165 【R-18】シュガートースト、はちみつミルクを添えて
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[ーーーー翌朝。
時計のベルの音は鳴らないし、隣には確かな温もりがあった。]
(…………えーっと、なんでこうなったんだっけ?)
[ぼんやりとした頭で、昨晩のことを思い出す。
体温と、声と、感触と。]
(…………う、うわああああああああ!!!!????)
[ヤバい、めちゃくちゃ恥ずかしい。初対面の男……ジャヤートと、成り行きとはいえめちゃくちゃに甘えて、交わって。
……今、こうして、腕の中に収まっている。]
(何してんの俺!?本気で何してんの!?)
[あれほどまで警戒していたというのに、たった一晩であっという間に絆されてしまった自分を恥じる。
合間合間で「こいつ、顔綺麗だな」とか、「セックスってあんななるの……ヤバ。」などと現実逃避を交えつつ、それでも昨日のことも、現状も、変わらないのである。
なによりも、困っているのは、]
(……ジャヤートと、離れたくねぇなあ……)
[俺がすっかり、この男の虜になってしまっている事だった。]**
[翌朝。
目覚めて最初に感じたのは、
腕の中に人の体温があることだった。
それから夜半の出来事と、彼女の愛らしさを思い返す。
行きずりで誰かと一夜を過ごすのは、
ジャヤートにとっては初めてではなかった。
けれど“仲間”でもない相手というのは奇妙な巡り合わせで、
ぼんやりとこの先を考えた。
彼女とこのまま別れるのかどうか。
それは一人で結論を出せるものではない気がした。
そう思ってしまうこと自体、ある種の答えなのだろうが]
[考えるうちにふと陽光に気付いて、外の物音に耳を澄ませた]
雨と雷……、止んだか?
[今は聞こえないような気がして、問いかける。
彼女が起きているかどうかは確かめないまま]*
ぅえ!?
[ いつの間に、起きていたのだろうか。声がして、動揺する。]
お、ぉぅ……今日は、晴れてるみたいだぜ……
[声が震えているのに、気がつかれてはないだろうか。]
ひ、一晩経ったしさあ……とっとと、起きて出発……
!?
[起きあがろうとしたが、力が入らず布団に戻る。]
おい……なんか、動けねえんだけど……ま、股んトコも、なんか、違和感が……**
[起きたことが伝わりそうな動作も言葉も無かったせいで
彼女を随分驚かせたようだ。
声が微かに震えて聞こえたのもそのせいだろうか]
晴れたか……助かる……。
それにしても眠いな……。
[追及はせずに呟いた後、
寝返りを打って仰向けになった。
夜中に目覚めたせいもあり、寝足りないのだろう]
[動けないと抗議されて、彼女の様子を窺う]
えー、そんな気持ちよかったか?
もう1日泊まってく?
[冗談めかしてはみたが、
そんなにゆっくりする余裕がなかった。
もう一眠りしたい気分なのは事実だったが、
仲間に安否を知らせないわけにもいかない。
布団の上で伸びをした後、ジャヤートは身を起こした。
それから眠そうに欠伸をひとつ漏らして、
昨夜から乱れたきりの浴衣を整えた]**
……そりゃ、昨晩は夜更かし、した……し。
[気まずくなって顔を逸らすと、と言われ、顔が赤くなる。]
………ばか!あほ!えっち!!!
[照れ隠しに、枕を投げつけたが。力の入らない身である。大したダメージにはならないだろう。
]
おら、着替え手伝えや!誰のせいで動けねえと思ってんだよ!
[先に服を整え始めたジャヤートに、文句を言いながらも着替えの手伝いをさせる。
着替えの間ずっと、昨夜の事を思い出してしまっていたのは、内緒だ。
]
あっははは!
