「！　えとえと…
　監察官さん、皆さん。はじめまして。アトリです」

手をそろえて頭を深く下げてから、
おずおずと周囲の人影たちを見遣る。
慇懃に振舞うその瞳には、好奇心がいっぱいに輝いている。
あからさまにワクワクしているのだ！

「えと、とうさんとかあさんの愛玩用グレイです！
　こんなにグレイがたくさんいるところに来るのは初めてだから、
　何か失礼をしたらごめんなさい」

「せっかくだから、いろんなお話が聞けるかもって思って。
　いっぱい頑張るので、いろいろ教えてくれたらうれしいです！」

・用途と名前:愛玩用　アトリ
・型の性別/身長:中性型/154cm

・武器の形状:カトラリーセット
・USBの形状:青〜白のグラデーション。
　　　　　　一番濃い青部分に白十字がプリントされている。

・ひとこと
「でもまずは…探検したいな〜っ！
　お外に行ってもいいんだよねっ？監察官！」

「はいはい！
　広間に誰でもいつでも食べておっけーなおやつがあると…
　いいとおもいます！
　あとお花とか、なんか緑のもの！あとゲーム！」

挙手と共に、兵站からは程遠い娯楽用品のおねだり。
おやつはあまいのとしょっぱいのどっちもほしいな、お茶もあるともっといいかも。

「…こういうの言うので、あってる？
　もうちょっと真面目なこと言ったほうがいい？」

そわり、と周囲の大人――自分の体より殆ど大きく作られたグレイたちを見上げた。

「やったやった！
　ね、ね、ここなら夜更かしして皆でゲームしたりとか…
　監察官さんも一緒にさ！できる？してもいいのかな〜！」

わーいわーい。
肯定してくれたのをいいことに、何やら巻き込む気配がある。

「はあい、約束します…
　」

大げさにしょんぼりとして見せる。
本当にしょぼくれている、というよりはじゃれあいの泣き真似のような、そういった雰囲気がある。
要望がひとつ追加されたようだ。

「みんなで遊べるゲームがいいな〜、
　ウーパールーパーブラザーズの新しいのとか…」

最大8人対戦のパーティーゲームの名前を挙げた。
ミニゲームやすごろくで競うタイプのゲームらしいので、ルールを知らなくてもきっと遊べる。

「…限界がきちゃったらそのままころん！って寝ちゃうのは？
　パジャマパーティーみたい！」

わいわいとひとり盛り上がっていても、乏しい台所事情は伝わっていたようで。
幸い最も小柄であるため、戦闘を避けて物資を持ち帰ることに専念するならばそこそこの成果を挙げられるだろう。

「かくれんぼ得意だよ！」という言葉と共に申告しておいた。

「すっ……ご〜い…」

連れられてきた娯楽施設は初めて見るものばかり。
人にぶつからない程度に施設内をうろちょろとしている。
何よりも人の流れが物珍しいようで、ゲームの類は遊んでいる様子をじっ…と見つめ。
すごい！わーすごい！かっこい〜！と瞳に書いているようなありさま。

「じゃあじゃあ、ロベルさんの好きなおやつはなあに？
　それも作るのお手伝いするよ！」

もちろん、他のお手伝いもするつもりだ。
お家でのお手伝いはつまみ食いの権利と共にあったからである。
クッキーの型抜きとか。アイシングでのおえかきだとか。

「イーサンさんはシンプルなのがすき？
　つうごのみ、だね！」

意味が分かっているのかいないのか。

「ごまかしがきかないから、
　つくる人の腕が試されちゃうんだよ〜」

にしし…といたずらっ子の笑みを浮かべた。