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【人】 欠けた星 スピカ「この城は外観も中もとても素敵なのに、招く客人の質は問わないのかしらね。少し歩けば煙草を吸うのに最適なバルコニーに出られるでしょうに」 ――子供がいるのに煙草なんて。 会場にやってきてすぐさまぼやいた。 「それにしてもここ、子供をよく見るわね……苦手なのだけど……」 (24) 2022/01/16(Sun) 0:52:36 |
【人】 欠けた星 スピカ>>@5 ブラキウム 「好きな事って、そんなこと出来る筈ないでしょう! もう私は嫁いだ身で、そもそも大人なんだか…… んなあ゛ぁああ! 」意志を踏み躙られても女は頑なに拒み続けた。まるで自分に言い聞かせるかのように。 ただ、それも眼鏡が奪われるまでの間だったが。 「鬼ごっこなんてそんなはしたないわよ! 待っ、今すぐ眼鏡返しなさい! その前に料理置きなさい! ああもうこの子ったら! えっいや足はや、と、とりあえず眼鏡は返して!」 女は大変鈍臭かった。 慌てて捕まえようとしてもその手は空を切るばかりで、結局(76)1d100-20ぐらいの速さで君を追いかけるだろう。眼鏡がないためあちこちに体を引っ掛けたりぶつけたりしながら。 (41) 2022/01/16(Sun) 11:39:16 |
スピカは、ブラキウムが料理を完食したのを見てひとまずほっとした。 (a5) 2022/01/16(Sun) 11:40:44 |
スピカは、それはそれとして眼鏡は返しなさい! (a6) 2022/01/16(Sun) 11:41:44 |
【人】 欠けたの星じゃなくて眼鏡かも スピカ>>@8 ブラキウム 机のものが落ちた。使用人に謝った。 家具がひっくり返った。また使用人に謝った。 食器の割れる音を聞いた。再度使用人に謝った。 子供が迷惑をかけたなら、代わりに大人の私が謝らなくては。 体をあちこちぶつけていても、痛みなんて気にならなかった。 このくらいの痛みなんて、いつもの痛みに比べたらなんてことないもの。 前にいる君が足を止めたあたりで遂に女の限界が訪れる。 「ぜぇ、はぁ……子供の面倒見るのってこんなに大変なのね……複雑だわ……げほっ……」 スカートや膝が地面に着くことも最早気にする余裕などない。ぺしゃりと崩れ落ちて肩で息をする。 「……。 …………くすん、ぐすっ、ひっく……」 君の悪意のない言葉がどう届いたか。今それを確かめる術はない。 何故なら女は返事の代わりにぽろぽろと嗚咽をこぼし始めたのだから。 (42) 2022/01/16(Sun) 12:16:19 |
【人】 欠けたの星じゃなくて眼鏡かも スピカ (44) 2022/01/16(Sun) 12:58:55 |
【人】 眼鏡返しなさい スピカ>>@9 ブラキウム 寄ってきてくれただけでなく背中も摩ってくれた貴方に思い切り両手を伸ばす。 もし掴めるのならそのまま両の頬を捕らえ、ひたすらにむにむにと揉み続ける事だろう。 貴方の問いかけに答えるのは、もう少し先だ。 「お生憎様、本当に泣くわけないでしょ。泣いたところで状況が変わってくれることなんて無いもの。そんな暇があったら動かなきゃ。 ……ほら、捕まえたわよ。鬼ごっこは貴方の負けね。とっとと眼鏡返しなさい!」 全部嘘だったらしい。 女はけろりとしていた。 (46) 2022/01/16(Sun) 13:01:38 |
【人】 欠けた星 スピカ>>@10 ブラキウム ほとほとと落ちていく涙を見たところで女は一切同情しなかった。 「心配してくれて有難う。でもね、心配するくらいなら最初から怪我させるような危ないところで鬼ごっこなんてしちゃいけないわ」 女はハンカチを上着のポケットから取り出した。 「これが私という大人のやり方よ。そして、ついでに教えてあげる。 貴方が大人になりたくなくても、嫌でも時間が私たちを押し流して体だけでも大人になっていくのよ。だから、時間をもっと有意義に使いなさいね」 傷つけるつもりは無い筈なのだが、いかんせん容赦がなかった。それが当然だとばかりに大人の非情さを叩きつける。 遠慮なく貴方の顔から自分の眼鏡を奪った後、少女の肌を濡らす涙を拭こうと手を伸ばす。 どこかで貴方に拒否されなければの話だが。 (52) 2022/01/16(Sun) 16:35:18 |
【人】 欠けた星 スピカ「もう。自分から駄目な大人なんて言ってどうするのよ。子供が真似したらよくないわ。 ……思ったより面倒見はいいと思うけど」 飴を握らせ、しゃがんで目線を合わせていた男の動作を思い出す。自分ならそこまで気が利かなかったと思うから。 (55) 2022/01/16(Sun) 17:00:41 |
