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【人】 神立[────鳥居を潜って直ぐの所。 白い仔犬の首を掴み上げる男が居た。 狐面の目の部分はくり抜かれておらず。 然しその目の辺りで犬の顔を覗き込んでいた。] ……なあんだぁ、お前。迷子? ふうん。コマっていうのかい、そうかい 俺もヒト探しをしてる所でさァ 一緒に来なあ? [直に始まった祭り。 人混みの中、男の背は頭ひとつ高く。 肩に載せた犬もまた目立っていた。**] (2) 2024/04/04(Thu) 0:29:40 |
【人】 時雨[ 娘は捜索を任せてくれるようだ。 目の不自由な身の上では、 足元をとられてしまわないか、 と 娘を少し案じたものの。 ――僕は人と長く関わるべきではない。 だから、彼女に背を向けた。 そういえば、名前を聞いていなかった。 歩み出した足を一度止めて、振り返る。 けれどもう、祭りは始まるのだろうか。 人の波に飲まれて、 彼女を見つけることはできなかった。 コマを連れ帰ることができれば その時にでも聞けばよいかな。 ふたたび社の方角へ目を向けた。 ] (3) 2024/04/04(Thu) 14:45:41 |
【人】 時雨[ それに、 僕は彼女に、きっと僕の名前を名乗れない。 目の見えない彼女はきっと他の感覚には鋭敏だ。 時雨を名乗っても、 きっと何か綻びがでてしまうだろうから ] (4) 2024/04/04(Thu) 14:46:21 |
【人】 時雨[ 僕は犬は少し、苦手だ。 子供の頃、時雨に懐いた犬に 追い回された挙句押し倒されたことがある。 コマは小さいと言っていた。 小さな犬なら なんとか、――なんとか? 大丈夫かなぁ……;; というよりも引き受けてしまった以上、 どうにかするしかない! 犬の潜むような場所に見当はつかないけれど とりあえず緑の多い方はこっちかな。 すすもうとして進行方向、目線の先 ] (5) 2024/04/04(Thu) 14:47:02 |
【人】 時雨[ けれど祭りの効果なのだろうか? 誰もその狐面を気にしていない。 目線が合わないから? 人波がとても多いのに。 僕にはぶつかってすれ違ってゆくものすらいるのに。 なぜか僕とその者の対角線は わざと避けられているかのように人がいない。 僕とその者を結ぶように、一筋の道ができている。 ] (7) 2024/04/04(Thu) 14:49:19 |
【人】 時雨―――、 [ 頬が熱い気がするのは気のせい? わからない。 このままあの者の側まで、行ってもいい? ――わか、らない。 でも ] (8) 2024/04/04(Thu) 15:01:25 |
【人】 時雨[ 結ぶ人波のない対角線を、 僕は真っ直ぐ、その人物の方まであるく。 こんなに人がいても、道筋にはだれもいない。 ] すみません 知り合いの家族の小さな犬 コマといいます 迷子になってしまった子と その子がとてもよく似ています 一度だけ、僕に確認させてはいただけませんか。 [ 狐面は、こちらを見てくれただろうか。 ]* (9) 2024/04/04(Thu) 15:08:01 |
【人】 神立[ゆるりと振り向く。 少し間延びした、 ゆったりとした話し方が男のそれだった。] おぉん? ──……なァんだ、其処に居たか 然しまァ、何だってそんなのしてやがるんだい? [声が聴こえていなかった訳でも 理解ができなかった訳でもない。 興味はすっかり女、特に其の顔へと移っており 犬の件はどうでも良いこととして聞き流した。 立てた人差し指が天を指す。] (10) 2024/04/04(Thu) 17:49:40 |
