給仕 シロタエは、メモを貼った。 (a9) 2022/11/10(Thu) 22:22:55 |
【人】 医者 ノーヴァ[其れは一種の地獄絵図。 真白の月とは反射的に、地面が赤黒く輝く夜。 セレネに捧ぐ慟哭と断末魔のアンサンブルを聞き届けたなら、ずり落ちかけた看護婦の身体を背負い直す。 この悲劇に果てしなく無関係な彼女を置いておく訳には行かなかったから。 人狼の宴の場と化した大通りを避けるように路地裏へ入る。 酔って倒れた男の持つ最後の酒を蹴り倒しながら歩いていく。 掴まれた足を振り払うように靴先を壁にぶつければ、枯れた声で発される悲鳴と指が数本粉砕される音がした。 ………………医者のくせに気にすることも、悔やむこともない。 どこにも行き場がないように見えて、その行先はただ1点を目指して。] (29) 2022/11/10(Thu) 22:23:29 |
【人】 医者 ノーヴァ[救いが欲しかったのかもしれません。 人間なのだと分かりたかったのかもしれません。 ……心のどこかで慈悲による自由を求めていたのかさえ 今はもう分からずじまいだけれど。 その足取りは、かの尼僧が駐在していた寺の道へと。 正常なようで、香に浸されたその存在が行くべきでは無い場所へ。]** (30) 2022/11/10(Thu) 22:26:52 |
医者 ノーヴァは、メモを貼った。 (a10) 2022/11/10(Thu) 22:30:51 |
【人】 碧き叡智 ヴェレスきっと幾度となく間違えて来たのだろう。 発展の代償に何かを失い、知識を得て歴史を重ねる。 地図上から永久に消えた国、 現在では再現不可能となった資源物質、 絶滅し伝承のみの存在と化した種。 それでも人類が止まる事はないだろう。 この島の成り立ちこそが呪いなのだから。 (32) 2022/11/11(Fri) 9:12:21 |
【人】 碧き叡智 ヴェレス──── 暗夜;『学星院』一階エントランス [下層は既に沈黙によって支配されていた。 贄として送り込まれた若き学者の殆どは 自ら命を絶った痕跡を色濃く残している。 彼等もまた『真理』を得てしまったのだろうか。] (33) 2022/11/11(Fri) 9:12:38 |
【人】 碧き叡智 ヴェレス[込み上げる吐き気に胸を抑える。 夥しい死と血によるものではない。 此処までの道を急ぐ際、吹き荒れた風に掬われて 呪布の隙間から僅かに吸い込んだ空気は 鼻腔の奥に張り付いたように腐臭を孕んでいる。 ポケットに隠した刃に思わず伸びた手で、 今度は、火を灯す為の魔道具を正しく握り直す。] ( 此処でただ自刃したとして、 行方不明で都合良く片付けられるのが関の山だ。 持ち直せ、考えろ…… ) (34) 2022/11/11(Fri) 9:13:16 |
【人】 碧き叡智 ヴェレス[青い火の揺れるランタンを片手に、 静まり返ったエントランスを進む。 元来、学者以外の出入りが制限されている施設だが 島の外から訪れる客人を迎える為に 高い天井と豪奢な装飾が施されている。 数歩も歩けばその度死体に行き着いた。 椅子に腰掛けたまま解剖されている者、 被検薬のオーバードーズで死に至った者、 自らの眼球の裏側をスケッチしながら息絶えた者。 その殆どは知の民たる地人のものだった。 嘆き、戦き、狂い、 終いには裏切られた事すら忘れ 好奇心に踊らされた末路たち。 その、微かに生温い死体を物色する。 若い研究者ばかりでは期待は持てなかったが、 それでも。] [まだ、懲りずに期待を掛けようと していたのかも知れない。] (35) 2022/11/11(Fri) 9:13:31 |
【人】 碧き叡智 ヴェレス[暫く歩き回っていれば、 この下層に何が起きたのかは察しがついた。 当然、地位のある者の遺体だけは見付からない。 エントランスを抜け、一つの部屋への入る。 広いテーブルが幾つも並べられているその場所が、 学星院の机仕事を担う場所だと推理するのは容易い。 その一角に、写真立てを見付ける。 目を凝らせば写っている二人のうちの、 片方が父であると分かる。 それは情報統制室長のものだった。] [写真機は自分の発明品だった筈だ。 改良に改良を重ねて漸く今のサイズになったが、 この写真はそれより画質も彩度も上回っている。 誰かが技術を盗用したとしか思えない物品を前に、 どんな反応をしていいかも分からなかった。] (36) 2022/11/11(Fri) 9:13:44 |