本当可愛いな、ユゼは。
[赤面して枕を投げつけてきた彼女を見て笑う。
威力はさほどでなかった。
手伝えと言われて目を瞬き]
えぇ……しょうがねえな……。
[手伝って彼女を着替えさせた後、
部屋の隅に移動し、自分の着替えも終えた。
もう一度入浴したいところだったが、それは諦めた]
……かわいい言うな、ばか。
[その言葉を聞くたびに、鼓動が速くなってしまうから。]
ただいま。
……ほら、あがってけ。
[部屋の扉を開けて、ジャヤートを家内へ招く。
母と、自分と、業者以外の人物が来たのは初めてである。]
俺、ちょっと片付けとかあるから……疲れてるだろうし、休んでっていいぞ。
[なんて。ただ、長居させるだけの口実を作る。]*
[あがっていけと言われて、少し迷い]
……んー、じゃあ、少しだけ休ませてもらうわ。
腹減ったし、あいつら心配してるだろうし、
早いところ待ち合わせ場所に行かないと。
[人を1人乗せた荷車は重かった。
だから休憩できるのは助かるのだが。
仲間を放置するわけにもいかず、
かといって彼女と別れるのも名残惜しく、
ジャヤートはどうしたものかと悩み続けていた]**
[悩みながらも、家に入ってくれて安堵したが]
あ、そっか……
お前にも、帰るところがあるんだったな……
[鍋類の片付けをしている間に、聞こえた声で思い出した。
彼には、待っていてくれる人たちがいるのだ。
そう、長くは持たない。引き伸ばそうとしたって途切れてしまう。『あの日』の事が、またフラッシュバックして。]
…………ヤだよ…………帰んないで…………
離れたく、ない…………
[本音と涙が同時に溢れて、止まらなくなる。]*
あ……、おいおい、泣くなよ……!
[彼女に泣き出されてしまい、狼狽えた。
その末に彼女に歩み寄り、抱き締めようと両腕を伸ばす]
帰るなって言われても、居候するわけにもな……。
俺みたいのがそばにいたら、
ユゼに迷惑かかるだけだしさ。
[言いながら、思いが固まるのを感じる。
やはりそばにいるべきではないんじゃないか、
そのほうが彼女のためになるだろうと]**
……じゃあ帰るなよぉ……
ずっと一緒にいろよぉ……
もう、一人、やだ……
[
伸ばされた腕の中に収まると、更に感情があふれて止まらなくなる。
独りになったあの時からずっと、隠した本当が止まない。
困らせると分かっていても、どうする事もできない。]
迷惑なんて言うなぁ……おま、お前のせい、お前、の…………
[子供みたいにみっともなく泣きじゃくった。
こんなに、こんな風になるだなんて思ってもなかったのに。]**
あー……もう……
泣くなっつーのに……
[泣きじゃくる彼女を抱き締めて、優しく髪を撫でた。
どう考えても、離れたほうが
彼女はまともな暮らしができそうなのだが]
じゃあ俺たちについてくるか?
俺の女になるか。
お前の飴、高く買ってくれそうな奴を
数人知ってる……。
[彼女が少年だったなら売り飛ばそうとした相手とか、
珍しいものなら盗品でも買う人とか。
ジャヤートには商売相手がそれなりにいた。
盗品売りより多少マシな生活になるかもしれない]**
[元々、母はここの出身ではない。「遠くから来たの」としか教えてもらえなかった。
単に、行く場所がどこにも無かったから。
それがずっと住んでいた理由である。
「絵」を描けなくなるのは嫌なので、売り飛ばされるのは御免被りたかったが。
「絵」を描いて、暮らしていけるのなら。極論どんな場所でだって生きていける。
この先がどうなるかなんて、分からないけれど。それでも迷うことなど無かった。]**
[即答で返事をするのを聞くと、
嬉しいよりも、少し戸惑ってしまった。
そんなに簡単に今までの生活を捨てられるのかと]
……独りで暮らすって、そんな辛いものなのか。
なら、ユゼ。
これからずっと一緒だ。
[彼女と離れずに済んだことに安堵が湧いて、
一度彼女を強く抱き締めた。
仲間が増えるきっかけなんて、いつも些細なものだった]**
うん。
嘘、だったら、許さねぇぞ……
[ 『ずっと一緒』
その言葉がひび割れていた心を埋めていく。
呼応するように、強くつよく、抱き締めかえした。]
こんな嘘つくもんか。
[彼女の髪を優しく撫でて、そっと顎に手を当てた。
誓いの印になればと、静かに唇を近づける。
彼女が応じてくれるなら、触れるだけの、
少し長めのキスをするだろう]*
[何も言わずに頷いた。
優しく触れる手が心地よくて、そっと目を閉じる。
了承の意だと、伝わるだろうか。]*
[彼女が目を閉じるのを見て、
静かに唇を重ねる。
触れるだけだけれど、
感触を確かめ合う時間をゆっくりと過ごして。
離れた後にはもう一度、
彼女を両腕でしっかりと抱き締めた]**
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