100 【身内RP】待宵館で月を待つ2【R18G】
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| >>3:67 三日目ゾズマ /*露出狂したいから前日時空だけど表で見せびらかしていくわ。 リーパーは弱気な人間は嫌いだった。 まるで、どこかのノロマ女みたいで。 「あ? なんだテメエ今までの生意気さはどこ行きやがった! ゴメンナサイなんてくだらねェ、掛かって来──」 さくり。 内臓をやられる前に、 咄嗟に手の甲で身体を守ることができたのは。 かの殺人鬼が持つ生存本能ゆえか。 これでも捕縛を逃れて来ている身だ。 手の甲に視線を降ろす。白い掌を汚していく血。⇒ (0) 2021/10/21(Thu) 21:51:12 |
| >>3:67 三日目ゾズマ 「ッ……!?」 粗野な少年から突如現れた、 まるで被虐に慣れているかのように連ねられる謝罪と弱気さ。 気を抜いた。だって、それは──。 「(こんなに気弱な振る舞いのやつが)」 「(恐怖からとは言え、人にナイフを突き立てられるものか? それになんだ、この態度の変わりようは)」 「(歪だ)」 「(こいつ、まるで)」 殺人鬼は、静かに。ぽつりと零す。 「……まるで」 「オレとゲイザーみたいだ」 ⇒ (1) 2021/10/21(Thu) 21:54:13 |
| >>3:67 三日目ゾズマ 運悪く、ナイフを握っている利き手だった。 これじゃあ上手く殺せない! おまけにこいつ相手じゃ……全然愉しくなんかない! なんなんだよ、こいつ! ……退かなければ。 「オレの名前は『リーパー《死神》』! テメエの顔覚えたからな。 いつか絶対殺すッッ! 夜道に気を付けろ……」 「バーーーーーーーーーーカ!!!!」 人が来る前にリーパーは。 テンプレートな捨て台詞を吐いて、全力で逃げ出した。 短絡的で子供みたいに幼稚。この殺人鬼は、そういうやつだ。 ⇒ (2) 2021/10/21(Thu) 21:57:41 |
| >>3:67 三日目ゾズマ そうして、あなたはぽつねんと取り残された。 先程までの緊張感も消え、 嘘みたいにのどかな庭園が広がっている。 あなたはゲイザーの躰をした誰かが 殺人鬼であることを知った。 告発の為に動いたって良い。 或いは、恐怖のままに何もしなくたってもいい。 罪にはなるまい。 これからどのように行動するのかは、あなた次第だ。 ……結局、ハンカチは返される機会を失った。 (3) 2021/10/21(Thu) 22:00:56 |
| ゲイザーは、チャンドラを迎えにいくことができなかった。 (a2) 2021/10/22(Fri) 1:01:10 |
| (a3) 2021/10/22(Fri) 1:01:54 |
………
……
…
「身勝手なもんだなァ…」
金烏の怒りを感じたキエが抱いた感想は呆れと煩わしさの2つである。
「自ら歩こうとしないのだから勾引かされた事に寧ろ感謝するべきだと思うがねェ。神は何時何処に行っても身勝手なものだ。
気に入らないなら大洪水でも起こしたまえよ」
キエは自身を否定する手立てが限りなく少ない事を知っている。であるから敵意を向けられても感じるのは呆れと煩わしさだけだった。
「嗚呼面倒くさい、僕らだって逆らえる立場ではないというのに。
なァ、リーパー君?」
キエは中庭での出来事を知らないが故に呑気な呼びかけをした。
/*
誤字に今気付きました。
“金烏”ではなく“日輪”の間違いです。sorry!
/*
ハローハロー、あなたのベル記(思い込み)、当方です。
デイリー匿名メモポルターガイストも出来る気分でなかった浮遊想でした。
当方、引き続き『
透明な描写
』を続けますが、本窓が見えている方は特筆がなくとも、任意の箇所を『半透明な描写』として認識していただいてOKです。
何かあれば都度聞いていただければ〜〜! とりあえず今日もLoveを振り撒いておきます、キャッキャッ ٩(ˊᗜˋ*)و
「
え? なにこわ。探偵さんにこの文言で呼ばれたくなくない??
」
「…………」
その時、リーパーは苛ついていた。
キンウという少女が神隠しされたようだけれど、
おまけに自らの名を呼んだようだけれど。
自分は関わっていないから、知ったこっちゃあない!
あとまだ話したこと無いし!
