94 【身内】青き果実の毒房【R18G】
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視点:人 狼 墓 恋 少 霊 九 全 管
| 貴戸 高志は、柔らかく小豆色の瞳を細めて恋人に視線を一瞬見やった。 (a32) 2021/10/03(Sun) 22:08:58 |
| >>3 >>?2 >>4 闇谷/迷彩 隣で話を聞いて静かに納得する。成る程、あの時の告白は目の前の少年が背中を押してくれたのか。 「迷彩」 コツ、と一歩進み出る。 「俺は何より大切なものを見つけた。きっと一人のままでは感じることのできない"幸せ"を見つけた。 それは暁が想いを伝えてくれたから見つけられたものだが、お前の支えによって暁が行動できたのであれば。俺もお前に感謝しなければならないな」 ▽ (5) 2021/10/03(Sun) 22:37:11 |
少年は微笑む。今まで仏頂面ばかりでいた男は、恋人のおかげで笑えるようになった。
それから柔らかい小豆色に、貴方を映した。
「──ありがとう、迷彩。
お前のおかげで、俺は幸せを知ることが出来た」
▽
| >>3 >>?2 >>4 闇谷/迷彩 「すまないな、いきなりこんな話を聞かせて。 でもどうしても礼を述べたかった。 お前が、暁が齎してくれたものは、俺にとってあまりにも大きいものだったから」 (6) 2021/10/03(Sun) 22:38:04 |
| 貴戸 高志は、少し考えた。彼が泣いた時はどうしていただろうか。 (a34) 2021/10/03(Sun) 23:22:21 |
| 貴戸 高志は、一歩進み出て、泣いた少年の涙を拭い、そっと抱きしめた。 (a35) 2021/10/03(Sun) 23:23:35 |
| 貴戸 高志は、大恩ある少年にそっと告げる。「ああ、約束しよう」 (a36) 2021/10/03(Sun) 23:24:18 |
| >>10 迷彩/闇谷 夢、応援して貰えたの初めてかも。 いや、何があっても叶えるつもりだったけどさ。
自分のことは自分でやる。もう失敗しない。自分の夢は、自分で叶える。 嘗ての少年の声が脳裏に響く。 外に出たなら、彼は夢を叶える為に動くのだろう。 けれど、目の前で言い淀む姿を小豆色は捉えた。 理由は分からない。事情を何一つ聞いていないのだから。 「……迷彩。もし、やりたい事を変えたいなら。変えてもいいんじゃないか? 覚えているか?俺が企画初日にお前に話したことを。施設にずっといるということを。 それが今はどうだ?俺は頑なに決めていたことを変えて、共に少年院にいると言ってくれた暁の決意も無駄にして、外へ出たいと選択した」 体を少し屈める。貴方ときちんと話すには、少しだけ距離があったから。 「──好きに生きてくれ、迷彩。 お前が俺たちに沢山笑ってほしいと願うように、俺たちだってお前に沢山笑ってほしいと願っているのだから」 (11) 2021/10/04(Mon) 0:38:19 |
――少し前までは何時でも煌々と照らされていた場所。
様々が撤去された院の中、明かりは消え、ただの部屋へと戻ったそこで一人、腰掛けている。
いくらかの考え事と、疲労感。静かな場所を求めていた。
足を組み替える。
ぎぃ。古びたパイプ椅子が軋んで音を立てた。
「ライト、もう点かなくなったね」
この部屋には何もいない。誰もない。
貴方に最後に祝福を授けた者も、もう姿は見せない。
ここに居るのは『異能』である存在と、貴方の一人とひとつ。
或いは──二つ?それとも、貴方はふたりと表すだろうか?
