【人】 古寺 貴菜しばらく待っていると、昨日の忘れ物の二本のペンを持った店員がやってきた。 どうも、と頭を下げ二本のペンを手に取る。 片や高そうな万年筆。 片や量産品のボールペン。 見間違えるはずもない、唯一恋人と呼べる相手からもらったもの。10年近く使っているのに未だにインクが切れない、異様に書き心地のいいボールペン。 「こっちですね」 万年筆を店員に返し、鞄の内ポケットにペンを入れる。 なお、ボールペンをくれた相手だが、結局大学進学で自然消滅し、友人に「イギリスに渡米する」と言っていたという話を聞いたっきり消息不明だ。 やつは一体アメリカに行ったのだろうか?それともイギリスに行ったのだろうか? まあなんだ……うん、バカだな。 (88) 2022/10/18(Tue) 21:57:31 |
【人】 古寺 貴菜さすがにこれだけで帰るのもアレだろう。 表のランチメニューを思い出し、そのまま注文する。 「Bセットを、ライスは2倍で……。ドリンクはウーロン茶を」 追加注文は……、後でも大丈夫だろう。** (89) 2022/10/18(Tue) 22:07:32 |
【人】 室生 悠仁暑くなったり寒くなったり>>0:38 そんな寒暖差も落ち着いてきて 冷える時間帯は冷たさに震える程となった。 購入してきたきのこ類を鍋へと放り込む。 鍋ものの細かい作り方など知らないから レシピを見ながら作業をしている。 ( 一人で過ごす時間は気楽でいい。 気を使うことなく、気をつけることなく 自由に好きに時を過ごせるのは 望外の喜びというものだ。 それでも、きっと。 彼と過ごした時間が、 自分の中では一番なのだろうな。 ) 仕事も終わって夜の時間 夕飯を作りながら思う。 今日のご飯は、ある意味最後の晩餐と言えよう。 (90) 2022/10/19(Wed) 7:56:43 |
【人】 室生 悠仁机に置いたスマートフォンが軽快な音を鳴らす。 短く響いてすぐに消えるのは、電話の着信ではなく SMSの通知を表している>>0:39 ご飯を作る手を止めて端末を手に取った。 送ってきた相手は、─── 全く、予想通りと言える存在。 『 仕事今終わったからも少し待ってて。 』 体力がなく定時で上がる俺と違って 彼はいつも、少し遅い時間まで仕事があるようだ。 今日は酒も用意しているから 毎日遅い時間までご苦労だと労ってやろう。 反応を考えて、くすりと小さな音を響かせた。 訪れてくれることが待ち遠しく、 鍋をかき混ぜて気を逸らす。 (91) 2022/10/19(Wed) 7:57:09 |
室生 悠仁は、メモを貼った。 (a17) 2022/10/19(Wed) 8:04:38 |
高山 智恵は、メモを貼った。 (a18) 2022/10/19(Wed) 8:15:41 |
室生 悠仁は、メモを貼った。 (a19) 2022/10/19(Wed) 8:18:32 |
古寺 貴菜は、メモを貼った。 (a20) 2022/10/19(Wed) 9:09:25 |
【人】 高山 智恵 10年近く前に、私はこの街で暮らしはじめた。 詳しいいきさつは省くけれど――そう簡単に他人に話したくなるような話じゃない――私はすぐにでも地元から出たかった。離れたかった。 勉強がそこまで得意って訳でもないのに、何が何でも都会の大学への現役合格を目指したのは、大学進学を口実にしてさっさと地元を出たかったから。無論、実家ってやつに戻る心算も毛頭なかった。 そのために受験したのは文学部。偏差値が比較的低く、卒業もそこまで難しくない、という評判を塾やネットで見かけたから――本当にただそれだけの理由だった。就活に有利か不利かなんてことは気にしていられなかったし、ましてや「大学で何を学びたいか」という意識なんて、まるでなかった。 ……とにかく、「こんな閉ざされた世界には居たくない」って気持ちばかりが先走っていた。 自分がこれから具体的に何をしたいか、どこに向かって生きていたいか――あの時の私は何も考えていなかったし、考えられなかったんだ。 考えられたのはせいぜい、実家からの仕送りを何時でも絶てるように自力で稼ぎ口を見つけなきゃ、ってことくらい。入学してすぐにバイトを探していたのも、これが背景にある。 (96) 2022/10/19(Wed) 16:58:36 |
