【墓】 甘夢 イクリール>>+14 中庭 スピカ 「……ごきげんよう、スピカ。 今日も会えてうれしいわ。」 イクリールは、今日も変わらず中庭に居る。 まだ部屋から出てはいけないと言われてはいるけれど、 大人達だって四六時中イクリールに掛かり切りとはいかない。 『イクリールは、大人達のお気に入りだ』 そんな噂が流れるのは、何も今に始まった事ではない。 そして、単なる噂と断言する事もできはしない。 だって、イクリールは現に大人達ととても仲が良くて、 そして何より、その噂はそもそもの話 イクリールから、子ども達を遠ざける為のものだ。 それでも、イクリールにはそんな事は関係無い。 恐れるものなど、やはり無い。 野草を物色するスピカを見て、少し困ったように笑うだけ。 (+16) 2021/05/31(Mon) 12:50:47 |
【墓】 甘夢 イクリール>>+21 スピカ 「なんだと思う?」 その疑問の向けられた先が自分だった事に、 ほんの一瞬だけ、イクリールは瞠目した。 てっきり、スピカは手を差し伸べるべき『誰か』を 探しに来たものだと、そう思っていたから。 けれどそれも一瞬の事で、 その後にはいつものように穏やかな笑みを浮かべていた。 「ここに居る子は……ギムナジウムに居るわたしたちは。 かならずしも『何か』を抱えていなければならないのかしら? それは、全てが全て、解決しなければならないもの? わたしたちの中に、けっしてあってはいけないものかしら」 ねえ、スピカ。 イクリールは、問いに問いを返す事を恐れない。 だって、自分が答えた分、相手だって答えても良いはずだ。 「わたしは……なにも、ではないけれど。 それでも、みんなと比べたらずっと。 悩みごとは、少ないはずよ。不便なことだって、一つも。 だから、みんなのことを気にかけてあげたいの 『せんせい』も、きっとそれを望んでいるわ。」 それでもまだわからないことがあるのなら、 これからもっと知っていけばいいわ。 そう言って、イクリールはもう一度、スピカに笑い掛けた。 少なくとも、それがイクリールにとっての『真実』だ。 (+22) 2021/05/31(Mon) 15:02:10 |
【墓】 甘夢 イクリール>>+23 スピカ 「うん…わたしのこと、わかってくれてうれしいわ、スピカ。 でも……レヴァティのいうように、 きっと、それを受けいれられないことだって 誰かには、受けいれられてもいいはずなのよね。」 でも、と続く言葉はぽつり、独り言のように。 人には誰だって許せない事と許したい事があって、 間違ってしまう事だって、何度でもあって 知らなかったのなら、知った上でそうしたいと思うなら。 自身の誤ちを、正したいと思えるなら。 誰かの事を、好きになりたいと思えたなら。 つまりまったく、それでいいのだ。 「いいわ。わたしにできることなら、なんだって。 なにができるかは、わたしにもまだわからない。 だから、これから一緒に考えましょう?」 大丈夫。 あなたはもう、 弱くて小さな、独りぼっちのスピカではない。 一緒に手を取って、戦ってくれる人が こうして確かに居るのだから。 (+24) 2021/05/31(Mon) 16:08:54 |
【墓】 甘夢 イクリール>>+28 スピカ 「受けいれられればいいのになって そう思えるなら、きっとスピカは大丈夫よ。」 『みんな』がそうかはわからないけれど。 そう言って、少しだけ寂しそうに、 けれどやはり曇り無く笑って見せた。 「…あら、どうかしら。 でもね、スピカ。考えることって、ひとを思いやることって そこに年上とか、年上とかって、そんなに重要なこと?」 3年前より以前にも。 このギムナジウムで、イクリールの姿を見た者が居る。 この学校の関係者の大人に連れられて。 高等部のスピカなら、それを目にした事もあるかもしれない。 イクリールは、その頃から何も変わっていない。 外見の話ではない。その在り方の事だ。 イクリールは、その頃からずっと、『誰か』に手を差し伸べ続けて来た。 「うん……まずは、そこからね。 まだ誰が『いない』のかもわからないのだもの。 これは…手わけをして探したほうがよさそうね。」 まだ幼く、監視の目もあるイクリールの行動範囲は きっと、スピカほど広くはない。 教師や生徒達に聞くという手段も、今や通用しない。 けれど、『わたしたち』には立って歩く足があるのだ。 今はそれだけで十分だ。 (+29) 2021/05/31(Mon) 18:26:51 |