【人】 欠けた星 スピカ>>@12 ブラキウム 「なっ……! なにそんな訳の分からないこと言って、ちょっと……待ちなさい! 貴方のご家族や友達が心配するでしょう!」 慌てて手を伸ばしても捕まらない。 眼鏡を奪われた時と同じように女の細い指が虚しく空を掴む。 先程と違い、走ったせいでもう自分の足は動きそうにない。少女の背中が見えなくなるまで呆然と座り込んでいた。 「子供、本当に苦手だわ……どう関わったらいいのか分からないもの…… このままで良くないとは分かっているけど……」 ため息とささやかな独り言が尽きない。 少女の姿が消え、彼女の痕跡は眼鏡に落ちた雫だけとなった。 レンズの上に乗るその涙を拭く手つきは今になってようやく優しくなり始めた。遅すぎると悪態をつく。 拭き終えて少し休んだ後。女は最後にもう一度だけため息を吐き出して歩き出したのだった。 (62) 2022/01/16(Sun) 22:12:21 |
【人】 欠けた星 スピカ「はあ……」 何度目になるか分からないため息。広間の煌びやかな様子とは裏腹に女の心は曇るばかり。 それでもお腹は空くわけで、くうと鳴いて主張するそこを隠すように撫でた。 「……御伽噺や伝承の中には、冥界や異世界の食べ物を口にすると元の世界に帰れないなんて話もあるけれど……でも、美味しそうね……」 (66) 2022/01/16(Sun) 22:40:46 |
スピカは、広間を見渡す。料理を見て、人を見て、それから……開け放たれたバルコニーの様子も。 (a8) 2022/01/16(Sun) 22:42:00 |
【人】 欠けた星 スピカ「ち、ちょっと!」 疲労が溜まっている足の悲鳴も無視して駆け出す。 美味しそうな料理が並ぶテーブルに見向きもしないままバルコニーへ。タバコを落とした先客がいたとしてもお構いなしだ。 勘違いでなければ今子供二人が伝説上の生き物に乗って飛んでいかなかったか? 「何が起きているの!? 危ないわよ、どうして子供たちが空を飛んでいるの!?!」 バルコニーの手すりを掴んで空を見上げるばかり。何の力もない大人は何もできやしない。 星の煌めきも、ペガサスの軌跡も、子供たちの話し声も何も拾い上げられないまま心配そうに見つめていた。 (68) 2022/01/16(Sun) 22:49:50 |
【人】 欠けた星 スピカ「な、ぁ……」 星の煌めき、天馬の輝き。美しい光の海に思わず息を呑む。 ――まるで昔読んだ絵本の一ページのよう。 けれど夜の風が頬を撫でられれば夢見心地も霧散する。 「……ッ、使用人! そこの貴方! 今すぐランタンを貸してもらえるかしら! それからブランケットと、あと温かい紅茶を入れた魔法瓶をバスケットに詰めて用意してほしいの!」 バルコニーから広間へ跳ねるように走っていく。スカートの裾が派手に翻っても髪が乱れても、気にしてなんていられない。 「子供たちだけで外に出たのよ、危ないでしょう!? ご家族がいないなら誰があの子達の様子を見るっていうのよ!」 口喧しく使用人を急かした後、女は荷物を持って飛び出した。 10歳にも満たない子供が魔法を使えることも、降りた先が湖畔であることも知らないまま。 子供を守るのは大人の役目なのだから。 私は子供の時そうしてもらった覚えはないけれど、 でも、そう教わったから。 (70) 2022/01/16(Sun) 23:49:47 |
スピカは、城を飛び出して、そのまま走ろうとして、一つ気付く。 (a9) 2022/01/17(Mon) 0:04:49 |
スピカは、まるで親のような顔をして、まるでうんと大人のような顔をして、それでも。 (a10) 2022/01/17(Mon) 0:08:29 |
スピカは、子供たちの名前すらも、まだ知らないままだ。 (a11) 2022/01/17(Mon) 0:08:56 |
【人】 欠けた星 スピカ>>77 湖畔の二人、Mis. 自分の元に現れた女と幾ばくかの会話をした後のこと。 夜色に染まり切った空を夕焼け色の瞳で見上げて、星とは違う輝きを捉える。 「あれってあの子達が飛んだ軌跡よね。あれを追いかけたら会えるかしら。 それにしても、空を飛ぶなんて……本当に魔法使いのよう……」 後半はもはや状況と関係ない感想になってしまっているが、子供たちのことは依然として心配し続けている。 昼の空を乗せたような瞳を持つ女を一瞥してから、誰かから何も干渉されなければ空に残された軌跡を追いかけて湖畔まで歩きだすことだろう。女は魔法とは縁のない人間だったから、二本の足で歩くしかないのだ。 (84) 2022/01/17(Mon) 16:30:46 |
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