人狼物語 三日月国


73 【誰歓突発RP】私設圖書館 うつぎ 其漆【R18】

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視点:


[腹は少し減っていたけれど
 夕飯のことにも生返事。
 時間よ止まれ、と念じるなんて
 馬鹿なことを試みていた。

 でも、それでも時間は流れてしまうから
 願うだけじゃなく手を伸ばす。
 抱きすくめた飛鳥の身体が一瞬、強ばった。
 でも、もう離そうとは思わない。]


  思うさ。
  さみしいし、時間が惜しい。
  今日という日が終わるのが、つらい。


[抱き合ったまま、鼓膜へと刻み込むよう
 素直な気持ちを口にする。
 まるで子どもみたいで恥ずかしい。
 でも、言わなきゃずっと伝わらない。]

[ぐ、と飛鳥の顔が近くに来る。
 触れるのか、と思った赤い唇は
 また離れていく。
 離れていく体温を惜しむよう
 俺の手はまだ、飛鳥の肩に置いたまま。

 さびしい、帰りたくない。
 でも、夕飯までは一緒。

 それで飲み込ませようというのが大人の理屈。
 頬にちゅ、と口付けられて
 嬉しい、の気持ちよりももっと強く
 寂しい、の気持ちが湧き上がって胸をつく。]


  俺のが我慢出来ねェよ。


[すん、と口を尖らせたまま
 ヘルメットを手渡して。

 昼にがっつり天丼を食べたから
 洒落たイタリアンでピザでもつつこう、と
 またバイクを走らせる。

 空に溶かした濃紺の色が
 じわじわ広がり、空全体を飲み込んで
 代わりにちらちらと星が瞬く。]

[背中に感じる体温が、
 何故だかひどく遠く感じて
 やっぱりさっき、
 キスしておけばよかったかな、なんて。
 でも、さっきの時点でキスしてしまえば
 後の過ぎるだけの時間を、
 ひどく辛い気持ちで過ごしてしまう気がして。

 前に来た時は美味いと思った店だったけど
 石窯で丁寧に焼いたマルゲリータは
 今日は何だか、味がしなかった。

 ピザを食べる間、何を話したろう。
 『今度』の話は、なんだか怖くて
 俺は飛鳥のことを尋ねたろう。
 若い人の話をどこまで飲み込めるか分からないが
 彼女のことを、もっと知りたくて。]

[どんなに惜しんでも、時は過ぎて
 店の外に臨む空はぬばたまの色へ。]


  ……今日は、ありがとうな。


[空になった皿を前に、に、と笑って見せようか。
 言いたいことはたくさんある。
 引き止めたい気持ちも。
 でも、今日このまま帰さない、というのは、ダメ。
 明日、明後日、ともっと一緒にいたくなる。

 送り届けるまでが、今日のデート。
 もし嫌だというのなら、家に帰るまでの
 ほんの少しのドライブを提案しよう。

 港町の灯りを眺めて、海でも眺めて
 気が済むまで一緒にいよう、と。]*


[さみしいって、聞けると思ってなかった。

 …いつもみたいに、はぐらかされるんだろうって
 もしさみしいよって言ってくれたとしても
 わたしが押して押して聞かせてっていって
 やっと聞ける言葉だと、思ってた。

 なのに、その声に冗談やしょうがない、の色は
 含まれていなくて。その腕が、わたしの体を
 優しく、それでいて力強く、包み込んで。

 ねえ、どうして寂しいの?
 美術展が楽しすぎたから、なんて理由だけじゃ
 ないっていってくれたらいいのに。
 わたしと離れたくないって、だから、
 別れの時間が惜しいって、そう、
 思っていてくれたらいいのに。

 だから、言葉にしたの。
 わたしは離れたくないって。
 だからさみしいんだって。]

 


[でもね、それに対する返答はなかったから。
 ああきっと、また怖がって、迷ってる。
 口に出すべきかどうか、悩んでるんだって
 そう思ったから、頬に口付けて、
 これで我慢するって言ったのに。]


    っえ、



[俺のが我慢できないって、なによ。
 心臓がうるさく鳴り始める。
 我慢、出来ないって何?どういうこと?
 キスしたってよかったの?