【人】 高山 智恵 そんな、行き先不明のモラトリアムな人間が文学部なんて場所に身を置いたものだったから。 文学だけじゃなく、文化人類学とか宗教学とか>>1:74、そういったコースを自然に選んでいたのは、心の拠り所みたいなものを求めていたことの表れだったのかなあ。 卒論内容は重箱の隅をつつくようなテーマにして、とりま卒業できればいいや的な姑息な纏め方したよね……。 それでもハロウィーンがスクランブル交差点で仮装するだけのお祭りじゃないってことは知ってるし、クリスマスだって恋人たちの祭典じゃないってことも理解しているくらいには、ちゃんと講義で学んで得たことは身についている……と思いたい。 まあそれはそれとして、うちのカフェの季節のイベントは大事に行っている。イベントを作って楽しむってこと自体は悪い事じゃないと思うし、それがお店の盛り上がりや売上に繋がるなら上々じゃない?>>1:62 (97) 2022/10/19(Wed) 17:00:05 |
【人】 高山 智恵 閑話休題。 バイト先は結局、雰囲気の良いこのカフェで即決して>>1:25。 とにかく稼がなきゃって気持ちで、必死に働いていた訳だった。 私の後に雇用された“ 彼女 ”は違った。 この時既に専門学校を卒業していた彼女は、初めから「自分のカフェを開く」という目標を抱いた上で、うちの店で働きだした>>1:26>>1:27。 これから先、何をして生きていたいか――それが非常にはっきりしている人だ。 ついでに、店長をして「彼女は絶対に接客に向かない」>>1:74と言わしめる程の気質の人でもある。あの娘、張り付け固定気味のテンプレ営業スマイルすら見せなかったからね。 本当に、彼女と私は違い過ぎていた。 お客様と店員という関係性だったうちはまだしも、肩を並べる同僚同士という立場になると、いささか近寄りがたいような何かは彼女に対して初めは感じていたし、彼女のほうもそれは同じだったんだろうと思う。 (99) 2022/10/19(Wed) 17:01:15 |
【人】 高山 智恵『高山さんはアーサー王伝説に興味がないのに、 どうしてアーサー王伝説についての講義を受けたんですか? 高山さんは 変 です。』こんなふうに雑談の中でいきなり面と向かって「変」呼ばわりされたら、今の私なら「そういうところだよ」で済むけれど、初めのうちはカチンときたよ流石に。……まあ、こういうところのある人だったって訳だ。 まあ、彼女は「好きな分野を学ぶ」ことを当然として生きてきたんだから、当然のように私もアーサー王が好きだからその分野の講義を取った筈だって信じていたんだろう。 え? この講義選んだ理由? 出欠もレポートも緩くて単位取るのめちゃくちゃ楽だって聞いたからだよ。実際楽に単位取れたし。残念ながら講義内容については「聞いたことはある」レベルの記憶に留まっている。 ちなみにだけれど、私と彼女は同い年生まれだ。 年齢差も上下関係もない相手であっても、彼女はこんなふうに私に対して丁寧語で喋る。それどころか、年下の子、小さな子供や赤ちゃん、人だけでなく動物相手にも丁寧語で喋る。 彼女は接客の適性こそないと判断されても、子供からお年寄りまで誰に対しても分け隔てない態度で接する、そういう資質の人でもあるらしい。そういうところが気に入らなかった人もいたようだけれど、店長は好ましく思っているんだって。 (100) 2022/10/19(Wed) 17:01:51 |
