人狼物語 三日月国


82 【身内】裏切りと駆け引きのカッサンドラ【R18G】

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テンガン! 今日がお前の命日だ!

──豪華客船の旅、五日目。女は電話を鑑賞室からかけていた。
人払いが済んだ共犯者たちの為の隠れ家。
まだ、VIPたちが使用するカメラの映像も繋いでいない頃。

あーあ、バラしちゃった。
多分私はタダじゃ済まないよね、これ。
ざわつく関係者とか賓客とかいるのだろう。焦る奴とかいるのかな。

それって、とっても──

「──反吐が出るほど気持ちがいい。
私が妬み続けた到底敵わない偉そうな人間の厚いツラを崩せるなんて、最高じゃないか」


悠々と特等席に座ってこちらを眺める悪趣味な賓客が妬ましい。
不快でも苛立ちでもつまらなさでも。自分を見下ろしてくる人間の顔を曇らせることが出来るならそれでいい。

「…………ぁは、あははっ、あははははは!」

抑えきれない。笑いが止まらない。もう、笑うしかない。
今まで、ずっとずっと我慢してきたのに。
男の声が、頭に響く。

" 盛り上げて、先導して、昂らせて、
 巻き込んで、喝采を受け、注目させる。
 それこそが賭けに興じる者の本懐だろうがよ。"


「……やったよ。ああ、やってやったとも」

賭けるチップは自分自身。
もう後戻りなど出来やしない。
全てを投げ打った後の自分の心は、それでもどこか清々しさに満ちている。

「ッ見ているか、ムルイジ!
誰より一番妬ましい存在よ!」


狼は、吼える。

「これが私、エンヴィー……いや、違う!
勝負師サダルの大博打だ!


裏切りと駆け引き蔓延る豪華客船、イースター・カッサンドラ!

絢爛豪華な宴の仮面を被ったこの欲望塗れのテーブルで、私は全てを賭して勝負する!


勝つのは──この私だ!」

泣きそうなほどに顔を歪め、女は力無く笑う。
けれどそれも束の間のこと。女はすぐにペストマスクを被り直し、再び動き出す。

来るべき結末が訪れるその時まで。

「…………あはは、ああ……仮面を被らないでいるのって、こんなに楽しかったんだな………………」

……

……ねえ。どうしてこんなことしたと思う?
何が勝利で、何が敗北だと思う?

共犯者の私が公開抽選等で排除されること?
いいや、違うよ。そんなの宣戦布告した以上、そして落ちてきた者を今徹底的に管理しきれていない以上、いずれ私は落ちる筈だから。

私は、何に賭けたと思う?
それはね──。

私は醜い人間。そしてこれからもっと穢される。華やかな世界と程遠い、愚かで惨めな女。
君はさ、そうなった私を……本当に欲しがってくれるのかな。
地の底で、待ってるね。

最早三人の王はほとんど座を降りてしまっている。
『スロウス』を失い、『エンヴィー』を奔らせ。最後に残った『グラトニー』は、
地下のホールへと従業員たちを連れてきた。もはや観賞室では狭いのだ。
半円にせり出したステージは向こうからはこちらがようく見えるのに、
強化ガラスで覆われていて、拳の擦り切れるまで殴ってもそちらへ行くことは敵わない。

「紳士淑女の皆様、お集まりいただきありがとうございます。
 今宵はこの船旅の一番の盛り上がりとなるでしょう。
 さあ、かれらの顔はお知りでしょうか。従業員達も馴染みになったでしょうか?
 これより、彼らの全ての苦痛と屈辱は、皆様のものとなるのです」

きらびやかな照明、アップテンポのBGM。誰が疑うこともなく、それは見世物であると知るだろう。
壊れかけた青年を見つめ。
再度の落花となった少年を見つめ。
かつて同胞であったパフォーマーの姿を見つめ。
自らも顔を覆うマスクを被った女は、従業員たちを紹介する。

「皆様、彼らには何をお望みいたしますでしょうか。
 彼らの価値はあなた方の手に。値を吊り上げ、望みをどうぞ!
 いちばんに当てた方には、どのように扱うか優先権が得られるかも知れませんよ!」

/*
ということで、恒例のお伺いになります。
新たに従業員となった方々はどのような"研修"を望むか、ロールにてお知らせください。
過去の様子を見るとどんな感じでやってたかわかるかもしれません〜!

