【人】 ][『月』 エーリク―― 玄関ホール・シトラと ―― [ 控えめなのか、卑屈なのか。 もっと近くで彼女のことを見ていたら どちらであるのか、判断することは出来たのだろうか。 ――これまで、彼女がまた他の住人たちが どういう扱いを受けてきただとか、それは 想像の範疇でしかないが、少なくとも 彼女の立ち振舞や仕草などから、察せる部分は 察していたと思う。 もっとも彼女に限らず、 聞かせてくれるなら聞いていたし、 知りたいと請われたらならかいつまんで 話していたこととは思う。 ゆっくりと、静かに喋るシトラのことは 自分なりには好ましく思っていた。 それがただしく、伝わっているとは思わないけど。 ] (451) 2022/12/15(Thu) 23:53:51 |
【人】 ][『月』 エーリク[ ただ、もう既に自分の意見が固まっているもの、 笑い出すもの、真剣そうに考えると口にするものが いるなかで、自分と表向きは同じように 呆然として言葉を失うシトラがいてくれたことで 芽生えたちっぽけで矮小な仲間意識というやつが このときばかりはありがたく、正常に発揮されていたと思う。 これまでもわざわざ君を探すことは なかったとしても、そこに君が居たなら 迷いながらも袖を引き、僅かな時間を 過ごすことはあった。 ふるりと首を横に振って>>378 彼女はやはり、静かに、ゆっくりと喋りだした。 じっとシトラ>>380の目を見つめていたが やがて視線は雨粒が落ちるように、 すとんと下へ落ちる。 ] (452) 2022/12/15(Thu) 23:54:32 |
【人】 ][『月』 エーリク 考える、とは別に 感じるものは、ある。あった。 心がどこか、僕の知らないところに 飛んでいってしまっているみたいに、 僕をおざなりにしたままで、 彼の膝下に、すり寄りたい、と思いながら 同時に、 不愉快でもある。 ……説明が難しいな。 考えなければいけないことは分かっている だけど、そうして出した答えが 本当に僕のこころなのか、 今は分からない。 [ そう、とも。ちがう、とも言わなかったけれど 紛れもない本音ではあったんだ。 ] (453) 2022/12/15(Thu) 23:54:59 |
【人】 ][『月』 エーリク[ どこか納得もしている。 どこかで反発もしている。 魂の記憶に振り回されるなんて 馬鹿げてると思いながらも、 泣き縋りたくなった理由も、 恐ろしくて近寄ることが出来ない理由も、 説明なんざ出来やしない。 友人の顔を出来るように成りたい それなら、少しは説明もつくというのに。 ] (454) 2022/12/15(Thu) 23:55:30 |
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