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【墓】 朝日元親僕は朝が早い。 いつもかなり早くに登校して、ぼんやりと本なんかを読んでいる。 今日も半分くらいはいつもと同じだった。 早くの時間に登校をして、人気の少ない学内を抜けて。 普段なら教室へと向かうはずの足は、グラウンド横の自動販売機に向いていた。 小銭をひとつ、そこに入れる。 200mlのペットボトルを迷いなく選び、僕はその栓を開ける。 透明な濾過された水。 こんなに綺麗なものでなくても、僕には何も関係ない。 例え雨水だろうと泥水だろうと、僕は何の苦もなく飲み干せるだろう。 (+0) 2021/10/31(Sun) 22:40:38 |
【墓】 朝日元親まさかあんな話をした数時間後に、その噂の薬を手に入れるだなんて思わなかった。 そこまで考えた僕は首を振る。 これは、僕が僕の意思で手に入れたものだ。 「 ……すみませんね、先輩 聞こえるはずもない呟きを落とす。 ────それでも僕は、何としてでも強くならなければならなくなった。 僕が弱いから、逆らえない。 群れの中の弱者は、強者に従うのが野生の世界の掟である。 「 それでも僕は、このまま弱者でいるのは嫌なんだ 」 (+2) 2021/10/31(Sun) 22:43:33 |
【墓】 朝日元親「 僕は、人間だ 」それを証明するために、藁をも掴む思いでこんなものに頼る。 あんなに大嫌いな異能の強化を願う。 嗚呼。本当に愚かだな、僕は。 片手で小瓶を転がした。 中に入っているのは水とは違う 無色透明の液体 。200mlのペットボトルを見遣り、意を決した僕は、小瓶の中身をそこに注ぐと一気に飲み干した。 これは残り物でも何でもない。 でもそんなのは関係ない。 最初から、残り物だろうと福なんてない。 (+3) 2021/10/31(Sun) 22:44:59 |
【墓】 朝日元親直後、眩暈のような感覚に襲われる。 グラウンドの真ん中で、僕は意識を失った。 人が近付けば、すぐ目を覚ます。 でも目を覚ますのは僕≠カゃない。 僕の中の獣の魂が、腹を空かせて獲物の姿を探す。 何よりも憎い、 あいつ の姿を、匂いを、気配を探す。だから、倒れた僕に駆け寄り声をかけるなら。 少し気を付けなければならないかもしれない。 (+4) 2021/10/31(Sun) 22:49:21 |
【墓】 朝日元親ハイエナはサバンナの掃除人≠ニも呼ばれる肉食動物だ。 往々にして、横取りや屍肉を漁るイメージが強く卑怯者≠フレッテルを貼られることが多い。 しかしその実狩りの成功率は百獣の王と呼ばれるライオンより高く、ライオンの子供を狩ることすらあるという。 同じくにしてライオンからも敵視をされており、食用でもないのにライオンに殺されることも多々ある。 ハイエナの皮は硬く、その肉はどの肉食獣の餌にもならないほどにとても不味いらしい。 骨すら噛み砕く顎の力、その骨すら消化する強力な消化酵素、屍肉すらものともしない強靭な胃を持つハイエナは、サバンナに於いて一二を争うほどの強者である。 更に獲物を探す目、鼻、耳────そのどれをとっても一級品とされる。 何よりも特筆すべきはそのスタミナだ。 知能も霊長類と並ぶとされるほど高く、狙った獲物が疲れ果てるまで的確に追い回し、その強い顎で餌食にする。 疲れを知らぬハイエナを止めることが出来るのは、更なる強者の存在か、【絶対王者】の言葉、又は雌の命令だけである。 ハイエナの社会は、絶対的な女社会、そして縦社会なのだ。 (+7) 2021/10/31(Sun) 23:31:35 |
朝日元親は、 動くな の命令を守っている。口許から見える牙は剥き出しに。 (c6) 2021/11/01(Mon) 0:33:20 |
【墓】 朝日元親僕≠ヘ途端に、何事にも興味がなくなったように、その表情すら大人しくなった。 暴れる理由のなくなった僕≠ヘ、僕にその身体を返す。 僕を押さえつけていた人達は、僕から力が抜けたことが分かるはずだ。 そのまま僕は、また気を失うように倒れ込んだ。 あどけない、ネコ型亜目の獣の寝顔がそこにある。 (+13) 2021/11/01(Mon) 0:59:50 |
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