【人】 碧き叡智 ヴェレス[室長の机の引き出しを開ける。 鍵が掛かっている段は無理矢理にでも。 少年はその中から、分厚いファイルを見つける。 赤い帯に“実験体履歴”と書かれたそれを捲れば、 一ページ目から自分の名前が目に入ってしまう。 ああきっと、二十余年を人の形のまま過ごしているのは 自分だけなのだろう。他は恐らくもう────…… そんな考えが脳裏を過る。 何度も追記、修正を重ねられた機密の片端に 愛情の痕跡の一欠片でもあったのなら。 あったのなら……どれほど。] (37) 2022/11/11(Fri) 9:13:57 |
【人】 碧き叡智 ヴェレス『 院長の決定により該当実験体を学星院内部へ移送し 長期的かつ計画的なレッドアイスの生産を行う プロジェクトが進められています。 当情報はカテゴリ4未満の職員には秘匿され…… 』 [あの葬儀に彼女の遺体が無かったのは その状態が酷かったからじゃない。 骨格だけを遺し、全て石に代わったからだ。] (38) 2022/11/11(Fri) 9:14:10 |
【人】 碧き叡智 ヴェレス[自分より優れた才能が見付かったから 道具へと落ちぶれたのではない。 いつまでも、誰よりも優秀だったからこそ 学者の傲慢さが牙を剥いたのだ。 権力者は有能かつ己には及ばない後継者を欲しがる。] (39) 2022/11/11(Fri) 9:14:25 |
【人】 碧き叡智 ヴェレスはは…………今更、か 彼女も苦しまずに終わって正解だった。 何を今更、くやしがる……って、 くそ…… (未来なんて初めからなかった。きっとどこかで父の傲慢な権威を損なったから。 だが手段を選ばない所まで、本当によく似ていた筈だ。僕はこの日の為に計画 してまで母を殺した。世間の同情を得る為に。それがどうだ?こうなってしま っては未来的に彼女を救ったという大義名分が生まれてしまう。あんなにもつ らくて死にそうな思いをしたのに。心より愛していた。その上で彼女を突き落 としたというのに何なんだこれは? 誰が僕を人間として見ている?一体誰が 道具としてのカテゴライズを固定された僕を正しく認めてくれる? この時代 のかみはすでにああああああああああああああああああああああああああああ (40) 2022/11/11(Fri) 9:16:32 |
【人】 碧き叡智 ヴェレス[統制室の研究員通路から、火の一つでも投げ込んでやれば 地下にある紙の情報は全て燃え尽きた事だろう。 資料も、歴史も、技術も、論文も、何もかも。 衝動的に硝子蓋を開けたランタンから、 青白い炎を放り出す事さえ出来ずに座り込んだのは まだ、一抹でも、普段通りの明日を生きる人々の 必要とするものを思い浮かべたから。 道具である己の功績は決して記録されない。 それどころか、発案者の名を変え 誇りを貶められながら後世に伝わる事だろう。 ────それでも構わない。何でもいい。 燃えようが、残ろうが、どちらにしても。 写真という技術がいつか一般化された時代に、 自分が大切にして来た人々が、その子孫が、 額縁の内側で美しく残るのなら。 それは褒められるべき、美徳と言うべき動機でなく 何もかも投げやりになったが故の結果。] (41) 2022/11/11(Fri) 9:17:16 |
【人】 碧き叡智 ヴェレス[自分が人間で居られたのは、 父が気紛れに測量器を己に持たせたほんの一瞬。 自分の半身を周囲に自慢したくなった、 瞬く間に過ぎる欲望の日々だけ。 だのに、学者として生きる道の最高点は此処でしかない。 外の世界を知らず、思考することを止められない自分に 他の場所で生きる手立てはない。 それに、ここまでやったのだから。] (42) 2022/11/11(Fri) 9:17:33 |
【人】 碧き叡智 ヴェレス[他のページには手をつけないまま、 閉じたファイルをそっと机の上に戻す。 ステンドグラスが月影に浮かぶ夜、 遠くからは狼の遠吠えが聞こえる。 表舞台を去るべき時が来た。 音もなく、エントランスを通り過ぎる。 点々と、赤い靴跡を残しながら出口へと向かう。 終わるべき場所は、此処ではないから。]** (43) 2022/11/11(Fri) 9:17:59 |