──同じ、館の協力者ではあるけれど。
「あー、イラつく!
なァあのゾズマとかいうやつ殺そうぜ!
オレが殺人鬼ってこと、バラしちまった。
だから知っているやつを全員殺す必要が有る!
今までやってきたオレたちなら、簡単なコトだろ?」
そうして、また襲撃の提案を行う。
今日は永劫に続くと思っている。
”館の協力者”という安寧に、罅が入ったことすら考えない。
「……それに、アイツ。オレを見ているようでムカつくし」
| ゲイザーは、二重人格だ。リーパーという副人格が、夜な夜な知らぬ間に殺人を行っている。 (a7) 2021/10/22(Fri) 15:20:32 |
| ゲイザーは、消失した。記憶を喰らう怪物に4年分の人格を喰らわれた。残るかすかな記憶も今は眠り姫。 (a8) 2021/10/22(Fri) 15:21:28 |
| 【ソロール】
リーパーはその時、永い廊下を歩いていた。 ゲイザーの真似も捨てた大股な歩きは苛立ちを滲ませる。
右手には包帯。包丁で大けがしたというのが表向きの理由。
「あァ〜〜……クソボケが……。 べつにオレが殺人鬼ってバラしたのは良い!
知ったヤツ全員殺せば良いだけだ、オレにはそれが出来る!」
「だが……」
「何なんだよ。この心の疼きは。 あのゾズマというヤツに会ってから胸が痒い!」
それらすべての心の機微を、 短絡的な少年は『苛つき』として処理して。 再び館をうろつき始めた。
次の殺人の計画について考えながら。 (10) 2021/10/22(Fri) 15:26:10 |
「オレ“たち”ねェ…僕ァわざわざ殺す必要も無いし血など流していないよ。其処は一緒くたにしないでくれないか」
キエにとって殺人とは林檎を木の根から引き抜く事と同義である。人が死ぬ事を嫌だとは思わないが歓迎もしていない。
其れでもリーパーの凶行に口を出さないのは、此の館において其れが“神隠し”という自分達に与えられた役目に繋がるからだ。
「良いんじゃないか? 君の事だから放っておいても役目とか関係無くゾズマ君を殺してしまうだろう。
だったら今のうちに
行ってきなさい」
「あ〜〜? 色々引っ掻き回してるのテメェだろ。
オレとオマエは一緒だよ!」
リーパーにとってはそうだった。同じ悪党同士。
あなたにとってはきっと違う。
「
オレ利き手怪我してんだよ!!
ゾズマの野郎にやられて……。 ナイフが握れねえ。
毒殺? 刺殺じゃねェと意味がねェ!」
──即ち。今の殺人鬼は、無力だ。
リーパーは華奢な女ならぬ膂力を持つが、
それは脳のリミッターが動いていないということ。
あなたと違ってどうあがいても人間だ。
怪我が治るまではろくに首も絞められない。
「つまり僕に殺せと? 人間を?」
「…………」
キエは気が短くはないが長くもない。粗暴でもないが温和でもない。感情の起伏というものが乏しくもある。
しかし――……
自分の在り方を変えようとしてくるならば其の限りではない。
「殺したいなら君が殺しなさい。
利き手? 知った事か。其れが僕に何の関係があるんだい。
刺殺? 知った事か。君の在り方を押し付けるな」
キエは不確かな存在であるが故に生死の概念を持たない。だからこそ自分の在り方を自分で定めなければキエはキエでなくなってしまう。
「………
いいね?
