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【人】 萩原 悠人─ むかしのはなし ─ [妹が自分を特別ではないと思っていることを 痛感したのは一体いつだっただろう。 正確に言えば、兄としては特別だった。 けれどそれ以上の意味を持つことは終ぞなかった。 その事実に正直心を締め付けられる思いではあったが、 同時にほっとしたことを覚えている。 親無し同士、くっついたところでどんな未来がある。 あの子はもっと幸せになるべきだ。 偽りではなく本当にそう思っていた。 しかし心ってのは案外面倒くさいもので。 彼女に逢いに行くことをやめることは出来なかった。 愛していたから、報われなくとも傍にいたかった。 何も無い自分の中にあるのは、彼女への愛だけだった。 …………だから、気付くことが出来なかったのだろう。 あまりに周りへ無関心すぎて、自分に入れ込む女のことも よく分かっていなかったのだ。 気づいた時にはもう、全てが遅すぎた。 仕事仲間たちが俺に忠告をしなかったのは、 ]*歳が浅い割に上位の成績を収めていたからだろう。 少しは痛い目を見ればいいと思っていたのだと、 あとから懺悔するように言われたのをぼんやり覚えている。 (11) 2019/04/19(Fri) 16:07:55 |
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