開場はファンクテイストのジャズが鳴り響いている。ステージの反対側、後方の雛壇からだ。
それぞれの形の、やはり仮面を付けたオーケストラは開場に演奏を吹き鳴らし続けている。
端には賓客達を楽しませるためのグロテスクな寄食、樽の匂いのするようなアルコール。
この世の贅を推し固めたかのごとくある会場は、なんと美しく/醜くあることだろう。

「いいコールに御座います。今宵も興味を傾けていただき何よりです。
 『スロウス』には以前と変わらず、ショウの手伝いをしていただきましょう。
 ただし、立場を変えて。『ラサルハグ』として、よりショウにのめり込んでいただきます。

 テンガン、彼には……ええ? ジェラルド様、とっておきの用意があると、それはよろしい!
 皆様本日の英雄をご覧ください、テンガンのショウには、かの会長がご協力なさるそうです!
 日頃より派手な"開発品"をご用意いただいているジェラルド様ですが、
 本日はどのようなものを持ち込みなさったのでしょうか。今からでも楽しみです。

 そして――ナフ。
 お待たせいたしました、皆様。一部の方々のお待ちかねの演目です。
 再度我らの前に舞い降りた踊り子には――『エンジェル』!
 此度の船旅の『エンジェル』は、彼を指名いたします! 我らの天使に、大きな拍手を!」

歓声が上がった。パラパラとした拍手はそれでも多くの人間が叩けば大喝采となった。
彼が? 今回もか。素晴らしい。今日は良い日だ。様々な声が拍手の合間を縫って聞こえる。
それは、一体何を意味しているのか。それは誰の口からも一切、聞こえることがない。

/*
求む!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
エッチな機械姦or触手姦自信ニキ!!!!!!!!!!!!!!!

/*
グラトニーとテンガン様はじめ各位ご連絡ですわよ!

テンガンのれっちっち触手責め機械姦研修、スロウスことラサルハグwithエンヴィーでいかせていただきまーす!よろしくお願い致しますわね!

/*
助かる……エッチな触手お願い申し上げる……

暑いほどのスポットライトが当てられる。灼熱の中にあるようだった。
仮面をつけた従業員達はなにやら大仰なセットをステージへと持ち運んだ。磔台のようにも見える。
木製の台を運び終えた従業員達は、今度はナフと呼ばれた少年を持ち上げ、着衣の一切を剥ぐ。
その体は、台の上に乗り上げさせられた。まるで処刑される直前の光景のようだ。

「さあ皆様、ご覧ください。我らの前より逃げ出した天上の虎の姿を。彼は再び我らの楽園に足を踏み入れてくださいました、そして……、
 『エンジェル』の演目に投票されたチップの数はいくらであると思いますでしょうか、本日はそれを彼に当てていただきましゃう!」

『命の価値は天使の為に!』
『命の価値は天使の為に!』
『命の価値は天使の為に!』

まるで一切に示し合わせたかのような声があちこちから上がる。それは次第に合唱のように膨れ上がった。
女はそのフレーズが、大層お気に入りらしいーー命の価値は貴方が決める。

まず、体は仰向けに台の上に横たえられた。首に輪を嵌めずり落ちないようにしているが、シリコンを噛んで傷が出来ないようには配慮されている。
腕はやはり透明の覆いのつけられた箱の中へと入れられた。腕の下にはクッションがあって、力を抜いても壁に当たらない。
ただ、腕のすぐ横に何か……モーター式で駆動する、鋸刃のような大掛かりな器具が横たわっている。
それは腕よりも太く、差し詰めカートゥーンのドリルにも似た、でも全く違う……有刺鉄線のようにとげとげした何か。

