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【人】 上原 隆司[上原隆司は取材を終えて街を歩いていた。 時刻は夕方。学校ならちょうど下校時間だろうけれど、会社に戻ればもう一仕事ある時間。 すぐに会社に戻るよりは、どこかに立ち寄って一服したい。それが常の行動だった。 というのも、取材の内容で気が重くなるからである。 上原が所属する会社の都合上、取材の内容はいつも恋愛絡みのゴタゴタが主。 浮気、不倫、ストーカー、寝取り寝取られ、その他諸々の「事実は小説よりも奇なり」を地で行くようなエピソードの数々を、実例として知っていた] (5) 2021/02/27(Sat) 11:14:38 |
【人】 上原 隆司[上原はその手の話題にハマれない性分だった。それが良かったのか悪かったのか、自分では判断しかねていた。 ひとつひとつの話題に入れ込むことがない反面、取材をするたび「面倒くさい」という感想が湧いた。 ――こんな話題を好き好んで読むって、どんな奴らなんだ。 そんな疑問を抱きながら、日々記事を書いていた。 上原の記事は何種類かのウェブメディアに載る。そういう話題を手軽に読みたい層が複数いるのだろう。 人気のある話題なのは知っていても、それを好む人物像は把握しきれていなかった。各メディアのターゲット層を指示されているにも関わらず、ピンとこなかったのだ] (6) 2021/02/27(Sat) 11:15:04 |
【人】 上原 隆司[そんなわけで上原は、道を歩きながら行き先を考えていた。今はなんとなく、お気に入りの喫茶店に行きたい気分だった。 レトロ喫茶『ハーモニー』 執事やメイドが出迎えてくれる店だが、近年流行の媚びた店とは一味違う。“カフェ”ではなく“喫茶店”――そういうこだわりを感じる、言わば純正喫茶店だった。 メニューも上質で、行けばいつも心が安らいで、取材帰りに足を運ぶことが多い店だった。 もし上原の担当が街中の喫茶店紹介だったなら、迷わず取材していただろう。 思考にその店があったせいなのかどうか。 進行方向に沈んだ表情の女の子を見かけたとき>>4、上原の脳裏ですぐに彼女のメイド服姿が浮かんだ。 取材相手が土日休みなことが多いせいで、上原の出勤日には必ず土日が含まれていた。その帰りにハーモニーに立ち寄ると、よくいる子だった] (7) 2021/02/27(Sat) 11:15:32 |
【人】 上原 隆司[彼女の名は何だったか、と上原は考え込んだ。 仕事について詳しく語った記憶もなく、話すことがあっても世間話程度だった気はしている。 それでもハーモニーに行って彼女がいると何となく嬉しくなる。上原にとって彼女はそのくらいには顔馴染みだった。 もっとも、彼女にとっては大勢いる客の一人かもしれないのだが。 どう声をかけたものかと上原は思案したが] お嬢さん、いくら? [とりあえずからかってみるか、という悪戯心が湧いた。 なんで落ち込んでいるかは知らないが、下手に気遣うより、反発を招いたほうが気も紛れるんじゃないか――そんな捻くれた心情が働いた末だった]** (8) 2021/02/27(Sat) 11:15:53 |
上原 隆司は、メモを貼った。 (a1) 2021/02/27(Sat) 11:16:21 |
【人】 上原 隆司[>>9 >>10律儀に返答してくれた彼女は、明らかに怒りを向けていた。 上原はそれを確かに感じ取って、苦笑して肩をすくめた] ごめんって。からかっただけだよ。 [悪気はあったが謝ることにはする。傷つけようと思ってしたことではなかったからだ。 それに、彼女が己を仕事先の客と認識してくれていると上原は気付いた。彼女が覚えていてくれるのに、そのまま去る気にもなれなかった] なんかあったのか? 落ち込んでるように見えたが…… [果たしてこの状態で話す気になってくれるものなのか。疑問は感じつつも問わずにいられず、気遣うような声を投げた]** (11) 2021/02/27(Sat) 11:55:33 |
【人】 上原 隆司[>>12「冗談に聞こえない」と少女に言われ、上原は苦笑いを維持することになった。買いそうに見えると言われたようなものである。 とは言え、自業自得である以上、言い訳を重ねようとはしなかった] バレンタインか……そういや、そういう時期だな。 ……青春だねえ。 [想いが叶うのも叶わないのも、恋敵が身近にいるのも、学生時代ならではという印象を受けた。 それでも、告白して振られたならまだ割り切りようがある気がしてしまうのは、そこまで辿り着けなかった思い出のせいだろうか。 >>13彼女の片想いの相手としてすぐに思い浮かぶ相手はいない。喫茶店で苦い思いを晴らそうとする人はいるだろうけれど、それが何かまでいちいち聞き耳を立てる趣味はこの男にはなかった] (15) 2021/02/27(Sat) 15:50:32 |
