【人】 二年生 小林 友[『赤いろうそくと人魚』は 相も変わらず本棚の一角に収まっていた。 いつもの通り、背表紙に手をかけて 棚から引き抜こうとしたその時───── 横合いから ズァッ! と真っ黒な影が現れて本を取る俺の手の上へと手を伸ばそうとしたのだ。] おヒ─────っ!!!! [俺は思わず悲鳴を上げて飛び退いた。 見れば、身長同じくらいの、影だけが ぬぼーっと俺の真横に立っている。 何これ、どんないじめ?祟り系いじめ? 影は物言いたげに本棚へと手を伸ばすけれど 俺はもう、正直、キャパシティオーバー。 シャカシャカと床を這いずって 出口の方へと逃げようとする。] (60) 2020/09/27(Sun) 22:08:45 |
【人】 二年生 小林 友[……もし、影の声が聞こえていたら この後の話って変わっていただろうか。 後から思えば、そうなんだけど。 でもあの時の俺は突然の怪奇現象を前に チビらんばかりにビビりあがっていた。 顔中でろでろにしながら図書館を飛び出し……] 「うわっ!……えっ、どしたトモちん!」 [そのまま、図書館の外を歩いていた青柳に 思い切り体当たりしたのだった。] あ、わ、ま、ま、ま……! か、かぎぇ、わ! [顔面蒼白、歯をガチガチ鳴らしながら 俺は今起きたことを説明しようとしたけれど 全然、言葉にできなくて。] (61) 2020/09/27(Sun) 22:10:00 |
【人】 二年生 小林 友[なんて説明すればいい。 図書館で本を借りようとしたら 突然黒い影が現れた? 本当にそれ、見間違えじゃないの? 居眠りでもしてた? 床に蹲った俺の肩をしっかり支えながら じっと顔を覗き込んでくる青柳を見ていたら パニックの波が引く毎に、 だんだん惨めさと恥ずかしさとが募ってきて 結局俺は何も答えられずに 赤い顔して、胸中の本を抱き締めるだろう。 それでも、青柳は黙って俺に着いてきてくれて その日はバスケ部の面々に囲まれながら帰った。 「いじめられてるなら、言えよ?」 「トモちんちょっと疲れてたんだよね」 「ほんとに、無理してない?」 もうどいつもこいつもほんとに、イケメンで 優しくて……俺はいっそ殺して欲しくなった。] (62) 2020/09/27(Sun) 22:10:41 |
【人】 二年生 小林 友[優しいバスケ部の面々は 最寄りの駅まで着いてきてくれた上に アイスまで奢ってくれた。 だぁれも、「ありがとう」なんか求めてなくて 最後まで俺を気遣ってくれてて…… 家に着くなり、情けなさで俺は泣いた。 その間も、バスケ部と過ごしてる間も 図書館から持ち出してしまったあの本は ずっと、俺の腕の中にいた。]* (63) 2020/09/27(Sun) 22:11:06 |
【人】 Marguerite シャーリエ[大好きなお姉さま。 領地を持つ家に生まれた者として、 私たちは小さい頃から色んな勉強を教えられた。 お姉さまは優秀で、私にできないことも出来て 自慢のお姉さまで、みんながそう言っていて、 だから私は授業中も 自分の好きなピアノのことばかり考えてた。 お姉さま、本当に大好きだったの] (64) 2020/09/27(Sun) 23:23:23 |
【人】 Marguerite シャーリエ[ほら、虫だってお姉さまに懐いて……はいないけれど、 彼女が落ち着いていてくれるから、 お姉さまの後ろに回るだけの落ち着きを分けてもらえる。 どきどきしてはいるけど、大丈夫。] はい、お姉さま。 [小さな毛虫も庇おうとする彼女の声は>>57 どこまでも優しく響く。 どこかへ行ってしまった毛虫は 見えなくなったから忘れることにする] …お姉さまのほうが…… 領民も背負ってるのに… [私が優しいと言ってくれるお姉さまの方が優しいと思う。 そんな押し問答を始める前に、 彼女を追いかけてレモネードの席に着いた] (65) 2020/09/27(Sun) 23:24:08 |
【人】 Marguerite シャーリエ (66) 2020/09/27(Sun) 23:24:47 |
【人】 Marguerite シャーリエもう、お花は愛でるものっ。 触りすぎると痛んじゃうから、 ……ね、こうしてあげて? [お姉さまの手から救い出した花を、 シャンパンゴールドの髪をまとめるリボンに絡ませる] 摘んだら長くは保たないから この花はすぐ 枯れてしまうから それまでは。 (67) 2020/09/27(Sun) 23:25:20 |
【人】 Marguerite シャーリエ[紫がかったピンクが彼女の顔の隣で揺れる。 後ろに隠れてしまった小さな花びらも一緒に揺れている] ピンクはお姉さまに似合う [ふふーって笑って、レモネードを一口。 カランと音を鳴らした氷が シャンパン色の水を煌めかせていた] (68) 2020/09/27(Sun) 23:25:42 |
