人狼物語 三日月国


221 Pledge ~sugar days~

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[ビニル越しの威優の顔は少し歪んで見える。
 多少歪んでいても格好いいと少し見惚れてしまう。

 もとから造形は好みの顔をしていたけれど、
 今となっては、嫌いな箇所を上げるほうが難しい。

 スマホに陰茎を直接擦り付けるのではなく、
 しっかりとビニルを取りにいくことを選ぶ配慮も
 ただ精密機器が壊れることを危惧してのことじゃないことも。]

 
  ぅ、ンッ、もう、張り詰めて、いたい……、


[まるで性教育を施されたばかりの子供のような
 張りの現状を伝え、威優に助けを乞う。]

[すり、とビニルの上で腰を揺らすと、
 先端の膨らんだ陰茎がレンズの上を往復した。
 液晶の向こうでは同じように
 威優の太くて赤黒い昂りが画面を上下している。

 見て、と言われて画面を注視すれば、
 威優の切なげが表情が、しっかりと映り込んでいた。]

  ッ、ぁッ……ン、いいッ……、
  これ、ンッ、いゆうっ、と、シてるッ……、

  
ぁ、ぁんッ、
きもち、いッ……ッ、
 

[擬似的な兜合わせでも、先程より一体感があって興奮する。
 腰を突き出して、スマホに押し付け。
 腰の動きと合わせるようにスマホを持つ手も、
 次第に快楽を求めて、揺らぎ始め。]

[くちゅくちゅと水音が響く中に、
 ビニルのザラザラと擦れ合う音が交ざり、
 摩擦が激しくなっているのが分かる。
 どちらのマイクから拾っているのかもう分からない。 
 見下ろしている表情が、
 威優と抱き合っている時みたいに蕩けて。]


  んッ、おと、きこえるッ……ぁ、ッ、
  い、ゅ、……いっしょ、にッ、

  ぁッ、んンッ、んッ!
  も、でそ、ッ、……イく、ッ
  ……イッ、
────ッ !


[スマホを持つ手が震え、腰がびくつく。
 ぴゅくっと勢いよく飛び出した白濁は、
 画面を濡らすと共に、
 見下ろしていた自身の顔にも飛び散って。**]

[ビニルが彼我のカメラに掛けられただけで
途端に随分と離れたような気持ちになる。
なまじ解像度の高いカメラが搭載された機種だけに、
歪みが煩わしい。

それでも、不自由さを感じるとしても、
「志麻と一緒」が良い。

ビニルが擦れる音に合わせ、水音が響いた。
マイクの近くだから、息遣いよりも大きく聴こえるだろう。

己の耳に届いているように。]



 あんまり激しく押し付けたら
 摩擦で切れるかもしれないから慎重にな。


[己がよく彼の状態を言語化するからか、
彼も自己申告に抵抗がなくなってきているように思う。

痛みを感じる程に張り詰めているのは
志麻が己を
しているからで、
それでも自慰で射精に至らないのは
己が志麻をそうなるまで
してきたからだ。

擦れる音に負けないように告げる。]


 好きだよ、志麻。
 っは……兜合わせ、きもちいぃ、な?


[実際に触れているのは相手の性器ではなくとも
お互いがこの行為をそう呼ぶなら
これは「兜合わせ」だ。]

[あんなに遠かった射精感がこみ上げてくる。
志麻の方も同じ焦燥感を抱えているようで嬉しい。]


 俺も、イきそう。
 志麻、志麻……ッ ぁ、イく……っ


[びるるるる、とビニルが震える音がした。
電話の向こうでは大きなノイズになったかもしれない。

己の精液で画面が遮られ、よく見えない。
それでも、画面の向こうも己の像に向けて
射精していると確信したまま、何度か腰を振って新しい白濁を飛ばした。*]

[慎重にという声に頷くことはしたものの、
 擦り付ける動きは止まらなかった。
 ほんの少しだけ、腰を揺らす動きを緩やかにして
 それがまたもどかしくて瞳を覆う水膜が厚みを増した。