」
「…………」
「……オマエさ、ひとのこと『お前』って言えるんだな」
| 【ソロール】
幼いゲイザーは気弱で、 怒りや恨みを発散する術を持たなかった。 いつもストレスを抱えていた。
リーパーはそんな彼女の、たったひとりのお友達だ。 イマジナリーフレンドの男の子。 彼の役目は彼女のために怒ること。
それから幾ばくかの月日が流れ、ゲイザーは大人になった。 イマジナリーフレンドは不要になり、存在を否定された。
ゲイザーのもうひとりの人格となった リーパーは、役目を暴走させた。
今日もローブを翻し、彼女に隠れて 夜な夜な殺人を繰り返している。 (11) 2021/10/22(Fri) 17:47:26 |
| リーパーは自分を見てほしい。 (12) 2021/10/22(Fri) 17:48:18 |
| さあ、夜が来ない待宵館に、最後の夜が来る。 君達は、君達の思うままに行動するといい。 (13) 2021/10/22(Fri) 17:49:52 |
| >>ゾズマ 館の外の理で数えるなら、四つめの夕方ごろ。 「ゾズマあああああああ テメエ出てきやがれ!!!!!!」 中庭、響くのはリーパーの騒々しい声。 「殺さないから! オレとお話ししようぜ! オレ今ナイフ握れないし、刺殺以外は趣味じゃないし。 パイあげるから、なっ!」 (14) 2021/10/22(Fri) 18:00:42 |
「そりゃそうさ、言葉を知っているからね。
しかし其れは答えになってないなァ?」
キエは喜びを知っているし悲しみを知っている。
キエは愉悦を知っているし憤怒を知っている。
キエは感情を持たないが、喰らってきた数多の夢から確かに感情を知っている。
此れを知っているのは、只1人貴方だけだ。
「で、どうするの君。僕がやるなら相手は僕が決めるけれど」
「…………」
ぐぎぎ、と歯ぎしりの音。
「あァー……。ゾズマは”役目”に関わらず、
オレが個人的に殺す。
今晩の襲撃はオマエに任せるぜ。
相手だって好きに決めればいい!」
「
知りたいって言われたから こたえただけですよ
」
「では相手とやり方は僕の方で決めよう。只候補はあるが成功可否は判らないから其のつもりで。
何となくだけど彼は館の理から少し外れてる気がするんだ。
…まァ失敗したら館の主人のせいさ。もっと便利で強大な理を僕らに与えなかったのが悪い」
先程見せたキエの怒気はすっかり霧散し一滴も見当たらない。代わりに役目に関わらず自らの意思で殺人を計画するリーパーへの感心が隠れている。
キエは殺人を好ましく捉えないが、自ら考え決意し行動に移す者は好ましいと捉えるからだ。
「また何か在れば伝えるよ。互いに運が在ると良いねェ?
……いってらっしゃい、リーパー君」
キエは名前を呼ぶ。名前こそが存在を示す証拠であると考える。
…
……
………
| (a21) 2021/10/22(Fri) 23:31:15 |
| 宇宙服の彼が、至極当然の疑問を、 あまのじゃくみたいに口にする中。 当の死神は男子便所の個室で、便器を蹴った。 鮮やかな 即興劇は、使用人の、ゲストの目を奪い── そして。リーパーすら、魅入ってしまった。 誰よりも見慣れた脚本の演技に。……あの情熱に! あれはきっと、あの人間にしかできぬ芸当。 芸術を理解せぬリーパーだって理解した。 「聞いてねェッ! 聞いてねェよ、あんな奴がいるなんて!!」 「今ので何人オレが殺人鬼だと知った? それに、ミズガネの野郎」 「誰にも見えないくせにッ! オレと同じ、ひとりぼっちの癖に!!」 ⇒ (22) 2021/10/23(Sat) 0:20:53 |
| 『嗚呼、嗚呼、この子の笑顔こそが僕の人生に射す光だ!』 『どうか少女を、救ってやってはくれまいか』
ひとりぼっちが、二人出会ったのならば。 きっともう、ひとりぼっちではない。
リーパーは掻きむしりたい程胸が痛い。 なんだかわからないけど目頭が熱い。
リーパーはゲイザーだった。 でももう、リーパーはゲイザーじゃない。 (23) 2021/10/23(Sat) 0:25:02 |
| 『辛かっただろう、唯一の友達ゲイザーに忘れられて。
苦しかっただろう、誰にも気付かれなくて。
君は沢山の苦痛と孤独を味わった。
だから、そう⏤⏤⏤⏤報われるべきなのさ!』」 「そうだ。……そうだ! オレは報われるべきなんだッッ!!」 「その為ならば何をしたって許される! 俺が許す!! まずはゾズマだッ!! 次はユピテル。その次にあの役者!! アマノ! テラ!! シトゥラ!! プルー!! 全員殺すッッ!!」 破滅的な動機の元、リーパーは便所を出た。 行く場所もなく彷徨う。ナイフを握りしめて。 ……この利き手の怪我さえなければ! 今すぐ通り魔をして回ったところなのに!! (24) 2021/10/23(Sat) 0:34:18 |
