【人】 転校生 矢川 誠壱[ 小さく挨拶をして気まずげに 足音を立てぬようそうっと 入った教室だったけれど、 すぐに近くにいた女子生徒に捕まった。 やっとクラスメイトの名前を 覚えてきたところなのだ。 彼女はそう、たしか…] 田中さん… 「おはよう、遅刻の矢川くん」 …すんません… [ そう小さく謝ると彼女は困ったように 片眉をあげて、肩を上げて、下げて、 ふう、と小さくため息をついた。] (46) 2020/06/14(Sun) 15:30:54 |
【人】 転校生 矢川 誠壱「とりあえず。職員室には行った?」 いや、まだ… 「なら先に行ってきなよ。 届出出してから帰ってきて。」 …ごめん… 「いーからはやくね!」 [ そういって頷く彼女に一礼して 一度教室をでる。でる、つもりだった。] (47) 2020/06/14(Sun) 15:31:10 |
【人】 転校生 矢川 誠壱[ まあ、弁解という弁解もないから 仕方のない話ではあるのだが。 ちら、と目線を落とした。] せっ きゃく まにゅ ある… [ 小さく唸りそうになるのを、 こぼれそうなため息を、堪えて。] (49) 2020/06/14(Sun) 15:32:11 |
【人】 転校生 矢川 誠壱* [ ひとまず職員室へ向かうことを 許されたのだから、その通りにしよう。 接客などやったことがないし無理だと 伝えるのはそのあとにしたほうがいい。 どうせ今断ってもすぐに却下される。 ───参加しないという選択肢がなかったわけではない。 準備にはじめから参加していたわけでもないし ものすごく中途半端な時期に、その上 3年に上がってからの編入生なんて。 編入後1ヶ月で文化祭なんて。 物好きだと思われたって仕方ない。 だけど、参加したかった。 人生で限られた数しかないから。 それが思い入れのあるものでも、 ないものでも、構わない。 その場所に自分がいた、それだけで。] (50) 2020/06/14(Sun) 15:33:55 |
【人】 転校生 矢川 誠壱[ ああ、接客じゃなくてせめて キッチンスタッフにしてくれないだろうか。 そんなことを考えながらぼんやり歩く。 廊下から覗き見えるさまざまな 教室には展示も準備されているらしい。 とても広い学園だし、きっと 全てを見ることは叶わないんだろうなと 思いながら、背中に負ったベースのケースの 肩紐をくい、と引いた。]* (52) 2020/06/14(Sun) 15:35:14 |
【人】 転校生 矢川 誠壱 ──職員室── うげ… [ 職員室に到着すれば、なにやらそこには 列ができていた。それも外まで。>>58 遅刻するたびにお世話になっている この場所であるから、馴染みはあるが、 こんなにひとが並んでいるのは正直 今まで見たことがないから、驚く。 だが、仕方ない。 この図体で目立たないなんていうのは むずかしい話ではあるが、ひとまず そっと最後尾につけた。 ポケットでスマートフォンが震える。 右手で取り出して、すう、とその 無骨で長い指を画面に滑らせる。 バンドのメンバーで構成されている グループにメッセージが届いたという通知。 数度タップしてみてみれば、どうやら トラブルがあって、リハーサルの時間が 予定より遅れそうだという連絡だった。] (85) 2020/06/14(Sun) 20:47:33 |
【人】 転校生 矢川 誠壱『りょーかい』 [ と一言送る。 バンドのメンバーはいい奴ばかりだった。 ベースは、ずっと前からやっている。 幼い頃から転勤族で、色んな場所を 転々としていた自分にとって、 人と距離を詰めるためのツールであり 拠り所のような存在。 今のメンバーに声をかけられたのは たまたまだった。 この街に引っ越してきてすぐ。 弦を買おうと楽器屋に行った。 その場所で「ベースが、受験を理由に 3年に上がってすぐやめてしまった」と 愚痴っているこの学園の生徒を見たのだ。] (86) 2020/06/14(Sun) 20:48:00 |