 一緒に気持ちよくなっていることを知ってほしい。
 淫らな言葉を口にすることも厭わずに
 只管、快楽を追い求め、二人で悦くなりたくて。
 
 低温の甘やかな声に名前を呼ばれたら、
 鼓膜まで性感帯になったみたいに快感が突き抜けた。

 自身の飛沫がスマホを汚していくのと同時に
 画面の向こうで、威優の切羽詰まったような声と、
 薄い被膜が擦れる音が聞こえる。

 達した後の余韻に惚けながら、視線を落とせば。
 スマホに映る威優の顔を自身が吐き出したものと、
 彼が吐精した精液が重なって、汚して。]

[まるで自身にも吐精されたみたいで、
 ぞくんと達したばかりの腰が震え
 刺激も与えられていなかった後膣がまたきゅんと疼いた。]


  ……、は……、ぁッ、……


[熱っぽい息が、また、零れる。]



            
              
……会いたい……、




[吐精しても尚、彼の熱が足りない。*]

[ビニルが擦れるにつれて皺が寄り、
画面が更に見えにくくなる。
その分、己の様子は言葉にして伝えたいと思った。

達する時、実は上擦る声が聞いていて不快なので
普段は呻きに留まるように必死に声を抑えているのだが

今日は志麻と一緒に高みに上りたくて
解放時にそれと伝わるように言葉にした。

やはり己の声は好きではないが、同時にスピーカーから
聞こえて来た志麻のアクメの声がその不快感を相殺してくれた
気がする。]


 ……ビニル被せてて良かった。
 べとべとだ。


[射精後の脱力感で、苦笑も緩慢だ。
汚れた部分が内側になるように慎重に剥がし、
口を縛る。]



 ……体調不良にでもなるか。


[切ない呟きに返すのは、少し弱った声。]


 ほら、実際、胃が弱って今日の夕飯を
 部屋でとったくらいだし。


[「今すぐ行く」と強引に行動に移さないことから、
この度の出張が早々キャンセルできるものではないことが
志麻にも伝わるだろう。

立場があることをこんなに苦しく思う日が来るなんて、
思ってもみなかった。]



 志麻が有休使って来てくれる?


[思わず言い出してしまうくらいには、志麻が恋しい。*]

[汚してしまったビニルを取り外して、
 歪みのない威優を映し出す液晶を改めて見る。

 滅多に聞けない威優の上擦った声に
 酷く興奮を煽られたから、
 今度ベッドの上でもう一度聞きたいとねだってみようか。]


  ……ははっ、オレも。


[苦笑する威優につられて笑い。
 もう一度ベッドサイドに寄ってガーゼを取り、
 顔にまで飛び散った飛沫を拭った。]

 
  
  威優とほんとにシてるみたいだった。 
  キス顔より、今のやつ録画したら良かったのに。



[綺麗に映るようになった向こう側に、
 片目を伏せてみせて、そんな冗談を口にする。]

[切なさが滲んだ声に、威優の声が重なった。
 役職以前に彼の性格上からも、出来そうにないのに。

 そんな言葉を口にしてしまうほど、彼も。
 会いたいと思ってくれていることに、
 今度は胸がきゅうと絞られるような感覚を覚え。]


  ……二人でサボっちゃう?


[だめ、とは言えずにサボタージュに誘うくらい。
 会いたい気持ちはより募ってしまったから、
 やっぱり遠距離恋愛になんて、向いてない。

 だから、珍しい彼のおねだりにグッと来た。]

[入社して以来有休は余り使えていない。
 今の会社を退職する直前に、纏めて使おうと思っていた。

 ならば、一日、二日くらい。
 許されるだろうか。

 瞬時にカレンダーを脳内に浮かべて、
 週末までの日数を数える。]


  ……、……行く。
  仕事が終わったら新幹線で。

  だから、……明日抱いて。


[もう、週末まで待てる気がしない。*]

[情けなく上擦った声が出せたのは、
弱っている己の顔でも見たいと志麻が受け入れてくれたおかげ。

別の機会にベッドで聞かせられるかは、
余裕がどれだけ残った状態でセックスに至るかによるかもしれない。

余裕を剥ぐのが上手な番のことだから
きっと己が思うよりも早くその機会は訪れるだろう。]


 よく考えたら、俺はともかく志麻は
 後の処理を考えたらゴムの方が良かったかも
 しれないな。


[己は性器の形状的に市販のコンドームの装着が
困難なのだが、志麻はもし持っていれば、そちらを被せて
した方が飛沫を抑えられて後が楽かもしれない。

己とする時にはむしろべとべとにさせたいから
使う機会は限られているが。]



