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【人】 火澄 七瀬「 …… お父さんとお母さんが死んでからですよ。 」 次第に勢いを増した雨粒が、窓を叩きます。 換気は必要なかったかもしれません。 それでも私は、テラスへ通じる両開きの扉を ひとつだけ開け放ちました。 蝶番の音と共に、外へと視線を向けたなら。 少しだけ湿った空気の先に、 大きな桜の木が立っていました。 (7) 2023/05/08(Mon) 17:14:40 |
【人】 火澄 七瀬「 …… たとえ望んでいなくても。 やらなければならないこともあるんです。 」 妹からの問いに対して。 落ちて土にまみれるだけの花弁を背にしながら。 私は静かに微笑みました。** (8) 2023/05/08(Mon) 17:15:45 |
【人】 水面 禎光思い出作りだと言うのなら ─── 人気スポットに行くよりも、 些細な相合傘の方が記憶に残るんじゃないか ? そんな僕の思いつきは、病弱キャラであるが故に お節介とまではきっと思われないだろう。 心まで離れていくわけじゃないんだ、って 彼女達の少し後ろから、肩を寄せ合う姿を眺めつつ 僕は目的の場所までついていく。 (9) 2023/05/08(Mon) 22:48:26 |
【人】 水面 禎光僕は、基本的にテレビを観ない。 入院生活の多かった身としては 数少ない娯楽のひとつだけど ─── 病院では専用のカードを買わないと観られなかったんだ。 両親もカードを切らす度に補充してくれるから なんだか途中から申し訳なくなってきちゃって。 ───それに、読書の方が好きだった。 もう退院できないんじゃないかって思いながら 毎回入院していたから 外の世界をモニター越しに見せつけられるより 頭の中で想像している方が まだ心が穏やかでいられた。 (10) 2023/05/08(Mon) 22:48:30 |
【人】 水面 禎光つまりは ─── テレビも観なければ、天気予報も調べない。 荷物は最小限にしたいから、折りたたみ傘も持ち歩かない。 学校に置き傘をしていたら、雨が降った日に盗られてた。 晴れの日に戻ってきてたけど 雨の日にまた無くなってた。 そんな僕が、然るべきときに傘を持ってないのは 昔からよく或る事で。 そういえば ───あの日もこんな曇天だったな、と 記憶に色づけされた昔の空と 今の空を重ね合わせた。 (11) 2023/05/08(Mon) 22:48:33 |
【人】 水面 禎光 ***** 「 うん、今から帰るとこ ・・ 傘は持ってきてないなぁ …… 瀬名は ? 」 或る放課後。委員会の話し合いが無駄に長引き 帰路に着こうと昇降口に向かった先で七瀬に出会った。 まるで瀬名のような口調に『 おや? 』と思った。 束の間だけ、だけど。 瀬名は外見を七瀬に合わせて、 七瀬は口調を瀬名に合わせて。 似た者同士 ─── 双子なんだから それはそうか。 (12) 2023/05/08(Mon) 22:48:37 |
【人】 水面 禎光服装や口調は、いわば彼女達の" 名札 "だろう 他者が見分けをしやすくする為の ──── 僕が彼女達を間違えないのは もっと別のところで違いを感じているから。 姉として産まれた双子の片割れと 妹として産まれた双子の片割れ、とでも言うのかな 滲み出るオーラというか 眼差しというか 感覚的なモノだから、言語化するのは難しいね。 (13) 2023/05/08(Mon) 22:48:41 |
【人】 水面 禎光尤も ──── 僕が知っているのは当然、 僕と出会ってからの彼女達であって。 其れ以前はどうだったか、なんて事は知らないんだけどね。 (14) 2023/05/08(Mon) 22:48:43 |
【人】 水面 禎光ともあれ、少し面白そうだったので 僕は間違えたフリをしてみる事にした。 いつも呆れ顔で見守り体勢の七瀬にしては こういうイタズラは珍しいと思ったから。 まあ、イタズラでもなく 本来の口調に戻っただけなのかもしれないけどね。 ***** (15) 2023/05/08(Mon) 22:48:47 |
【人】 水面 禎光さて、古びた一軒家 ───知らない人の家にやってきた。 僕は、鍵を取り出す動作には気付かなかったけれど 傘立てに傘を入れたり、換気の為だろうか 窓を開けたり。 きょろきょろと部屋を見回すだけの僕と比べて 機敏に思える七瀬の動作は" 知っている人の家 "に思えた。 それから瀬名が七瀬に進路の事を問いだせば 僕は彼女達から少し離れ、別の部屋へと足を向ける。 七瀬の進路 ─── 全寮制の高校。 普段通り" 相談 "だったなら僕も瀬名も反対したんだろう。 だから、少数派が意見を通す為の手段。 相談ではなく" 決定 "してしまったのだろうか。 (16) 2023/05/08(Mon) 22:48:50 |
