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【人】 雨宮 瀬里その日はすぐにやってきただろう。 宮々の家に行く車の中では、 きっといつもよりも会話は少なかった。 私ね。 時折貴方を窺っては 貴方を好きであることを確かめてた。 貴方の気持ちがなくなったとしても、 私の気持ちがなくなったとしても、 一瞬一瞬のことを、思い出せるように、 流れる景色の内側に、貴方の存在を確かめてた。 (0) 2022/05/26(Thu) 13:58:42 |
【人】 雨宮 瀬里私が知らなかったのは 恋矢が抜かれると、恋心を失うだけではなくて 貴方が記憶を失う可能性もあるということ 私も貴方も知らなかったのは 恋矢が抜かれると、 その恋矢と繋がっていた相手の恋矢も消滅して 相手の恋心や、記憶にも影響があるかもしれないこと 恋をしていた間の私自身が、 いなくなってしまう可能性もあるということ (1) 2022/05/26(Thu) 13:59:12 |
【人】 雨宮 瀬里宮々の家に着く。 私たちを迎えてくれたのは誰だったか。 貴方の隣で、私は薄紫の翼を揺らす。 貴方の隣に居られるのは、 どれくらいの間だったのだろう。 僅かなひととき。私は貴方と手を繋ぐ。 * (3) 2022/05/26(Thu) 13:59:54 |
【人】 宮々 蓮司行きの車内は静かだった。 俺はただ前だけを見つめていた。 どこにも辿り着かなければいいのにと思いながら。 それでも行かなければいけない。 今に留まるのではなく、未来を掴むために。 宮々の家は都内から少し離れた場所にあった。 その町は電車を使えば2時間程度で都心まで出られる位置にある。 囲いのある広い敷地で、武家屋敷を思わせるような平屋建て。 忌まわしい実家だ。 命が掛かってでもなければ戻ることはなかった。 車を停め、エンジンを切っても体が重い。 (4) 2022/05/26(Thu) 19:13:01 |
【人】 宮々 蓮司「 瀬里、覚えてるか? 」 あのときに聴こえた美しい歌声。 あのときに聴こえた指を鳴らす音。 二人の幸せを願う音色が二つ。 「 俺は忘れない。 あのときの音も、お前のことも。」 たとえ忘れてしまったとしても。 もう一度それを思い出すのだと、強く強く誓う。 (5) 2022/05/26(Thu) 19:13:22 |
【人】 宮々 蓮司暫くしてから車を降りると、 手を繋ぎ、家の中へと向かう。 出迎えてくれたのは老人がひとり。 それが蓮司の祖父であり、ただひとり連子の味方であった。 蓮司の祖父は物腰柔らかに家の中へと二人を招き入れた。 二人が通されたのはさほど広くはない和室の客間だった。 中央には小さなテーブル。 しばらく待つように告げると祖父は部屋を後にする。 それからすぐに別の人物が部屋をおとずれたが、それは宮々のお手伝いさんで、二人にお茶を運んできただけだった。 * (6) 2022/05/26(Thu) 19:15:05 |
【人】 雨宮 瀬里「 もちろん、覚えてるよ。 」 あの時のふたつの音。 私たちを結び付けてくれた恋の矢は、 確かに今もここにあって、 おかげで、私たちは素敵な恋をすることができた。 目を閉じれば今でも胸の中で響いている気がした 澄んだ美しい歌声が。幸せを願って鳴らした指音が。 「 忘れないよ 」 私にとっての忘れない≠ヘ 貴方にとってのそれとは重みが違ったけれど それでも、きっと、気持ちは同じ。 (7) 2022/05/26(Thu) 19:46:15 |
【人】 雨宮 瀬里武家屋敷のような平屋建てに、 まったく驚かなかったかと言えば嘘になるけれど それでもなんとか澄ました顔は出来ていただろうか こんな時に、作りものの顔が得意なのが役立つとは 通された客間で、机を囲んで貴方と向かい合う 二人きりになったときには、 あれがお祖父さん?とでも聞いただろうか 肯定が返ってきたら、優しそうね、とも。 「 治療、怖い? ……病気、良くなるといいね 」 恋天使の矢を除去する治療。 どんなことをするのだろうか。 想像すらつかない私は、そんなことしか言えなくて。 恋を失うことからは、目を背けた。 (8) 2022/05/26(Thu) 19:47:10 |
