【人】 ヴィム[ あの左腕、焦げた肉の惨状 狂気にその身を焦がす青年を正気に戻すには あまりに十分すぎるもので。 彼の声に青年がどう応えたかなど もはや言うまでもない。]** (61) 2022/05/20(Fri) 11:19:07 |
【人】 ヴィム*** [ 隠すことでもないが自分から言うことでもない。 誰しもそういうことの一つや二つはあるだろう。 青年にとってメルヴェイユに戻る という用件がそれに当たる。 とはいえ、便利なことに霊体は生きていた あの頃よりも移動がかなり捗るもので、 プロテアの町を散歩する暇さえあるのだ。 人々の身体をすり抜けながら ]人の流れに逆らって歩けるのだから それはもう捗るなんてレベルの話じゃない。 (65) 2022/05/20(Fri) 12:43:48 |
【人】 ヴィム悪くない。悪くない町だよ、ここは...。 [ この町はいつも人が行き交い、入れ替わる。 誰にも聞こえないであろう独り言を 空の雲へと乗せて仰げば、青年は独り、微笑う。 W酒場Wは人から成る物。 集いし点は線を描き、円を作る。 集いし人が楔を結び、縁を象る。 ここに在るということは、それを求める誰かが 今日も此処にいるに他ならないのだから。] (66) 2022/05/20(Fri) 12:46:39 |
【人】 ヴィム[ 行き交う生者の行進を見据えながら 独り言と共に掲げた指先を鳴らすと 花屋に置かれた青いバラの花弁が突如空を飛び まだ見ぬWお客さんWの元へと舞い降りるだろう。 そして店に戻った時にはマスターに言うのさ。 ]** 『ビラの代わりにバラを配ってきた』 ってね。 (68) 2022/05/20(Fri) 12:49:22 |
ヴィムは、メモを貼った。 (a8) 2022/05/20(Fri) 12:55:23 |
【人】 ヴィム留守を頼むよ、W料理長W。 [ そんな青年が少年を拒む理由などなく 今ではカイルをそう呼んでいるのだが はて、恐らくは酒場一の働き者だ。 どちらが酒場の店員らしいかと言われれば それはもう言うまでもなく分かるだろう。]** (165) 2022/05/21(Sat) 7:42:14 |
【人】 ヴィムこの世界に失う痛みがあることを 知らない人間などいないだろう。 だが、時として何かを与える痛みが この世界の裏側に潜むことを 知っている人間もいれば知らない人間もいる。 (167) 2022/05/21(Sat) 8:20:20 |
【人】 ヴィム[ それはまだ『メルヴェイユ』という名を冠す国が 誕生するよりも前の話。 名前すら定かではないこの国に ある未熟な魔法使いがいた。 この国の子どもならば簡単に出来るであろう ランプに火をつけることすらままならない。 そんな未熟な魔法使いはついに己の限界を悟り、 町外れに住む魔法使いに師事するため その門下を訪れ、何度も頭を下げていた。] (177) 2022/05/21(Sat) 12:39:30 |
【人】 ヴィム[ 師は飛び込んでは幾度となく頭を下げる 未熟な魔法使いを見かねて、ついに問うた。 「どうしてそこまでして...。 なにも魔法に頼らずとも方法はいくらでもある。」 師はそう諭す。 なにも魔法使いでなければ生きていけない なんてことはない。 それが無理なら剣士でも、武闘家でもいいはず。] (178) 2022/05/21(Sat) 12:41:14 |
【人】 ヴィム[ しかし返ってきた答えは輝かしい光。 世界の痛みなど何も知らないと言いたげな 純真たる魂の輝き。 師はその覚悟を認め、未熟な魔法使いを 受け入れることに決める。 それが、後に英雄と大罪人と呼ばれた 二人の出会いであった。]* (180) 2022/05/21(Sat) 12:43:48 |
【人】 ヴィム[ 神のイタズラにより出会った英雄と大罪人。 弟子となった未熟な魔法使いがその才能を 発現するようになるまで時間はかからなかった。 師は言う。 「周りの環境が悪いだけだ。」 、と。首を傾げながら素直に師の教えを守る 愛らしい弟子を師は次第にその扱いを改め 弟子からW友人Wとその呼び名を変えた。 ] (222) 2022/05/21(Sat) 19:28:08 |
【人】 ヴィム[ 師弟であり、仲間であり、友でもある。 いつしか師を超えるほどの魔法使いへと 成長を遂げた愛弟子はといえば 新たな仲間達に恵まれ、魔法使いとして 名を馳せるほどの栄誉を手に入れていった。 どれだけ困難な依頼が舞い込もうとも この魔法使いがいるパーティならば 達成してくれる、そんな伝説さえ囁かれるほどに。] (223) 2022/05/21(Sat) 19:28:57 |
【人】 ヴィム愛弟子は言う。 「それでも僕は師匠とずっと一緒にいたい。」 、と。師は言う。 「お前はいつか自立しなければならない。」 、と。 (224) 2022/05/21(Sat) 19:31:05 |
