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185 【半突発R-18】La Costa in inverno【飛び入り募集】
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[ 美しさ以上に価値あるものなんてない。 ───この街で息をするのなら。
星空のように煌めく髪も、 夕焼けと夜を混ぜたような大きな双眸も、 己の美を振りまくための踊りをこなす手足も。 ]
(9) 2022/11/21(Mon) 12:23:51 |
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[ 何かが欠けてしまえばきっと、 私の価値は無に帰る。 ]
(10) 2022/11/21(Mon) 12:24:07 |
![](./img/jokamachi/75.png) | ― 中央広場 ― ……今年も人がいっぱい。 [ まだフェスは本番を迎えていないというのに、 既にラ・コスタは、祭りを待つ人で溢れている。 純粋に美を美として愛でたい、という者は この客の中に一体何人いるのだろうか。 ちらほらと、著名な演者の姿も雑踏の中に見えれば 女は知らずのうちに、スカートの裾を握り締めた。 ] (11) 2022/11/21(Mon) 12:24:20 |
![](./img/jokamachi/75.png) | …………大丈夫。 [ ある時は、拠点にしている小さなホールで。 時折、希望者に無償でステージを貸してくれる >>0 気前の良いマスターが経営するバーで。 人々に披露した舞いも、──この見目も。 不合格の烙印を押されはしなかった、から。 女は息を吐いて視線を空へ向けた。 周囲の熱気と裏腹に、心だけがひどく冷えている。** ] (12) 2022/11/21(Mon) 12:24:32 |
| (a4) 2022/11/21(Mon) 12:33:11 |
![](./img/jokamachi/75_C.png) | ────ッえ、 [ ぱ、と声のした方へ顔を向けた。 >>23 知らずのうちに力を込めていた指先を緩め、 女は特異な色の双眸に、目の前に人物を映す。 ] ぁ、……その、大丈夫。…です。 人が多くて、緊張しちゃって…… [ 誤魔化すように微笑めば 男性にも──女性にも見えるような、 その曖昧さが目を惹く人物へ小さく頭を下げる。 ] (57) 2022/11/21(Mon) 18:37:03 |
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[ やり取りは、左程長いものでもなかった。 ただ、人と話すという行為を経るだけでも 抱えていた緊張は少しばかり解れていって。
その背を見送る時にはきっと、 血色を取り戻した頬を緩ませて見送ることだろう。 ]
ご親切に、ありがとうございました。 ──貴方にとって、良いフェスになりますように。
[ そんな言葉も添えながら。* ]
(58) 2022/11/21(Mon) 18:37:07 |
![](./img/jokamachi/75.png) | [ ────そうしてまた、空を見上げた。 今は星たちは姿を見せない時間だけれども、 時が経てば、手の届かない先で輝き始める。 その光景に比べれば、己の星屑の煌めく髪なんて 果たして何人の琴線に触れるのか……。 ] ──……はい? [ 考え事をしていれば。 次に掛けられた声は、確かに己を識っているもの。 >>30 ぱち、…と目を瞬かせた先 そこに立っていたのは、見慣れない中老の男性。 戦うことを知らぬ女に、正体を察する力は無いが 名前だけは幾度か聞いたことがあった。 ] (59) 2022/11/21(Mon) 18:37:17 |
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[ 曰く。 ──彼の庇護下に抱えられるということは この街での成功≠ノ他ならない、と。
美を売り物にする者が、 喉から手が出る程に求め欲する、パトロン。 ]
…………はい。 仰る通り、踊子のリリーで間違いありません。
探し物──ですか?
