人狼物語 三日月国


225 秀才ガリレオと歳星の姫

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【墓】 ユスティ



   自分の言ってることが滑稽なことは
   自分でも良くわかっている。

   力を持つことが罪では無いのなら
   なぜ自分はここまでエウロパに嫉妬し
   彼女に冷たく当たっているのか。


   力を正しく扱わないという糾弾ならまだしも
   持つ力そのものへ向けている悪いのは自分なのだ。

   みっとなく劣等感を剥き出しにして
   守りたいはずの子を突き放して
   ユスティもまた、人間としての器はもろかった。



(+23) 2023/10/04(Wed) 18:47:06

【墓】 ユスティ



   寮に戻るとユスティは一人腕を抑える。

   流れた魔力が外に出ようと血管を巡り
   その流れは痛みとなって襲いかかる。

   ルームメイトがいると勉強に集中できないと
   無理を言って一人部屋にしてもらったおかげで
   この無茶がバレることは無いはずだ。

   人知れず時間をかけて、修復していけばいい。



(+24) 2023/10/04(Wed) 18:48:26

【墓】 ユスティ




   彼女には決して悟られるな。


         この心は決して知られてはならない。



(+25) 2023/10/04(Wed) 18:49:10

【墓】 ユスティ



   ただ人知れず守れ。

      それが隣に立つ資格がない者の
      せめてもの心遣いというものだ。


(+26) 2023/10/04(Wed) 18:49:39

【墓】 ユスティ



   それからしばらくは
   ユスティはポケットに手を入れて過ごしていた。

   先生には事前に話は通して
   態度が悪いと言われないように伝え
   素行不良を疑われないように。

   それでも手の心配までしてくるのは


            たった一人だけだった。


(+27) 2023/10/04(Wed) 18:50:59

【墓】 ユスティ



     「何が?ボクなんかには
      水漏れの後始末すら出来ないとでも?」


(+28) 2023/10/04(Wed) 18:51:25

【墓】 ユスティ



   他の生徒にはなんのことか分からないように
   心配そうにしているエウロパに吐き捨てると

   ユスティは見向きもせずに立ち去った。
   この問題には、エウロパを関わらせないように。


            彼女が自分を責めないように。



(+29) 2023/10/04(Wed) 18:52:13

【墓】 ユスティ



   秀才という名の凡人は忙しい。

   授業を真面目に受ければ
   昼に休憩している暇などなく
   直ぐに屋上で新たな魔法の練習に取り掛かる。
   毎日がその繰り返しだ。


   ましてや恋人などと>>+11
   うつつを抜かしている余裕などない。>>+12

   彼女が見たのはまやかしか
   はたまた悪意の塊なのだろうか。>>+13



(+30) 2023/10/05(Thu) 8:26:52

【墓】 ユスティ



   人の姿に変化することは
   この学園では難しいことでは無い。

   専用の魔法薬さえ作れれば
   誰でもできてしまうことなのだ。

   しかし似せられるのは見た目と声だけ
   その言葉も、信念までもを
   模倣することなど決して出来ないだろう。


(+31) 2023/10/05(Thu) 8:27:15

【墓】 ユスティ



   それでも彼女が本物と見紛うのは
   それほどユスティの解像度が高いのか
   悪意の正体は決して遠くは無いところに…


(+32) 2023/10/05(Thu) 8:27:44

【墓】 ユスティ



   晒される悪意の臭いには気づかず
   ユスティは屋上で一人魔法の鍛錬に励んでいた。

   まだ一度も成功していない空間転移の魔法は
   未だに成功の兆しは見えない。>>0:7

   焦ってもしょうがないと頭の中では理解出来ても
   いざ成果が得られないと焦燥が募っていくのは
   今に始まったことではなかった。


(+33) 2023/10/05(Thu) 8:29:29

【墓】 ユスティ



   なにかが足りない。
     魔力だけでは無いなにかが。


           だが自分には何が足りないのか
             考えても答えは出ないまま。



(+34) 2023/10/05(Thu) 8:30:57

【墓】 ユスティ



   心の乱れは魔法にとって毒だ。
   心を落ち着かせようと座って深く息をする。
   このメンタルコントロールが
   魔法の制御のもっとも効果的な方法だった。

   しかしどうにも落ち着かない。
   自分の気持ちとは無関係に
   どうやら外が騒がしくなっていたせいだ。

  
(+35) 2023/10/05(Thu) 8:31:47

【墓】 ユスティ



   声を辿り、視線は森へ
   その先で起きているのは

               まるで災害だ。


