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【人】 不眠症 アマノ漸く帰る手立てができたというのに、その足取りは重く、表情は暗い。 ──帰っても、きっと間に合わない。 そうわかっているからかもしれない。 それでも、帰らなければ。 例え命の灯が途絶えていたとしても、彼女を送るのは自分にしかできないのだから。 「…………」 最後に一度振り返った。 別れの言葉を交わす者たちの中に目的の者を見つけると、それだけで満足したのかフイ、と視線を逸らして。 体調不良でふらつく体を支えながら、男は一人静かに舘を去っていった。 (45) 2021/10/25(Mon) 12:26:24 |
【人】 不眠症 アマノ>>62 ユピテル 「……そう、かもしれないな」 物事を難しく考えすぎるのはよくないのかもしれない。 そう思いなおした直後に差し出されるものを反射的に受け取ってしまった。 「んだよそのチートアイテムは……」 重さも材質も、どう見てもただの木製のブレスレットにしか見えない。 このタイミングで冗談をかますようにも思えなかったが、さすがに訝しげな視線を向けてしまった。 「お前の世界では、こんなもんまで作れんのか……」 もっと専門的な話をしておくべきだったなと少々後悔した。 ブレスレットを装着し、ユピテルの頭をがっしと掴んだ。 「お前でテストさせろ」 効果の有無や使い方がわからなければ意味がない。 (82) 2021/10/27(Wed) 15:14:26 |
【人】 不眠症 アマノ>>92 ユピテル 「………なるほど…。 あの男も似たようなことを言っていたな」 むすっと不機嫌な面のままだが、効果が実証されて感心している。 自分の世界もかなり科学が進んでいる方だと思っていたが、異世界はやはりこちらの常識は通用しないらしい。 「使い方は理解した。 コレの構造を含めたお前の世界の話を聞いてみたい所だが、そんな時間はねぇようだな」 頭を掴んでいた手でわしゃわしゃと頭を撫で繰り回して離す。 「…………ありがとな」 小さく呟くように礼を言って、足元のペットボトルを拾い上げた。 「じゃあ“また”な」 顔を見せないようすぐに背を向けて立ち去って行く。 帰ればもう二度と会うことはないかもしれないが、それでも“また”といったのは、また会ってもいい、という意思表示かもしれない。 (107) 2021/10/28(Thu) 3:55:29 |
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