【墓】 飢えた狗 ムルイジチャリ、と鎖が擦れる音がして。 また今日も始まったかと薄く目を開ける。 ここで繋がれて毎日ショーに出されて、 心も摩耗してきたころに、冷や水を差し込まれる感覚があった。 「なっ……!?」 少年が。裸で壁に繋がれたオレに覆いかぶさってきている。 手足の拘束は普段よりきつくなっており、身動きが取れない。 少年は切羽詰まった顔で爪で傷を残すような無遠慮さで、 俺の胸板を、腹筋を、首筋を欲望のままに這わせる。 予想外の『客』の襲来に、流石に顔が歪む。 相手の意を探ろうとその表情を見ようとして、 少年の向こう側に強化ガラス越しの肥客が居るのを見つけた。 好色満面の顔でこちらを見てくるその欲には覚えがある。 成程、そういう趣向かと、吐き気を催した。 ▼ (+7) 2021/07/08(Thu) 0:51:43 |
【墓】 飢えた狗 ムルイジ――少年はこれを、やらされているわけではない。 ただ全てが自分の意思でもないのだろう。 欲の吐き出し先を、下卑た大人たちに差し出されて、 行き場のない若さが抑えきれないだけだ。 その若い欲の暴走を、それに成す術がないオレを見て、 楽しむ者たちが、この行為の"意思決定者"だ。 吐き気がする。反吐が出る。 この先、この経験が齎す人生の陰を考えると、 金を持つ者の傍に生まれる者も、 金を持たない者と同じくらいに不幸であると思った。 少年が、どう発散していいか分からない己の欲に戸惑い、 初めての経験にオレの身体を切り傷や噛み疵だらけにしていく。 初の褥に作法なんてないのは当たり前だが、 それが鎖で繋がれた相手なら、こうもなる。 征服欲と独占欲と性欲のない交ぜになった感情を向けられ、 必死なその少年の形相に大きくため息を吐いた。 ▼ (+8) 2021/07/08(Thu) 0:55:54 |
【墓】 飢えた狗 ムルイジ「そのままでいい……聞こえてねェフリしろ。 焦んじゃねェよ。逃げやしねえ」 後ろの大人たちに聞こえない声で言うと、 それでも貪りの対象から声を掛けられたことで戸惑いが混じる。 歳の頃は15くらいの餓鬼に、無理な話かと息を吐いた。 ……馬鹿野郎が。本当に。 「……ゆっくりでいい。 したいようにしろ。今から少し声出すがビビんじゃねえぞ。 俺が目をつぶったら思い切り顔面を殴れ。手加減すんなよ」 言って、大きく息を吸い込み。 「テッメッ!! 離せこのクソガキ!! オレを誰だと思ってやがる、天下のムルイ――」 目を瞑る。戸惑いが感じられるが、頬に走る衝撃。 ……いい子だ。笑いが出る。 ▼ (+9) 2021/07/08(Thu) 1:01:23 |
【墓】 飢えた狗 ムルイジ興を載せた。悪くない。 少年がぎこちなくも乱暴に、躰を貪り始める。 下手糞な愛撫に、躰が反応しやがるのは癪だったが、 相手に痛みを与えるよりは100倍マシだった。 挿入れる場所を探りやがったのは殺してやろうかと思ったが、 無事接合すると腰の辺りが互いに震える。……最悪の気分だよ。 「っ……っ……」 乱暴で、己の快楽しか考えていない腰の動き。 少しは分かって来たのか、指先も撫でるような動きになってきた。 オレは痛みと異物感に吐き気を抑えながら、 ただ揺らされるがままになっていた。 その少年の必死な顔が。 ――金に踊らされ、狂わされたかつての自分と重なり。 貫かれながらも、俺は大人に見えない角度で微笑んでいた。 「………ごめんな。 ………救って、やれなくて」 それは、誰に対しての言葉かは分からない。 少年も急にそんなことを囁かれて、困惑した顔でオレを見る。 ▼ (+10) 2021/07/08(Thu) 1:07:06 |
【墓】 飢えた狗 ムルイジそこに愛情はなくとも、身体の刺激で男は容易に果てる。 限界が近いようで、少年の動きにも余裕がなくなってきた。 きっとこの経験は、この少年の人生を歪める。 金が人の人生を狂わせて、誰もが正しくなんて生きられない。 勝つ奴が居れば同じ数負ける奴が居て、 そのたくさんの屍の上に立てるのは一部だけだ。 「っ……でもな。狂っちまった人生の先も ………案外っ、悪く、っねェからよ。 真っ当にっ、誰か好きっ、になって、"お前は"っ、 ……幸せになれよ」 褥には似合わないセリフだが、 この奈落に居るオレが言ってこそ、意味がある。 一つ亡くせば、全てが終わるわけじゃねェ。 一度負けがつけば、這い上がれないのが人生じゃねェ。 その果てに、こんな船の上で逢える奴だっている。 だから。 ――自分に賭けることだけはやめんじゃねェぞ。 。 最後に、強く"締める"と。 少年はあっさりと絶頂に導かれた。 (+11) 2021/07/08(Thu) 1:19:31 |
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