足元には何かのペダルがあった。数は三つ。透明のアクリル玉覆われているが、膝下を全て入れないとならず、しかと膝が天井に引っかかって足を抜きにくい。
ペダルにはラベルが張られている。客席にもナフにも見えるように表裏にしっかりと。
そこにはこう書かれている。『200万ドル』『5000ドル』『4.65セント』。
ところで、貴方が暗殺を請け負った報酬というのはどんなものだっただろう? 実費に換算し、経費を差し引いて、感情的な値を差し引いて。
貴方の命の価値はいくらだった?

「ナフ、選択肢は三つ。あのペダルを踏んで解答するのよ。
 ペダルを踏むと軽い電流が流れます。痛めつけるためではありません。ペダルから簡単に足を離さないようにするためです。
 チョンっと踏んですぐに引き上げてはつまらないし、賭けにもならないでしょう?
 貴方が己の価値を考えるの。正答はひとつだけ。命の価値はいくらでしょう、貴方の命の価値はいくらでしょう?」

動揺も冷めやらないだろうに、女はそっと囁くとすぐに客席の方を向いた。パチパチと拍手が二人を迎える。
スポットライトとカメラは正しくナフの方を向いて、貴方が主役であることを指すように惜しみなく飾った。

「皆様、固唾を呑んでお見守りください、じっとですよ……彼が怯えてしまわないように。
 命の価値は、
 命の価値は、
 命の価値はーー」

「命の価値は、5000ドル!」

笑い声がオーケストラの演奏を掻き消すようにこだまする。
ぴり、と電流が走るものの、細い針を刺したような鋭い痛みはあれど心臓を蝕むほどではないだろう。
けれども確かに足の動きは縫い止められるように硬直して、ペダルから足を離すまでには時間がかかる。
その、一呼吸深く肺に酸素を入れるように時間。たったそれだけの時間。


ギャルルルルルルルル!



凄まじい轟音を立ててモーターが回転した。
左腕を捕捉している回転鋸はまず最初に肌に棘を引っ掛けて、シーツを巻き取るかのように皮膚を引き剥がした。
真っ赤な肉が露出して、思い出したかのように遅れて鮮血が噴き出す。容器の中に血は溜まることなく、繋がれたチューブから台の下のケースに流れていった。
回転鋸は止まらずに肉を轢き潰し、フォークで何度もステーキを引っ掻くように細い粗挽きを作り出した。
端々に見える白い芯は骨だろうか? 辛うじて当たらないものの、身動ぎをして暴れたならばそれも同じように巻き込まれるのだと言うのは想像に難くない。

少年の腕は側面の半分の肉をごっそりと抉り取られ、もはや自分の意思で動かすのもむずかしいほど原型を無くしてしまった。

「おや、これはこれは。どうやら間違えてしまったようですね?
 選んだのは中間。思い切りのなさが不安を生んでしまったのかもしれない、悲しいことです……。
 さあ、ショウはまだ終わっていませんよ。ナフ、さあ、選び取りなさい。
 貴方の命の価値は?」

少年は悲鳴をあげ、血飛沫は容器の口から少年の顔へ、胴体へも血を飛ばす。そばで補佐する女も例外ではない。
真っ赤な衣装に更なる絢を重ねながら、少年がよく見えるように顔の血を拭ってやった。美しい顔を皆に見てもらえるように。
少年の勇気を讃えでもするかのように、客席からは拍手喝采が上がる。見世物としてはとても喜ばれているらしい。
一度の痛みを与えられても、ショウは平然と、終わらない。