【人】 宮々 蓮司瀬里に聞かれて、自分がまるでそのことを気にしていなかったと気づいた。 治療がうまく行かないこともある、病気が治らないことも。 でも、そんなことよりも、瀬里を失うことの方がずっと怖かった。 「 いいや、……いや、すごい怖いな。」 それでも、考えてしまえばそれはよりリアルに感じられる。 うまく行かなければ、それこそ命を失う可能性だってある。 終わりを迎えれざ、瀬里との未来が閉ざされてしまう。 それが何よりも怖かった。 「 でも、大丈夫だ。 爺様は宮々でも腕利きなんだ。」 だからこそ。 その見立ては正しいと思えてしまう。 祖父がそう言うのなら、きっとそうなってしまうのだろう。 (9) 2022/05/26(Thu) 21:09:23 |
【人】 宮々 蓮司「 瀬里、……もし…… 」 言葉が詰まった。 何を言えばいいのか、何を聞けばいいのか。 刹那の逡巡。 「 上手くいったら、何がしたい? 」 何がしたい? 何処へ行きたい? もしも、治療が成功して、 そして何もかもがただの杞憂で終わったとしたら。 そのとき、お前は何を望むのだろう。 俺は何を望むのだろう。 * (10) 2022/05/26(Thu) 21:10:19 |
【人】 雨宮 瀬里上手くいったら その言葉は、単に貴方の病が治ったら、 という意味ではないことくらい、私にもわかる。 何もかもがただの杞憂で終わったら。 貴方と私が今のままで、在り続けられるなら。 「 うーん、何かな… 」 何をしたいか、なんて考えたことなかった。 何処に行きたいか、なんて考えたことがなかった。 貴方と一緒だったら、どこでもよかった。 それが当たり前≠セったから。 ……結果。私は一つの答えにたどり着く。 (11) 2022/05/27(Fri) 7:58:13 |
【人】 雨宮 瀬里「 すぐには無理かもしれないけれど 私ね。蓮司と一緒に暮らしたい。 週末デートで突然音沙汰なくなって 貴方の有事に駆けつけられないとか。 そんなの、もう嫌だもの。 」 お互いに生活の拠点を持っているから すぐに共に暮らすのは難しいかもしれない。 だけど当たり前≠ェずっと続くように、 私は、貴方の傍に在りたい。 * (12) 2022/05/27(Fri) 7:58:33 |
【人】 宮々 蓮司それは二人とも望んでいながら、口に出すことのなかったもの。 瀬里には夢がある。 俺はそれを応援したいと思うと同時に、負けられないというくだらない意地があった。 だから、瀬里が卒業した後も二人は生活の拠点を別にした。 でも、離れれば離れているだけ、お互いがお互いをどれほど大切に思っているか、思い知らされた。 お互いの身に何かが起こるのではないかという不安、そして実際に起きた時にそばに居られない焦燥。 瀬里が黒い不安を抱いていたなんて、思いもよらなかったが。 「 ああ、そうしよう。 やっぱり、離れているのは嫌だな。」 意地も、都合も関係ない。 上手くいったら きっと訪れない仮定を前に、ただ純粋な想いと望みだけが残っていた。 (13) 2022/05/27(Fri) 14:02:36 |
【人】 宮々 蓮司机を挟んで向かい合っていたせいで、瀬里に触れることが難しい。 それでも身を乗り出して手を伸ばそうとした時。 『 蓮司、準備をしなさい。』 ノックと共に届いた声。 祖父の言葉が、二人の時間を終わらせる。 「 今、……いきます。」 身を乗り出したそのままに立ち上がる。 くらりとした小さな立ち眩みに目の前が揺れる。 改めて、今この身体が病魔に侵されていると自覚する。 (14) 2022/05/27(Fri) 14:03:07 |
【人】 宮々 蓮司「 行ってくる。 待っていてくれるか? 」 治療にかかる時間は半日から1日と聞いている。 待たせるのなら、この家に瀬里を泊めることになるが。 「 必ず戻るから、待っていてほしい。」 ひとつしかない瞳で瀬里を見つめる。 怖い、こんなにも愛しい人を失うかもしれないと、そう思うだけで身体が震えるほどに怖い。 必死に内なる恐怖と戦い、体の震えを抑えながら、瀬里へ向けた顔の口元には微笑みを浮かべてみせた。 いつだって、男は好きな女には虚勢を張っていたいものだから。 * (15) 2022/05/27(Fri) 14:03:38 |