【人】 水面 禎光もちろん、何でも僕たちだけで決められる訳では無く。 今回なんて特に" 家庭の事情 "が絡んでくる。 だからこそ─── 僕よりも瀬名の方が いきなり聞かされたショックが大きいのは想像に易い。 そういう理由で会話に混ざらず、少し離れたのだけど。 「 ……… なんだろう、日記 ? 」 書斎らしき部屋に入ると まず本を眺め、 それから窓際に置かれた重厚な机に視線を移す。 その上に並べられた数冊の本 ──── ひとつを手に取り開いてみると どうやら、それは日記のようだった。** (17) 2023/05/08(Mon) 22:48:55 |
【人】 【NPC】ヒトデ姫 スピカ「 ひーとーでーのーうーたーがーー ♪ ♪♪ きーこーえーてーーくーるーよー ! ΨλДщ〇・Θη! Θη! ♪♪ 」 (18) 2023/05/08(Mon) 23:18:58 |
【人】 【NPC】ヒトデ姫 スピカご機嫌で歌ってたら、ちょうど雨が降ってきたの。 小腹が空いてきたコトだし、 私は ひと狩りしようかと外に出たわ。 玄関?鍵??──なんで私が人間の出入口を使うのよ。 ふつーに、換気扇のスキマから出たわよ! こうやって、グニャって それからグニグニってやれば 誰でも出入りできるでしょ、常識よ。 ……え?出来ないの?? ニンゲンって偉そうなのに本当に惰弱よね!! あ、でも分裂は出来るようになったのかしら? ちょうど すれ違ったニンゲンが同じ顔してたわ! (19) 2023/05/08(Mon) 23:19:01 |
【人】 火澄 七瀬「 仕方ないな。 なら、私の傘に入れてあげるよ。 濡れて体調崩したら大変だからね。 」 なら、ここでネタバラシをするべきだったのです。 しかし思いのほか心に掛かった負荷。 そちらに気を取られてしまった私は、 別の言葉を口にすると、 彼の前に自身の薄紅色の傘を広げました。 ***** (24) 2023/05/09(Tue) 17:20:59 |
【人】 火澄 七瀬日記にしたってそうです。 幾ら人の目に触れない場所にあるとはいえ、 あんなものを記すべきではありません。 残したところで、良いことなんて何ひとつないのに。 私は自身の罪を告白せずにはいられなかったのです。 あの日も、雨が降っていました。 (26) 2023/05/09(Tue) 17:37:32 |
【人】 火澄 瀬名テラスへ通じる扉がひとつ開けられると、 湿った匂いと肌寒い風が流れ込みました。 七瀬の視線の先を追うと満開には少し早い、 大きな桜の木が目に入りました。 半年前の両親の死。 まだ死自体をうまく受け止め切れていない私でも 先のこと、考えなかったわけではないです。 だけど …… (31) 2023/05/09(Tue) 23:15:14 |
【人】 火澄 瀬名「 ……やっぱり、望んでいないことなんだ。 やらなくちゃならないことって、なに? どうしてそんな風に決めるの?せめて …… 」 (32) 2023/05/09(Tue) 23:15:17 |
【人】 火澄 瀬名私が言い淀む間に、七瀬からも問いかけが。 扉を開けたことで強くなった雨音が煩くて。 でもそれがなければ、乾いた空気の流れる沈黙は もっと重く感じていたかもしれません。 「 チョコレート、あげたよ。 七瀬とは作れなかったけど、 他の日に作って、渡したよ。毎年みたいに。 」 バレンタインなんて幼馴染の間では、 年にいくつかある恒例行事のひとつに過ぎないでしょう? (34) 2023/05/09(Tue) 23:15:24 |
【人】 火澄 瀬名「 ……… なんでそんなこと聞くの? 」 『 禎光のこと、好きだよ。幼馴染として。 』 いつも通りそんな風に答えれば良かっただけなのに、 今日は突っかかってしまう気持ちが止められませんでした。 「 七瀬は好きなの?禎光のこと。 」 (35) 2023/05/09(Tue) 23:21:07 |
【人】 火澄 瀬名「 …… 付き合っちゃえばいいじゃん。 七瀬と禎光。 私が禎光に言ってあげようか? エンキョリレンアイってやつになるのか。 大変だね。 それなら寮に引っ越すまで、 沢山一緒に遊ばなきゃ。 あ、もしかして今日も私って邪魔だった? そっかぁ …… ごめんね、 お姉ちゃん 」 七瀬がお姉ちゃんの顔をすることを嫌がる私が、 お姉ちゃんと呼ぶ時は決まって、 ────…… ** (36) 2023/05/09(Tue) 23:23:40 |
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