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【人】 世界の中心 アーサー( ──その後特別大きな騒ぎもなく、 リドルと、かの“おひめさま”の父親の間で 問題のある程度は解決されたと言う。 障りがあったものと言えば、 おひめさまが“部屋にいたもの”を完全に勘違いし、 ──小間使いなんかと! とか叫んだおかげで 暫く“そういう”噂が立ったことと。 久しぶりに外に出た為に 次の日まで使い物にならなかった主人が、 懲りることなく“小間使い”に膝枕を要求するなど… ) (212) 2020/05/23(Sat) 19:33:28 |
【人】 世界の中心 アーサー* [ ここ数日の、日記を書いている。 全くだらしの無いもので、 たった一回の外出と交渉ですっかりやる気を無くし、 日記のみならず“リドル”としての仕事も 数日分溜めていた。 その仕事を、総て片付けた後の話。 この間彼女にひとつの依頼もしていた筈だ。 それだから過去を思い出しつ、暗い窓の外を見ている。] (214) 2020/05/23(Sat) 19:35:19 |
【人】 世界の中心 アーサー[ 執務室の上には、紅色の満ちたワイングラス。 薔薇に、葡萄の香りが混ざる。 犬の足音に聞き耳を立てながら、 細いステムをそっと 摘み上げた。**] (215) 2020/05/23(Sat) 19:37:25 |
【人】 世界の中心 アーサー──“彼処”の男を。 久しぶりに仰々しく用意された紙には、 整った文字と簡潔な“依頼”。 結局この紙なんか、 灰も残さぬよう焼べられるのだけれど。 形に拘るおとこだった。 理由なんか、それだけ。 (274) 2020/05/24(Sun) 1:37:55 |
【人】 世界の中心 アーサー[ 暖炉の火を顔に受け、 揺れる炎を薔薇色に宿す。 ──この時期に暖炉は暑過ぎる。 誰に向けるわけでない薄いだけの笑みを、 唯、 炎に向けていた。 此処最近の、 ひとりの記憶。*] (276) 2020/05/24(Sun) 1:41:36 |
【人】 世界の中心 アーサー[ リドルであった父は、若くして死んでいる。 二十年は昔、現リドルの僕はまだ10に満たない頃、 リドルの名を継いでいた。] (277) 2020/05/24(Sun) 1:43:07 |
【人】 世界の中心 アーサー* [ ある日の日記は、随分荒れている。 庭で見つけた、“今にも堕ちてしまいそうな” おんなの姿をした、 …… 先ず駆け寄ったのが、執事で良かったと思う。 もし、最初に見つけていたなら、 すぐに医者を呼ぶなんて気の利いたことは 出来なかったろうし、 握り込んだ銀色を、“何処”に向けていたやら。] (282) 2020/05/24(Sun) 1:45:21 |
【人】 世界の中心 アーサー[ 文字の最後に強く滲む、インク溜まりを作っていた。 …手が止まっていたようだった。 このまま閉じては次にも染みてしまう。 繊維を辿るよに広がっていく紺色を見下ろし、 再度、己の記した“日記”を読んでいる。 普段よりもずっと読みにくい、崩れた字体だ。 日記なんて読ませるものではないとは思うけれど… たったひとことまで、遡り、 指先で筆跡を辿る。] (284) 2020/05/24(Sun) 1:46:52 |
【人】 世界の中心 アーサー[ 咥内にアルコールの香が広がる。 此処の所、ブランデーの消費が増えていた。 今日は…誰が気を使ったのだか、赤色の其れ。 ──どうにも 味がしていない。 数日前から小食を極めている。 つまらない、 退屈だ、 ……心配? たぶん、そう言ったこと。] (285) 2020/05/24(Sun) 1:47:26 |
【人】 世界の中心 アーサー[ 犬の声に、再度瞳を上げた。 薄く開いた窓に、欠けた月のみ映り、 僅かに掻き混ぜられる室内の空気に、 燭台の灯りが揺らいでいる。 …悪くない、夜だと思った。今日ばかりは!] (286) 2020/05/24(Sun) 1:48:29 |
【人】 世界の中心 アーサー[ 窓の向こう、犬だけじゃあない姿に 何故だか先ず、吐息混じりの感嘆ばかりが漏れ “いつも”の言葉を紡ぐまで、すこしの間。 執務机を離れ、窓まで蹌踉るよな足取りで そんなに遠くじゃないというのに、 窓ひとつ隔てた彼方は、随分と“向こう”に思えた。] (289) 2020/05/24(Sun) 1:49:53 |
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