「命の価値は4.65セント!
さあ果たして彼の選択は……おや!」

まるで道端に美しい花でも見つけたかのように声を上げる。それはすぐにやはり、モーター音にかき消された。
高速で回転する刃が少年の残った腕を引き裂いたのだ。
刃には糸のように細い血管や神経が絡み、カツカツと引っかかる音を立てながらそれでも止まらずに奔らせる。
チチ、と火花でも散らすように鳴っているのは、肩まで繋がる組織を巻き取って引きちぎる音だ。
電流に呼び止められた脚がようやくペダルから離れる頃には、両腕は揃いの傷を抱えていた。

「さあ、残るペダルは後一つ。
 皆様はどう見受けましょう、これにも仕掛けがあるのかどうか?
 いいえ、神は彼を見放さず天上へと迎え入れてくれるでしょうか。
 拍手でお見送りくださいませ、彼の勇気ある第一歩を!
 命の価値は━━」

最後のペダルは、『200万』。それは彼の命の価値に、見合っているだろうか?

最後のペダルが踏まれたならば、踏む勇気があったならば。
パン、パン! と甲高い破裂音が鳴り響くことだろう。
それはチープなクラッカーだった。祝祭の始まりのような音が鳴り響くと、両側から従業員が進み出る。

「命の価値は……200万ドル!
 これこそがみなさまが此度の演目に投票し積み上げた金額になります。法外とお思いでしょうか、いいえみなさまの愛あればこそ!
 良かったわね、ナフ。彼らはみな貴方のファンなの。戻ってくるのを待っていたのよ。
 おめでとう、貴方の価値は200万ドル。貴方は皆に選ばれたのよ……」

賓客に、少年に。それぞれにポジティブな言葉を投げかける。
客席の中には貴方を見てうっとりと頰を染める貴婦人があれば、熱烈な愛の言葉を叫びかける紳士もあった。
貴方は求められているのだ。貴方が求められているのだ。
貴方に払われた価値は200万ドル。貴方の大切なものを守るのに、不足することはないだろう。
貴方自身は守れないけれど。

「"前座"はこれまで。いよいよナフには極上の踊りを踊っていただきましょう。
 その為にも、彼が寵愛に満たされるさまを、ご覧くださいな」

血に塗れた台は斜めに傾けられ、体のよく見えやすいように。今度はうつ伏せに転がされ、顔は客席の方に向いた。
ペダルは運ばれていき、両腕の器具は取り外される。すぐさま傷口は清潔な布に包まれ、みるみる赤く染まった。
きつく肩口は縛り付けられて、パフォーマンス以上の出血がないように施される。当然だ。殺す意味などない。
かれの命には価値があり、値打ちがつけられ、金を生むのだ。
必要なだけの輸血も施され、命を失わず、気を失わないようにしっかりとケアがされていく。
ならば、なぜまだ、見世物台の上に?

「刮目ください、彼の美しい顔を、身体を。彼に称賛を。
 これよりみなさまに、『エンジェル』の誕生をお見せいたします」

/*
そういえば今のうちに連絡しておきますが、ちょっと仕事が激化してきた為夜殆どレス出来そうにない事をお知らせしておきますわ……多分研修合いの手も一回が限度だと思いますの……ご了承くださいませ……!スロウス、テンガン様ファイトですわよ……よきエッチを……!

/*
これはシリアスな本編と全く関係のないどこかの、とってもメタな為そもそも本編とは関係のない時間帯

「仲良いよね墓下君たち!?なにさこのアクションの量!!!」



(仕事がやばくておしまいになっており村に来れそうにないんですけど元気出ましたありがとうございますわの意)

/*

「そこに挟まれたナフのアクションの気持ち考えたことあるかな!?ラサルハグ!バーナード!そこに正座!!!反省して!!!」


(PCはこうだけどPLは楽しかったのでいいと思いますわ。反省はしなくていいと思いますわ。アクション芸大好きですの)

