【人】 充溢 バレンタイン中庭の木陰に腰掛けて、幹に背中を預けぼんやりしているうちに、もう結構時間が過ぎていた。 悪戯なのかなんなのか、頭には帽子の上から花冠が飾られてあって、けれど今にも落ちてしまいそう。 「……」 読もうと思って持ってきた本は、風に吹かれ勝手に捲られていて。というか、どこまで読んだかわらなくなってしまった。 風の精が読むなら一言断りを入れてくれてもよかったのに。 そうして暫く本を見つめた後、鬱蒼と茂る森──ギムナジウムの校舎から離れたその先に、じっと視線を向ける。ジャステシアが食堂に姿を現さなかったから、噂話も一層耳にすることが増えた。 「仲良くはしなくても……いいから、 ……せめて、……いなくならなければ……」 朝のことを思い返しているのか、あるいは何か。ともかく、暫くはそこで何をするでもなく座っている。 (99) 2022/04/30(Sat) 15:06:51 |
【人】 充溢 バレンタイン>>104 トット 「晴れている天気……うん、心地いい。 雨も好きな方だけど…… 濡れるから外には……出られないしな……」 暖かくのどかな日和も勿論いいけど、 見た目に違わず暗く湿ったところも好き。 何より日光が眩しいから木陰にいるんだものな。 「動く、かあ……」 「病気を気にしなければ……できると思うけど…… そんなわけにもいかないから…… 難しいか、も……ごめん」 表情こそ堅いが僅かに斜め下に目を逸らす仕草は、 言葉通りどことなく申し訳なさそうに見える。 視線を戻した時、花冠がズレていることに気づいて、 ゆっくりと腕を伸ばしてはそれを直してあげて、 うん、と満足気に頷く。自分がよくされていることだ。 「そのかわり……話すことなら、いくらでも。 髪は……そうだな。特別な手入れはしてない、けど…… なんでかさらさらで……重くて、落ち着く。不思議」 (105) 2022/04/30(Sat) 16:54:27 |
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