「ここならもう誰にも聞かれないよ。
文字通りの“舞台裏”だ。お話ししてくれますか。
俺に近くて、遠い。
『靖史』を助けてくれた、不思議な“あなた”。
──君に、俺からも感謝を伝えたかった」
「何をしたつもりも、無いんだが」
頬を一度撫ぜたこと。あれは何気ない仕草だった。
特別、深い意味など持たなかった。
「そうだな。話をしようか、
靖史。
……で、お前。アレを見ていたのか?」
あの時とは呼び名を反転させて、問う。
目の前のこれが見ていないうちに顔を出したと、そう言っていたのを思い出して。
「彰人くんは意図していなかったんだろうけど、
“靖史”は両親以外に触れられた経験が無い。
……俺が、その前に対話するようになって。
俺が──俺を、“僕”を、止める為に姿を消した。
靖史は小学校すら通い終えていない。学歴もない。
その上で俺が身体を持ち続けていたから、
例え誰かに『触れられた』としても、異能である俺だ。
だから、多分。あの子は宗教が、聖句が嫌いだったのに。
君の幸せを『祈る』と言うくらいには、
──幸せに感じる行為だったんだよ」
▼
「俺はその時、見ていた訳じゃないよ」
「 “思い出した” 」
「大好きな大好きな、誰を殺しても何をしても愛されたかった
“靖史”に。
去られた事が、置いて行かれた事が。その理由が。当時の俺は全く理解できなくて、悲しすぎて、耐えきれなくて、……自分の記憶から、抹消していた」
「まさか、靖史が残っていたなんて知りもしないまま」
「でも、消し切れるわけなかったんだ。当然だよね」
「 それだけ、“靖史”を愛していた」
「──思い出した
切っ掛けは、他との会話でもあるし、君とのここでの接触行為でもあるし、きっと、靖史にとっても賭けだった。最も、時間の問題でもあったと思う」
そう、淡々と語れるくらいには、記憶を受け止められる程には。
賭けには勝ったのだろう。下手をすると狂乱の末自殺でもしていてもおかしくない。己を愛しすぎるとどうなるかなんて、……語らずともいい話か。
| >>13 >>14 迷彩/闇谷 ──生きる為なら知らない人間など死んでも問題ないだろう。 そんな言葉が、自然と溢れてきて。だから口を噤んだ。己は自分の為に他人を、他人の死を、他人の尊厳を壊して利用して逃げてきた。だから、これは言ってはいけない。 そんな事はきっと恋人が許さない。隣にいる人間は、誰かが傷つき苦しむことを自分の痛みのように抱え、寄り添い、涙してくれる人なのだから。 だからこそ、自分は救われたのだ。 ──それなら、やる事は一つだ。 ▽ (15) 2021/10/04(Mon) 3:05:07 |
| 恋人の判断には微笑んで返した。 貴方と居られるなら何処でも幸せなのだから、問題はない。 外に出られるまで、自分が死ぬ気で恋人を守ればいいだけだ。 「 俺の報酬分を闇谷暁の望みに上乗せさせる。 同じように迷彩の為に使ってくれ。 ……俺は迷彩の事情を知らないから、このような形になるが……そこはすまないな。許してくれ」 澄ました顔で告げた。 自分はどこまでも身勝手だから、自分の守りたいものしか守れない。 でも……赤の他人と呼べないくらいには少年と近づいた。そして、絶対に自分の世界から消えさせはしないとも約束をした。 助けてと望んだ時に必ず助けられるかは分からない。 けれど。 助けられる可能性があるのなら、手を伸ばさない理由なんてないだろう。 「迷彩。言っただろう。俺はお前を応援すると。 生きたいのなら──それを、応援しよう」 (16) 2021/10/04(Mon) 3:05:57 |
「そうか」
手を伸ばす。届かなければ、立ち上がって。頬を撫でる。
馬鹿だな、と呟く。
「『うまれつき他者の事を正しく愛せなかった』。
……ただしい人間は、難しいな」
お前のことだとも、俺のことであるとも――あるいは、両方とも、示さず。
草臥れた声でもう一度、難しいよ、と言った。
「ん……」
嬉しそうに目細めて、その感触を受け取る。
本当はこれを受け取るのは俺じゃない筈だ。
でも、あの子が好きなモノを俺が好きじゃない訳がない。