 感じてる顔を撮っても良いって?
 じゃあ今度「ハメ撮り」ってやつをしてみようか。


[出張が決まった時に、自宅にカメラを設置して
志麻の様子を観察したいと思わないでもなかったが、
盗撮は志麻を愛しているからというよりも
自己満足の為の行為に思えて止めておいた経緯がある。

本人が了承しているならいくらでも映像に残したい。
一人で感じている姿だけではなく、
己と繋がって善がる蕩けた顔を。]

[射精後の所謂賢者タイムも相俟って、
胸に穴が開いたような寂しさが募る。

何もかもを投げ出して傍に行きたいのに
何もかも失えば志麻との末永い未来がないと
理性がブレーキをかける。

弱った己に志麻の甘い誘惑。

窘めない彼も同じ寂しさを胸に抱えているのだろう。]


 ……明日?


[週末までには時間がある。
思わず脳内でカレンダーを展開した。

本当に有休を使う心算なのか。]



 滞在に必要なものは全部此方で手配する。
 だから荷造りしなくても良いよ、
 そのままおいで。

 明日が明後日になっても離さないから。


[明日、仕事が終わったら、というのが
志麻の仕事に対する責任感を感じる。
新幹線の時間を勤務時間中に早めたところで
此方の仕事が終わっていなければ逢えないという
冷静な判断も好ましい。]

[そうと決まれば明日の為に体調を整えなければ。
逢えると思ったら途端に身体に力が漲ってくるが
肝心の時に勃たないなんて困るから。


おやすみ、を告げる声は
もしもし、よりも明るく響いた。**]

[余裕に溢れた意地悪な顔で焦らされるのも、
 余裕がなくなった時に滲み出る声も、
 どれもが愛おしい。

 自分ばかりが夢中になっているのではないと
 思えるくらいに威優の気を引けているのだと分かれば
 破顔してしまうのも仕方がないだろう?]


  ゴムは……、
  威優のサイズのしか置いてない、から。


[自身用のコンドームは使う機会はないと思っていた。
 これからは避妊具として使うのではなく、
 栓をする役割として必要かもしれない。

 あれほどセーフティセックスを心がけていたのに、
 威優がコンドームを使うときですら、
 直接中に感じたくて使わないで欲しいと
 ねだるようになったのも志麻の一つの変化だ。]

[威優になら汚されても良い。
 汗と汁気でべとべとになって、
 零された白濁を舐め取りたいぐらいに。

 だけど「ハメ撮り」にはぎょっとしてたじろいだ。]


  バッ……冗談のつもりで言ったんだよ!



  ……でも、また出張があるなら、
考えなくも、
ない、けど。



[警備用のカメラですら意識してしまっていたのに、
 セックスしながら威優にレンズを向けられたら
 どうなってしまうか分からない。
 かと、言ってまた一人が続けば
 長い間彼を感じられないのも苦しい。

 羞恥と欲望を天秤にかける。
 それも、また威優の押しにかかれば
 なし崩しになってしまうのは時間の問題だ。]

[予定していたよりも早く、威優に会いたい気持ちが募る。
 画面越しに感じた熱をやはり直接感じたいから。
 明日といえば、少し間が空いて返事が戻る。

 さすがに性急過ぎたかと悔やみそうになったが、
 次に続いた言葉に心が凪いだ。

 明日抱いて、のアンサーに明後日まで離さないと
 言葉を選ぶ彼と想いを交わす。
 三角座りをして爪先同士を擦り合わせ、
 腕を伸ばした先のスマホに微笑んで。]


  …………うん。


[たった一言の相槌が意味を持つ。]

[明るく響いたおやすみにおやすみを重ねた後。
 自撮りにしたままのカメラに向かって、
 予告通りに目を閉じて、キス顔を撮る。

 瞼の裏に思い浮かべるのは出迎えてくれる威優。

 ああもう既に、──明日が待ち遠しい。**]




  [父の腕から手を離して、最愛の人の元へ──。*]


 

[
 二十四歩、


            ――己と出逢った。
                     ]



 ――Yes, I will.


[意思の籠った言葉で誓う。**]

[
 二十四歩、


            ――威優と出逢った。
                      ]

 

  ――Yes,はい I will.誓います


[ブーケを持つ手に力が籠もる。
 ヴェールに覆われた中で、また唇が震えた。**]

 




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