【人】 高山 智恵 とにかく彼女は、私にとって理解できないものの塊のような人だった。イラっとすることも多々あった。 それでも、キッチンに向き合う彼女の真っすぐな背中や、食材や料理をじっと見つめる横顔は、純粋に綺麗だった――そうした一心さだって私にはないものだったから、あの時の私は彼女に妬いてもいたのだと、今になってみれば思う。 そんな彼女が、ある日バックヤードで唐突に尋ねてきた。 私が大学3年生になる直前の、まだ春というには冷える頃だった。 『高山さんはカナブンの幼虫は苦手ですか?』 「え? 何いきなり。 でもなー、そうだなー、……そんな苦手でもないかな?」 どうも他のバイト面子か知り合いかにいきなりこの話題を出して、蛇蝎の如く嫌われたことがあったらしい。 私はというと――結局、育った地元が「田舎」ってやつだったからかな――ああ、ああいうやつだなーという心当たりがあって、その上で「苦手でもない」と答えていた。好きという訳でもなかったけれど。 彼女が私にこの話題を振ったのが、私の出身が「田舎」なんだって意識したからだったのかは分からない(そう意識してなくても急に話題を振り出すところ、あったし……)。 (101) 2022/10/19(Wed) 17:05:17 |
【人】 高山 智恵 で、「なんで私に聞いたの?」と問うよりも、彼女の次の行動の方が早かった。 『判りました。じゃあ写真を見せます』 彼女はすぐに鞄からスマホを取り出して、写真画像の写された画面を私に差し出した。 それこそこれを聞いているあなたが虫を蛇蝎の如く嫌う人だったらマズいかもしれないので 画像の詳細は省くけれど――写真の中のいきものについて語っている時の彼女の目は、確かに輝いていた。『――――だるそうな感じで、可愛らしくて面白いです。 しかも畑の土を豊かにしてくれる益虫だそうです。 カナブンがいる畑の土で作った野菜とハーブを カフェのフードやドリンクに使ってみたいです』 などなど。などなど。などなど……。 私はといえば相槌を打ちながら、彼女の話の切れ目を(どうにかなんとか)見つけたところでコメントを挟んでいた。 (102) 2022/10/19(Wed) 17:07:57 |
【人】 高山 智恵「いやー知らなかったなー。 確かに自然派食材?みたいな感じで そういう畑の食材仕入れるのもアリアリだよね」 このコメントは率直に素朴に思ったことそのままだったけれど、あれが「可愛らしくて」「面白い」かと言われれば……私には残念ながらそういう感性のチャンネルはなかった。そして未だにない。 それでもこの感想と、何より私がきちんとこの話題に向き合っているということが、それだけで彼女にとってはものすごく嬉しかったらしい。 普段愚直で不愛想な彼女が、確かにこの時、ぱっと無邪気に笑った。 「アリアリですよね!!」 本当に“ 天使 ”か、或いはうろ覚えの“ 湖の乙女 ”か――そんな笑顔と声色だった。 思えば、彼女が「カフェを作ること」「料理を作ること」以外に強い関心を示しているのを目の当たりにしたのは、この時が初めてだったな。 (103) 2022/10/19(Wed) 17:10:18 |
【人】 高山 智恵 ……もしも私の中で“ 転機 ”と呼べるものがあったとすれば、この時だったのかな。 今となっては、いつから、何によって彼女を「好きなんだ」と気付いたのかも曖昧だけれども――。 これから私は、何をして生きていたいか。どこに向かって生きていたいか。 曖昧にすら描けなかったその絵図は、こうしていつしか、はっきりとした輪郭を形作っていた。 (104) 2022/10/19(Wed) 17:22:54 |
【人】 高山 智恵「私も、将来は自分のカフェ持ちたいですね。 なので、売上管理とかマネジメントとかも 正社員の立場で学んでみたいんですけれど。 ……まだ社員昇格には早いですかね? 店長」 店長にしれっとそう申し出た当時は「まだ早い」と即答されてしまったものだったけれど、ね。 でもこの意思表示には、少しだけ嘘が含まれている。 正しくは「自分のカフェ」じゃなくて、「自分と彼女のカフェ」だ。 その嘘を正す夢物語を、店長にも彼女にも、私は言えなかった。 (105) 2022/10/19(Wed) 17:23:35 |