 我慢、しなくていいのに。
 我慢、なんてしてほしくないのに。
 わたしはあなたのことが好きなのよ。
 付き合ってほしいってずっといってるでしょ。
 それなのに、何を我慢するの?
 どうして我慢するの?
 それはきっと、わたしもとっても
 嬉しいことなんじゃないの?ねえ、教えてって
 そう口に出すことができなかったのは、
 彼が話題を切り替えて、ヘルメットを
 こちらに投げてよこしたから。]
 


[少し悩んで、揺れて落ちた視線をアスファルトに
 向けて唸ると、彼のバイクのエンジン音が
 人気の少ない駐車場に響き渡った。

 背中にまた、くっついて。
 だけど、行きの時みたいな全部が全部、
 しあわせな心地じゃなくて、どこか、
 まどろっこしくて、どうしてって疑問が
 頭の中を渦巻いているから。
 とん、とんと、抗議するみたいに額で叩きながら
 腕の力を思いっきり強めたりしてみた。]

 



[彼に連れて行ってもらったお洒落なイタリアンは
 店内もいい匂いに包まれて、見た目にも、味も、
 とってもいいはずなのに、「おいしいね」って
 話しかけても、どこか上の空な気がして。
 ふわふわ、地面に足のつかない会話。
 わたしのことばかり聞いてくる彼は、
 初めは興味が湧いたからかと思った
 のだけれど、たぶんそうじゃない、気がして。
 何かを避けてる、感じがして。

 最近お気に入りのコンビニスイーツだとか
 今欲しいコスメの話だとか
 友人のくだらない失敗話だとかを
 話しながらも、どこかで、なんでだめなんだろうって
 頭の中を駆け巡ってしまう。

 さみしいって思ってくれたり
 抱きしめてくれたり
 頬へのキスを許してくれたり
 …我慢できないっていったり

 好意を抱いてくれてるって思う。
 だけど、その形がわからない。
 こんなに近くに寄って行っても、
 この手を取ってくれないのは、
 この先を望んでいるわたしには、
 報われない形をしてるってことなの?]



[空になったお皿を見つめて、ごちそうさまでしたと
 手を合わせて、言われた言葉に体が強張る。


 …それは、別れの言葉、だよね。

 ぱっと顔を上げて、唇を結んで、眉を寄せて
 迷うように落ちていく。

 …帰りたくない。まだ離れたくない。
 今離れたら、ダメになってしまう気がする。

 W今度Wの話もさせてもらえなかった。
 次、会える日の話も、次、行きたい場所の話も
 ───あなたの、本音も。

 なにも、聞けてない、わたし。
 
 全然こっちを向いてくれないなら、
 いくらでも待てるって思ってた。
 振り向いてくれるように頑張れるって
 そう思ってたのだけれど。
 向いてくれて、近くに寄ってくれたのに
 また線を引かれてしまったら、わたしは、
 それを超えていいのかどうかわからない。]

 


[───超えたら、嫌われない?

 だから、言えないの。
 さっきみたいに、

 その別れの言葉が、何を意味してるのか、
 私にはわからないから。]



   ……………うん、ありがとう


[沈黙が続きそうだったから、
 わたしもお礼を言って、笑いかけた。
 だけどもう一歩、踏み出せなくて、
 そのまま、家に送り届けてもらうだろう。]

 


[西園寺の表札がかかった木製の大きな門が迎える。
 バイクから降りて、ヘルメットを外して、置いて、
 もう一度お礼を言って、見送らないと、
 いけないって───わかってるのに。

 だけど、やっぱり寂しくて。
 
 門の方には回れなくて、彼の服の裾を掴んで、
 少しだけ引っ張った。
 …それから、もう一度、引っ張った。

 唇を結んで、開いて、詰まって、飲み込んで]

 




    ───ひとつだけ、聞いてもいい?


[そう尋ねたら、そちらを見つめて。]


   我慢、できないってどういうこと?


[ぎゅ、と掴んでいた裾を握って]

 

[イタリアンに入ると隣の席には
 何処かぎこちない男女がいて
 何となく、見合いか何かかな、って。
 他人行儀な距離感と話題、
 それでも何とか話題を出しては
 笑い合おうとする、奇妙な空気。

 名前だけ普段と違うけれど
 きっと傍目には其方の席と
 同じ空気に見えたかもしれない。

 最近ハマったコンビニスイーツとか
 欲しいコスメとか、友達の話とか
 たくさん、知りたいことは知れたけど
 そういうのじゃない、
 俺はまだ、核心に触れようとしてない。

 取り繕っておしゃべりしても
 ダメ、なんだ。言わなくちゃ。]