【人】 神立[刹那、天と男とを繋ぐように稲妻が走る。 一瞬遅れて、ドオオオオン……と轟音が響いた。 後付けのように晴れていた空を黒々とした雲が覆い 盥を返したような強い雨が地を叩く。 人見知りなどと言っていられなくなった犬は 肩を降り一目散に慣れた寝床を目指し 祭りの参加者は屋根の下を探し奪い合う。 誰も彼もが濡れないことに夢中で 残る二人には目もくれない。] (11) 2024/04/04(Thu) 17:50:08 |
【人】 神立[空からの水は粧を剥がすか。 ザアザアと地を打つ音は男の声を遮らない。 当然のように片手が腰を抱き片手が顎を持ち上げる。] ああ、矢張り間違ってなかったなあ 思っていた通り、 ……否、想像以上に良い貌だねい 迎えに来たぜ [連れて行くことはとうに決まっていた。 君が何も憶えていなくとも。*] (12) 2024/04/04(Thu) 17:50:40 |
【人】 時雨きゃっ……! [ 男の指先に降った稲光に驚いて 小さく悲鳴をあげる。 しまった。と口を塞ぐは癖のようなものだ。 驚きの隙間、稲光を纏った姿が見えた。 狐面からは表情は伺えはしない。 ――ただ。 ] (15) 2024/04/04(Thu) 21:50:35 |
【人】 時雨[ その瞬間、動けなかったのは 見惚れていたからというのが、 何よりも、正しい。 雷を纏う姿が、――雨を呼ぶ仕草が、 ただ、ただ。 僕の視線を奪ってゆく。] (16) 2024/04/04(Thu) 21:52:57 |
【人】 時雨コマ…… [ 犬を案じた声は、音にならなかった。 激しい雨が全てを洗い流してしまう。 髪が、着ている衣服が、肌に纏わり付く。 僕という、人間の輪郭が浮かび上がる。 歩いてくるのは見えたのに。 逃げようと思えばきっと逃げられたのに。 未だその視線の先が僕を見ているかも、 わからないのに。 男の大きな手は、 いとも簡単に僕を抱きとめてしまった。 ] (17) 2024/04/04(Thu) 21:54:38 |
【人】 時雨[ 雨で痣があらわになる。 僕はそれにも、気づいてはいない。 されるがままに顎は男の方へと向けられている。 ] 迎えに……?なんのことだ お前は誰だ? [ 睨みつけた、つもりだったのに。 ] (18) 2024/04/04(Thu) 21:58:01 |
【人】 神立── 神社の境内 ── [女を覗き込む口許が笑みの形を作った。] おん。いい。実にいいねえ。かーわいい [話し掛けてきた時の真面目そうな様子も 小さく聞こえた悲鳴の高めな声も 見目にそぐわぬ男のような口調も 何れも好ましかったが……、特にその表情だ。 まるで己に愛でられるために存在するようであり 此方には応じる心算しかない。] (20) 2024/04/05(Fri) 16:28:56 |
【人】 神立[ひょいと横抱きにする。 最早この場所には──現世には、用はない。 二歩、三歩と歩みを進めながら 思い出したように名を名乗った。] おっと、きかれてたっけ 俺ぁ神立ってんだ [夜をも引き裂く光だ。] (21) 2024/04/05(Fri) 16:29:51 |
【人】 神立他はまあ、追々で良いだろお それよかさあ、そのままじゃあ 風邪ぇ 引いちまうぜ? [誰が降らした雨かはさて置き。 勝手に話を切り上げた。 五歩も歩けば、風景が様変わりする。 滴る水がぽたぽたと床を濡らす。 二人は立派な建物の中に移っていた。 先程までの村には見られない、 都でも滅多に無い広い廊下と高い天井。] (22) 2024/04/05(Fri) 16:33:04 |
【人】 神立[ドタバタと此方に向かってくる足音が幾つか有り。 女を抱く腕にぎゅっと力を籠め、 顔をかたい胸板に押し付けさせた。 頬の花を見られるのは得策ではない。 従業員ならまだしも、他の客と会う事もある。] 此処は隠世にある湯宿でなあ 少しの間静かに良い子にしてなあ? [言いつけは守れるだろうか。 小さな口を塞ぐのは余りに容易だが 手荒にしたくないと考えてはおり。] (23) 2024/04/05(Fri) 16:34:38 |