【人】 ヴィム[ 師は愛弟子を認めなかったわけでは無い。 真相はむしろその逆であり 師は愛弟子の力を誰よりも理解していた。 故に師は愛弟子が己に依存することを懸念し 自立を促し続けていたのだった。 愛弟子が己へと向けている ]尊敬と淡い恋慕が入り交じるその感情に 師は気づいていたのだから。 (225) 2022/05/21(Sat) 19:32:10 |
【人】 ヴィム[ 夜までに戻ると告げたこの日。 青年が姿を現したこの国は 今も相変わらず盛況していた。 魔法を学ぶなら『メルヴェイユ』へ。 そんなキャッチコピーをかかげた魔法都市には この国を破滅の未来から救った英雄の石像が 掲げられ、今も守り神として祀られていた。 石造りの偶像を前に目を細めると、 過去を懐かしみ、噛み締めるよう、青年は呟く。] (229) 2022/05/21(Sat) 19:39:00 |
【人】 ヴィム[ 独り言と共に指先を石像へと向けて。 ついた汚れを丁寧に魔法で落としていく。 これが、青年の日課であった。 酒場の誰かには、ここまでなら 話すこともあっただろう。 裏を返せば、話していたのはここまでだ。 日課を終えれば、青年はその銅像の前から姿を消し 仲間達の待つW酒場Wへとその脚を向かわせる。] (231) 2022/05/21(Sat) 19:43:05 |
【人】 ヴィム[ 人はいつか死ぬ。 善人だろうと、悪人だろうと 英雄であろうと、大罪人であろうと。 分かりきっている事だ。 しかしながら、何故生きるかと問われれば 答えられる者は決して多くない。 初めからその答えを知っているものは この酒場に行き着いたりなどしないのだから。] (277) 2022/05/21(Sat) 23:25:52 |
【人】 ヴィム[ この世界にはW真理Wなんてものはない。 己が何を思い、答えとするのか。 つまりは自分がどう在りたいか。 W真理WはW心理Wに眠るもの。 それが青年の持つ死生観であった。] (279) 2022/05/21(Sat) 23:29:24 |
【人】 ヴィム[ メルヴェイユでは子供にある童話を 聞かせることが習わしとなっている。 才能豊かな魔法使いが悪の魔法使いを 打ち倒して英雄になる物語。 その童話は悪いことをすれば報いおこり 悪の魔法使いに魂を抜かれるという 脅迫じみた躾のために利用されていた。] (386) 2022/05/22(Sun) 15:41:47 |
【人】 ヴィム「悪の魔法使いWヴィムWは他国との戦争を 起こさせることでメルヴェイユを滅ぼし 国家転覆を乗っ取ろうと暗躍する。 しかし英雄WクロエWがそれに気づき 危険を顧みず、命懸けでヴィムを打ち倒す。 かくしてメルヴェイユは永遠の平和と 繁栄を手に入れることになったのだ。」 (387) 2022/05/22(Sun) 15:42:28 |
【人】 ヴィム[ 興味を持てば誰でも知れる話だろう。 WヴィムWは国家転覆を測った大罪人。 己の利欲のために国民を危険に晒した 血も涙もない魔法使いであったと。 当の本人は 「人の噂なんていつもデタラメだ。 生憎ゴーストなんでね。 血も涙も、とっくに捨ててきたよ。」 と呆れて笑っていたものだ。] (388) 2022/05/22(Sun) 15:43:16 |
【人】 ヴィム[ 日課の話をした時には 己の薄汚れた感情を丁寧に美しく装飾する ウーヴェに青年は思わず否定を入れてしまう。 だがそれが決して迷惑ではなかったことは しかと伝えたつもりだがどうだろうか。 そして付け加えるように言うだろう。 「もし興味があるなら、今度肴に話してあげよう。」 その今度がいつ実現したのか、果たして。]** (390) 2022/05/22(Sun) 15:44:22 |
【人】 ヴィム*** [ 話を聞きたければ自分の話もすべきだ。 そんな当たり前の等価交換をせずに 彼の話を聞こうなどというのも烏滸がましい。] ねぇ、ウーヴェ。 君は────── [ いつか聞こうと思っていたその答えを 青年は訪ねようと左足を一歩前へと進めると。] (391) 2022/05/22(Sun) 15:45:09 |
【人】 ヴィム[ 驚いた様子のウーヴェを横目に 青年が指先を振ると 落ちていた石ころたちが宙へと浮き始め 少女の目の前で文字を象ってゆく。 WAt night.W 声が聞こえるならばもう少しやりようがあるが 本来であれば生者と死人は相容れぬ存在。 これ以上の交信は現実的ではないのだろう。] (394) 2022/05/22(Sun) 15:50:37 |
【人】 ヴィム[ メッセージが届けば石ころがまた 床へと散り散りに転がっていくだろう。 少女の髪に棘のない 青いバラ がいつの間にか添えられていることに 気づこうとも、そうでなくとも。 いまはまだ、ここでおしまい。]** (395) 2022/05/22(Sun) 15:54:03 |
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