【人】 高山 智恵『はい、私はあの男のことが好きです。 ――さんは都心でショコラティエとして頑張っています。 ――さんは本当に真剣にチョコレートに向き合ってます。 ――さんは、本当に素敵です。素敵なんです。 私たちのお店にお客さんとして来てくれて、 本当に嬉しかったです』 『私は、素敵なあの男にちゃんと振り向いてもらいたいです。 だから、次の新作のガトーショコラも、 ホットココアも妥協しません』 だってそれこそ、浮世離れした何かのような目の輝かせ方でこんな言葉を聞かされた後の日に、思い描いてしまった将来の夢>>105でもあったのだから。 もし私がアーサー王にとってのマーリンになる心算だっていうなら、何の不満もなくこの夢を果たせるのかもしれない。けれども私は、あの娘のマーリンとしてだけ在りたい訳じゃない。 ……ああ、これじゃまるで、私はグィネヴィアにとってのランスロットになりたがってるみたいだ。 (106) 2022/10/19(Wed) 17:39:10 |
【人】 高山 智恵 ――本当にあの娘は本当に彼のことが“ 好き ”なの? それって、何%くらい本当のことだと思う? そんな考えがふっと浮かびもしたけれど。 彼女は嘘を吐かない。というより、吐けない。あれは本心だ。 ――彼女の言う“ 好き ”って、どういう定義? “ 振り向いて ”もらうって、どういう意図? 可能性を問う声ばかり、頭の中に響く。 響きはすれど、それに耳を傾けることなんてできない。 都合の良い夢ばかり、見ていたくはない。 ……、そうだよ、今は夢なんて見ている場合じゃない。 丁度目の前に気掛かりなことひとつ>>85>>87、捌かなきゃいけない仕事はいくつも>>89、あるじゃないか。 (107) 2022/10/19(Wed) 17:43:44 |
【人】 高山 智恵 こうして――様々な意味で気を取り直すように――オーダーの声を響かせるお客様>>89の元へ急ぎそうになって、 やめた 。お客様に呼ばれた同僚から仕事を奪ってどうするの私。どうやら自分で無自覚だっただけで、今日の私は相当疲れているか気が抜けているかしているらしい。 まあ、昨日応対したお客様が再来店してきたのを見てつい……っていうのもあったけれども。 忘れ物のペンの受け取りだけで用件を済ませてもいいところを、わざわざランチメニューまで頼んできてくれるなんて! 2倍に増えたライス大盛り指定のランチは、今度はAではなくBのほう。 うんうん、このお客様のこと、ぜひ店長にも“ 彼女 ”にも伝えた……げほん、なんでもない。 あと今本当に店内でげほんって咳いた訳ではないのでご心配なく。 それこそ今が相当に空いている時間帯であれば、お客様の時間と話しかけられ耐性が許す範囲で(店員からのお喋りを嫌うお客様だっている)料理の感想や来店の経緯を聞いてみたい気持ちはあるんだけれど、残念ながら今はまだまだそれなりに混んでいる。 カズが……失礼、あの子たちをはじめ、今私が担当している他のお客様方のほうがどうしたって優先される。 うん、普段相手の子が「カズ」って呼んでたのが多分ちょっと移ってるなこれ。成人に対して「あの子」呼びが失礼か否かはちょっと置いて。 (108) 2022/10/19(Wed) 18:09:40 |
【人】 高山 智恵 さて、あの子たちとは言ったけれど――。 実際のところ、もう片方の子のほうは未だ来店していない>>87。 待ち合わせという形故に来店時間がズレることは普通としても、ここまで来ないってことはない――というのは普段のふたりの来店時のことを知っているが故に思うこと。 彼女、この店は来づらい訳じゃないどころか、週2、3くらいでランチに通ってくれてるくらい気に入ってくれてるんだけれど>>79……。 スマホを取り出して画面に目を落としている彼の姿は、私もちゃんと捉えている。 もしこちらで何か手助けすることがあれば手を貸すつもりではいるけれど、お客様当人から声を掛けられない限りは、残念ながら動けない――少なくとも今は。 あの子の不在が、今ここにいるカズ君の浮かない態度>>81>>83>>85>>86と関係あるのか否かは分からないけれど――。 (109) 2022/10/19(Wed) 18:33:28 |
楯山 一利は、メモを貼った。 (a21) 2022/10/19(Wed) 19:12:47 |
(a22) 2022/10/19(Wed) 22:25:21 |
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