人狼物語 三日月国


187 『Ambivalence』

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  嗤いながら憐憫の言葉を投げかけて。
  あなたに絶望してもらおうと思って
  吐いていた言葉だったけれど。
  ふ、と真顔に戻り。

  



   「あなたの居場所は此処しかない。
    此処があなたの元の場所、でしょう?」


 
  あなたの上から動かないまま。
  私はあなたに最低の言葉を吐き捨てると
  満足そうに笑っていた。*

  



   自分の意思に反して身体が反応する。
   男にとっちゃ当たり前のことだし慣れたもんだが
   今以上にそのことを恨んだことはない。

   ヤられたくなければ勃たせなきゃいい。
   それが出来ないから男は女を欲しがるのだ。
   浅見だってそれを分かっていたはず。






   挿入ると同時に果てる。
   男からすれば情けないことこの上ないし
   女からすれば本来迷惑極まりない話なのに。

   俺の欲を受け止めた浅見は
   むしろ恍惚な顔で悦んですらいた。

   壊れている。なにもかも、壊れている。






    「お前に…っ、俺の何が……」


   分かるってんだ。

   プライドを傷つけられた怒りが
   ふつふつと湧き上がってきて。

   言い返そうとする俺に被せるように
   浅見から浴びせられた嘲笑と
   目を覆いたくなるような現実が
   俺の身体から血の気を奪っていく。





       「っ……。」






      「これで…満足かよ。

       てめぇのくだらない人生の
       憂さ晴らしができて…満足か?」






   俺はあの日の浅見と同じだと言う。
   報復が成されて、声色が変われば
   向けられるのは同情の目。

   捨て犬を慈しんでいるつもりか。


   怒りを微塵も感じさせない指先が
   俺にどうしようもないくらい
   強い嫌悪と心頼の感情を芽生えさせる。





   わかりますよ。
   私とあなたは似てますから。



   あぁ、似てるって思われるのは屈辱だろうか。
   こんな私と一緒にされるのは嫌?

   同類にされたくないのなら、
   自分の行動を省みればいいのに。

   何処までも愚かだと思う。
   あなたも私も、心底くだらない人生しか歩んでない。

   だから、引き合ったんじゃないですか?


  



  満足か、という言葉には応えず。

  指先から伝わっただろうか、
  この同情は嘘偽りのない本心だという事が。
   
  世界から見捨てられた哀れな人を
  慈しんで何が悪い?

  
あなたを理解出来るのは、不幸なことに私だけ。


 



  顔を近づけて、強引に唇を重ねた。
  歯列をなぞり舌を絡める、深い口づけを交わそうと。

  愛情を確かめ合うためでも、
  快楽のためのスパイスでもない。
  目的なんて一つだけ。
  私の唾液をのませるための口付け。
  事実を知ってしまった今なら、嫌悪しそうな行為を
  あなたに施した後、耳元で囁く。


  



   「―――――修。
    あなたのことが、大嫌い。」


  



  囁いた後、
  私はあなたのお望み通り、腰を持ち上げる。
  栓がなくなった中からは
  白濁が流れ落ちて脚を汚した。

  私はそのままあなたの上から離れて
  ロープの傍に放ってあったカッターナイフを
  持ってくると、あなたの手首の縄を切る。
  切り終わったらカッターはあなたに渡して。
  そうすれば、足の縄は自分で切れるだろうと。


  


  
  渡した後、私はあなたのスマホを拾い上げて。
  あなたの方へと差し出しながら。


   「通報でも何でも、ご自由に。

    私がしたことはれっきとした犯罪だから。
    この場の行為に限って言えば
    あなたは不可抗力だったと言える。

    でも、このスマホに保存されてる
    動画を見られたら、
    あなただってただじゃ済まない。」

  



   「選んで。
    私を破滅させるか、二人で破滅するか。」


  



  微笑みながら、私はあなたに選択を迫る。
  私のくだらない人生が破滅したところで
  何にも困ることなんてない。
  私はあなたを同じ場所まで引きずり下ろしたいだけ。

  そのために。
  私はあなたの怒りを膨らませてあげようと。


  



   「さっき満足か、って言ってたけれど。
    私は満足なんてしてない。

    だって玩具あなたは情けないことに
    すぐイっちゃったから。
    年下の小娘一人満足させられないなんて
    本当に、情けないし可哀想。」*


  



