情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 エピローグ 終了 / 最新
【人】 萩原 悠人─ むかしのはなし・完 ─ [話の顛末はこうだった。 ヤクザの下っ端の男が入れ込む女は自分の上客で。 もっと言えば、店のケツ持ちをしている組の構成員だった。 そうとは知らず、俺は女に甘い言葉を囁き 思う存分貢がせていたというわけで。 そのヤクザからして見れば面目丸潰れ。 仲間内からもからかわれていたらしい。 元々激昂しやすかった男は、 俺の事を調べ上げて施設のことを知った。 そうして────火をつけるなんて、 アホな所業に至ったわけだ。 火をつけたところで何にもなりはしないのに。 俺が働く目的がそこに金を入れることだったから 入れる先が無くなればいいとでも思ったのか。 その後見かけることのなくなった男のことなど 知る由もなかったし、復讐する気にもならなかった。 残ったのは、ただただ虚無だったから。] (260) 2019/04/26(Fri) 22:15:27 |
【人】 萩原 悠人[妹がその現場を目撃していたことは知らなかった。 そうして今も、その行為を止められなかった事実に 後悔を抱いているということも。 ……そんなことにさえ、気付くことができなかった。 妹のことはなんでも知っていると思った。 それなのに、何も分かっていなかった。 あの事件以来、彼女に近付くことも 生き残った施設の子達に近付くこともしなかった。 自分の傍に特別な人を置くこともしなかった。 関係を深めたいと近付く人はいたけれど 全て断って拒絶した。 ……守りきれる自信がなかったから。] (261) 2019/04/26(Fri) 22:15:51 |
【人】 萩原 悠人[────そして、現在。 今、守りきれる自信があるとは言えない。 けれど付き合う人間の裏は調べるようにしたし、 周りに危害を加える人間には関わらないようにした。 その証拠に、仕事を辞めてから しつこく連絡を取りたいと言う客もいない。 泣いた子もいたけれど別れはあっさりだった。 ……でも、彼を恋人にすると決めたのは それだけが理由ではなかった。 ずっと持ち続けた、妹に対する 諦めとともに燻っていた恋慕。 ただ見守り続け、彼女のために生きようと 決めた日から全く動くことのなかった心が 彼によって動かされた。 それは自分にとって衝撃的で、衝動的な恋だった。 もう二度と、大切な人を傍に置かない。 そう、あの日自分に誓ったことさえ 容易に覆してしまうほどに。] (262) 2019/04/26(Fri) 22:16:28 |
【人】 萩原 悠人……さてと。 合鍵とペアリング、どっちから あげた方が喜ぶかね。 [歩きながら、そんなことを口にする。 片耳に付けたピアスは妹との揃い。 白夜に言ってたっけなぁ……なんて 今更のように考える。 彼には言えないことも、言ってないことも多い。 少しずつでも開示していかなければいけないと 思いながらも、今まで言うことは出来なかった。 まずはそれを話してから、だろうか。 彼ならきっと水臭いと笑うかもしれない。 はたまた、片方ずつのピアスを怒るかもしれない。 どんな反応かは分からないけれど、 きっと幻滅することはないだろう。 考えていたら、彼に会いたくなってきた。 今から会いに行ったらどんな顔をするだろう。 嬉しいと笑ってくれるだろうか。] (263) 2019/04/26(Fri) 22:16:46 |
【人】 萩原 悠人[最近は妹のことを考える時間が減って、 白夜のことを考える時間が増えた。 ──きっとこれは、いい事なんだろう。 買い物に行くか、彼の元に行くか。 少し悩んで彼の元へと歩みを進める。 彼の笑顔を思い浮かべると、心が暖かくなる。 幸せだと感じる。 何も感じなかった頃の自分とは違った。 ……なんだか今日は妙に早く会いに行きたかった]* (264) 2019/04/26(Fri) 22:17:06 |
情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 エピローグ 終了 / 最新