【人】 世界の中心 アーサー[ 何時か、その時から。 屋敷から出る事の少ない男に代わって、 “あるひとつの未来”の行く末を視る眼を、 依頼する様になっていた。 ──己の未来ばかりは、見通すことなどできないから。 彼等、彼女等が“そう”であった理由を、 その先を、予測する為に。 ] (180) 2020/05/16(Sat) 16:16:38 |
【人】 世界の中心 アーサーきみが、如何してこんなところにきてしまうのか。 ──理由だけなら“知って”いる。 きみを“迎える”ものが、良いか 悪いかだって。 きみの足を止めることはできない。 僕は窓の向こうで見ているだけの存在だ。 いっそ同情すらしたかもしれない。 顔しか知らない、その人に。 (181) 2020/05/16(Sat) 16:17:18 |
【人】 世界の中心 アーサー[ ただいま、と言うには遠く、 おかえり、と言うには近い。 百万本を靴底に敷いたとしても、 天鵞絨に埃色のあしあとを残したとしても、 別段、白銀の指輪を添えた訳でも無い。 依頼主と、遂げるもの。そういったふたりだ。 紺青の手帖を開く。 ] (184) 2020/05/16(Sat) 16:18:42 |
【人】 世界の中心 アーサー[ 万年筆が紙上を滑る。 日付に、簡単な依頼内容。覚書の様な。 良く学んだ、御行儀の良い筆記体だ。 御手本の様でも有る。 ──正に、御手本を写す事を“学び”と呼んでいたから、 そのとおりにも育つ。 唯一、大文字のMには見てわかる癖が有れ── そんなのは些細な個性だ。 彼女の言葉少ない報告に合わせて インクを滑らせているにしては。 ] (186) 2020/05/16(Sat) 16:20:31 |
【人】 世界の中心 アーサー( ひと夜にひとつ、 “だれか”の未来を視る。 顔しか知らない だれかの、 あるひとつの みらい。 死か 生か、 そういったものに関わるもの。 前後を繋げるために、言葉が必要だった。 大局を視ることができないのならば、 知るしかなかった。 ──何れ訪れる ■を 遠ざける為に。 ) (187) 2020/05/16(Sat) 16:21:17 |
【人】 世界の中心 アーサー──今回もありがとう、ミア。 [ 何一つ汚れちゃいないかんばせを、 そりゃあうつくしく綻ばせ、 ( 話の内容からは程遠いかのように、 ) 低い声で、依頼の達成を 告げていた。 ──紅茶でもどうだい── そう、言い添えて。 **] (189) 2020/05/16(Sat) 16:22:35 |
世界の中心 アーサーは、メモを貼った。 (a34) 2020/05/16(Sat) 16:24:19 |
【人】 世界の中心 アーサー──ミルクをたっぷり入れれば良いのに。 [ パンが無ければ、の 論法だった。 砂糖壺だって常備されていることも、きっと、 彼女は知っているから。 使わないだろう事を、付き合いのうちに学んでいても。 ──この世の中、 milkもwhite sugarも相当に高級品であるから。 己の分のみ、入れ違いに現れたメイドに頼み、 埃を落としに向かった背中を見送っていた。] (258) 2020/05/16(Sat) 23:12:35 |
【人】 世界の中心 アーサー[ 水瓶より、硝子杯に透明色を取る。 とぷん と 水面が揺れる度、薔薇が香っていた。 この館の中で、唯一、 “主人”の口付けるものだけは こう言った香り付けがされている。 ひとつは、この男がこういった“格好”を好むこと。 ひとつは、もてなしが求められる世界に生きていること。 また、──下手な水を、飲んでしまわない為に。 ] (259) 2020/05/16(Sat) 23:13:24 |
【人】 世界の中心 アーサー[ 気にし過ぎだ、と 言うものも居るだろうが。 ──経験してから言って欲しいものだ。 水を銀杯に、だなんて そんなことはあまりしたくない。 硝子の方がうつくしい。 光を反射した細工が、木目に映るのが良い。 蝋燭の灯を受けた硝子表面を眺めながら、 密かにわらっている。 はじめて此れを飲み込んだとき、 彼女はなんと言ったのだったか。 ] (260) 2020/05/16(Sat) 23:13:54 |
【人】 世界の中心 アーサー[ ドレスを着せてやりたいと思ったこともあった。 否──実は仕立ててはいるのだけれど、 自己満足の範疇で、渡すつもりは無く。 指先の指示ひとつで用意されるのは、 今彼女の纏うような、少年のような、 其れ。 ──きなりのシャツに、サスペンダーパンツ。 そういったもの。 どうしても仕立ての良いものにはなるけれど、 長く着るだろうから、良いだろう。 使うものの少ないシャワールームだと言うのに、 ただっ広い“前室”に、1組の着替えが置かれている。 また、数枚のシャツと色違いのパンツを 纏めて布袋に詰めてあった。 ] (262) 2020/05/16(Sat) 23:14:54 |
【人】 世界の中心 アーサー[ 紅茶が適温を示す頃、きっと、湯気を伴って帰るから、 猫脚の卓上には、食事も準備されている。 パンと、卵を崩して焼いたもの、 其れにすこしの果物──赤みのつよいオレンジを添えて。 普段の朝食のよなメニューであれ、 本来はスープを用意するのだけれど、 どうにもポタージュは好かないそうだから 水気は“薔薇水”で取ってもらおう。 光に透かせていた硝子を置く。 ──こつん、と 硬いものが木を叩き、] (263) 2020/05/16(Sat) 23:15:26 |
【人】 世界の中心 アーサーやあ、 おかえり。 [ 幾分か近くなった“迎え”の言葉。 紺青の手帖は、開かれたまま、 適当に置かれている。**] (264) 2020/05/16(Sat) 23:16:23 |
【人】 世界の中心 アーサー[ 確か、2匹の犬がかわるがわる、頻りに吠えた夜。 どうやら彼等も、その骨ばかりの身に噛み付く気は ひとつもなかったらしく、 ( 否──服を噛んで引き摺るくらいのことは していたようだから、 彼女が“死んで”いた、理由の一端は有ろう。 ) ──人が“落ちて”いました。 と、使用人のひとりが指し示す程度ではあったか。 その身なりと痩せた身体を見れば、 “そのひと”が“どこの誰でもない”ことくらいは 誰もが察していた。 ] (306) 2020/05/17(Sun) 14:28:34 |
【人】 世界の中心 アーサー[ 水瓶をひっくり返した拍子、 僕だってそう無事ではなかったけれど、 被ったところでめざめることのない道楽だった。 薔薇の滴る前髪を額に沿わせ、 唯、 “なにか”を覚えつ。 ── 生還おめでとう。 と。 そう、わらっていた。 ] (309) 2020/05/17(Sun) 14:30:17 |
【人】 世界の中心 アーサー[ 男の前には、紅茶と、すこしの菓子がある。 “苦い”ものには“あまい”もの。 開けた余りは油紙に包まれて、 “自分のもの”を抱えて食す、彼女のものになる。 ──その服装に、この土産では、 小間使いにしても上等だ。 残念ながら、男は“基準”がわからない。 己に取って朝食であるメニューが、何食分か、なんて。 そんなことも知る由もない。 パンは1日みっつは食べるものだし、 卵も1日ひとつは食べるものだから。] (311) 2020/05/17(Sun) 14:31:21 |
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