[ヴィクと同じ劇団に所属する彼女からのメッセージは、大体が茶や食事の熱心な誘いだった。
ろくに会話もしていないのに、一体何がお気に召したのか。
ヴィクに近付くための足掛かりとしたいならばお門違いだし、仮に己に気があるとしても相手をしている暇はない。
かと言って、彼の同僚であるから無下にも出来ない。
誘われる度仕事を理由に断っていた。
画面に記された文面はこうだ。]
『貴方のお友達は気の毒だったわ。
相当疲れを溜め込んでいたのね……、
ダブル主演だったとはいえ、
やっぱり新人にはまだ少し
荷が重かったんじゃないかしら。
あたしが主役の公演は、観に来てくれるわね?
完璧な舞台をお届けしてみせるわ。』
[あの自信は一体どこから来ていたんだろう。
今までは適当にスタンプを投げていたが、その時ばかりは携帯電話ごとソファに投げ付けてしまったのをよく覚えている。
その日も仕事がありますのでと断りかけて、舞台を観るかわり、情報の提供を求めた。
ヴィク本人と連絡が取れなかったからやむを得まい。
何と声を掛け直せば良いか悩むうち、君は音信不通の行方知れずとなっていた。]