71 【R18】歪んだ愛の形【身内】
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[ 家庭訪問は入学したての頃に1回だけだったが、
当たり前に家にも、人にも、保護者にも、
担任教師は驚いていたと彼は記憶している。
入り口すぐにある応接間に
彼女と2人でその人を通して話をした時
少し高圧的になっていないかと
気にはしていたが、あまり何も考えずに
接したことだろう。
三者面談の時に彼女の評価を聞くと
優等生として評価されていて、
毎回ホッとしていたことを覚えている。
進路の話も、彼女の目指すところを
サポートするだけ、と話をして
三者面談は彼女の学校での生活を
教えてもらう場所にしていた彼。 ]
僕の服装なんて、興味を持たれない。
君の晴れ姿を、楽しみにしているんだよ。
……──────忘れてた。
理子、大学の入学式が終わったら
反物を見よう。成人式の準備だ。
[ 晴れ姿という言葉を口にして、
成人式のことを思い出してよかった。
成人式が終われば、しっかりと
結婚式の話に腰を据えられそうな気がする。
というよりも、母親に叱られるところだった。
十分に体力を使わせてしまったせいか
彼女は疲れてぐっすりと眠ってしまう。
彼のメイドに、彼女の体を拭いて
服を着せるように指示を出し、
彼も部屋に戻ってその夜は終わりを迎えた。 ]
────────────
直哉も行きたいって言わないから、
行ったことないね。
いつも休みは海外に行ってたし。
[ 直哉というのは、彼の友人にして
彼のメイドの嫁ぎ先になる場所。
メイドがずっとそばにいるのもあって
あんまり彼としても外に出る理由もなく。
外に出るくらいなら、
クレー射撃やテニスなどに
没頭している方が彼にとっては楽しかった。
はしゃいだ声が可愛くて、
彼はそっと彼女の髪を撫でながら
優先順位をつけていくのを眺めて。 ]*
あー…あの子アレルギーとかないかな。
[
タバコを吸い終わって、
忙しくなる前のカフェに食べ物を買いに来た。
あったら大変だな、と思いつつ
あまり何も考えずにチキンのサンドイッチと
たまごサンドイッチを買った彼。
ドリンクはミニバーのやつでいいか、と
体を少し動かして部屋に戻ると、
事件が起きていた、ようにみえた。
]
わんこちゃん?!
どうしたの、何かあった??
[
床に散らばっている資料のようなものを
回収して束ねれば、1番上には彼女の本名が。
なんて素敵な名前だろう。
彼の頭の中に浮かんだ最初の感想。
羨ましいとさえ思ってしまった。
彼女は泣いていて、サンドイッチを
潰さないようにテーブルに置けば
資料を渡して彼女を抱きしめ、
落ち着かせるように頭を撫でてあげる。
]
ワンコちゃん、名前素敵だね。
…ぼくとは大違いだ。
*
[ 真剣だという気持ちが伝わったのか
いつもの柔和そうな顔に戻っていくの見て
ほっと一安心した。
提示された条件を聞いていく。
全部妥当だな、と思えるものばかり。
二部屋って言われるのも当然だろう。
ベッドは別にするに決まってるし
てか別じゃないと色んな意味で
寝れなくなりそうで困る。 ]
ん、よかった。俺も嬉しい。
バイトの日は料理とか任せたいな。
[ 抱きついてきたまりんの髪をなでつつ
晩ご飯までは部屋を一緒に探すことに。
ひとまずスマホで検索しつつ、
まりんはどうやら
ご飯も食べていってほしいみたいだ。 ]
え、俺も??
急だと量の問題とかあるんじゃ……
[ なんて一応言ってみるものの、
さすがと言うべきか、
まりんのお母さんは問題ないらしい。
小さいころお世話になったこともあるし、
俺としては全然問題はない。 ]
母さんに連絡するから、
いいって言われたら、な?