【人】 Marguerite シャーリエわたしね、今度カードックの … 収穫祭にお呼ばれしたの。 [もくもくと食べていたクッキーを会話の途中で飲み込んで。 そんな話になったらしいの、と顔をほころばせた。] 音楽祭が開かれるらしくてね。 『私個人』でこっそりピアノ弾いてみませんかって、 [それでね、って内緒話みたいに顔を寄せた] (69) 2020/09/27(Sun) 23:26:16 |
【人】 Marguerite シャーリエお姉さまも一緒に、『個人』で遊びに行けないかな [楽しいと思うの、ってにっこり笑って、 お姉さまを外に連れ出そうとする私。 忙しいお姉さまをちょっとだけ遊びに連れ出すのは、 妹の仕事だと思うんだけど、どうだろう。 くすくす笑ってるのは私なのかお姉さまなのか。 楽しければどっちでもいいかなって、 花瓶に残ったピンクの一輪をつんつん、してみた*] (70) 2020/09/27(Sun) 23:26:56 |
【人】 アジダル[ ふと冷気を感じた気がして振り返る。 磨かれた化粧台、皺の伸びた寝台のシーツ、ダッシュボード脇の屑籠にはちり紙の一つも収まっていない。二週間近く利用されたとは思われないほど整った室内を眺め、男は小さく首を傾げた。 閉じた窓からは朝日が差しこんでいる。下の通りを走る車の音に雨水の気配は感じない。背を強張らすだけに足る言い訳が見当たらなければ、 玄関先で一人、溜息を吐いた。 ] (71) 2020/09/28(Mon) 0:26:24 |
【人】 アジダル[ 至高から孤高へ取り残された例の日から数か月が過ぎた。共通点の無い人々が集った乱痴気騒ぎはその始まりと同様にぱたりと終結を迎え、咽ぶほどに満ちた夏の気配と共に消えていった。 無数のトマトが飛び交い、トマトを中心としたn角関係が暴露し、遂には幾つものトマトが犠牲になったあの時間が一体何だったのか、今にして思えばさっぱり訳がわからない。 けれど其々集まっておきながら三々五々に散っていった奴らの、浮足立った背中を思えばそういうものなのか、なのか? と早々に考えることをやめていた。 考えたところで結論が出るはずもなく、ついでに男もまた帰りがけ一人ではなかった者の一人だったのだから。 ] (72) 2020/09/28(Mon) 0:26:47 |
【人】 アジダル[ ……人の気配があるところで寝る練習がしたい、と声をかけられた時、自分がどんなツラをしていたのかよく覚えていない。 毛布を抱えたガタイのいい野郎が堂々とそんなことを言ってのけたなら常ならば呆れ顔で部屋を追い出したことだろう。 けれどその時男はウィスキーグラスを手にしていたし、散々熱狂の気配にあてられて上機嫌でもあった。元来面倒見のいい性分、まして少々込み入った話をしていた相手とあれば拒む理由が無いようにも思えたのだ。 別段男には彼を、離れ離れになった実子の代わりに愛でる気など無かった。だが男の手には持て余した愛情があり、眼前の彼は肉親よりそれを受け取り損ねていた。ならば少し仮初の情愛を交わすくらいいいんじゃないか。 怒鳴り合うようなやり取りを経て叩きつけた結論を自ら飲み込んで、酩酊するかのようにそこで思考を止めた。 止めたのだが、 ] (73) 2020/09/28(Mon) 0:27:11 |
【人】 アジダル『今日22時 XX館のXXX号室に』 うわ。 [ ついさっき送ったばかりのメッセージを見返すとぞわりと背が粟立った。 隔週恒例となった練習≠フ日、他人に聞かれたくない方向に転がりがちな話題の為に次回は拠点で飲もうと提案したのは自分の方だ。だが改めて送信してみれば単調な文面の「ろくでもない」雰囲気があまりに悍ましい。まるで人目を忍んで逢引でもしてるみたいじゃないか。 誤魔化すように『パルミジャーノよろしく。』と付け足してベッドへ端末を投げ出す。買い切りのそれは毛布の上でぽんと一度跳ねて、隣のベッドへと飛び移った。 そしてチェアの上で頬杖をつく。眉根を寄せた目で室内を睨めつける。 ] (74) 2020/09/28(Mon) 0:28:02 |
【人】 アジダル……。 [ ツインルーム。 思考を止めた結果、残念なことに二度目三度目の機会があっても一つのベッドへ入る状況に違和感を覚えられなかった。彼も拒むことなく同じ布団に潜っていたし、それまで男がいたのはどれもシングルの部屋ばかりだったのだ。滞在するのが男だけである以上は当然だが。 兎角、丁度居を移すタイミングにそんなことを思いついたため、今回はこの部屋を選んだのだ。まあ奴も狭い場で寝るより広い方が良いだろうと善意と気遣いを押し付けて。 彼が子供のように共に寝たがっていたなどと、その内心など知らぬまま。 ] (75) 2020/09/28(Mon) 0:29:21 |
【人】 アジダル[ さておき。 冷蔵庫に突っ込んだグラスを確かめ、脇に置いていた酒類を卓上に並べていった。甘いものが数本と、強いものが幾つか、ついでにグルームチェイサーsakeなども。 酒の席の空気が嫌いと言うわけじゃないんだからと無意味な言い訳を吐き、やがてやってきただろう彼を室内へ迎え入れた。]* (76) 2020/09/28(Mon) 0:37:43 |
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