【人】 給仕 シロタエ[娘は父親のことをほとんど覚えていない 居なくなったのが幼いころだったというのもあるが、そもそもあまり家にいる人じゃなかった 仕事のせいもあったかもしれないが、一緒に遊んでもらった記憶もない ロクデナシと思ってはいるけれどいい思い出もなければ悪い……手を挙げられたという覚えもなかった でも、と娘は思う 黙っていなくなったせいでしなくていい苦労をした その原因を作った父親はロクデナシに違いないのだ、と そう思わなければ「どうして?」ばかりで動けなくなりそうだったから でも、でもだけど] (44) 2022/11/11(Fri) 22:11:10 |
【人】 給仕 シロタエ[そんなことはない、娘は母親のいう事をよく聞いた 内心で鬱陶しく思っていたとしても 母親の周辺の人にだって笑顔で接することは忘れなかった 内心で顔を合わせたくないと思っていても 母親に願われるままにその仕事についていって覚えようとだってした 内心でこんな仕事はしたくないと思っていても 母親が死んだときは本当に悲しくて、トラウマで海にも入れなくなった 内心でもう海に入らなくて済むと思っていても 娘は誰が見ても母親思いのいい子だった 内心でそれらに舌を出していても ]アタシは、ああいう人たちとは違うもの [だから片付けるの、見なくて済むように 自分の本当の顔を忘れているうちに *] (46) 2022/11/11(Fri) 22:14:54 |
【人】 給仕 シロタエ―― 商店街? ―― [商店の立ち並ぶ通りは、他の場所以上に混沌とした臭い どこか落ち着いて見えるのは、もはや略奪を尽くされた跡だからかもしれない 遠くから聞こえる何かがぶつかって壊れる音>>21にはもう驚きはしないけれど とっくに閉店時間のはずなのに、それでも呼び込みの声は其処彼処から 店先に鍋を出し「おいしいスープ」と呼ばれたそれは、近寄っただけで咽て目が痛くなるほど 真っ赤 だし何が入ってるかわからないほど どす黒い 煮物からは酷い臭いがするしその向こうの総菜屋からは山のような揚げ物が店の外まで溢れていて、よく見れば食材が尽きたのか、靴やら鍋つかみやらまで調理されている] 探してるのはご飯じゃないんだけどー [と言いながらちゃんと食べられる揚げ物を摘まむ お代はどこに置けばいいんだろう? 店主にお金を差し出したなら、それさえ衣をつけて揚げ油の中へ あらあら、と思いながらもう一つ摘まんで探し物 何かいい「殴るもの」はないかしら?] (47) 2022/11/11(Fri) 23:46:10 |
【人】 給仕 シロタエ[目に留まったのは改装中の大きなお店 工事の職人がでたらめに板を打ち付けているその足元に「いいもの」を見つけた 持ちやすい太さと振り回しやすそうな長さ、ちょっと重いけどまあいいか! ほらちょうどいい感じに嫌な笑いを浮かべた男が寄ってくる あぁ、酒臭い 食欲の後は性欲ですかそうですか みっともないロクデナシ!]よいしょぉぉ! [襲ってきたと言って酔ってふらついていれば避けるのは簡単で その後頭部に振り下ろしたのはピッカピカの鉄パイプ ごんっ ごきっ ぐしゃっ うん、思った通りいい感じ!] あははっ [楽し気な娘の声に重なるように、獣の咆哮>>19が風に溶けていく**] (48) 2022/11/11(Fri) 23:52:09 |
給仕 シロタエは、メモを貼った。 (a11) 2022/11/11(Fri) 23:54:26 |
【人】 医者 ノーヴァ 僕等がどこで何をしようと、 月は等しく地上を照らす。 静かさを失った下界に対して蒼褪めているように。 天の神が無力に涙を流すのであれば、 果たして僕はどこに縋れば良いのだろうか。 どうすればこの乾きはなくなるのだろう。 (49) 2022/11/12(Sat) 1:02:28 |
【人】 医者 ノーヴァ[幾ら身体を鍛えていようと、力の抜けた人間ひとりを抱えて歩くのは易くない。行き先が人里離れた寺であるのなら尚更。 まるで棒にでもなったような足を必死にひとあしふたあし進み続ければ、腿が震えて今にも膝がつきそうになる。 大きく息を吸い込めば、湿った空気が喉奥を満たす。腐臭が肺に絡みつき、痺れるような痛覚を刺激する。怪我をしていないのに口の中も鉄臭かった。 歩けば歩くほど、行き倒れる人も遺体も数を減らす。 欲と執着から距離が離れる象徴のようにさえ思えた。 暗闇の中で同族の気配がなくなれば、自然と孤独を覚えることが摂理である筈だったのに、今の己はやけに安らかで、心穏やかにさえ感じる。] [背中の未だ暖かな重みがあるせいではなかった。 ……それは檻を抜け出し、野生に戻った獣の心情そのもの。] (50) 2022/11/12(Sat) 1:02:31 |