[ 女が動けば、桃色と星空の髪が揺れ。 向けた瞳にも──よく見れば星が散っている。
有力者との会話というものに慣れぬ女は、 先とは別種の緊張を纏い、続く言葉を待った。 ] (60) 2022/11/21(Mon) 18:37:22 |
![](./img/jokamachi/75.png) | [ そして。 継続した庇護や固定のパトロンというものを 未だ持ったことがない女には、 それだけで心臓が跳ねるような言葉が紡がれる。 >>31 ] ……見て頂いたことがあるなんて、光栄です。 私で良ければ、お伺いを。 [ けれども、それを表に出すことはしないまま 柔らかに微笑んで女は言葉を返した。 この街で絶対的意味を持つ、其々の美。 ──女が武器とする美に、 権力や名声、庇護への媚びは不純物だ。 まさか彼が文字通り、物を探している訳ではあるまい。 予想立てを頭の中で組みながら 女は首元のリボンをふわりと揺らした。* ] (61) 2022/11/21(Mon) 18:37:26 |
![](./img/jokamachi/75.png) | ― 回想:怪人との邂逅 ― ────あら。 貴方様のお気には召しませんでしたか…? [ その日も普段と変わらない演目だった。 舞いを美しく見せるための工夫を凝らした衣装で、 ──殆どの者が真っ先に称賛を向ける この髪と瞳が活きるよう、指先をしならせて。 けれど、反応だけはいつもと違った。 ステージから降りた女に掛けられた声が >>32 女の見目を絡めた賛美では、なかったから。 些か眉を下げて微笑み、 きっと己にしか聞こえなかった言葉を飲み下す。 ] (65) 2022/11/21(Mon) 19:18:12 |
![](./img/jokamachi/75.png) | ……ふふ。 心に留めておきます、ミスター。 [ 振り返らずに一歩を踏み出す背中へ、それだけを。 彼は己の返事を期待してはいないような、 ──何となくそんな気がしたからだ。 続けて声を掛けたのは、既知でもある奏者の女性。 彼女の音色を気に入ってからというものの 場所や時が重なれば、決まって彼女へ依頼していた。 今夜の伴奏もとても良かった、……と >>46 紡ごうとした口は閉ざし、彼の演目を眺める。 リュートの音色の風に乗り、 歌われる言語は確かな意味を耳に届けはしない。 人は、識らぬものを理解出来ない。 ] (66) 2022/11/21(Mon) 19:18:20 |
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[ が、意味あるものばかりが美しいとは限らない。 ──彼の歌劇はその類だ。 言葉が伝わらなくとも、人に爪痕を残す。
いつか誰かに聞いた昔の話、 ラ・コスタで人気を博した著名な歌劇の名手── 過去の存在、実際見聞きもしたこともない、 そんな人物を想起させるくらいには。
演目は滞りなく進んでいく。 軽やかにステージを降りる彼を拍手とともに見つめ、 くす、と微笑んだ。 ] (67) 2022/11/21(Mon) 19:18:22 |
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[ ドアを開けた音もしないのに、 気付けば青年の姿は拍手の波に雲隠れ。
一度の邂逅で、随分と印象的な彼のことを 女はきっと忘れることはないだろう。* ]
(68) 2022/11/21(Mon) 19:18:31 |
| (a15) 2022/11/21(Mon) 19:20:27 |
![](./img/jokamachi/75.png) | ― 回想:奏者の女と ― [ 名前を呼ばれ、微笑んで顔を向けた。 >>71 彼女の音色を気に入り、縁を重ね、 そうして時間をこうして共に過ごすうち 自然と語らうことも多くなったように思う。 踊子と、奏者。 ──彼女との関係は、そんな単純な言葉では 表せない……とも。 ] イルムヒルト、ありがとう。 貴女も、今日の演奏。素敵だったわ。 ……あら、そう見える? [ 普段よりも楽しそう、なんて。 隠しているつもりだったけれども、 彼女にはお見通しのよう。 ] (95) 2022/11/21(Mon) 20:51:56 |
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初めてだったの。 まず真っ先に触れるのが、私の髪でも目でも無く 踊りの不自由さだった人なんてね。
……彼、私に 「もっと自由に踊っても良いんじゃないか」って、 そう言ったのよ。
[ 機嫌を損ねた、なんてことはない。 何故ならば彼の指摘は至極真っ当なもので、 ──女も自覚していることだったから。
マスターに声を掛け、飲み物を二人分注文すれば 女は彼女へと一つを差し出した。 依頼の報酬は事前に渡してあるから、 これはあくまで、友人と飲みたいだけ。 ]
(96) 2022/11/21(Mon) 20:52:01 |
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イルムヒルトは、どう?
