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【墓】 朝日元親一昨日はサボり、昨日は保健室。 今度こそ部活に穴を開けるわけにはいかない。 今朝も早くに登校していた僕は、定刻通りの朝の放送の音を聞く。 「…………?」 放送に、声はない。 本を読んでいた顔を、上げた。 (+2) 2021/11/02(Tue) 21:18:38 |
朝日元親は、席を立った。 (c0) 2021/11/02(Tue) 21:34:57 |
朝日元親は、静かに、放送室の扉を開けた。 (c1) 2021/11/03(Wed) 0:52:01 |
【墓】 朝日元親>>放送室 「……」 嫌な予感は的中したのかもしれない。 前髪の下で僕は目を伏せて、匂いを辿ると空の小瓶とペットボトルに近付いた。 「 …………そう 」それが何か、僕はよく知っている。 だから、まず小さくそう漏らした。 「僕が来た時には、彼しかいなかったよ」 後から来た楢崎に状況を伝えた。 ブースの中に、鏡沼の姿があるだろう。 (+8) 2021/11/03(Wed) 2:07:21 |
【墓】 朝日元親>>放送室 「ここにいる、っていう判断に理由はある? もしあるんなら、もう少し気を引き締めて探す。 ここにいないんなら、ここをどんなに探しても無意味だよ」 僕は鏡沼に尋ねた。 (+10) 2021/11/03(Wed) 2:20:49 |
【墓】 朝日元親>>放送室 「僕は精神系の異能のことは詳しくないけど。 つまり、先輩があんたを認識してるから、僕にはあんたが見えた。 そうでなければ本当はあんたはここにいない。 ここにあんたがいることが、先輩がいる証拠……ってことかな」 「……それなら、納得はできる。 前は先輩のこと、匂いで見つけることが出来たけど。 今は、どうだろうね。やってみるけど」 (+11) 2021/11/03(Wed) 2:44:48 |
【墓】 朝日元親聞こえた水音に振り返った僕は、つんと酸っぱい匂いに一瞬顔を顰めた。 顰めたところで前髪の向こうだ。 大してわかりはしないだろう。 慌てた様子で駆け付けたもう1人の鏡沼。 さきほどまで居た彼が消えている以上、こちらはこちらで何かがあったということだろうが。 「何か、した?先輩が? ───あのバカ! 」僕は盛大に舌打ちをした。 見つけられるかわからないなんて悠長なことを言っている場合ではないらしい。 何がなんでも、見つけなければならない。 (+13) 2021/11/03(Wed) 3:40:09 |
【墓】 朝日元親そう思った僕の視線の先に、 空の小瓶とペットボトルが映った。 あの薬を飲んだ時、僕がどうしたか。 そして先輩も同じようにしたとしたら。 そう思った時にはもうペットボトルを手に取っていた。 この中が、 ただの水 でもそれはそれで構わない。そうでなかった時、 少し確率が上がる 程度の博打でしかないのだ。これは。 (+14) 2021/11/03(Wed) 3:43:08 |
朝日元親は、ペットボトルの栓を開け、残った水を飲み干した。 (c3) 2021/11/03(Wed) 3:43:42 |
【墓】 朝日元親────正解だ。 あながち僕の勘も、馬鹿にはできないらしい。 勘と言うには推理に近かったけど、無事正解を引き当てた。 口の中に残る、ただの水とは違う味。 ぐらりと足元が揺れるような眩暈。 吐きそうだ。でも、意識を手放してなんかやらない。 今回は、この副作用の覚悟も決めて飲んだんだ。 でもこれ、また部活に顔出せそうにないかもな。 でも今回は、謝ってなんかやらないよ。守屋先輩。 (+16) 2021/11/03(Wed) 4:18:47 |
【墓】 朝日元親そこにいたはずの鏡沼の姿が消える。 あいつはあいつで何かしてるんだろう。 身体を張るのは何も、僕だけである必要はないだろうから。 感覚がまた鋭くなるのを感じる。 吐き気を堪える口許から、骨砕歯と裂肉歯が覗く。 僕は、先輩の匂いを探す。先輩の匂いを辿る。 絶対に僕が見つけてやるなんて約束は出来ないけど。 今回ばかりは、必ず見つけると。 執拗いハイエナは、そう強く思う。 (+17) 2021/11/03(Wed) 4:24:51 |
朝日元親は、楢崎大地を見送った。今はマトモな言葉が出そうにはない。 (c5) 2021/11/03(Wed) 4:35:44 |
朝日元親は、僕≠ナはない、僕は。先輩の匂いを辿り、漸く。 (c6) 2021/11/03(Wed) 5:00:48 |
【墓】 朝日元親──────見つけた。 手を伸ばす。引き寄せる。 引き摺りだそうとする。 精神系の異能には詳しくない。 誰にも認識できない世界なんて、僕は知らない。 だからこっちに戻ってこい。 僕の知っているこの世界に、戻ってこい。 先輩がいないと、マイクに向かって下手な放送を披露しないといけなくなるじゃないか。 (+18) 2021/11/03(Wed) 5:06:30 |
朝日元親は、守屋陽菜に異能抑制剤を呑ませた。 (c8) 2021/11/03(Wed) 19:43:21 |
朝日元親は、鏡沼 創を認識している。その気配は消えない。 (c9) 2021/11/03(Wed) 19:58:22 |
朝日元親は、世界に色が戻ったあと。鏡沼 創のことを、もう認識できなくなる。 (c10) 2021/11/03(Wed) 21:24:12 |
朝日元親は、世界が色づくのを見た。放送室に、戻ってくる。 (c12) 2021/11/03(Wed) 21:38:07 |
【墓】 朝日元親>>放送室 「……薬、効いたみたいだな」 よかった、と僕は呟く。 僕の視界に映るのは、眠る守屋先輩と、3時限目終わりのこの時間まで待っていてくれたなら楢崎。 あとは、風紀委員の先輩だろうか。 それ以外が見当たらないこと に、前髪の向こうで目を伏せた。まあ、でも。仕方がないよね。 垂れた 赤 すら、その言葉すら、僕にはもう届かない。 (+37) 2021/11/03(Wed) 21:45:14 |
朝日元親は、自分にとって、鏡沼 創がもう何処にも居ないことを知った。 (c13) 2021/11/03(Wed) 22:17:47 |
【墓】 朝日元親>>放送室 憂いている場合ではない。 先輩を連れ戻せたことを、今は喜ぶべきなのだ。 繋いでいた手を先輩から離し、立ち上がった僕は酷い頭痛と眩暈に襲われる。 そりゃ、そうだな。大分無理をした自覚はある。 「先輩のこと、頼みます。 僕は1人でなら何とか歩けますけど、流石に先輩を運ぶのは力になれそうにないから」 その場にいる面々に告げる。 ふらつく足取りで、放送室を出た。 (+38) 2021/11/03(Wed) 22:34:17 |
朝日元親は、重い足取りで保健室へ向かった。 (c14) 2021/11/03(Wed) 22:36:09 |
朝日元親は、とても柔らかに、微笑っていた。 (c16) 2021/11/04(Thu) 20:58:14 |
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