[正体を告げてしまったからには、もう何も遠慮は要りません。

うっとうしい市女笠など被らず、堂々と顔を晒して、町を歩きます。
市を冷やかし、喧噪を潜り抜け、辿り着いた先。
さらさらと清い水の流れる、その空間。

そこに、出会った時からずっと意識の端に掛かっていた人影を認め立ち止まったのは、唯の気まぐれでございました]


ねぇ、あなた･･･不思議な気配がするわ。


[陰陽師。
良く星を読み、行く末を占い、呪う者。
うつくしとは相性の悪い、鬼一の次に障害たり得る存在。

ですが───それ以上に好奇心が擽られるのは]

人なのに、とても“近しい”匂い。

なぜかしら。
喚ばれている気になるわ。


[ふらり、と近付きます。

好奇心は猫をも殺す。
あやかしをも殺すかについては、さて。

ですが、どちらにせよ。
心の行く先を素直に追い求めてのことならば本望でしょう]


あなた────うつくしを･･･百鬼夜行を、喚んだ？


[もしそうならば、その笑みの下に隠した思いを告げなさい。

心の底から願う者にのみ、機会は訪れるものよ*]