【人】 医者 ノーヴァ[暫く歩き続ければ、途方もない時間の果てに漸く門戸が見えてくる。木板を軽く拳で叩き、血走る喉を震わせて、「開けてください」と何度も叫んだ。 “寺には結界が張り巡らされている。” >>1:76 内部事情を存じぬ男は知る由もない事実であるが、 尼僧が取り決めた法に従えば、侵入するのは易かった。>>1:78 欲に眩んだ者が、寺の門など叩くわけもない。 網戸の隙間を潜る虫のように、全体が覆されていく。 元から狂った人間にとって、常識なんてものは存在しなかった。 教え通りに小僧が門を開けたなら、困ったような笑みを浮かべることだろう。 「被害者」の振りをするときは、重傷者はいい隠れ蓑になるものだ。其れが誰の手でされたものであったとしても。] (51) 2022/11/12(Sat) 1:02:44 |
【人】 医者 ノーヴァすみません……少し、休ませてください。 ああ、僕もよくわからないのです。 助手が重傷を負ってしまいまして…… 必死でここまで逃げてきたのです。 数時間だけで構いません。 どうか、どうか、少しばかりな安息を。 …………っ、ありがとうございます! この御恩は必ず……! [呪布など持っていないと言うのに、 健常者のふりが異常なほどにうまかった。 真の恐怖は日常の中にあるというのに 気づかなくなるくらいには。]** (52) 2022/11/12(Sat) 1:02:52 |
医者 ノーヴァは、メモを貼った。 (a12) 2022/11/12(Sat) 1:07:11 |
【人】 警備員 ジュード── 夜:街のどこかで ── [蒐集家の手から逃れた>>8男は、 どうにか身を隠せる場所を探そうと 狂気に飲まれた街の中を走っていた。 けれど、隠れるのに良さそうな物陰には すでにもつれ合うひとびとがいたり、 死体を弄んだりする先客がいるもので。 巻き込まれそうになっては踵を返すから、 なかなか落ち着ける場所は見つからなかった。 場所を探す間にも、男は欲望のままに動く人々の 予測できない動きに戸惑い、衝突して。 接触した相手を汚しては、苦しめてしまった。 ぶつかってしまった彼らのうち、 何人が喉を詰まらせて倒れ伏したか、 患部を洗う水を求めて水場を汚したか、 毒の付着に気づかぬまま他人に接触したか、 見る暇なんてなかったから、その数は定かではない。] (53) 2022/11/12(Sat) 6:29:55 |
【人】 警備員 ジュード[なんとか見付けた屋内外の暗所、 例えば、ベンチの影や家棚の中、ベッドの下に 潜り込んでみたこともあったかもしれない。 しかし、どんな場所でも男の不安は解消されず。 休憩くらいはできても、長く落ち着く事はできなかった。 ── 本人は理解していなかったが、 男の望みは厳密には隠れる事ではないのだから、 満たされないのも仕方がない。 男の望みの本質は、命を脅かされないこと。 死の危険のない、安心できる場や人の傍に その身を落ち着けることだった。 そして、この島に男が安心できるものは、殆どなかった。] (54) 2022/11/12(Sat) 6:31:06 |
【人】 警備員 ジュード[島で暮らす中で、“傷付けるかもしれない” “汚してしまうかもしれない”という不安が 男の中から消える事はなかった。 かつて友人と昼飯を食べていたとき>>1:110も、 彼の食事を相変わらずと眺める傍らで、 男は食事中には可能な限り言葉を発さず。 スープの器にも貝の乗っていた皿にも 唾液の混じる汁の一滴さえ残らないよう、 卑しく見えるかもしれない程にパンで拭って。 少しでも事故が起こる可能性を 減らそうとしていただろう。 そんなに気を使って無害に努めようとするのも、 偏に、死の恐怖を遠ざける為。 他人を害さぬ善性を認めて貰うことで、 かつて己課せられた”死の責務”を放り出す事を、 誰かに許して欲しいからだった。] (55) 2022/11/12(Sat) 6:31:25 |
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