98 【身内】狂花監獄BarreNwort【R18G】
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視点:人 狼 墓 恋 少 霊 九 全 管
「
あ お ー ん …
」
殺せたんだ……と思うと同時に噛み先アレにして悪かったな……の顔。個人的な理由で犠牲者なしにしたのでちょっと反省中のラノベフォント。
「――――――……」
言葉にできない遠吠えを発する。
戦闘の中で、対話の果てに、己の在り方を見失い。
独りはぐれた狼が、声なき声で鳴く。
ここにいるのだと。私を見つけてほしいと。
離れていてもそばに在ると知っていて、それでも求めてしまいたくなるほどの痛みに狼は鳴いた。
ああ、けれど。
こんな自分を見ないでほしいから。
どうか君は、君の役目を。
「誰を殺そうか」
結局のところ続いてしまうのだ。殺すのが嫌になろうとも。殺されるのが嫌になろうとも。
「……もうチャンドラを殺す理由はない。トムに殺したい者がいるなら聞き届けたい、とセファーは思う。セファー自身を殺せはしないところだけ、惜しく思うが……」
狼は、特に希望がないようであれば18時頃に一人選出するつもりでいる。
「チャンドラ殿殺したくないなら、か……
私欲でいいならイクリールかなあ。
同族を食らった血は美味しいのか
という興味はある。個人的にはルヴァもいいけど、さすがに懲りずに立ち向かったら永遠に有給なくなりそう」
ぷー、と煙草の煙を吐いた。
有給は欲しい。
「チャンドラは既に一度ゲームから除外されているし、
オリオンから凄まじい圧を感じるからな
」
じ……と見るしぐさ。大丈夫だから安心してほしい。
「これまでのほとんどをセファーの私欲に付き合わせたからな、セファーはトムの私欲を肯定したい。襲撃もトムに任せよう。
……さて、そうなると処刑がイクリールに行くのはあまり都合が良くない気もするが。どこに入れるかな……」
「……煙草、吸うのか。初めて見た」
あと有給はマジであったほうがいい。ので立ち向かう分には止めないけど無理はしないでほしい。休みは大事。
「吸うよ。ハーブだけど」
いわゆる植物としてのタバコではない。
「タールトカナシ、ノンハイガンとかそのへん。
昔は色々吸ってた。昔を思い出したから、久しぶりに」
「なるほど、……セファーはトムの昔をまだ聞いたことがなかったな」
囚人同士は囚人同士の傷のなめ合いに近いそれで、結果として過去に触れることも多かったが。あなたとはそういう言葉を交わしたことはなかったな、とこの狼は思う。
「トム、……ここで聞くのは野暮か、」
「……イクリール噛みで問題なさそうだな。セファーは今回手出しをしない、好きなようにするといい」
この狼は襲撃先を設定しない。全てはあなたに任せようという心持ちだ。
「端的に言えば、影武者みたいなものだね。
外から有能な人物を当主に迎えるために、『最初から血族でしたよ』ってアリバイを作るための直系の長男が私。私の価値は姿で、顔。だからルヴァを受け入れた。私の顔を用いた天才、という存在を作るための私だから」
10秒足らずの過去だ。
遂げてしまえば、どうでもいい話。自分の拘りも何も。
「天才を迎えたからね、当然反撃されて生家は滅んで、私の役目は宙に浮いた。だからまあ、今回は、心残りを遂げることができて。久々にすっきりしてるかな」
貴族にはそれなりに良くある秘密。
口止めは他の貴族に口酸っぱく言われていたけれど、位を返上した今となっては矜持を守る必要性は自分の心理にしかなかった。
「野暮というよりは、これは舞台のパンフレットかな」
「……何もかもが物で目的じゃないか、人でさえも……ああ、私が言えたことではない、か。私のやっていたこともそうだったな」
己が色んな人と言葉を交わし知ってきた中にその要素が全くなかったわけではないことに、男は死を経て漸く思い至ったらしい。本人に自覚がない故に厄介だったそれを見て、あなたの言っていた『視界に映さない』という言葉は間違っていなかったのだと思う。
「あなたという存在の価値は他の何にも代え難いだろうに。それと……舞台のパンフレットとあなたがそう形容するこれが、私はずっと欲しかったように思う。……ありがとう、知る権利をくれて」
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