【人】 雨宮 瀬里それは上手くいったら≠フ話。 だけど、絶対に訪れないなんて仮定はせずに 訪れるかもしれない未来を夢見た。 「 うん、約束 」 もちろん上手くいったって、 そうするには山ほど課題はあるかもしれないけど それでも。夢を見ないよりかは、全然いい。 (16) 2022/05/27(Fri) 14:58:08 |
【人】 雨宮 瀬里「 待ってるよ。 行ってらっしゃい。 」 あなたの右目を見つめてぎこちなく微笑んで。 大丈夫だよ、と言うようにひとつ頷いた。 貴方がそうやって微笑んでくれるなら 私も、貴方を微笑んで送り出したい。 貴方に最後に見せる顔は、 やっぱり笑顔がいい。………なんて。 そんな言葉が頭を過ぎったら、 込み上げるものは、あったけれど。 泣くのは、今じゃない。 (17) 2022/05/27(Fri) 14:58:30 |
【人】 雨宮 瀬里きっとお祖父さんが、 もしくはお手伝いの人が。 治療が1日近く掛かることを私に伝えたのは それから間もなくのことだったし、 きっと、私は不自由なく滞在させてもらえたのだろう 食事も、寝床も、きちんと宛てがわれて 私はそこで貴方を待つことになる (19) 2022/05/27(Fri) 14:58:57 |
【人】 雨宮 瀬里1時間、2時間、 経過する時間の中で、 私は常に貴方のことを思い浮かべた。 まだ、私は貴方のことを愛している。 そんな言葉を反芻しながら、 涙を流しながら 恋心を何度も確かめた。 同時に、恋心を抱いているということは まだ、貴方の治療が終わっていないということだ。 それは、私にもわかること。 同時に、貴方のことを思い出せるということは まだ、貴方の治療が終わっていない可能性があるということ それは、私にはわからないこと。 貴方への恋心を最後に確かに感じたのは、 私が眠りにつく前のことだった。 * (20) 2022/05/27(Fri) 14:59:50 |
【人】 宮々 蓮司瀬里が泣いていた。 わかってる。 あの微笑みが作り笑いじゃないことぐらい。 あれは瀬里の心からの微笑みだ。 でも、そう、泣き顔をかくした顔だった。 瀬里をひとり残して離れへと向かう。 沐浴を済ませ、鎮痛成分のある薬湯を飲んだ。 精神が追いついてきてゆっくりと眠気にもにた浮遊感に包まれる。 思い浮かぶのは瀬里のことばかり。 もしも、俺が変わってしまったら、瀬里は泣くだろうか。 瀬里まで変わってしまうことは思い及ばなかった。 (21) 2022/05/27(Fri) 19:23:54 |
【人】 宮々 蓮司「 爺さま。 瀬里を、連れてきた女の子なんだけど。」 準備をする祖父に向けて話しかける。 「 もしも、 俺が彼女のことがわからなくなっても、 ……彼女に会わせて欲しい。」 恋心が失われて、もしかしたら記憶までなくなって、彼女のことがわからなくなっても、会えばきっと思い出せる。 思い出せるはずなんだ。 (22) 2022/05/27(Fri) 19:24:17 |
【人】 宮々 蓮司陽が落ちて、 月が昇り、木々が風に揺れる。 背中に祖父の気配を感じながら、 頭の中は瀬里のことだけで一杯にしていた。 初めて会った時のことも、 恋矢によって結ばれた時のことも、 それから一年の間はずっと瀬里との思い出ばかり。 笑顔も、真剣な顔も、それから…… 「 泣き顔は、……まだ見たことなかったな。」 そう小さく呟いくと同時に、 意識が段々と小さく希薄になっていった。 (23) 2022/05/27(Fri) 19:24:45 |
【人】 宮々 蓮司夢を見た。 とても大切な人と手を繋いでどこかへと歩いている夢。 顔には陰が掛かっていてそれが誰かはわからない。 俺は、その子の名前を呼んでいるのに、それがどんな音なのかわからない。 聞こえない。 自分の声も、彼女の声も。 目を覚ました時。 朝の日差しが辺りを包んでいた。 まだ早朝だと言うのに随分と暑く感じられ、季節がもう夏へと移り変わったのだと知った。* (24) 2022/05/27(Fri) 19:27:10 |
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