ゴトン! と台が傾いた。背中がよく見えるようにだ。下側には細い桶が置かれ血を受け止めている。
まず、体をしっかりと固定した。なめしたベルトは肌触りがよい。何の慰みにもなりはしないが。
やはり仮面を付けた従業員が傍に立ち、幾重にも生命維持の為の装置や器具を取り付ける。
無理矢理に消費分を補う輸血に加えて、透明な薬が硬膜へと追加された。

「気絶されてしまっては見ごたえがないというもの。
 副船長に投与したのと同じ薬を入れております、中身はご承知おきでしょう。
 やはり人間を昇華させるのであれば、天にのぼるような気持ちでなくては……」

わっと笑い声が上がった。ジョークのつもりなのだろうか、この場ではきっとそうなのだ。
少年にとっては見えない背後で、何かが行われている。本人以外には、ようく見える。

よく手入れのされた刃物がスッと背中に入った。鋭すぎてすぐには痛みを感じないかも知れない。
背中の肉を観音開きにするように、体から離れすぎないように中央から離されていく。
信じられないほど手際よく薄い肉が退かされて、その下から骨が見えた。
肉と骨の境に、ヘラのような器具が入り込む。

ベキッ、とアーチを描く鎖骨の裏側から固いものの折れる音がした。
肩甲骨が剥がれ、背中に突き立つようにしているのだ。
広い骨が菱形筋からサクサクと料理でもしているかのように剥がされて、鎖骨から離れた。
からっぽになってしまった背中はまたパタ、パタと縫い合わされていく。
手術と言うには手荒で、そして暴力と言うにはやけに繊細だ。
異質だ。生命の維持のためではないのだから、当然といえばそうなのだろうか?
未だ露出したままの細い背中に。従業員は、今度は工具を手にした。


まず取り出された骨に取り付けられたのは蝶番だった。
ドアーのように骨が動くところを、従業員は客席に見せた。
それから、蝶番の一片はかすかに肉の隙間から見える鎖骨に打ち付けられた。
文字通り骨身に響くような衝撃がガツン、ガツンと少年の体を踊らせる。
ふらふらと、血と肉のこびりついた肩甲骨は外部に露出したまま、少年の体に戻された。

それから先は、こんな場でなければ職人芸と言って良いような様子だった。
肩甲骨に指を広げるような形のワイヤーが打ち付けられ――勿論体につながったまま――、
そこに人工皮膚が張り巡らされた。他者のものではないから、不適合の兆候もない。
無残な剥製のように広げられた骨組みは、銀で塗装されてきらきらと照明を反射した。
いずれはそこに羽が縫い付けられていくのだろうか。けれど今は、はだかの翼のまま。

ステージの上からフックが下がり、少年の皮膚に縫い付けられていく。
サスペンション、というパフォーマンスを知っているだろうか?
直に皮膚にいくつものかぎ針を取り付けて、人間の体を浮き上がらせるものだ。
的確な場所に、十本以上ものフックが薄皮を通過していく。
人間の皮膚というのは存外に丈夫なものだ。重心を分散すれば、こうした芸当もできる。
偏らず皮膚を破ることもなくしっかりとフックは体重を支え、ゆっくりと少年の体を客席に見せた。

まるで磔にされているか、そうでなければ、天から降りてきた神の使いのようだ。
痛みがない、なんてことはないし、血は細く流れ続けているのだけれど。
オーケストラはいよいよクライマックスというように、激しい演奏にホールを揺らす。
夥しいほどの出血と血の匂いに満たされた空間は、今まででいちばんの拍手に満たされる。
まさしくそれは――

「さあ、紳士淑女の皆様、今宵こちらにいらしたあなた方はとても運がいい!
 これこそ一番人気の演目――『エンジェル』でございます!
 愛し愛されし我らの踊り子に、あなた方の愛を――!」