   俺が負け惜しみのように吐いた疑問は
   どうやら正解だったらしい。

   それが一矢報いることになるかもと
   わずかな期待をしてみたものの
   浅見律という女は、そんな次元では済まない程に
   人の悪意と我欲を知りすぎている。





   浅見律の欲望は
   俺や他の男達の比ではない。
   膨れ上がり、俺の目の前で爆発する。

   人は鏡とはよく言う。
   今立場を変えて俺が浅見に言っても
   きっと違和感は無いだろう。


   あーでもそんなことはどうでもいいか。
   だって、そう顔に書いてあるし。


   不意に流れてきた唾液は
   乱暴に憎しみを注ぎ込んできて。
   口から溢れようとも留まるところを知らない。


   



   浅見が俺の腕の拘束を解いて
   スマホを渡してくる。

   互いに心臓を握りあっていると
   わざわざ言い放つ理由なんて
   想像するのは難しくはない。
   まるで飽きた玩具を見るような
   そんな目さえしてるようにも見えた。






   可哀想だと嘲る浅見に
   俺は表情ひとつ変わらずに答える。
   怒りを通り越した憐れみは
   歪な程に心の余裕を生んだ。
   どれだけ堕ちていようとも
   自分より堕ちた人間を見ると妙に落ち着いてしまう。



    「ちょっと見ない間に生意気になったな。
     少し男を知ったくらいでいい気なもんだ。」



   拘束が解けたということは
   俺が自由になって何されても構わないと
   失うものなんて何も無いと

   つまりはそういう事だ。





   俺は乱暴に浅見の腕を掴むと
   報復と言わんばかりにソファーの上で押さえつけて
   そのままネクタイで手首を縛る。
   堕ちるところまで堕ちるのは
   はたしてどっちだろうか。


   満足出来ないなら満足させてやろう。
   皮肉めいた答えがどちらを意味するかは明白で。
   あれだけ嬲られてもまだ硬さを失わない雄を
   体液で汚れたままの秘部に押し当てて。

   同意も得ず、紳士的な気遣いもせず。
   ただ欲望に駆られて栓をする。






   以前の玩具を扱う目とは違う
   獣のような目を浅見に向けながら
   乱暴な抽挿を繰り返すと

            そのまま首の側面に手をかけ
            頸動脈を圧迫していった。**






  「少し、で済んでればいいですけどね。
   私が生意気なのは前からですよ。」



  拘束を解いた時点で何をされようとも
  それに抵抗する気なんて微塵もなく。

  



  乱暴に捕まれても逃げようともしない。
  押さえつけられても
  静かにあなたの瞳を覗き。
  ネクタイを手にするのを見て
  こうしたいんでしょう?と言いたげに
  自ら縛りやすいように手首を差し出して。

  
  堕ちる所まで堕ちてるのはお互い様。
  二人で破滅に向かえばいい。
  私達にはきっとそれがお似合いだから。



  汚れた秘部が雄を受け入れると
  収縮する中はあなたを悦ばせようと締め付けて。
  こんな状況で反応するなんて
  本当に都合のいい道具でしかない。


  同意?気遣い?
  あなたからそんなもの与えられるとは思ってない。
  期待もしてない。
  私達に必要なのはそう……


  



     
ヤりたいか、ヤりたくないか。それだけ。


  



  既に壊れたと思ってる女を壊すのは 
  骨が折れるかもしれないけれど。


          
壊せるなら―――――。


  



  乱暴な抽挿でも待ち望んだ刺激だったから
  痛がることも嫌がることもしない。
  ほら、
やっぱり好きだったじゃないか、
と。
  正解をもらった子供のように
  ふ、とわらって。

  



  でも、私だって人間だ。
  首を絞められれば息苦しさに悶えて
  咄嗟にあなたの手を掴もうとして
  縛られてることを改めて思い知る。
  

   
「……っう、ぁ……」



  まともに抗議も出来ない。
  酸素が足りない、血が巡らない。
  そんな感覚に襲われて、段々意識を保つのが
  怪しくなりながらも、あなたの首を見ていた。

  
縛られてなければ絞め返してあげるのに。


  叶わないことを思いながら
  さっき私が付けた執着の痕を目に映し。

  

(n0) 2022/12/24(Sat) 21:05:57

 




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