[そうして提案したデートの引き伸ばしにも
 却下が下りてしまえば
 これで本当にデートのおしまいが
 すぐそこにきてしまう。

 …………いいや、きっと俺が一言
 も少し一緒にいさせてくれ、って
 素直に口にすれば良かった。

 じわり、じわり、後悔が押し寄せる。
 最後に冷やを一口、苦い想いを
 喉の奥に流し込んだら、席を立とうか。


 結局、またあの重苦しい感じのする
 綺麗に剪定された松の前に辿り着くまで
 俺は自分から切り出せない。]

[門に向かおうとする背が
 控えめにぎゅ、と引かれて
 俺は素直に立ち止まる。

 くる、と振り向くと飛鳥の唇が
 開いて、閉じて、やがて問う。]


  ─────それは、


[我慢、ってなんのことだ、なんて
 すっとぼけるのは、無しだ。

 ─────だって、飛鳥は待ってる。
 俺が言葉にしなかった先の言葉を
 いつもみたいに、
 でもいつもより揺らぐ瞳で、紡いで。]


  …………飛鳥に、言わせたくなかったのに
  どうにも臆病で、我ながら情けねェや。


[ぼりぼりと、ヘルメットに蒸れた旋毛を掻いて
 唇だけ、笑みを形作ってみせた。
 イタリアンにいたカップル未満の二人みたいに
 間を埋めるだけの空虚な笑みだった。
 そう気付いたら、首を横に振って。]



[すっとぼけられるかなって思った。
 だけど、今誤魔化されたらもう、進めない気がした。
 だからお願い、ちゃんと教えてって
 心の中で願っていたの。
 
 そうしたら、彼の口が開いて、それから
 情けないと呟いて、下手くそに笑うから
 眉を寄せて、そちらをじっと見た。
 …そんな顔、しないでほしくて。

 レストランで隣にいた少しよそよそしい
 カップルを思い出す。…あの2人の方が、
 まだ初々しかったような気すらした。

 私たちは、もう知っているんだもの。
 あの2人よりもきっと、近しいもの。
 それでいて、遠いんだもの。]
 


[ぎゅ、と唇を結んで見つめていたら、
 彼が首を横に振る。掴んだ手に力を込めた。

 ゆっくりと紡がれていく言の葉。
 それは、今まで彼が隠してきた心で。
 待ってた、と言われたらきゅん、と
 心がときめくように締め付けられる。
 解かれた手。もう、怖くなかった。
 広げられた腕に、寄り添って、
 わたしも彼の背中を優しく抱きしめるの。

 胸板から響く声に、黙って、頷く。
 優しく髪が梳かれる。そっと、顔だけ離して
 彼の表情を見ていたら、わたしの髪がその口元に
 近づいて、口付けられるから、そこに視線を
 落として、それからまた、上げて。

 だけど、視線は合わないし、またぎゅ、と
 強く抱きしめられてしまったら、
 見ることも叶わなくなって───それでも
 問いかけられる言葉に、拒否なんて、
 できないし、したくない、から。]
 



[背中に回した腕を一度解いて、
 その首に引っ掛けて、近づいて。]



    ───だめなわけない。


[と告げて、こちらから背伸びをして、
 口づけを贈ってしまおう。

 甘い、キスは、触れるだけ。
 彼の唇に赤が移ったのが見えたら、
 少し眉尻を下げて笑って、その頬に
 手のひらを添えて優しく、親指で拭う。

 背伸びをやめて、そちらをじっと見つめながら
 またそっとまつげを伏せたなら、
 今度は彼から口付けてくれるだろうか。
 心臓が飛び出してしまいそうなほどドキドキしてる。
 ぴったりくっついたからだから、なにもかも
 伝わってしまうような気がした。]
 




   ………颯介さん、


[いつもよりも、柔く蕩けたような
 視線をじっと投げかけて、呼ぶ。]


  ………お付き合い、してくれますか?


[あのときと同じように、はじめて、
 あなたにこの提案をしたときと同じように、
 また、わたしは問いかけて。
 静かにその答えを待つの。
 言い淀むようなら、わらって、
 今度聞きにいくねって、腕を緩めるけれど。]*

 

[欲しかった口付けが、飛鳥の方から送られて
 俺はそっと瞼を閉じた。
 背伸びしてのそれは、ほんの少し触れるだけ。

 移った赤を拭われる前に、
 もう一度、今度は俺からキスをしよう。
 もう少し深く口付けても
 良かったのかもしれないけれど、
 まるでキスの仕方も知らないような
 掠めるだけのキスだった。

 それだけでも、触れ合った身体に
 ドキドキと鼓動を伝えてしまう。
 ……これはどっちのものだろう。]