[ まあ念のための確認だけどな。
たまに今日中に食べないといけないものがあるから
外食してくるな、なんて言われることあるし。
連絡したらすぐ返事は返ってきて
今日は問題ない、らしい。
まりんがうちの親を呼ぶなんて言いだすのなら
それはまた今度にしような?
となだめたことだろう。
流石に急に3人前作るご飯が増えるのは
大変だろうから。 ]*
[
余談ですが特にアレルギーとかはないのです。
買ってくると言われたときに、
伝えられれば良かったのでしょうけれど
そこまで頭を回すには疲れすぎていました。
泣いていると彼が帰ってきました。
少し、気まずいです……。
せめて泣いている理由だけは
悟られないようにしなければ、と
何があったのか聞かれても
首を振るだけで答えませんでした。
どうしても、と聞かれるのなら
前の恋人のせいにしてしまいましょう。
……目の前の彼のせいには
どうしてもしたくなかったから。
]
[
床に散らかしてしまったレジュメを
彼は拾って束ねてくれました。
……本名も所属大学も見られた、
なんて思っていたら、
抱きしめられるのです。
……どうして、優しくするんでしょう。
面倒だって突き放してくれれば
勘違いしなくて済むのに、
また、勘違いしそうになるのです。
でも、頭をなでられると
落ち着いていくのは確かです。
そうしてかけられた言葉は
予想通りで、予想外のもの。
名前を見られたのだから
何か言われるとは思いました。
名前をほめられるのは悪い気はしませんが…。
]
……おうじくんは
やっぱりおうじくんなんだ。
どういう字を書くの?
[
許されるのなら、そっと彼の頭を
さっきしてもらったようになでるのです。
吐き捨てるように小さく添えられた言葉が
苦しくて、心に引っかかってしまったから。
名前が嫌いなのが、伝わってしまったから。
好きに名乗れるネット上の仮名で
わざわざおーじさま、なんて名乗るなら
それは本名であってもおかしくない……
そう思っての言葉でしたが、
もし違うのなら謝らないといけないな
と私は考えていました。
]*
まりん、頑張って朝昼晩作るよ!
偶に一緒に…お買い物、行こうね?
[ 朝早起き、頑張ります!
お父さんが帰ってくるまで、
ひとまずリビングのソファに移動して
まりんたちの大学近くだったり、
海斗くんのあるバイト先の近くだったり
色々と探してみます!
海斗くんのご両親を呼ぶのは、
今回はダメって言われたので次回です! ]
[ ご飯ができる頃には、お父さんも帰ってきて
まりんが海斗くんと2人暮らしするって
報告したらうーんと唸られてしまいました。 ]
だ、だめかなぁ……
[ お父さんは、いいよ、と言って
お母さんと同様に条件を出しました。
お父さんのカードで家賃が引けるもの。
毎月家賃を2人で払いにくる。
これだけでした!
お母さんが言った条件を伝えたからでしょう!
お引っ越しの時期も早く決めたいので
まりんの両親を巻き込んで
沢山色んなお部屋を探しては
見せ合いをしたことでしょう。 ]*
[
前の恋人のことを思い出した、と
彼女が言ったならちょっとイラッとした。
忘れさせたかったのに。
でも、頭を撫でれば
彼女が落ち着いていくように
彼のその心も落ち着いてきた。
だから、彼女にどんな漢字なのか
聞かれるとすんなり携帯を見せてあげた。
]
こういう漢字書くの。
……あれ、ぼく慰められてる?
──────ありがとう、ワンコちゃん。
ついでだし、連絡先頂戴?
[
携帯開いて、犬の絵文字を名前欄に入れれば
彼女に電話番号を打たせようと
携帯を渡して、連絡先をもらうことに。
彼女とは今日だけで終わらせるつもりが微塵もなく。
初めて、名前を笑われずにいる、多分。
出会った人には大体笑われていたから
新鮮な感じがしたような気がする。
]*
[ 優等生と評価されていて、
進路にも問題がないと学校側からも
判断されていたので、三者面談は
私の学校生活を聞かれる場になっていました。
試験ではいつも上位から数えた方が早いこと
書道ではいつも作品展示に選ばれること
体育祭や文化祭のでも、
リーダーでこそないものの、
裏方としてきちんと活動していたことは
先生を通して清玄さんにも
伝わったことでしょう。
書道が得意なのは、
もちろん清玄さんのおかげなのです!
