金緑石 アレクシアは、メモを貼った。 (a1) 2021/09/27(Mon) 0:14:31 |
【人】 金緑石 アレクシア―回想― [少女は、人並みに人間の国には興味があった。 けれど女一人で旅は無理だと言われてしまった。 野盗や、宝石を狙う輩に攫われないとも限らないからと。 旅慣れた従兄がついて来てくれると言ってくれたが、少女はそれに反発した。 彼は過保護だから、きっと遠くまでは連れて行ってはくれない。 少女は海が見たかったのだ。 少女の集落から海までには一か月はかかる。 海とは、故郷の湖よりもずっと大きく、塩辛いのだという。 湖に浮かべる小舟ではなく、見上げる程に大きな船が浮かんでいるのだと。 指先程の陸地が見えるところもあれば、見渡す限り陸地が見当たらない程に水平線が続いているところもあるそうだ。 少女はそれを見たいと思った。だから。 少女は書置きを残して夜にこっそりと集落を出た。 ──こう見えて少女にはお転婆なところがあった。] (1) 2021/09/27(Mon) 20:28:29 |
【人】 金緑石 アレクシア[少女は幸運だった。 集落を出た翌日に旅芸人の一座と出会い、少女はそれについて馬車の出る街まで行く事が出来たのだ。 少女は彼らに旅のコツを教わった。 掏りに遭わないように財布は肌身離さずにいる事。 同じ方向へ向かう行商人について行くか、馬車を利用する事。 彼らと別れるまで、少女は楽しい旅を過ごす事が出来た。 けれどそこからは順調とは言えなかった。 思うように同行者を見つけられず、無理をして歩いた所為もあるだろう。 少女は荒れ地で足を痛めてしまい、思うように進めなくなってしまった。] (2) 2021/09/27(Mon) 20:29:55 |
【人】 金緑石 アレクシア[難儀していたところに声を掛けてくれたのが彼だった。 少々魔法が使えるとはいえ、それは生活を便利にする程度のもの。 あのまま何日も過ごしていたなら野党に襲われるか、獣の餌食になってもおかしくはなかった。 青年は足の手当てをしながら海を見に旅に出たという少女の話を聞いてくれた。 そうして海を見たいのなら、と自分の故郷まで馬に乗せて連れていってくれ、好きなだけ此処にいていいと言って知り合いの貸し家まで融通してくれたのだ。 そこまでして貰ってはと恐縮したが、困っている人には手を差し伸べるのが家訓なのだという。 回り回って自分が助けられることもあるのだからと。] (3) 2021/09/27(Mon) 20:35:39 |
【人】 金緑石 アレクシア[そうして少女の足の調子が戻ると、馬で海に連れて行ってくれた。 念願の海を見る事が出来て、感動で動けないままの少女に、彼は気が済むまで傍についていてくれた。 住民達ともそれなりに打ち解けたが、少女は自分の正体について話す事はなかった。 自分が人間ではないなどと、滅多な事で言うべきではない。 周囲の視線が変わってしまうのが恐ろしかった。 彼の住む国では、女性は髪を隠す風習があったのが幸いした。 珍しい多色の髪はどうしても目立ってしまうから。] (4) 2021/09/27(Mon) 20:37:17 |
【人】 金緑石 アレクシア[海に向かった時、隠していた髪を彼には見られてしまっていた。 ターコイズグリーンからバイオレットに移りゆく多色の髪を見て、彼は綺麗だと笑顔で褒めてくれた。 頬に熱が集まって、黙って俯いてしまった事を覚えている。 彼は慌てて弁解したけれど、とても嬉しかった。 青年は行商の旅から戻ってくるたびに少女にも土産を持ってきてくれた。 優しくしてくれる青年に対しての想いは段々と膨らんでいった。] (5) 2021/09/27(Mon) 20:38:26 |
【人】 金緑石 アレクシア[彼とずっと一緒にいたいと思った。 けれど、何れは戻らなければならない事も分かっていた。 少女には彼と同じ時は生きられないのだから。*] (6) 2021/09/27(Mon) 20:38:54 |
【人】 金緑石 アレクシア[せめて想い人に一目会って、想いを告げる事でも出来ないかと思ったが、彼は丁度街から離れていた。 商人である彼は一年の半分を旅して暮らしていた。 今回も数週間前に旅立ってしまったきり。 家族でもない少女には、帰る時期は分からない。 少女は後ろ髪を引かれるような思いで辺境の街サルハドに向けて街を発った。 よくしてくれた街の人達は彼女を見送ってくれた。 涙ぐむ子供達を見て、少女は不覚にも目が潤んでしまった。 果実や刺繍の施された布地、土産として持たされたものは多く、馬車が出ている中継地点までは貸家の主人が馬で送ってくれた。 そうして、彼女は北へと向かう事になる。*] (7) 2021/09/27(Mon) 20:40:01 |
【人】 金緑石 アレクシア[サルハドに到着した少女は宿屋に荷物を預け、大通りを歩いていた。 四人部屋になってしまったが、仕方ない。 故郷に帰る為には西のラバン山脈の麓を迂回するか、 北のチャルビ砂漠を抜けてから国境を二つ横断しなくてはならない。 同じ方向へ行く人を探していたが、生憎とまだ見つかっていない。 人に頼めばもう少し早く見つかるだろうが、少女はそれをしなかった。 此処は交通の要衝。 もしかすれば、彼と会えるかもしれない。 まだそんな思いを捨てきれていなかった。 それにしても此処は人が多く、目移りするものが並んでいる。 そんな風に他所見をしていた所為か、>>50誰かにぶつかってしまった。] ……っ、ごめんなさい。 [慌てて謝ると、相手は男性のようだった。 中性な顔立ちにアンバー色の瞳。 オリーブグリーンからアンバーに移り変わる不思議な色合いの髪色。 染めている事も考えられるが、同族であると考える方が自然だった。] (53) 2021/09/29(Wed) 21:31:53 |
【人】 金緑石 アレクシア大丈夫です。 他所見をしていて、本当にごめんなさい。 [まじまじと見ていた事に気付いて、謝罪を重ねる。 少女は金緑石の宝石人間(ジェム)以外をを見た事がなかった。] ……貴方も、良い旅を。 [言ってくれた言葉に同じものを返せば、彼は少しだけ哀しそうな顔をして笑った。 少女は一度頭を下げると、雑踏の中に戻っていく。*] (54) 2021/09/29(Wed) 21:33:39 |
情報 プロローグ 1日目 2日目 エピローグ 終了 / 最新