もっと自由に──何も気にすることなく、 なにかを奏でてみたくなる時は、あるかしら。
[ 小首を傾ぎ、彼女の瞳を見つめる。 この街で生き、共に美を披露する身であるが故に 彼女が見せる反応次第では、当然 深入りするつもりはないけれど。* ]
(97) 2022/11/21(Mon) 20:53:18 |
![](./img/jokamachi/75_C.png) | ― 中央広場 ― 踊りは……お恥ずかしながら、独学なんです。 幼い頃からの趣味が興じた形で…。 [ 目の前に立つ男の声音は、存外優しいもの。 >>72 積年を体現するような貫禄は存在感を放ち、 雑踏の中であっても全てが曇ることはない。 ──故にパトロンとして名高いのだろうか。 ] ……………………、 [ 途中で紡がれなくなった言葉の続きなんて、 火を見るよりも明らかなことだった。 ……そう。「足りない」。 数多の原石を一等星に仕立て上げた彼の感性は、 正しく女の美を見定めている。 ] (120) 2022/11/21(Mon) 22:37:23 |
![](./img/jokamachi/75.png) | [ そうして。 向けられる手と言葉は、蜜のように甘い。 >>73 多くの者がこの手を取っては表舞台へ上がり、 星のように自らを輝かせていったのだろう。 ] ────私は、私の可能性を信じています。 けれど今仰られたように ……足りない部分があることも、知っています。 [ それを埋める方法があることも。 ──信じるだけでは永遠に空洞のままであることも。 差し出された手。優しい声。 常に小さな舞台で舞いを披露する程度の己に、 彼が契約を持ちかける意図はなんなのか。 ] (121) 2022/11/21(Mon) 22:37:30 |
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[ 行き交う人々が時折こちらを見つめている。 有力者の顔や、有名ではない女のことは知らずとも フェス前のこの光景は、確かに目を惹くものだ。
ふ、と息を吐いた。 ]
──このフェス中に、 私は……自覚している不足のピースを 己で埋めてみようと、思っています。
それが私の────美への、覚悟、です。
[ 自らが輝くためのステージを。 欲のまま望むなら、確かに今手を取るのが正解だ。 誰だって他人の敷いたレールを走り、 求められるがまま進む方が楽だから。
けれどきっと、それではまだ足りない。 私の求める美は ──……もっと…。 ] (122) 2022/11/21(Mon) 22:37:44 |
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そのうえでお気に召していただけたなら、 改めてお話を。
……というのは、些か失礼、でしょうか?