「──そう。難しい。
“コッチ側”と言ったよね、この舞台で。
俺はその辺りの感性を含めて、近いんじゃないかなと思った。
勿論勘が殆どだったけど、君の異能を考えると強ち間違いじゃなかったんじゃないかな。
俺達は、
『他者の事を正しく愛せないし、
社会の倫理にも適応できなかった』……違う?」
手を離し、だらりと体の横へ下ろして押し黙る。
……横たえた沈黙が答えに等しかったものの、口を開いて。
「――違わないな」
ゆったりと紡ぐ。
この男は、言葉にはなるべく、言葉をもって返す人間であった。
それが美徳であったからそうしたのか、元々そういう人間だったのかは、
記憶の奥底に沈んでしまったけれども。
▼
「だから、死を望まれたんだろう。
……おかげで、“
あの人”は死なずに済んだが」
肉体の死と記憶の死は同一ではなく。
殺された己の記憶のみを引き継ぎ続ける、短命の生き物。
“黒塚彰人”の劣化コピー、上書き保存を繰り返し続ける、かつては人間で――今となってはもはや、何であるか、定かでないもの。
詳細を問われれば、そう言葉にして説明を返しただろう。
ぽつり。もう暴れはしないけれど。
遥か彼方の自分から、つい最近の潤くんまで。
出会って好きになった相手は、みんな何処かで消えてしまう。
「でも、引き継げるんだ。コピーのコピー(35)でも。
感情じゃなくて、記憶だけを引き継ぐのかい。
……これさ、今元気に記憶もってる俺の目の前が君が、新しい子を作ったとして。そっちが先に死んだ場合、真っ白上書きコピーとかになったりしないの?」▼
「死を望んだのは“ただしい人”達でしょ。
同じじゃない事を酷く怖がる人達。或いは異端に害される前に排除したい人達。……単に“多数派”って言うだけの存在なのにね?
「俺、ずっと思ってたんだけどさ。
“ただしい人”とや、一緒に生きる必要あるのかな。
彰人くん、ただしい人を目指してたのって、ここから出る為じゃないの?ここを出た後もそれを目指して生き続けるの?」
「俺、君がここを出た後何をしたいか聞いたことが無いや」
「俺はね。結局のところ、“ただしい人”と相容れないから。
別にわざわざ害する気はないけど、不干渉でいられる──彼らを邪魔しない場所を探して、ただしくなくても、自由に過ごせたらって思う。……彰人君は、ここを出てどんな生き方をしたい?」
椅子に腰掛けた膝の上、指を組む。右手の親指のはらで、左の親指の爪を擦る。
そうやって、言葉に迷うような、言い渋るような、何とも表現し難い沈黙があって。
「ここを出て――大切な人と生きたいと、言っていた奴がいるんだが」
「…………心底、羨ましいな。
俺の大切な人は……あの“俺”は、もう、いない」
目の前の少年から視線を逸らしたまま、ぼそぼそと言葉を吐く。
己の声が、遠い。……あの人の声は、もっと、低かった。
「……記憶だけは、ここにある」
とん、とこめかみを人差し指で叩く。
今となってはもはや、この記憶だけが、あの人の存在を残している。
「まっさらにはならないな。
そいつの見た景色を、俺も見るだけだ」
は、と自嘲するように笑う。
降り積もって、いつまでも残り続ける。便利で、不便な仕組みだろう?▼
「……静かに、生きられたら。それでいい」
先の見えない答え。
矯正を続ける日々は、愛したものからかけ離れていく月々は、確実にこの少年の心を擦り減らしていた。
「そう。羨ましいな。仲間だね、彰人くん。
──俺も、一番大切な自分には“二度と会えない”し、
“誰も、その存在を証明も観測もできていない”から。
彰人くんは最期に話せたみたいだけど。
俺は未だに自分の中に“靖史”がいるのを認識できない」
「……生きてるのか死んでるのかすら、不明で、」
「俺と言う
“自我を持った異能”が存在する事すら、証明ができない。
創くんの記事見た?異能が自我ってマズいらしいね色々と。
でも俺こうして普通に生活してるのって、普通に見逃されてるのか、
ただの多重人格者の狂人
の“戯言”と思われてるのか」
「──実は、最も存在があやふやなの、俺なんだよね。
記憶だけが、『私』と『僕』の存在を証明してくれる。俺にだけ、ね」