(+36) 2023/10/05(Thu) 8:32:06

【墓】 ユスティ



   空が黒に染まっていく。

   森を中心に嵐のように風や雪が舞う
   不自然な雲に覆われたその森は
   もはや誰も近づけないほどに荒れていた。


   その正体に気づけないはずがない。
   それは幼い頃に見た、異常気象。
   彼女と袂を分かった時に見た、涙。



(+37) 2023/10/05(Thu) 8:32:46

【墓】 ユスティ



   ユスティは走り出す。

   走ってはいけないはずの廊下を駆け抜け
   一目散に後者の外へと向かうと
   既にそこには先生や他の生徒が集まっていた。

   どうやら風が強すぎて近づけないようだ。

   魔力が次第に弱まっていくのを感じる中、
   今は一刻を争うというのに
   何も、どうすることも出来ないと往生していた。



(+38) 2023/10/05(Thu) 8:33:41

【墓】 ユスティ



   「どいてください。
      あなた達では足でまといです。」



(+39) 2023/10/05(Thu) 8:35:09

【墓】 ユスティ



   風が収まったら助けに行こう
   それはエウロパの魔力が枯渇するということ

   魔力の枯渇が魔法使いにもたらす負の影響を
   彼らは知らないはずがない。

   暗にそうするしかないのだと言い聞かせる先生達に
   苛立ちを滲ませたユスティは床に魔法陣を描き始める。


(+40) 2023/10/05(Thu) 8:36:00

【墓】 ユスティ



   たとえ成功したことがなくとも
   ここで失敗することは許されない。

               彼女の命が懸かっている。


(+41) 2023/10/05(Thu) 8:36:58

【墓】 ユスティ



   「星巡りて天翔る万象の揺らめき
    ケプラーの涙、月の糸

       燦燦と巡る運命の流砂をこの背に────」


(+42) 2023/10/05(Thu) 8:37:22

【墓】 ユスティ



      刹那、ユスティの身体が消える。**


(+43) 2023/10/05(Thu) 8:39:13

【墓】 ユスティ



***

   しかしエウロパは独りではない。
   彼女を助けようとする人は必ずいる。

   狼狽える先生や生徒など
   初めから眼中にはない。


   そして意外にもその人は天才というよりは秀才で
   薬学においてはユスティを超えていると言っていい。

   彼女の素直な性格に惹き込まれたその一人は
   まるで待っていたかのように
   ユスティが向かったその先、医務室にいた。


(+55) 2023/10/06(Fri) 21:29:46

【墓】 ユスティ



   「からかうなよ。

      ボクは王子様でもなんでもない。」


(+56) 2023/10/06(Fri) 21:30:00

【墓】 ユスティ



   シトゥラに困ったような笑みで答えると
   エウロパを医務室のベッドに寝かせる。

   彼女の置かれている状況は
   わざわざ言わずともシトゥラなら分かるはずだ。


    「今回の暴走はだいぶ酷いね。
     一体何が原因なのか…わからないな。」


   ここまで事態が悪化することも珍しい。
   まさか自分が大きく起因しているなどと
   その程度を計り知るには至らず

   薬を受け取りながら表情を曇らせた。



(+57) 2023/10/06(Fri) 21:31:26

【墓】 ユスティ



   「ボクは………

       彼女の傍にいるには力不足なんだと思う。」


(+58) 2023/10/06(Fri) 21:32:35

【墓】 ユスティ



   受け取った薬をエウロパに与えると
   シトゥラの方へと向き直る。


    「エウロパからも聞いたことがあるかな。
     昔、ボクが彼女の前から消えたって話。」


   天才エウロパには話せない。
   かつて犯した過ちと、決して語らなかった心の奥。


(+59) 2023/10/06(Fri) 21:35:26

【墓】 ユスティ



   「ボクは彼女の才能に嫉妬したんだ。

    自分が一番だって信じて疑わなくて
    彼女の成功を喜んであげられなかった。」


(+60) 2023/10/06(Fri) 21:36:43

【墓】 ユスティ




           その結果が、あの日の氷雪。

(+61) 2023/10/06(Fri) 21:37:23

【墓】 ユスティ



    「好きな女の子泣かせておいて

        王子様ガリレオなんて名乗れないでしょ。」



(+62) 2023/10/06(Fri) 21:38:36

【墓】 ユスティ



    ユスティはふらふらと歩き出す。
    責任を取ると言った以上、
    エウロパから逃げることはない。

    しかし今この手を、
    魔力が枯渇し、ひび割れた手を
    エウロパに見せるわけにはいかない。


(+63) 2023/10/06(Fri) 21:38:57