【人】 上原 隆司[>>17誰かの恋愛対象に、なれるかなれないか。ひとえに相性としか言えない問題だ。それでも頑張ろうとしたらしい彼女が想いを叶えられなかったことが、上原の目には眩く映っていた。 真剣に恋をしようという気が、久しく無かったからだろう。 >>18“デート”に前向きな言葉を重ねながらもどこか警戒する様子も、生真面目さを感じて心地よく映った。 とはいえ] オジ……。 [>>19高校二年と自己紹介されると、上原は少し意外そうに彼女を見つめ返した。 未成年には見えたが、大学生か専門学校生か……そのくらい、彼女は少し大人びて見えていた] (21) 2021/02/27(Sat) 17:51:30 |
【人】 上原 隆司 矢川さんね。俺は上原隆司。ライターやってる。 デートは大丈夫だろ。 取材相手が若いお嬢さんなのはよくあることだからな。 [何か疑惑の目で見られたときには取材だったと言っておけばかわせる、と上原は考えていた。 もっとも、デート扱いして困ることはせいぜい年齢差ぐらいなのだが。 >>20隣を歩こうとする彼女を見て] 行き先のリクエストはあるかい。 俺が行こうとしてたのはハーモニーだったが、 職場にプライベートで行くのは嫌じゃないか? [念のために問いかけた。 彼女が嫌がらないなら、上原はそのままハーモニーまで共に歩くだろうけれど。 もし矢川の望む店が他にあるなら、共にそちらへ向かうことになるだろう]** (22) 2021/02/27(Sat) 17:51:54 |
【人】 上原 隆司[>>24 >>25事情を聞くと頷いて] そういう事情ならその店にしておくか。 何かおすすめあるか? [深く問うでもなく受け入れて、別の場所と伝えられたコーヒーショップに向けて歩き出した。ときどき行く店のひとつだった。 隣をついてくるだろう彼女を見やる。話しながら歩くつもりで、歩調は彼女に合わせようと考えていた] ハーモニー、辞めちまうんだな。 寂しくなるな……そんなに親しかったわけでもないが。 [懇意ではなくとも、当然そこにいる人として馴染みのある相手。上原にとっての矢川はそんな店員のひとりだった。見知った環境が変わってしまう気がする。アルバイトの学生なんて、いつの間にか入れ替わっているものだけれど] (27) 2021/02/27(Sat) 19:06:32 |
【人】 上原 隆司[話しながら歩いているうちに、すぐに目当てのコーヒーショップにたどり着く。 「お煙草はお吸いになられますか」 店員に問われて習慣で喫煙席を申し出ようとして、上原は矢川を振り返った] 吸ってもいいかい。 [了承を得られれば喫煙席へ、拒まれたなら禁煙席へ。 席に着いたあとはメニューを眺めて、好みのコーヒー豆があるか探すことになるだろう。普段は深煎りで甘みの強い豆を好んでいるが、ほどよいものにはなかなか巡り会えないのが悩みの種だった。 もし矢川おすすめのメニューがあるなら、それも考慮した上で決めることになるだろう]** (28) 2021/02/27(Sat) 19:07:08 |
【人】 上原 隆司[>>30矢川が喫煙席に抵抗を示さないことに、内心安堵していた。若い女性の煙草嫌いは並ならぬものと思い込んでいたことに、今更ながら気づく。 >>31豆選びになると] 好きな豆か…… 飲んだときに甘みの残る豆が好きでなぁ。 気に入る豆はレアか高いかで、あまりお目にかかれない。 いつも深煎りで妥協してる……。 俺も今日のブレンドにしておこう。 それとチョコクッキーを。 [酸味が苦手だ、と一言付け加えながら、豆とお菓子を選ぶ。 甘いものはコーヒーの酸味を引き立てやすいが、チョコに合わせる前提ならばそれも気にならないかと、組み合わせてみることにした。 喫煙席に人が少ないのは、会社員なら仕事中の時間帯だからなのかもしれない。 物珍しそうな矢川を見て、上原は改めて彼女が高校生だと実感していた] (34) 2021/02/27(Sat) 21:03:00 |
【人】 上原 隆司 客とデートなんかそうそうしないよな。 いつもと比べると随分沈んで見えたな…… 学校の友達から見てどうかは俺にはわからんが。 [沈んで見えたのは、仕事中の彼女が浮かべる営業スマイルとの落差もあるのかもしれない。 デートという表現を深く追及せずにはおいたが、実のところ、気になる表現ではあった。 ――デート扱いでいいのか? デートするような間柄ではない上、10歳差。正直に言って、恋愛対象に見ているわけではなかった。 デートごっこ。上原からすると、そんな感覚の時間だったのだが……わざわざ言って水を差すこともないか、と黙っていた]* (35) 2021/02/27(Sat) 21:03:21 |
