150 【R18G】偽曲『主よ、人の望みの喜びよ』【身内】
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視点:人 狼 墓 恋 少 霊 九 全 管
『
童の子が亡び
、世に闇が落とされれば、
人は輝きを求め、須臾の星を願い、
輪廻の龍はその力を取り戻すのです』
そんな詩のような。祝詞のような。
唄うようなかたちで齎された声は、
頭の中を暫し駆け巡って、消えた。
何度も気配を探り直す。
何度も何度も探り直す。
それでも恐ろしくもどこか懐かしいあの気配は見付からない。
少なくとも、きっと、以前と全く同じ気配は見付からない。
今は何処にも見付からない。
変わらず感じ取れるものは傍にある一つの気配だけ。
傍に無いもう一つが何処へ行ってしまったのか、
何をして、どうなってしまったのかわからないのが恐ろしい。
自分にわかる事は──それだけ?
神陰間と違えたタイミングだったか、少しすれ違うくらいだったか。
貴方の死体を見下ろした青年は、息を詰まらせ、血の臭気に咽び。
一度は背けた目は、深く呼吸をして目を伏せて、気を取り直して再度向けられる。
「……銃ではない、な。
接近しすぎたのかもしれないが、相手も即座に近接武器に持ち変えられはしないだろう。
どれくらい訓練されているのかはわからないが、この事態だけを想定して資金投入は出来ないはずだ」
だとすると下手人はなにか。
本来警備隊が相手どらなければいけないのは自分たちではないだろう。
そうした、今までの被検体なのか、あるいはやはり……そこまで思考できたかは、不明だ。
死体の傍に座り込み、もしも瞼があいていたなら閉じさせたことだろう。
目元、或いは頬に触れた指は、氷のような冷たさに怯むように離れた。
いや、そうではない。死んだ人間だってこれほど蝋のように冷たくはない。
指先が火で炙ったように熱い、と気づいたことが思考を鈍らせた。
困惑のあるまま、立ち上がって顔を上げて、標本室を眺め見る。
……自分が立ち向かわねばならないのは、なんであるのか。
考えるままに、時間が過ぎていくのを恐れ。そのまま標本室を離れた。
会議に合流する前のことだった。
一度会議室を後にして、戻って来るまでのどこかの間の事。
会議室で別れた一人に対し、
自分のスマホから短くメッセージを送った。
どうなっているかわからないから、もう一人には送らないでおいた。
『結木さんのことは今は気にしないで』
『僕がやりました』
『こわかったんです』
『ごめんなさい』
『誰にもいわないでください』
慌てて弁明をするように幾つか通知が続いて、少しの間。
『あとで説明します』
『必要なら』
『お気を付けて』
やはりごく短い補足をして、
そこで一旦連絡は終わりのようだった。
『わかりました』
数分ほどの時間が空いて、返信が来る。
『怪物とかに気を付ける必要はないというわけですね』
『その点については安心しました』
更にもう数分後に、宥めるような文面が並ぶ。
『咎めるつもりはありません』
『状況が状況ですから仕方ありませんよ』
『そう思いますか』
『なら』
『少し安心しました』
暫し送られてきた文面に視線を落として、また短い返信。
文面とは裏腹に、ほんの少しの不安を抱きながら。
状況が状況だから仕方ない。
殺さなければ殺されるかもしれないのだから仕方ない。
自分だってそう思っている。そう思ってそうしている。
けれど、もし仮に。
その行いに抵抗が無いのなら、あなたもまた恐ろしいものだ。
「………後で、確かめないと……」
臆病な加害者の独り言を聞く者は居ない。
本当に?
わからないものが何よりも恐ろしい。
理解の及ばないものが何よりも恐ろしい。
ある種同罪のあなたが、そのようなものでなければいいと思う。
/*
そろそろ襲撃先決めないとヤバいけど
どうしようニャワンねこれ(どったんばったん大騒ぎ)
『古後さんが、貴方に疑いを持っている』
『会議室に戻るときは、様子を見た方がいい』
生き抜く術の一つは二枚舌。
簡潔なメッセージを飛ばしておいた。
/*
てなわけでコゴマ氏襲撃の趣が強いです。
輪廻龍とか歪狐だったらそれはそれで美味しいですね。
/*
承知……
もはや輪廻龍に太刀打ちできなくなった赤窓の明日はどっちだ〜!!?
/*
もしもし叶さん?
あなたと出くわしたテイで古後さんを呼びつけどうにかしてしまおうって流れになったのですが、都合のいい時間ができたら通常発言に偶然を装って出てこられますか?
/*
承知………
もしかしたらその前後に叶が神陰間さんをカイシャクした・しに行く事になるけど
まあ前後なので特に何らか考慮しなければならない点は無いでしょう(行き当たりばったり)
/*
【速報】コゴマ、輪廻龍の模様【襲撃失敗濃厚】
多分施設の崩落とかで有耶無耶になって、隙をついてカナイさんが逃げ出すとかが自然になるんじゃないですかね。
/*
助けて!ENROお嬢様
なんか……なんか都合いい感じにします。その時に都合いい感じに。
『どうしましょうか』
『殺しはしないとは言ってましたが』
『秘密が露呈するのは避けたい』
追加でメッセージが飛ぶ。
勿論それは、古後への対処の話だ。
『そっとしておいてくれないなら』
『秘密を隠し続けるには』
『暴こうとする人をどうにかするしか』
『ないですよね?』
『僕達のせいじゃない』
『僕が手伝います』
『大丈夫』
『僕はあなたの味方です』
『あなたが僕の味方である限り 何があっても』
────ぞわり、
なにか恐ろしいものが、こちらを見ているような、感覚。
それはほんの一瞬の怖気だった。
───悪夢は覚めてもなくならない。
────事実は決して消えはしない。
──今に死の暗がりから這い出して。
─────犯した罪が、戻って来る。
『カナイさん』
『オレが嗾けようとしているものです』
メッセージではなく、直接頭に呼びかける形で。
『敵味方の区別がつかないので』
『距離をとった方がいいかもしれません』
自分はもう既に引っ張られているものだから、仕方ない。
ちらとそちらを見遣って、動きを止めた足は後退の態勢を取る。
巻き添えを食らっても恐らく対処はできる──けれど。
恐ろしくもどうしようもなく安心するような、あの感覚は。
そう何度も呼び起こしたいものではなかった。
「どうしますか」
小さく、短く、潜めた声が問う。
自分達を守るべくそこにある大きな背は無防備だ。
右手はガラス片に触れたまま。
不意打ちを仕掛けるなら、今がまたとない好機だろう。
けれどこの力で追撃を掛ければ無視できない証拠が残る事になる。
やるべきか、やらないべきか、視線があなたに問い掛ける。
或いは、やろうと思えば、彼を助ける事だって。
おれは、あなたの事は、信じているんですよ。
だからあなたの信じる人の事ならきっと、──きっと?
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