「明日よりナフには"従業員"として復帰させていただきます。
 それまでの投資によっては、彼の"翼"の完成は早まることでしょう。
 彼を御使いに昇華するのは誰であるか、早いものがちですよ……」

口笛を吹き手を振り手を打ち鳴らし、ショウのエンディングを歓呼が華々しくかざる。
白い花びらがぱっと舞い散り、辺り一面に散った血ですぐに染まってしまう。
快楽にとろりと溶けた少年の表情を向けられた客は、いっそう興奮した声を挙げるだろう。
貴方は彼らにとってのアイドルとなった。此処で愛され、欲されていくのだ。

「これよりナフは処置にあたります……すぐにでも元気な姿をお見せいたしますよ。
 その時にあなた方の天使がどんな"ぐあい"になっているか。存分にご想像ください。
 ご覧いただき、誠にありがとうございました」

貴方を求め見上げるような喧騒の中で、一時幕は下ろされる。
次の演目に向けて少年の体は降ろされ、台は片付けられて辺りの血もきれいに掃除されることだろう。
苦痛は終わったのだ。そして終わることがない。すぐに、傷口に対して適切な処理が行われる。
正しく、手術や手当がされるのだ、ようやく。貴方は大事な従業員なのだから。

「お疲れ様、ナフ。……今はどんな気持ちかしら、気持ちがよくってなにもわからない?
 これが貴方の甘受すべき幸福であり、今後の人生なのよ。
 貴方に掛けられた命の価値は、きちんと貴方の身元に送金すると約束しましょう。
 なに、ほかの演目に賭けられた金がありますからね。心配しなくたっていいのよ」

貴方の乗せられた担架はステージの控えへと走り、貴方の体を運んでいくだろう。
勿論俯せで。改造された貴方の体は、もう仰向けに眠ることは出来ない。
施術さえ終わったならば、大丈夫。貴方は貴方の好きな者のところへ、会いに行ける。
貴方達は同じ従業員なのだから。何も心配しなくていい。
貴方達は同じ従業員なのだから。何も苦しむことはない。
貴方の命の価値は200万ドル。
売り買いされる命の価値は、帳面に書き込めるほどのものなのだ。

/*
オッス! オラ狼!
エピローグを目前にした襲撃について、現状相談事がありますの。
というのもその原因のガンガン一端ではあるのですが、このタイミングで墓下に来るとエピローグの語りに困る人、或いは今の流れに突っ込むと様々な事情により身動きがとれずみんなでエピローグに参加するのが難しくなってしまう……などの人がいらっしゃると思うんですのよね。
今の状態でランダムに襲撃先を選ぶと芳しくないのでは? というのが要点です。
パスするか、それとも快諾してくれそうな方(キエとか)(失礼)にお願いするかにして、
ランダムで行う以外の方法を取れないかと模索しています。
いかがでしょうか?

/*
まずはお疲れ様でしたグラトニー、ナフ!濃厚な時間でしたわね……本当にお疲れ様!

そして襲撃に関する件ですが、一番手っ取り早くて安牌なのは「パス」ですわね……
おそらく生きているであろう猟兵にズドンしてもらう為には噛んでもらわなければならない=誰かを襲撃しなければならない となりますから、誰も襲撃死しない形にする……となると多分……それくらいかしら……

次なる舞台を多くのカメラが取り囲む。
撮影機器は語らない。けれど──その存在そのものが、淫らに踊る主演の姿を渇望する賓客達がいる事を証明していた。

触手に弄ばれる衣擦れの音も。
男の引き結ばれた唇からこぼれ落ちる熱い吐息も。
舞台から生まれ出るものは全て拾い上げられ、貪り尽くされていく。

客人達の仮面越しの眼差し。
カメラの向こう側にある賓客の双眸。

最早彼に逃げ場はない。
頭から足の先に至るまで。
会場の欲望が視線となって降り注ぎ、男を犯し尽くそうとしている。

 




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