イクリールは、スピカに笑い掛けた。あなたが許す限りは、イクリールはあなたの味方だ。 (c47) 2021/05/31(Mon) 18:28:02 |
【墓】 甘夢 イクリール>>+35 スピカ 「…きっと、ゆっくりでいいのよ。 今日や明日に何かが変わるなんて、そうないわ。 スピカが無理をしすぎてしまわないように、 疲れてしまわないくらいに。それでいいの」 きっとそれが、誰かをおもうってことよ。 そう言って、スピカの微笑にまた一つ笑顔を返した。 少しずつ、確かに前を向いて、変わりつつある『みんな』を その想いを、イクリールは何よりも愛している。 「わたしの知ってることなんて、ほとんどは 誰かから聞いたことか、それか本人から聞いたことよ。 だから…こうなってしまうと、むずかしいわね。」 でも、大丈夫。 言葉にできる根拠なんて何処にも無いけれど、 それでもきっと、やろうと思ってできない事なんて 優しくて、それでいて向こう見ずな子ども達の世界には ただの一つだって、ありはしないのだ。 (+36) 2021/05/31(Mon) 20:27:11 |
イクリールは、スピカに小さくあたたかな手を差し出した。みんなで一緒に答えを探しに行こう。 (c49) 2021/05/31(Mon) 20:27:44 |
イクリールは、進み続ける。手の中にあるものを、優しく、そして確かに握り締めながら。 (c53) 2021/05/31(Mon) 21:21:09 |
イクリールは、誰も居ない部屋の前を後にした。きっと、良い子の『悪い子』との約束を果たせる明日を探しに行こう。 (c69) 2021/06/01(Tue) 0:15:41 |
イクリールは、ギムナジウム中を巡る。見付けなければならないものを、捜し人を求めて。 (c73) 2021/06/01(Tue) 2:07:11 |
【墓】 夢の続きを イクリール「カストル、ポルクス、それにメレフ…… どこにいるの…?」 携えた想いは、あと二つ。 届くべき先も、あと二つ。 或いは、屋上? 或いは、園芸同好会の花壇? 或いは………… たとえやみくもでも足は止めない。 声を上げる事を、手を伸ばす事を諦めはしない。 大人に何度窘められようと、 傍から見れば気味が悪い程に優しく宥め賺され、諭されようとも。 その度に、我儘を言って屁理屈を捏ねた。 イクリールは大人にとって『都合の良い子』だったけれど だからといって別に、良い子でなんかなかったのかもしれない。 初めから。 (+57) 2021/06/01(Tue) 17:06:25 |
イクリールは、カストルとポルクス、そしてメレフの姿を探している。届けるべきものの為に。 (c81) 2021/06/01(Tue) 17:07:09 |
【墓】 夢の続きを イクリール>>@9 『カストルとポルクス』 「──ああ、よかった、ここにいたのね… ……この間?」 二人に謝られるような事をされただろうか。 記憶を手繰り寄せても思い当たる節は無くて、 それでも謝りたいという気持ちは受け入れたくて。 差し出された花を、素直に受け取った。 「……ありがとう、カストル。それからポルクスも… わたしも、あなたたちに渡したいものがあるの」 それから一歩、イクリールは歩み寄って その小さな手に持っていたものを、『二人』に差し出した。 (+58) 2021/06/01(Tue) 17:53:10 |
イクリールは、全ての手紙を届け終えて、そして受け取った。それから、まったくもう、とだけ呟いた。 (c83) 2021/06/01(Tue) 19:01:22 |
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