやられているようなこともなく万全で。
ハープを抱き込むようにして、それから――奏で始める。
澄んだ音が響く。澄んだ声が響く。
普段の声音と異なる優しい音で歌うのは望郷の歌だ。
旅立ちの朝露に濡れながら帰郷を約束する様。
野に咲く花に懐かしい人の面影を見出し、雲にあの日の夢を見出す様。
懐かしい故郷の情景を、今となっては夢の跡となり久しい場所を思う様。
本来ハープで演奏する曲ではないが、そこはアレンジしてしまえばいい。
「
……〜…君……こと……♪
」
澄んだ音が響く。澄んだ声が響く。
僅かに潜めた優しい音で歌うのは の歌だ。
演奏は、歌唱は、暫くの間続く。
「
」
赤窓によく映える光だ。
「そちらも上手になりましたね。…こほん」咳払いをして話を戻す。
残しておく発想があるのは確かに、意外だった。
「二人ほど遊び相手を用意したので、そこは避けたいところですが…他の者に対しては特に決めていませんでしたね。処刑は現状看守に傾いているようですし、こちらとしても望むところです」
「────」
整えていた刃が、手からの振動を伝い僅かに鳴った。
“そう言えばアイツは歌が好きだったか”
この監獄に来て幾年月経ったか、
嫌でもその記憶を引っ張り起こさせる。
意味のない事と、当時は思っていたが。
あの日、確かに彼女の歌を聞くことに価値を──
否、喜びを見出していた事を、歌を聞くと思い出す。
『みてみて、ハルカちゃん!』
彼女だけを守りたいと思っていた訳ではなかったけれど。
彼女だけが守られないなら、 全てが、どうでもよくなった。
「多芸だな。……だからか。
随分と懐かしいもんを思い出したよ」
その歌が一息ついた頃を見計らって声をかける。
「こいつも随分喜んでる。まあ、こっちに聞かせるためじゃなく偶然拾ったんだろうが……ありがとな」
「好きだったんだ」
誰が、何を、とは言わない。余韻に震える弦を掌や指の腹で優しく抑えて音を止めた。
「どういたしまして。とはいえ、音が届いたところで何も届かないこともある、だから……こちらこそ。聴いて、受け取ってくれてありがとう」
「おお〜!」
なんか輝いてる気がした。高貴な遠吠えかも。
「トリガーも、とっとく? わかった!
むむ……ん。」
写真入りの名前リストを表示して、考え込んでいる。ご飯選ぶノリ。
眺めているのが
囚人
寄りなのは、獲物の警戒心を徒に掻き立て過ぎないという本能によるもの。
処刑も襲撃も看守だと、疑いが囚人に寄りそうだなという……まぁそこまで詳しく本人は認識してないので、勘のような行動なのだけど。
「とっておく…まあ、そうなるかもしれませんね」
他ので飽きたら、その次はそちらに矛先を向ける事はあるだろう。
食べ物を残すのとは、わけが違うが。
「ここからの争点がなければ、あとは私が決めます。今回は、私が行きますしね」
相談の席を立って、遊戯室へ向かう。
「さてと…ダーツにでもしましょうか」
候補者の写真を回転式のダーツボードに散らばるように留めてから、回転を始めるようスイッチを押下。
「私の気まぐれに付き合う栄誉を与えましょう。当たった人は…さぞ幸運ですね」
くるくると回るボードに視線を向けて、気まぐれに矢を投げ放つ。
気まぐれな殺意の、矛先すらも気まぐれに。
放たれた殺意は、廻るダーツボードに深々と突き刺さった。
「…ふふ、楽しみです。異論はありませんね?」
回転が止まる。指し示された
犠牲者は、
だ。
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