[ それを理由に手を引かれても止む無し、と。 女は背筋を伸ばしたまま、 すこしだけ眉を下げた。* ]
(123) 2022/11/21(Mon) 22:37:46 |
![](./img/jokamachi/75.png) | ― 回想:奏者の女と ― [ イルムヒルトから肯定が返ってくれば >>102 女は照れたように肩を竦めた。 別に、彼女になら見透かされても良いのだけれど それとは別種で、何となくの気恥ずかしさが残る。 ] …………うん。 [ よかったね、と紡ぐ声音は 春の木漏れ日のような穏やかさを纏っていた。 だから女も素直に首を縦へ動かせるのだ。 彼女の、安心して隣に座っていられるような、 そんな雰囲気は、女の心をなだらかにしてくれる。 ] (136) 2022/11/21(Mon) 23:31:49 |
![](./img/jokamachi/75_C.png) | ……貴方だけの、音。 [ 自然と、飲み物を口にする動作が止まった。 >>103 自分だけの、美。 ──彼女だけの音。 それはきっと、多分 女の──ううん、私の望みと似ているのだと思う。 だから、私のことを聞きたがってくれる貴女に、 私はへにゃんと眉を下げて笑った。 ] (137) 2022/11/21(Mon) 23:31:51 |
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似てるかも。私たち。
私も、……私を探してる。 みんなが褒めてくれるのは、この見た目だから。 ……それに縛られちゃってるのかな。
[ 理由はきっと、私と貴女で違うのだろうけど。
顧客から求められるまま演奏をする、貴女。 観客から求められるまま舞いをする、私。
フードの陰でやや見えづらい貴女の琥珀色。 しっかりと見つめて、 周囲の客たちには聞こえないように。 ]
(138) 2022/11/21(Mon) 23:31:54 |
![](./img/jokamachi/75.png) |
ねえ、イルムヒルト。 次はいつが空いてる? 私、貴女の演奏で踊りたいの。
[ 内緒話が終われば、にっこり笑って したたかに次の予定を抑えにかかった。* ]
(139) 2022/11/21(Mon) 23:33:01 |
| (a25) 2022/11/21(Mon) 23:35:14 |
![](./img/jokamachi/75.png) | ― 回想:奏者の女と ― [ 貴女の内に秘めているその思考が >>146 表にもし、出てくれるのであれば。 私は笑って「元からそうだと思ってたわよ?」と 言えることもあるのだけれど。 信じてくれるかな。どうかしら。 ] ……ありがとう、イルムヒルト。 私も、「イルムヒルト」の演奏、好きよ。 だからここに来てるんだもの。 [ 踊るだけなら小さな劇場でだって事足りる。 わざわざ少し遠いここのステージを借りるのは、 奏者が貴女であるからよ。 ] (170) 2022/11/22(Tue) 19:26:45 |
![](./img/jokamachi/75.png) |
[ 私に微笑んでくれる貴女へ笑い返し、 手帳の空白を私で埋める。
────そんな、ある日の話。* ]
(171) 2022/11/22(Tue) 19:26:50 |
![](./img/jokamachi/75_C.png) | ― 現在:中央広場 ― [ 優し気な表情はなにひとつも変わらないのに、 その瞳だけが明らかに色を変えていく。 >>144 咲いた花が枯れるような、 或いは春が冬へと転じるような。 ──どちらにせよ。 予想していた事態とはいえ、やはり己の返答は かの有力者の機嫌を損ねるものであったらしい。 ] …………光栄なことである、とは もちろん理解しておりますが、が… [ その手を取れば、成功が約束されたも同然。 仮に花開かなければ──そこまでは知らずとも。 首元のリボンがひらりと揺れる。 ──妙な胸騒ぎがした。 ] (172) 2022/11/22(Tue) 19:26:53 |
![](./img/jokamachi/75_C.png) | ────肝に銘じておきます。 [ 薄く笑んだままの唇から発される言葉は >>145 文字通りの脅しだ。 美を庇護下に入れ、パトロンになろうとする者が 単なる善意であるばかりの筈がない。 多くの者は大なり小なり思惑を胸に抱えている。 雑踏の中へ踵を返す男を見送ろうとして、 ──────女の双眸は見開かれた。 ] (173) 2022/11/22(Tue) 19:26:56 |
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[ 男の姿が完全に視界から消えた後。 女はようやく強張っていた体の力を抜き、 長い溜息を吐いた。 ]
……やっちゃったかもなぁ、これ。 まあ、それはそうか……。
[ 緊張で冷え切った指先を温めるように握り締める。 どうにか忘れてくれないものか、と 叶いそうにもない願いが頭の中を過ったが。
とにもかくにも無理な話。 気持ちとは裏腹にきらきらと煌めく髪を靡かせ、 またひとつ溜息を。* ]
(174) 2022/11/22(Tue) 19:27:57 |
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