君はコピーがあるから。肉体があるから。
同時に二つの個体が存在する限り、『外部の観測』によって証明がなされるだろうけど。俺の答えは誰一人観測ができない。『ただの多重人格者の妄言』を否定できない。
「……俺は死んだ事がないから、羨ましいとは言わないけど。
ただ、『最も大事な自分を、他者から認められなかった』」
「その一点は、君と共感できると思っている」 ▼
「彰人くんの異能は、寿命と記憶の問題で、死体と苦痛が出るんだよね?」
「──俺の異能、使えないかな。」
「結局の所、俺の“1番”は俺から変わらない。
普通に誰かの傍にいるならこれはハンデだけど、彰人君も同じでしょ。そして、俺は“君の為に君を無痛で殺すことができる”」
「昔の俺の『自分が1番』で『他の全てが2番』が、此処で変わった。今の俺には、2番も3番も付けられる。」
「だから、君に声をかけている。俺、“ただしい人”に紛れて生きていける気がしないよ。だから、……ここから出たら、」
「“ただしくない人”のままで生きられる世界を、
一緒に、探しませんか」
「例え1番が自分でも、“独り”は寂しいから」
少年の顔を見上げて、目を細める。
「……つくづく、似ているな」
人間のなり損ない。
一番を自身と定める、ただしくないものたち。
「だが、お前は『俺じゃない』。
お前と違って、……違うものを、愛せる保証は無いぞ」
手を伸ばす。指輪の嵌ったそれに、指先を絡める。
交じり合う温度はやっぱり心地が悪くて、けれども少しばかり、マシになっているような気もした。▼
「知ってるよ。その上で、そこも似てるから誘ったんだ。
俺もまだ、2番も3番も生まれただけで──
『自分以外を愛せてはいない』のは同じ。保証なんて俺もない」
指を絡められた手を見て、少し考えた後に。
もう片方に常に嵌めていた自分の右手の薬指の指輪を取る。
「凄くない?記憶ない状態で“それでも誰にも渡したくなくて”自分の両手の薬指に婚約指輪代わりに嵌めてたの相当だと思う」
「なのに一回、彰人くんこれ外して来たでしょ。君だけだぞ」
だから、責任取ってよ。冗談めかしてそう言って、
取った指輪を貴方の右手薬指に着けようとしてくる。▼
「……保証も証明もないない尽くしだね、俺達。
だから考えてくれるって言ったから、それ、あげる。」
「気が向いたら別の指に着けてくれたらいい。
或いは、誘いもそれも不要と思えたなら捨ててくれていい」
「俺も、今着けている“この指輪の意味”が、
変わる事があるのか──1年、2年?もっとその先?わからないけど、」
「互いに、賭けてみよう。
それでも苦しかったら、終わらせよう。全部」
俺は幾らでも、『居てくれるなら』答えを待てるから。
本当に『ただしく人を愛せなかった』俺達なのか、
それを確かめる未来への誘いへの返事を、俺はずっと待ってる。
「暗いところに行きたいな」
最初から、ずっとそれがあったのさ。
愛してくれる人がいて、食事や寝床に困らないくらいの、
高望みしない普通の幸せって、自分の幸福に思えなかった。
多分これがもっといっぱいいっぱい……
──誰も彼もからあいされて、贅沢がいっぱいできて。
そんなふうになっても幸せにはなれないのが、漠然と感じられて。
それでも、きっとそれは決まっていることだって確信があって。
結果としては、幸せとまでは言わないけど
、 それまでの人生よりは満足感があると思えた
。 ひどく扱われて、なんだか生きている心地がした
。 自分が可哀想な立場になったり、不幸に見舞われる方向に
行こうとするのを止められないのは、知っているけど形にしていない。
こんないびつな存在は、自分のほかになくていい。
可哀想な君らに、ほしいものをあげるよ。
たすけたげるよ、他に引く手がないのなら。
自分で立ってられるだなんて、ただの意地だろうから。
だから、手を取る誰かが現れるまでは、勝手に手を引いていたげる。
たすけてが聞こえたら、そう思ったら、
僕は好きに振る舞いますよ。
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