| 館の協力者は言った。 『此処の主人による意向で消える客が決まる訳だが⏤⏤ ある程度は此方の意思を汲んでくれるらしい。 長くいる使用人曰く複数人に願われた結果消えた者もいたそうだ』
この場所で願いは無為ではない。 それを知るひとは数少ないだろうけれど。
リーパーは、どのような由縁あろうとただの殺人鬼だ。 無為の人々を殺害した、法で裁かれるべき人間である。
その前提の上で。 けれどここに法はない。それを決めるのはあなた達だ。 あなたの思うままに、夜の星に願うと良い。 (30) 2021/10/23(Sat) 1:51:02 |
| >>42 ゾズマ いつもみたいに自然に中庭に足を向けてしまったから、 チンピラ仕草をするそいつとは見事に出会ってしまった。 「あっゾズマ! はいパイ」 焼きたてのスターゲイジーパイだ。明らかに焦げてる。 妙に優しい。 「あっ、今日はちゃんと気強いんだな。 いやあ、この間は悪かったって! ……な? お話、しようぜ」 前回の結果は喧嘩両成敗といったところか。 中庭に設置されたベンチにあなたを誘い、自身も腰掛ける。 顔を近付ける。 「で、さ。早速だけど。 ……アンタ何者? あの気弱なゾズマ、何?」 (43) 2021/10/23(Sat) 10:36:29 |
| >>50 ゾズマ スターゲイジーパイは食べられる。 1ピースが二つ分、カトラリー付き。 あからさまに怪しいけど、毒や薬の類は入っていない。 リーパーは調理が下手だけれど、手土産に焼いてきた。 それを証明するように、 リーパーは粗暴な仕草でパイの片割れを口にする。 足を組んで、あなたの話を聞いた。 「……同じだ。けど、近くて遠い」 自分はほんものの片割れ。 あなたは、かつての友達をなぞるほんもの。 「オレも、そうだ。 ゲイザーの頭の中のダチだった。 でも、……棄てられて」 「ムカつくんだよ、アイツ! ギャハハ! 死んだけど。 これ以上アイツの言いなりになるのはゴメンだ」 ⇒ (55) 2021/10/23(Sat) 15:57:34 |
| (a46) 2021/10/23(Sat) 16:00:21 |
あなたの胎の中が蠢く。
どどめ色の極彩色から、逃げ回る素朴な光。
ゲイザーには聞こえている。
それらの愁傷、苦悩、寂寥、憎悪、絶望──その声が。
その中の、僅かな後悔──その声が。
あなたは周到な手段で目的を遂行する。
相手の合意ありきで行動する。
けれど、誘われたのはリーパーの方だ。
ゲイザーは何も聞いちゃいない。 ⇒
そして、ゲイザーは。
物語のヒロインでも、守られるだけのか弱いお姫様でもない。
リーパーがゲイザーなら。
ゲイザーだって、リーパーだ。
『……さん!』
『キエさん!! 聞こえていますか!!!!』
ゲイザーは怒っている。
あなたの胎の底で逃げ回るならば、
あなたの声だって聞こえている。
語りかける寝物語も、その全てが。
『あたしあなたのこと許しませんから!!
出してください、ねえっ!!』
『あたし、謝らなきゃいけないことがあるんですっ!』
『ミズガネさんに』
『チャンドラちゃんに』
『……リーパーに!!』
『そのどれもが、あなたのお腹じゃ成し得ない!
リーパーと会えるのがあなたのお腹の中なら」
『あたしたち二人揃って神隠しされて、
だれにも見えなくなったほうがずっとマシ!!』
⇒
『リーパーが頷いたからこうしたのは知ってる!』
『でもあなた、ムカつくんですよ!!』
それは正当でもなんでもない。
不当な怒りだ。
『出してくれないと
あなたのお腹蹴っ飛ばしますよ!!』
| (a47) 2021/10/23(Sat) 16:24:12 |
| ゲイザーは、大人になって、怒りを覚えた。誰かが教えてくれたから。彼の存在はムダじゃない。 (a48) 2021/10/23(Sat) 16:24:50 |
| ゲイザーは、謝らなくちゃいけない。みんなに。……リーパーに! (a49) 2021/10/23(Sat) 16:27:37 |
あなたは自らを定義し、そして同時に人に定義される。
人と共生することで生き永らえる存在だ。
だからこそ狡猾に動く。
ゲイザーは特別だ。記憶じゃない。
確固としたひとつの人格があなたの胎に治まっている。
だから反抗を成し得た。
この館で、願いは魔力となり力を持つ。
館の魔力を無自覚に用いて、ゲイザーは外に出たいと主張する。
さて、どうなる?
