人狼物語 三日月国


225 秀才ガリレオと歳星の姫

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【墓】 ユスティ



   それからしばらくは
   ユスティはポケットに手を入れて過ごしていた。

   先生には事前に話は通して
   態度が悪いと言われないように伝え
   素行不良を疑われないように。

   それでも手の心配までしてくるのは


            たった一人だけだった。


(+27) 2023/10/04(Wed) 18:50:59

【墓】 ユスティ



     「何が?ボクなんかには
      水漏れの後始末すら出来ないとでも?」


(+28) 2023/10/04(Wed) 18:51:25

【墓】 ユスティ



   他の生徒にはなんのことか分からないように
   心配そうにしているエウロパに吐き捨てると

   ユスティは見向きもせずに立ち去った。
   この問題には、エウロパを関わらせないように。


            彼女が自分を責めないように。



(+29) 2023/10/04(Wed) 18:52:13

【墓】 ユスティ



   秀才という名の凡人は忙しい。

   授業を真面目に受ければ
   昼に休憩している暇などなく
   直ぐに屋上で新たな魔法の練習に取り掛かる。
   毎日がその繰り返しだ。


   ましてや恋人などと>>+11
   うつつを抜かしている余裕などない。>>+12

   彼女が見たのはまやかしか
   はたまた悪意の塊なのだろうか。>>+13



(+30) 2023/10/05(Thu) 8:26:52

【墓】 ユスティ



   人の姿に変化することは
   この学園では難しいことでは無い。

   専用の魔法薬さえ作れれば
   誰でもできてしまうことなのだ。

   しかし似せられるのは見た目と声だけ
   その言葉も、信念までもを
   模倣することなど決して出来ないだろう。


(+31) 2023/10/05(Thu) 8:27:15

【墓】 ユスティ



   それでも彼女が本物と見紛うのは
   それほどユスティの解像度が高いのか
   悪意の正体は決して遠くは無いところに…


(+32) 2023/10/05(Thu) 8:27:44

【墓】 ユスティ



   晒される悪意の臭いには気づかず
   ユスティは屋上で一人魔法の鍛錬に励んでいた。

   まだ一度も成功していない空間転移の魔法は
   未だに成功の兆しは見えない。>>0:7

   焦ってもしょうがないと頭の中では理解出来ても
   いざ成果が得られないと焦燥が募っていくのは
   今に始まったことではなかった。


(+33) 2023/10/05(Thu) 8:29:29

【墓】 ユスティ



   なにかが足りない。
     魔力だけでは無いなにかが。


           だが自分には何が足りないのか
             考えても答えは出ないまま。



(+34) 2023/10/05(Thu) 8:30:57

【墓】 ユスティ



   心の乱れは魔法にとって毒だ。
   心を落ち着かせようと座って深く息をする。
   このメンタルコントロールが
   魔法の制御のもっとも効果的な方法だった。

   しかしどうにも落ち着かない。
   自分の気持ちとは無関係に
   どうやら外が騒がしくなっていたせいだ。

  
(+35) 2023/10/05(Thu) 8:31:47

【墓】 ユスティ



   声を辿り、視線は森へ
   その先で起きているのは

               まるで災害だ。


(+36) 2023/10/05(Thu) 8:32:06

【墓】 ユスティ



   空が黒に染まっていく。

   森を中心に嵐のように風や雪が舞う
   不自然な雲に覆われたその森は
   もはや誰も近づけないほどに荒れていた。


   その正体に気づけないはずがない。
   それは幼い頃に見た、異常気象。
   彼女と袂を分かった時に見た、涙。



(+37) 2023/10/05(Thu) 8:32:46

【墓】 ユスティ



   ユスティは走り出す。

   走ってはいけないはずの廊下を駆け抜け
   一目散に後者の外へと向かうと
   既にそこには先生や他の生徒が集まっていた。

   どうやら風が強すぎて近づけないようだ。

   魔力が次第に弱まっていくのを感じる中、
   今は一刻を争うというのに
   何も、どうすることも出来ないと往生していた。



(+38) 2023/10/05(Thu) 8:33:41

【墓】 ユスティ



   「どいてください。
      あなた達では足でまといです。」



(+39) 2023/10/05(Thu) 8:35:09

【墓】 ユスティ



   風が収まったら助けに行こう
   それはエウロパの魔力が枯渇するということ

   魔力の枯渇が魔法使いにもたらす負の影響を
   彼らは知らないはずがない。

   暗にそうするしかないのだと言い聞かせる先生達に
   苛立ちを滲ませたユスティは床に魔法陣を描き始める。


(+40) 2023/10/05(Thu) 8:36:00

【墓】 ユスティ



   たとえ成功したことがなくとも
   ここで失敗することは許されない。

               彼女の命が懸かっている。


(+41) 2023/10/05(Thu) 8:36:58

【墓】 ユスティ



   「星巡りて天翔る万象の揺らめき
    ケプラーの涙、月の糸

       燦燦と巡る運命の流砂をこの背に────」


(+42) 2023/10/05(Thu) 8:37:22

【墓】 ユスティ



      刹那、ユスティの身体が消える。**


(+43) 2023/10/05(Thu) 8:39:13

【墓】 エウロパ



   あのあと、私が起こした騒ぎは
   私のせいなのだとばれることはなかった。

   何か騒ぎがあったらしい、とは広まっていたけれど
   その内容も、関わった人のことも、わからないまま。


   誰が何をしたのか根も葉もないうわさが飛び交う中
   私は暗い顔をしていたから。
   唯一、シトゥラだけは
   私の態度から何か察したみたいだけど
   何も聞かれなかった。