レディは綺麗な字も
書けないといけませんからね! ]
……私が興味を持つんです!
楽しみなんですー!!
反物……成人式!
はいっ!どんな色がいいでしょう…
赤や青は定番ですよね。
緑、とかもあるなら見てみたいのです!
[ 清玄さんが自分はどうでもいいかのように
言うのなら、私はあからさまにむっとして
しまうのでした。清玄さんのご両親も
きっと楽しみにされるはずなのです!
ここは譲りたくありません。
成人式の話になれば、膨らんでいた頬は
戻って、目を輝かせていたことでしょう。
綺麗な振袖を着るのも楽しみですから。
清玄さんにたくさん可愛がってもらって
そのまま寝てしまった私でしたが
メイドさんがお世話をしてくれたのでした。
起きてメイドさんに会った時に
お礼を言っておくのは忘れませんでした。 ]
――――――
直哉さんはデートなら行きたいって
言いそうな気がしますね。
海外……凄いです!
会話には困らないんですか……?
[ 英語は高校で必修で習いますが
会話をしなさいと言われると、
少し私には自信がないのです。
清玄さんがクレー射撃やテニスを好んで
しているのは知っています。
私もご一緒してみていたこともありますが
とってもかっこいいのです!
ぽわぽわと見惚れてしまったのを
今でも覚えているくらいなのですよ!
優先順位もつけ終わって
行きたいところはまとめられた気がします!
あとの準備は…荷造りだけでしょうか?
他にもしなければならないことがあるなら、
と思って清玄さんに聞いてみるのでした。 ]
朝昼晩?!
いや、無理は駄目だからな??
買い物はもちろん。
まりんが買いたいだけ買って、
荷物は俺が全部持つから。
[ 流石に三食は負担が大きそうだけど…
まあ俺が作るにしても
凝ったものは作れないし、
無理をしていないかどうか見ていれば
任せてもいいのかもしれない。
食事会は今度、まりんがしたがってたと
母さんにでも伝えておけばいいだろうか。 ]
[ 夕食ができる頃に帰ってきた彼女のお父さんは
二人暮らしに少し難色を示した。
……まりんはわかってないかもしれないけど
至極当然の反応だろう。
ダメと言われるのかと思ってたけど……
家賃絡みの条件を出されただけで
OKらしい。……いいのか??
って提案しておきながら思ったけど
了承が得られるのなら素直に喜ぼう。 ]
ありがとうございます。
[ と彼女のお父さんにも頭を下げて。
色んな部屋を見る時間になるのだった。
家具とかも必要になるから
休みの日にでも見に行こうか、
なんて提案もしつつ。 ]*
[
私の推測は当たっていたみたいです。
彼はおうじくんで…皇仁、と書くのだと
携帯を見せてもらって
教えてもらったのでした。
ついでに、と連絡先を聞かれて
少し戸惑いました。
また今度、があるのでしょうか……。
]
……私は人の名前聞いて笑ったりしないって
決めてるから。
笑われたことがあって、悲しかったから。
皇仁くん、素敵な名前だよ。
連絡先……?
ちゃっかりしてるなぁ、もう。
[ 多分、彼の両親が三者面談に行けば
彼が聞いた内容に似たことを
また担任は話していたかもしれない。
茶道、華道、書道、ピアノ、バイオリン。
過酷だったかもしれないけれど、
彼女の高校生活は
習い事ばっかりで埋め尽くされていた。
運が良かったのか、彼女は素質があった。 ]
そんな可愛い顔をしない。
……理子は、何色がい?