[蕩けたような甘い声で呼ばれ
 俺はほんの少し身を離す。
 もう何度も何度も言われてきた告白に
 今度はちゃんと頷いた。

 ざあ、と吹いた風が御屋敷の松を揺らす。
 彼女の祖母から出禁を食らったのを思い出せば
 ほんの少し、臆病風が吹く。
 でも、もし許されるのならば
 彼女と付き合う許しが欲しいし、
 ……あの骨董品達の評価に
 関する誤解も解きたいとも思う。]


  飛鳥の、お祖母様は特に
  いい顔してくれなさそうだけど……
  もう一度、骨董品のことも含めて
  チャンスをくれたりしないかねェ。


[だから、飛鳥にも力を貸してほしい、と
 少し眉を下げる。
 話し合いに努力するのは俺の仕事、
 そのきっかけを作ってもらえないか、と。]

[そうしてするりと身体を解いて
 バイクに跨り……ふ、と気付く。]


  そういや、俺ァ飛鳥の好きな店を
  まだ知らねェ気がすンだ。


[天丼もイタリアンも、俺が知ってる店。
 『今度』こそ、君の好きな店を
 俺にも教えてくれ。
 ─────そんな約束を取り付けようか。

 何処だっていいさ。
 ただ、ジンジャークッキーと
 カップケーキの出処には、俺は固く
 口を閉ざすだろうけれど。]*


[こくりと頷かれたそのとき、どきん、と
 心臓が跳ねて、愛おしさが溢れてやまない。
 嬉しくて、ぎゅ、とその体を思い切り
 抱きしめて「大好き」をその胸に直接
 届くように服に吸わせた。

 風が吹いた。
 ざわつく木の音から逃げるように、
 腕の力を一層、強めて。]


   ───


[帰りたくない、もっとあなたのそばにいたい。
 また来週って言わなきゃいけない?
 触れてほしい、あなたに、触れたいって
 そう、願っていたら彼の声が響いたから
 顎をピッタリその体につけたまま、顔を
 真上に向けて彼のことを見上げた。]

 



[眉尻を下げるその表情に眦を細めて]



   …おばあさま、私には弱いから。
   言っておいてあげる。
   …私の頑固さを一番知ってるのも
   おばあさまだもの。


[と口端を上げた。

 する、と解かれた腕に、寂しさを感じて、
 もう一度だけ力を込めて、緩めて、
 それから離れた。
 自然と呼ばれるようになった名前に、
 彼の方からされた『今度』の話に
 口元を綻ばせ、わたしは彼の方を見つめ]
 




   わたしの好きな店はね、

   『伽藍堂』って名前なの。


[そう笑いかけて、触れるだけの口づけを
 もう一度だけおくって、数歩下がった。]


   だから、また行くね。


[そう伝えて、寂しさを押し殺して、
 わたしは彼のことを見送るのです。

 ふかして去っていくエンジン音が、
 遠く、書き消えてしまうまで、
 その背の過ぎた場所を見つめて。]*
 

[このままずっと一緒にいたい。
 共に迎えた朝日の下で、
 君の顔はどんな色に染まるのか
 もっと知りたい気持ちは、ある。
 けど、嫁入り前のお嬢さんと
 会ったその日に共寝をしけこむような
 不埒を働くつもりもなく。

 時間はかかっても、
 ちゃんと納得してもらえるよう
 努力するのも大事なことか。]


  おい、あんまり虐めたらダメだぜ。


[くすり、と笑みを漏らして
 抱き寄せる腕へ最後にく、と力を込めて
 それから、離す。]

[クラブに行くのか、
 はたまた流行りのスイーツの店か、
 次の話をしようと思ったが
 飛鳥の好きな店を聞けば
 きょとん、と目を丸くして……
 それから、くすりと笑みを漏らす。]


  そいつァ、光栄。


[触れるだけ口付けを追って
 もう一度、抱きすくめて此方からキスを送る。]


  
……愛してる。



[ありがとう、とか、待ってる、とか
 言いたいことは沢山あったが、
 そういうのを全部ひっくるめて囁いた。

 そうして改めてバイクに跨り直すと
 俺は西園寺邸を跡にする。]

[ケーキ用プレートの納品に
 店を訪れた時、紅茶専門店の店主は
 カウンターの奥からにじり寄ってきた。]