【人】 上原 隆司[バイト先を辞めたくなるほど、付きまとわれているのだろうか。 過去の取材で知ったストーカー事例をぼんやり思い出しながら話を聞いていると、>>38突拍子もないお願いに目を丸くすることになった] こ……、恋人役? お嬢さんの身を守るためにか? [矢川と名は聞いたが、咄嗟に出た呼び名はどういうわけかそれではなかった。 ストーカー対策に新しい恋人の力を借りるというのは、よくある話だが――] ……付きまとわれてんなら、 すぐバレちまうんじゃないのかね。 [本物の恋人ではないことが。 それでは火に油を注ぎかねない。 それに――そこまでしてやる義理がない。それが上原の率直な感想だった]** (41) 2021/02/27(Sat) 22:13:19 |
【人】 上原 隆司[>>42>>43身を守る以外の理由を聞き、振られた相手への想いの強さが伝わってきた] 幼馴染かぁ……、恋になるのは難しいよな。 振るにも罪悪感あるだろうし。 けど、それなら尚のこと、ちゃんとした 恋人がいたほうがいいんじゃないのか? 恋人役がいちゃ、本物もできなくなるぞ。 [作ろうと思って作れるものではない。 彼女の身近な男性には不安が湧く存在も多いのだろう。 それでも見せかけの存在でごまかすよりは、ちゃんと通じ合える人を……。 上原がどうしてもそう思ってしまうのは、“見せかけの恋人”からトラブルに繋がった事例をいくつか知っているせいなのだろう]** (46) 2021/02/28(Sun) 7:58:52 |
【人】 上原 隆司 ……その間、俺も恋人ができないってことだよな。 [>>49高校を出るまでとは、短いようでいて長い。 その間、「恋人のフリ」を維持するのは……フリだとばれないように維持するのは、相当に難しい気がした。 ――いっそ本当に付き合うほうがマシでは? 一瞬考えついてみるものの、さすがに勢いで提案する内容ではなかった] そいつのことは……なんでそんなに好きなんだ? [語られた範囲でその相手に好感を抱ける理由は、上原には理解できそうになかった。かといって闇雲に批判するのも躊躇った。 返答を待ちながらチョコクッキーを小さく齧る。口の中に広がる甘みを、その後に飲んだコーヒーが中和し、蕩けるような濃厚な風味を残していった]** (51) 2021/02/28(Sun) 10:15:26 |
【人】 上原 隆司 そんなに気にすることはないよ。 [問題があったとすぐに反省ができるのなら、良識はある子なのだろう――上原は素直にそう認識した。 それにしても、上原が恋愛も結婚も「面倒臭そう」と感じてしまうのは、普段仕事で見聞きする話題のせいなのか。 1年縛られる間に自分に出会いがなくなろうが、実際に困ることはあまり無いような気はしていた。 それでも軽はずみに受ける話題ではないのだけれど] (55) 2021/02/28(Sun) 13:58:48 |
【人】 上原 隆司[クッキーをかじってチョコレートを味わってから、コーヒーをまた一口。 >>53 >>54彼女の答えを聞きながら、上原がなんとなく思ったことは] 距離が近すぎたのかねえ……。 [そばにいるのが当たり前の……例えば、家族。 夫婦で恋心を抱き続けるのは難しいと聞く。兄弟姉妹に恋はあまりしないだろう。 彼女たちの実情はもっと複雑だったのだろうけれど、そこまで聞かない上原が出した結論はそんなところだった] 恋は駆け引きってよく言うしな。 惚れさせる努力ってのはいろいろあるんだろうな。 [そこまで言うと、上原は一度煙草に手を伸ばした。火をつけっぱなしで溜まった灰を落として、軽く煙を味わい、座席の背にもたれた]* (56) 2021/02/28(Sun) 13:59:09 |
【人】 上原 隆司 告白から始まってもいいと思うけどな。 相手が前向きに受け取ってくれることもあるだろ。 相性はあるからな。 告白もなくなんとなくで両想いになる人たちもいる。 告白されるまで眼中になくて、それから付き合って いつの間にか円満って例も聞くし。 [短くなってきた煙草を灰皿で揉み消し、コーヒーを一口飲んだ] (61) 2021/02/28(Sun) 14:40:04 |
【人】 上原 隆司 気に入っている相手に妬くと言われたら、 期待するのは人情だよな……。 けど……応える気は、そいつに無かったのか。 [言い方に悩みながらも、上原は釈然としない部分を繰り返した。 どうにも不条理に感じる。 いっそ体目当てだったと思うほうがすっきりするくらいだった] 正解が決まってないから難しいよな。 人間関係ってのはさ……。 [同じ行動でも、ある人には喜ばれ、ある人には疎まれる。 努力をしなければ結ばれない人より、自然に通じ合える人がいればそのほうがいいのだが……そう簡単に見つかるものでないのは、上原は実感していた]* (62) 2021/02/28(Sun) 14:40:27 |
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