色さえ言ってくれたら、色々取り寄せるから。
[ 彼女が興味を持つらしく、
彼はクスッと笑ってごめん、と言う。
最近は可愛らしいモダン柄もあるから
彼女が好きなキャラクターなどがあれば
そう言うものがないかも
合わせて調べさせるだろうし。 ]
[ 話が変わるけれど彼のメイドは、
朝から彼女にお礼を言われると
“お風邪をひかれましては、
坊っちゃんにお叱りを受けますし…
お嬢様がぐっすりお休みになっている時間を
お邪魔してはいけないと思っておりましたので。”
と、深く頭を下げて感謝の言葉を受け取ったはず。 ]
[ 戸惑いつつ渡された携帯に番号を打つのです。
名前欄に桜の絵文字を付け足しましたが、
消されてしまうでしょうか?
どちらにしろ、彼の連絡先も
教えてもらう流れになったでしょう。
いつの間にか口調は砕けていました。
ありがとうって言われるとは思わなかったけど…
もう少しこの人のことを知りたい、なんて
そう思ってしまったのを後悔するのは
少しだけ未来の話。
]*
────────
そうだね、あいつなら言いそう。
会話には困らないよ。
僕は小さい頃から英語とフランス語を
学んでいたから、普通に話せるんだ。
[ 彼女とはまだ国内にしか旅行に行ったことがない。
多分、大学生になって長期休みがあるなら、
彼女を今度は海外に連れていくことになるはず。
彼はそろそろ彼女にゴルフでも、と
考えるだけ考えているが、
彼女はしない方がいいかもしれない。
彼のことをずっと見て、
固まってしまう可能性があるから。 ]
荷造りくらいかな。
事前に荷物は送るから、
早めにしておくんだよ?
あ、……いいや。
卒業式、見にいくからね。
[ 保護者として、勿論。
彼が彼女と家を空ける間は
彼のメイドも休みになるため、
彼の友人ももしかしたら
卒業式を一緒に観にくるかもしれないが。 ]*
ほ、本当に起きれそうにないときは、
前の日に…作る、ね?
[ お休みの前の日はそんな感じになりそうな
予感が今からまりんはしているのです。
無理はせずに、美味しい料理を
海斗くんにあげられたら良いなって。
海斗くんだけに荷物は全部持たせられないので
まりんも待つ!と軽く反抗をするのでした。
だって、重たくなるじゃないですか…… ]
わぁ、楽しみだなぁ………
[ それから、晩御飯を4人で食べて
今度のお休みにはベッドなどを
見にいこうということになりました!
帰り際にお父さんが、
海斗くんに家賃は折半で上限2万円と
言っていました。多分、あんまり
海斗くんが学業に集中できないと
いけないと思ったのでしょうか…? ]
────────
ベッド、ダブルのやつひとつで
大丈夫だと思うの!!
[ お休みの日。
まりんと海斗くんは珍しく喧嘩に
なりかけておりました。
まりんは海斗くんと一緒に寝たくて
ひとつでいいと言って譲りませんでしたが
海斗くんは海斗くんでダメ、と譲らないのです。
折角、2LDKのおうちが借りられそうなのに!
むぅっと頬を膨らませて、喧嘩です! ]*
ワンコちゃんの名前で…?
ひどいやつがいるんだ………
[
彼女が桜の絵文字を追加したなら、
そのまま連絡先を登録した。
今度空いてる時、デートしようね、なんて
彼女を抱きしめたまま囁いて。
勿論、彼の連絡先もすぐに教えて。
彼女がまだそんなに動けないなら、
サンドイッチを取ってきて
冷蔵庫の中のオレンジジュースでも
一緒に渡せば、先にシャワーを浴びに
バスルームへと行ったことだろう。
]
*
産婦人科、行く?
一緒に行きたくないなら、
これはもらって絶対。
[
それから午後になり、
チェックアウトの時間ギリギリまで
部屋から出なかっただろう。
彼は出る直前に彼女の手に
四つ折りにした二万円を渡して。
産婦人科にいくか聞いた理由は、
緊急避妊薬を貰いにいくため。
病院代と薬代で、これくらいかな、と
彼は躊躇うことなく渡した。
]
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