  「ねえ、うまくいった?
   カップケーキ、どうだった?」


[眼鏡の奥から好奇心を覗かせてくるのを
 はてさて、どう答えたものか。
 多分恋の行方が気になっているのと
 自分の手製のスイーツがそれに一役買えたのと
 どっちも気になってる、って顔。

 「まあまあ、ってやつだ」と答えると
 「ああ!惨敗じゃなかったんだ!」なんて
 ぴょんぴょん跳ねながら嫌なことを言う。

 まだ、付き合い始めて、キスをして
 抱き合っただけ。それも、一日だけ。
 年月を重ねてそれが確固たるものになったら
 今度はちゃんと、飛鳥と一緒に来ようと思う。]

[俺の頭を読んだか知らないが
 店主はにっと笑ってみせて]


  「君がいいと思った人だもの。
   僕はその人が男の人だろうと、
   どこかの国の王女様だろうと、
   どんな人だって祝福するよ」


[そう、笑って見せたのだった。]



   いじめるなんて、人聞き悪い。

   …そんなことしないよ、
   わたしの道を、認めてもらうだけ。


[そういって、もう一度抱擁を交わし、
 離れた熱に少しだけ、寂しさを覚えた。

 わたしの好きな店なんて、決まりきってる。
 だって、そこにはわたしのW何より好きなものW
 がいつだってあるんだから。

 本心を当たり前に告げただけなのに、
 彼が目を丸くして、それから笑うから、
 わたしも微笑みかけて、贈った口づけを
 追うようにまたくっつく体。

 落とされる愛の言葉にふわ、と体温が
 一度上がるような気がした。
 にへら、と微笑みかけて。]
 




   ───わたしも


[と返せば、幸福感に全身が
 満たされるのがわかった。

 どうしよう、幸せ。
 世界中に叫んでまわりたいくらい。
 この人、わたしの大好きな人でね、
 それでね、わたしの恋人なんだよって。
 諦めなくて、よかった。
 ちゃんと、あなたに向き合って、それで、
 真っ直ぐにあなただけを見つめて、
 突き進んできてよかった。
 そう心の中で噛み締めながら、
 今日はその背を見送るのです。]

 

【人】 西園寺 飛鳥





   こーんにーちはっ


[いつもより少し跳ねた声は、
 綻んだ笑みと共に蔵と同じ匂いの空間に響く。

 また冷やかし客って言われるかな?
 なんて思いながら、足を踏み入れれば、
 にっこり笑って「颯介さん」って
 確認するみたいに呼んでみるの。

 あの日のことが、夢じゃなかったって
 ほんとに、恋人になったんだって、
 確かめるみたいに。]
 
(18) 2021/05/27(Thu) 20:04:46

【人】 西園寺 飛鳥




   今日は紅茶、持ってきたんだけど…


[そう言ってそちらに近づいて行って。
 いつもより、少しだけ近い位置。
 一度、あなたの隣に腰掛けて、微笑みかけ。
 それから、そっと目を閉じてみるの。
 口づけが降ってこないなら、薄く目を開けて、
 窺うように上目遣い。それから、
 「キス、しないの?」って聞いてみるの。

 してくれないなら、私ならするまでのこと。
 ぴったりくっついて、ぎゅ、と力を込めて
 「今日は遅くなるって言ってあるから、
  ゆっくりしていっていい?」と尋ねた。

 店が開いてるのはわかってる。
 それを邪魔するつもりはないから、
 ただあなたと過ごしたいだけ。
 大人しくしてるし、店番だってしたっていい。
 許可してくれるなら、にっこり笑って、
 紅茶をやっと、手渡すだろう。]
 
(19) 2021/05/27(Thu) 20:05:01

【人】 西園寺 飛鳥



[出てきたパウンドケーキに目が輝く。
 それを見つめて、おいしそう、と呟いて
 少しばかり気になっていたことを尋ねた。]



   …ね、颯介さん、このいつも出してくれる
   お菓子って………どこの、なの?
   貰い物って言ってたけど…まさか…


[とはいいつつも女の影に関しては気にしない。
 …まあ、全然気にならないわけではない。
 こんなふうに美味しいお菓子をくれるのが、
 ほんとに女性なら彼に気があるとしか思えないから。
 ───でも、愛してるって言われたし。
 わたしは、誰が相手でも負ける気はないから。
 だから、そこのところを気にしてくよくよ
 するようなことはしないのだ。

