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【人】 埋火 真里花 うん なら。 体大事にしてるなら。 [ 良いんだと、安心したように息をつく。 ] 連絡来ないと思ったら 入院とか やだよ。 お見舞い、すぐには行けないから。 [ 触れるし、喋れるし、それならもう 夢でもいいかなって。 懐かしさに目を細めて ] あ、ごめん 引っ張りすぎた 男前なのに [ 頬で遊んでいた指を離す。 赤くなったりはしてなかったと思うけど そんなに強くは引っ張ってないし。 でもちょっと痛かったかなって、頬を指の先で撫でて ] (30) 2020/12/29(Tue) 10:05:52 |
【墓】 埋火 真里花―― 少女の小さな世界 ―― [ 物心ついたときには、家には兄が居た。 父、母、兄、妹のよくある家族。 父母が忙しくしているから、 兄が甲斐甲斐しく世話をしてくれた。 それもよくある話。 ] にいちゃ まりか なかなかったよ えらい? [ どこに行くにも、カルガモの親子よろしく 兄のあとをついて回った。 年頃の兄からすれば、うっとおしかった事だろうに。 私の知る兄はいつも、優しい顔をしていた。 転ぶよ、と注意されていたにもかかわらず 蝶々を追いかけて転んだ日も 迷子になってしまった時も ――泣かないから見つけられなかったとは ある程度成長してから聞いた笑い話だが 怖い夢を見た時も。 ――どう見ても泣いていたとしても、 口癖のようにそう言っていた。 ] (+7) 2020/12/29(Tue) 10:44:36 |
【墓】 埋火 真里花[ 大きな兄の手がすきだった。 どこにいても見つけてくれる兄がすきだった。 絵を描いて、粘土を捏ねて、踊って。 それを見せて、報告したら 上手だねって褒めてくれる兄がすきだった。 兄さえいれば、この先もずっとずっと 幸せなんだって、思っていた――。 しかしそんな幼い幸せは、あの日派手な音を立てて 脆く崩れ去っていった。 ] りこん?おとうさんとおかあさん バイバイするの? [ 真里花はお母さんと一緒に行こうね。 そう言った母に、不思議顔のまま、頷いた。 ] おとうさんお仕事で遠くに行くの? はやく帰ってきてね [ 未就学児に"離婚"の真意までは伝わりようがなく。 ] (+8) 2020/12/29(Tue) 10:45:16 |
【墓】 埋火 真里花 まりか お兄ちゃんとはっぴょうかいの 練習するやくそくしてるからまたあとでね [ あの日、物言いたげに顔を顰めた父の思いに 気づいたのは小学校を卒業する頃だった。 妹が、あの時の私と同じような年頃に なった頃。 手紙はときどき返事が来る。 誕生日には電話も来るし、電話もする。 そうして少しずつ、いつでもそばにいてくれた兄が 会うことはできない兄に変わっていくのを 渋々、受け入れた。受け入れるしか、なかった。 ] (+9) 2020/12/29(Tue) 10:45:47 |
【墓】 埋火 真里花 『遠足は水族館に行くんだって お兄ちゃんはどこに行った?』 『ねぇあのね ――……なんでもない そろそろ寝ないと おやすみお兄ちゃん』 [ 電話の先で兄は私の話をちゃんと聞いてくれたし 父母の愛情を感じないではないけれど、 生まれたばかりの妹には、甲斐甲斐しく面倒を見てくれる 兄は居ない。 その代わりに、あまり手のかからない姉がいたものだから。 父母は真里花の事を「手のかからないおりこうなお姉ちゃん」 だと囃し立てて、甘ったれを封殺した。無意識で。 気持ちの上では兄がしてくれたように、 妹の世話を焼きたいと思ったけれど。 小学校に通い始め、環境も大きく変わり それに一生懸命だった私は、そこまでは手が回らなかった。 ] (+10) 2020/12/29(Tue) 10:46:07 |
【墓】 埋火 真里花 お兄ちゃん まりか 泣かないよ ……えらい? [ 電話を切ったあと。 やっぱり私は口癖のようにそう言ってしまう。 勿論返事は返ってこないし 偉いね、と撫でてくれる手も現れない。 リビングでは寝ていた妹が起きた事を 知らせるように大きな声で泣いている。 慌てる父母の足音は聞こえない。 ……お母さんは最近妹の夜泣きがひどいからと 寝不足だったっけ。 ] どうしたの ミルク?おむつ? [ おぼつかない手付きで、幼い妹を抱き上げる。 妹は私の顔を見ても、泣き止むことはなかった。 きっと安心できなかったのだろう、半泣きで 顔を歪めて自分を見ている おりこうで手のかからないお姉ちゃんでは――。* ] (+11) 2020/12/29(Tue) 10:47:04 |
【人】 埋火 真里花 もしかして前にもしたことある? [ なにを、大したことじゃないよくらいの ニュアンスで言ってるのか。 そうじゃないでしょってツッコミたい所では あるけれど、これ以上問答しても、きっと 自分で管理するから平気と言われてしまうのだろう。 だって大人>>65だもの。 ] え? ……お兄ちゃん以外? うーん わかった……? ひゃーい [ 疑問形で返事をしたのは警戒心が薄いから ではなくって。他に触るような人いたかな いないな?ってそう思ったから。 さっきまで兄の頬で散々遊んでいたくせに 自分がそうされると不満そうな声が出てしまうのは ある意味甘え、なのかもしれない。 ] (67) 2020/12/30(Wed) 19:09:43 |
【人】 埋火 真里花 えぇ〜……… [ お腹すかないの、に対しての返事が あんまり>>66である。 そんなだからひょろひょろなんだ と口に出すのはやめておいた。 せっかく久しぶりに会えたのに、 兄妹喧嘩の火種になりそうな事態は避けたかったから。 ――喧嘩って思うのは私だけかも知れないことも 含めて、避けたかったから。 ] お兄ちゃんお腹すいてないなら 真里花一人でなにか探してくるよ。 温泉宿ならお土産屋さんとか、あるかもしれないし [ 立ち上がる兄に、そわそわしながら 告げて鞄を手繰り寄せる。 探検、探検したい お部屋までは連れてこられただけで、 中は全然見ていないし、なにか面白いものが あるかもしれない。 好奇心は旺盛なほうなので、 思いついたことを端から口にする。 ] (68) 2020/12/30(Wed) 19:10:04 |
【人】 埋火 真里花 温泉まんじゅうって食べたことない おいしいのかな? あと温泉卵……あでも、温泉卵なら 卵かけご飯がいいな [ バイトで得たお給料はそんなに多くはないけど 飲み食いするくらいなら、事足りるから。 ――たぶんね!* ] (69) 2020/12/30(Wed) 19:10:15 |
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