  
(+44) 2023/10/05(Thu) 9:41:29

【墓】 エウロパ



   聞かれたら困るんだとシトゥラは分かってるんだ。
   その優しさに甘えて、友達にさえ、
   今日の出来事は話せないまま。



   それから後の事。
   ユスティを見かける機会があった。
   手を隠すように過ごしている君の姿を見て
   心配になるんだ。

  
(+45) 2023/10/05(Thu) 9:42:07

【墓】 エウロパ


   
   「………じゃあなんで隠してるの?
    隠す理由って他に何があるの?」


   
(+46) 2023/10/05(Thu) 9:42:36

【墓】 エウロパ



   言い募っても関わりたくないって空気を
   感じて怯んでしまう。

   あの時、優しい声で落ち着かせてくれた君とは
   別人みたいな対応に、戸惑って混乱して。

   これ以上何か言ったら迷惑なのかなって
   考えたら、何も言えなくなってしまったんだ。


  
(+47) 2023/10/05(Thu) 9:42:59

【墓】 エウロパ



   
君は優しいから助けてくれたんだ。

   そう信じてるはずなのに。

   何処かで少し、迷ってしまう。
   違ったらどうしよう、って。

          だから踏み込めない。
          本当は踏み込みたいのに。*


   
(+48) 2023/10/05(Thu) 9:43:32

【墓】 エウロパ


***

   過去にも似たことがあったらしい。
   森の周りだけ気象が変わる魔力暴走。

   過去と違うのは天候の荒れ方。
   以前と比じゃないほどに天は荒れ狂い
   誰かが近づくことさえ危険な状況。

   魔力が枯渇すれば止まる。
   今この状況で近づけば犠牲が増えるかもしれない。

   少女一人の命と大勢の命を天秤にかければ>>+38
   先生達の判断は、間違いと糾弾出来るものでもない。

  
(+49) 2023/10/05(Thu) 17:46:56

【墓】 エウロパ



   
―――――でも、やれることさえしないのは罪だ。


   シトゥラは窓の外からでも見える 
   魔力暴走に目をやり、友人の無事を祈りながら
   魔法薬調合の作業を止めることはない。

  
(+50) 2023/10/05(Thu) 17:47:39

【墓】 エウロパ



   エウロパの素直な性格が好ましいと思っていた。
   彼女の言葉には何の含みもない。
   この学園に来て最初に仲良くなった人。
   一緒に居て居心地のいい友人なのだ。
   本当は今すぐにでも助けに行きたい。

   
でも、今あの場に行けるほどの能力が自分にない。

   それが分かっているから、行かない。
   
誰よりも彼女を想う秀才ならきっと大丈夫。>>+41


  
(+51) 2023/10/05(Thu) 17:48:50

【墓】 エウロパ



   そう信じて、手元で調合するのは回復薬。
   あれほどの魔力暴走を起こしたのなら
   きっとエウロパの魔力は枯渇寸前。
   魔力の回復を早める薬を作らなければ。

   学校の医務室に常備されているものでは
   彼女に使うには効き目が足りない。 
   あれは、一般の生徒に使う事を
   想定した物だと知っている。

   彼女ほどの魔力の持ち主なら
   効果を10倍して足りるかどうか。


   
(+52) 2023/10/05(Thu) 17:49:32

【墓】 エウロパ



   効き目が弱すぎても強すぎてもいけない。
   難しい調整を終え、魔法薬を作り終えた
   シトゥラは、出来上がったものを瓶に詰める。
   同時に作っていた怪我の治癒薬も持つと
   向かうのは医務室。

   絶対に彼は私の友人を連れて帰ってくる。
   だから、先回りして待つだけ。

  
(+53) 2023/10/05(Thu) 17:50:19

【墓】 エウロパ



   彼が来た時、
   シトゥラは一言添えて、薬を渡す。


   
「君ならお姫様の元へ行けると思ってたよ。」
**

   
(+54) 2023/10/05(Thu) 17:51:13

【墓】 ユスティ



***

   しかしエウロパは独りではない。
   彼女を助けようとする人は必ずいる。

   狼狽える先生や生徒など
   初めから眼中にはない。


   そして意外にもその人は天才というよりは秀才で
   薬学においてはユスティを超えていると言っていい。

   彼女の素直な性格に惹き込まれたその一人は
   まるで待っていたかのように
   ユスティが向かったその先、医務室にいた。


(+55) 2023/10/06(Fri) 21:29:46

【墓】 ユスティ



   「からかうなよ。

      ボクは王子様でもなんでもない。」


(+56) 2023/10/06(Fri) 21:30:00