 尋ねながら、紅茶を一口啜る。
 こくりと飲み込んで、もう一度そちらを見た。]*

 
(20) 2021/05/27(Thu) 20:05:54

【人】 西園寺 飛鳥


[それはそれは小さな声で呼ばれた名前に、
 意地悪く笑って「ん?なんて言ったの?」
 と問い返してみたり。
 もう一回ちゃんと呼んでくれるまで、
 何度だって聞いてしまう。

 キスのおねだりは許可されない。
 わたしの方からしようとしたって、
 それは止められてしまった。

 ちょっとキスするくらいいいじゃんって
 紅だってちゃんと拭うからいいじゃんって
 そう言いたかったけれど、
 そういうわけにもいかないのが大人の世界と
 いうものなのだろう。
 面倒な女になりたくない。
 やっぱり合わないって拒絶されたくない。
 あなたに見合うためなら、少しの我慢くらい
 わたしはできるってところを見せるだろう。]

 
(33) 2021/05/28(Fri) 8:59:19

【人】 西園寺 飛鳥


[───ただ。
 出されたパウンドケーキがあまりに美味しそうで
 そういえばいつものW貰い物のお菓子Wの
 出所っていったいどこなのだろう、
 そう考え始めて仕舞えばだんだんと
 これがどういう意図で贈られたものなのか
 なんてところまで気になり始めて。

 甘いもの焼くタマじゃないから、
 あなたが、焼いたんじゃないから、
 だから余計に気になるんだってば!

 知り合いの店だと言われたから、
 目をすう、と細めて「どこ?」と聞いたのに
 そのうちな、なんて雑に流されていくんだもの。
 一層目は細まって、細まって。]
 
(34) 2021/05/28(Fri) 8:59:35

【人】 西園寺 飛鳥




   女のひと?


[と今度ははっきりと尋ねた。
 女のひとなら、恋人がいるって言ってね、
 ちゃんと伝えておいてよ、って続けて。
 彼がそっちにふらふら行ってしまう心配を
 してるわけじゃない。ただ、教えてくれないのは
 ちょっとだけ不満だったから、そんなふうに
 牽制をしてしまうのだ。]

 
(35) 2021/05/28(Fri) 8:59:57

【人】 西園寺 飛鳥



[───まあ、それが、男の人で、
 彼の友人で、しかもわたしとの仲を応援
 してくれていた、なんて知ったら
 驚いて、それからくしゃっと笑うだろう。
 ちょっと、照れ隠しみたいに。]
 
(36) 2021/05/28(Fri) 9:00:15

【人】 西園寺 飛鳥




   言ってないけど…


[お付き合いの話もまだしてないのに、そんなこと
 言ったらおばあさまが卒倒しそうだな、と
 頷いて、また一口紅茶を啜る。
 そう、まだ話してない。
 彼が、話してくれると思ったから。
 …でもそれってつまり、わたしと一生もう
 離れる気がないってことだよね。
 …つまり、結婚も考えてくれてるってことだよね。
 そう思えば、みるみるうちに体が
 喜びとときめきに溢れるのがわかった。

 ちなみに、遅くなる、といっておいて
 なにか詮索されたり問い詰められたりするのは
 とうの昔になくなった。
 たまに兄が半泣きで「何時に帰ってくる?」と連絡を
 寄越すときがあるけれど、あまり言うと
 わたしに嫌われるかもしれない、と
 理解しているらしく、10回中9回は我慢していると
 母が言っていたっけ。]

 
(37) 2021/05/28(Fri) 9:00:33

【人】 西園寺 飛鳥



[彼の言葉が聞こえて、そちらに目をやる。
 それからふ、と噴き出して。]


   商売人とは思えないセリフ。


[と笑いながら少し彼の方によって、
 だけどくっつきすぎだからやっぱり離れて。
 もどかしい距離感に、どこまでなら許されるのか
 わからないこの線引きに]


   …ほんと、はやく閉店時間にならないかな


[って彼に倣ってついこぼしてしまうの。]*
 
 
(38) 2021/05/28(Fri) 9:00:58

【人】 西園寺 飛鳥


 
[嬉しい、だって。
 やきもち、焼いたって認めたら。
 突かれた頬をそっと覆って、にっこり笑って
 だけど、我慢できなくてにへら、と緩んだ。]


   ん。だいじょーぶ、信じてるから。


[そう、もしもね、お菓子くれてたのが女の人でも
 心配してるわけじゃなくて、
 信頼してないんじゃなくて、
 ただ、彼に気があるなら、諦めてもらわなきゃ
 だってわたしがいるんだからって、
 そういう意味だったんだけど───まあいっか。
 額に落とされた口づけに、視線を向けて、
 それからそっと背を伸ばして、その頬に
 触れるだけの口づけを送る。]



   がまん、 ね


[と目を細めて、少しだけ距離を取ったのに
 今度はまた彼から引き寄せられるから、
 ここまではいいんだ、と笑んで体を預けた。]
 
(55) 2021/05/28(Fri) 22:27:21

【人】 西園寺 飛鳥




   先生?