【人】 神立[気弱な亭主と勝気な女将 凸凹な夫妻とそんなやり取りをしつつ。 因みに夫妻は一つ目とろくろ首だ。 人間には見慣れぬものなので驚かせまいと 顔を背けさせたのもあったが 彼らを見ようとしても別段咎めたりしない。 案内してくれた亭主をてきとーに労って追い出すと 部屋の半ばで女をそっと降ろした。 正面、開け放たれた障子の先に大きな露天風呂が覗く。] さ、着いたぜえ ……なあ。そのままだと寒いだろ 入ってきていいぜ? [口許ははっきり、ニヤニヤと笑っている。 下心だ。*] (24) 2024/04/05(Fri) 16:55:43 |
【人】 時雨[ きっと僕が惚けていたのは束の間だ、 そのはず。 雨の雫が水溜りに落ちて、波紋をつくりだすような それくらいの刹那のはずで。 なのに、だ。 僕ば今自分の置かれている状況を、 何ひとつ理解できそうにない。 ] (25) 2024/04/05(Fri) 23:22:05 |
【人】 時雨かわいい……? [ 不平不満ではない。 ずっと時雨には必要のなかったものだ。 ゆえにつまり何がおきているか、わからない。 村にいる他の娘をかわいいと思ったとしても 僕自身に使用される言葉ではなかったはずだ。 たしかに僕は女物の召物を纏っている。 生前の母が唯一、僕に遺したもの。 一度も着せてやれなかった、と。 母が似せて作った学生服ににたもの。 僕は ただそれを纏っただけ。 村の娘達はもっと、きちんと 美しさを身に纏っている ] (26) 2024/04/05(Fri) 23:31:23 |
【人】 時雨ゎ [ 考える僕をよそに 狐面は雨に濡れた僕を捕まえた。 雨が降り注いだ、そのあとは。 たとえ僕が消えても、 その後にはなにも 残さない。 雫の跡ですらも。 ] (27) 2024/04/05(Fri) 23:33:47 |
【人】 時雨ひゃ、 [ さっきから僕は悲鳴ばかりだ。 見たこともない場所に連れてこられたと思ったら、 今度は頭を男の身体に押し付けられた。 僕とはちがう。当たり前だ。 当たり前ではあるけれど、……それもある、けど。 僕はこんなに至近距離で、 他の人間の鼓動を聞いたことはない。 神立と言った。 それしかわからない。のに。 濡れた服は、とても、――寒いのに。 僕の頬が痛いくらいに熱い。 ] (28) 2024/04/05(Fri) 23:34:27 |
【人】 時雨[ ようやく、僕の体は地についた。 視界いっぱいだった他人の身体は離れ かわりに二人の人間がいるには余りあるほどの部屋と 目がひとつしかないニンゲンと、 首の長いニンゲンが目に映って、] 妖っ……?! [ まただ。 いけない、と、口を押さえてももう遅い。 神立は。 神立は? 相変わらず狐面からは何を見ているかも、 解らない。] (29) 2024/04/05(Fri) 23:35:07 |
【人】 時雨――そうか、ぼくはもう食事になるのか。 [ どこかで望んだ事なのに。 いざ来ると あっけないのだななどとも 先ほどまでそこにあった体温がなくなって。 濡れた衣服がぽたりと 村では作り出すことのなかった、 水の染みをつくりだす。 ] (30) 2024/04/05(Fri) 23:40:11 |
【人】 時雨[ これからどうなるのか 示されたのは大きな……風呂? ここに、ひとりで? 僕が入る? ] まっ、て。 僕一人でどうすればいいのか わからないんだ [ 濡れた服のまま、神立の手を掴んだ。 雨の中歩いたし、 神立も僕を運んだのだから、濡れてる ]* (31) 2024/04/05(Fri) 23:45:48 |