これは人ならざる怪物と、最早人の形を持たぬヒトの力比べだ。
「君に許されなくたって僕が僕を許すんだから其れで良いんだよ。人間は本当に身勝手だなァ…君達の都合に僕を付き合わせないでほしいね」
キエは胎の底から聞こえる声を聞き流していた。其れは自分が得意とする
夢の世界にいるからこその余裕であり慢心でもあった。
“人格を喰らうのは僕も初めてでねェ。
咀嚼に時間がかかってしまうだろうがそこは許してほしいな”
此の言葉に嘘偽りなくキエが胎に人格を収めたのは初めての事である。意思を持つ食べ物など初めて口にしたが故に胎の中から抗われた事も初めてだ。
だからこそ、此の展開をちっとも考えていなかった。
未だ“ゲイザー”に此処まで意思が残っているだなんて思っていなかった。
「
」
キエは初めて吐き気を催す。
キエは嘘吐きであるし数え切れない程の嘘を吐いてきたが幾つか本当の事がある。其の内ひとつが食の細さだ。
大食らいでないからこそ此の在り方に馴染んでいる。
性でもなく感情でもない力が胎で溢れれば直ぐに許容量の限界は訪れてしまう。
「ちょ、
ちょっと
」
「待って、本当に待って………此の儘だと
。君以外の感情も全部を撒き散らしてしまうよ、其れは望む処じゃあないだろ…」
此の小さな箱庭で禍根を全て零してしまえば結果は目に見えている。此れまで散々見せて来た高圧的な態度は今や見る影もない。
あのキエが、心底から焦燥している。……効いている!
「ええっ!?」
だが思わずゲイザーはその足を止める。
それが嘘じゃないのはわかった。胎動している。
このおどろおどろしい、感情のひとつひとつが。
その中にはきっとリソースとなったトラヴィスや、
ほかゲイザーも知らぬ契約を交わした
ゲストたちの記憶が混ざっている。
「そ、それは困ります……。けど、そうは言われたって!
……どうすればいいんですか!」
胎の底から1匹の鰐が浮かび上がると其の背中はゲイザーの足場になった。
「はいはい、出してあげるから大人しくしてなさい。…で、何処に出るの君」
鰐が発する声はキエのものだ。此の鰐が“キエ”だと夢を見ているゲイザーならば判るだろう。
鰐はゲイザーを乗せてゆっくりと感情と記憶の沼を泳いでいく。
………そう、沼だ。ゲイザーは人格であるから直ぐに混ざらなかったというだけで、本来胎の中は泥濘のように混ざっている。此処から特定の何かを掬い上げる事など砂浜から一粒の砂を探し当てる事に等しい。
何処かから赤ん坊の泣き声が聞こえる。
「君達が勝手に持ち込んだ魔力とやらを使わせて貰うからね。君も出られるんなら文句無いだろ?」
キエの行動は酷くあっさりとしていた。此処から出る為の試練も無ければ課題も無いが其れが“キエ”だからだ。
定義がキエを形作るとするならば、
この鰐もまた、キエの一部分なのだろうか。
ゲイザーは悍ましいアトラクションのような景色を進む。
「ま、魔力……? あたしっ、魔法使いじゃありませんし。
よくわからないですけど……。
わ、悪いことしないならいいですよっ!」
きっとあなたは、
”悪いことなんて滅相もない”なんて返してしまうのだろう、
そも善悪基準が人間とは違うのだから。
拍子抜けするほど簡単な脱出に、
”もっと早く声をあげればよかった”なんて思いながら。
⇒
| ゲイザーは、胎の中で夢を見ていた。頭の中にお友達がいた頃の夢。生きづらいけれど幸福で、安寧のあった日々。 (a54) 2021/10/23(Sat) 19:51:37 |
「…ん、見えた」
目的地を意識に捉えると迷う事なく速度を上げた。
キエは人を導かないし救いもしないし愛していない。されど人を大切にせざるを得ない曖昧模糊な存在だ。
人によってキエは善にも悪にも成ってしまうし、キエ自身も自ら其の在り方を選んだ。其れはキエの嫌う面倒が多く在る筈なのに選んだ道だ。
赤ん坊の泣き声が遠くなっていく。
「相も変わらずおかしな事を言うねェ君は」
| (67) 2021/10/23(Sat) 20:17:59 |
| ゲイザーは、虎視眈々と息をひそめている。その時が来るまで。 (a60) 2021/10/23(Sat) 20:18:41 |
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