[提案にきょと、とそちらを見つめて、
 それから指さされた場所に目を移す。
 そうして始まるのは、プロポーズの歴史。
 え?どういうこと?って疑問符を浮かべる
 頭の中とは裏腹に、心はひどく躍ってやまない。
 だって、プロポーズの話だよ?
 ───わたしと、結婚してくれるの?
 
 だから、彼がこちらを見たとき、わたしの目は
 きっときらっきらに輝いていたに違いない。
 江戸時代のプロポーズ。
 古代ギリシアのプロポーズ。
 それぞれを私と彼で想像してみるけれど、
 なんだってロマンチックでとっても素敵。
 平安時代の和歌を介してのプロポーズもいい。]

 
(56) 2021/05/28(Fri) 22:27:36

【人】 西園寺 飛鳥



[わたしは歌は詠めないけれど、
 知ってる中から彼に送るのならば、
 「筑波嶺の 峰より落つる 男女川
  恋ぞ積もりて 淵となりぬる」がいいな、
 と思いながらまっすぐ見つめる。

 すると、問題、と置かれて。
 少しだけ腰を立たせて背筋を伸ばした。]



   古墳時代…なんだろ…


[獲物を献上するとか。…いやそれって昔すぎ?
 歌を歌う!とか…平安時代に引っ張られすぎか。
 だけど、スマートフォンで調べてしまうのは
 あまりに味気ないから嫌で。
 ヒントは?なんて言いながら、彼と共に、
 時間を過ごしていた。]
 
(57) 2021/05/28(Fri) 22:27:55

【人】 西園寺 飛鳥


[閉店時間まであと10分、というところで
 彼の腰がゆっくり上がる。
 どこかにいくのかな、と思ってその背を
 一度見送ろうとすると、そのまま閉店準備に
 入ってしまうものだから、面食らった。]


   悪い大人だ


[と口端を上げて近づいていけば、裏手に回るように
 言われるから、その通り、そちらまで歩いていく。
 するとそこには彼の愛機が佇んでいた。

 素敵な誘いにふわ、と綻んだ顔。
 こくこくと数度頷いて、ヘルメットを被れば、
 あの人同じように彼の背中にぴったり寄り添って
 風を受けながら、夕焼けに染まる街の中を
 駆け抜けていくだろう。

 ぎゅ、と力を込めた腕。
 なんとなく、あの日よりも彼のことが
 近く感じられる気がして、愛おしさが増した。]*

 
(58) 2021/05/28(Fri) 22:28:09

【人】 西園寺 飛鳥


[出してみる答えは全然当たらなくて
 普通にしてること…って言われて]


   あ、キス、とか!


[といったら違うって顔をされてしまっただろうか。
 そうしたら唇を尖らせて、「うーん」ってまた
 唸って困ったように首を傾げるのだ。
 そうしたら彼が、答えを教えてくれるから。
 キョトンとして、それから、じゃあもう、
 私たち結婚の約束してるみたいなこと?って
 微笑みかけてみたら、彼の言葉に、また、
 呼ばれた名前に、触れた指先に───]

 
(71) 2021/05/29(Sat) 18:07:23

【人】 西園寺 飛鳥



[バイクで街を抜けていけば、
 髪が靡いてふわふわ、宙に浮く。
 ぎゅっと力を込めた腕。
 高台の公園に滑り込んだ車体が止まれば、
 そっと緩めて、乱れた髪を手櫛で直した。
 
 ヘルメットを外して手渡したあとは、
 彼の隣にそっと寄り添い、その手を握る。
 ちら、と見あげて口許を緩めれば]


   …うん、でも、クラブに颯介さん
   連れてくのはやだなあ…
   ナンパされそうだもん。


[彼に連れられて、紫陽花の小路を歩いていく。
 夕暮れに染まった空に、薄く紫がかかって
 星が瞬くのがみえる。]

 
(72) 2021/05/29(Sat) 18:08:00

【人】 西園寺 飛鳥


[腕を絡めてまたくっついて、見上げて、
 キスしたいなあってその唇に目を落とす。
 けど、今そんなおねだりをしたら、
 呆れられないだろうかと思うわたしは、
 きっと前よりもずっと臆病になってる。]



   ──颯介さん


[名前を呼ぶ。]



   颯介さん


[もう一回。
 別に、なにか言いたいことがあるわけじゃない。
 ただ、呼びたいだけ。
 さっきの話を聞いて、もっともっと
 特別に思えるようになったあなたの名前を。]

 
(73) 2021/05/29(Sat) 18:08:20

【人】 西園寺 飛鳥



   颯介さんっ


[にっこり笑って、噛み締めるの。
 この喜びを、幸せを。]*

 
(74) 2021/05/29(Sat) 18:08:55

【人】 西園寺 飛鳥


[わたしにとっての好きをもっと知りたい、
 そう言ってくれるのが嬉しい。
 彼にとってわたしが、必要な存在として
 どんどん大きくなっていくような気がして。
 
 もっともっと、好きになって欲しい。
 わたしの中があなたで埋め尽くされているのと
 同じくらい、もっと。
 そう願いを込めて、もう一回。もう一回。
 繰り返していくW愛の言葉Wが受け取られると、
 わたしは柔らかく微笑みを向けるのだ。]

 
(95) 2021/05/30(Sun) 6:49:43

【人】 西園寺 飛鳥



[やがて、紫陽花のゲートを抜けていった先に
 広がる広場の向こう側。]



    わ、 夜景…!


[そう思わず声を上げて、駆けて行く。
 きらきら、夜空の星々が落ちてきたみたいに、
 輝く地上を見渡していると、
 隣に来てくれた彼の手をまた取った。
 ね、きれい、と落とすとその指先が手のひらを
 滑るから、びく、っとまた肩を跳ねさせて。]


   っ…びっくり、  …した…


[引き寄せられて、抱きしめられる。
 その体温に包まれて、思わず互いの間に
 置いていた腕を抜いて、背に回せば
 体がピッタリとくっついた。
 全身から響いて伝わってくる言葉。]

 
(96) 2021/05/30(Sun) 6:50:00

【人】 西園寺 飛鳥


[聞いてくれ、と言われればこくりと一つ
 頷いて、黙ってその胸板に顔を埋める、
 そうしたら、届く愛の言葉は───
 私がずっと、夢見ていた事柄で。
 共に生きたいと、2人で手を取り合って、
 未来を歩んでいきたいと、そう言われることが
 こんなにも嬉しいなんて。

 じわ、と心に沁みる。
 顔を、体を、あなたとの距離を、
 今、もうあと1ミリでも近づけたくて
 ぎゅうっと腕の力を強めた。]


   ───うん


[こく、と頷けば、もう一回。
 更にもう一回、と何度だってうなずく。
 だって、それ以外の返事はない。
 あなたと共に生きていけるならば、
 この先どんな困難が立ち塞がろうと絶対に
 離すことはしないと誓った。]

 
(97) 2021/05/30(Sun) 6:50:20

【人】 西園寺 飛鳥



[電撃がね、びりびりって通ったの。
 あなたに初めて会ったあの日に。
 目があった瞬間に、あなたに決めたの。
 どれだけ臆病だったとしても、怖がりだったとしても
 わたしにとってあなたは絶対で、
 あなた以外はいらない、っていえる。

 あなたを振り向かせてみせるって
 そう決めてたのに、どこかで少しだけ
 わたしも臆病になってしまっていた。
 でもね、歩み寄ってくれたから。
 それがたまらなく嬉しかったの。

 わたしの道を汚してしまうだとか
 狭めてしまうだとか、暗くしてしまうだとか、
 ほんとは今も彼は怖がってるのかもしれない。

 それでも、その恐怖よりもわたしを
 選んでくれた、それが事実だから。]

 
(98) 2021/05/30(Sun) 6:50:35

【人】 西園寺 飛鳥


[そう彼の服に吸わせて、力を込める。

 あなたの道もわたしが一緒に照らす。

 だから、怖がらないでほしい。
 わたしは、わたしの好きなものを、
 好きな人を、生涯を共にする人を、
 すべてを、捧げる人を

 自分自身の目で選んで、手を取った。
 それを、わたしを、信じてほしい。
 少しだけ離れて、見上げる。
 微笑みを浮かべて、背伸びをしたら、
 触れるだけの口づけを、誓いにかえて。]


   ───愛してる


[甘い声で、柔く微笑むのだ。]**
(99) 2021/05/30(Sun) 6:51:42
 




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