【人】 転校生 矢川 誠壱[ 仕方ないとはわかっていた。 だからこそ、引き留めることも できなくて、くやしい、悲しいと。 ああ、そうだよなあ、と ぼんやり上部だけで話を聞いていて。 まさか、そのあと学園で再開して。 その上向こうがこちらを覚えていて。 入ってくれと頼まれるなんて思っていなかった。 元ベース担当のやつにも会ったし、 話をしてきちんと引き継いだ。 で、即席ながら無事バンドメンバーと なったわけなのだけれど。 今日が、最後になるんだろうか。 腐っても受験生だ。 あまり長く続けられないことは 重々承知だけれど。 やはり、一人で弾くよりも断然 誰かと演奏する方が楽しいし、 誰かに聞いてもらえるのも嬉しい。 最後は、寂しいな、なんて。 自分が言えたことではないのだろうけれど。] (87) 2020/06/14(Sun) 20:48:31 |
【人】 転校生 矢川 誠壱あー……いや、 なんかこう、最後なんだなって ちょっと思っただけです、 俺が、感傷に浸るのも変すけど [ と続けて。くしゃ、と手の中で 音を立てた紙に目線をやる。 そして、思い出した。 ああ、うん、バンドの方に意識が 向いてはいたがそうだった。 もっと憂鬱なのはこちらだったな、と。] ……最後に、恥は残したくないっす…ね… [ そんな呟きを落とし。]* (89) 2020/06/14(Sun) 20:50:05 |
【人】 転校生 矢川 誠壱…あ、いや、こちらこそ… [ そうこちらからも一言謝って、 教室の中へと足を踏み入れる。 そこでちょうど田中さんに捕まったのだった。 彼がした提案をまだ知ることはない。 知っていたなら、こちらからも 提案したはずだ。自分も楽器ができるの だから、ぜひ演奏側に回らせてくれと。 そうすればきっと、今こんなふうに 接客マニュアルを見ては 不安を煽られることはなかっただろう。]* (93) 2020/06/14(Sun) 21:53:50 |
【人】 転校生 矢川 誠壱[ そうして落とした呟きに、 かけられた言葉にまた少し顔を上げて。 …一瞬、話すかどうか迷う。 だが、どう言葉にする? 実は自分のクラスがコスプレカフェ なるものを出店するのだが、 遅刻で裏方を手伝えなかった代償に 表で接客をさせられそうになっているが それを避けたい、ので力を…貸してください…? いやいや。 それはなんていうか、あまりにも。] (107) 2020/06/14(Sun) 23:56:49 |
【人】 転校生 矢川 誠壱…恥は、かきたくないっすけど、 先生に頼りすぎってのもちょっと あれなので、…うん、 とりあえず自分で話してみます。 その、クラスが模擬店するんですけど 接客、苦手ってだけなんで… ほらこの図体ですし。 …怖がられるかも、しれないですから。 [ そういって、手に持ったプリントを 折りたたんでポケットに仕舞う。 だが、気遣いは嬉しかった。 味方になってくれようとする人が いるっていうのはやはり、 どんな状況だってうれしいものだ。] どうしても困ったら、 また頼らせてください、青柳先生。 [ そういって、ぺこりと頭を下げる。 つづいてふと思い立ったことに「あ」と 小さく声を上げた。] (108) 2020/06/14(Sun) 23:57:26 |
【人】 転校生 矢川 誠壱それより、先生、 肩代わりっていうか… 手伝ってほしいことがあるんすよ。 [ と言ってから、背中にある ベースのケースをちら、と見て それから視線を彼の方に戻す。] バンドで、ライブ出るんで。 …盛り上げ役としてぜひ、 見にきてください。 …後悔したくないんで。 [ そう彼の言葉を借りて、笑った。] (109) 2020/06/14(Sun) 23:58:10 |
【人】 転校生 矢川 誠壱[ ちょうど前のやつが職員室に入っていく。 ひとり、ふたり、出てくる。 次は己の番だろう。 ポケットでスマートフォンが震えた。 職員室の扉をくぐる。 入りざま、振り返って、彼をまた見て。] じゃ、せんせ、またあとで。 [ と約束を交わしては、足を進めた。]* (110) 2020/06/14(Sun) 23:59:24 |
【人】 転校生 矢川 誠壱 ──教室── [ やはり、断ろう。 そう心に決めながら足早に教室へと戻る。 先程はさすがに言えなかったし、 どのみちすぐはぐらかされるか、 却下されるに違いなかったけれど。 善は急げである。 図体の大きな違う制服の男が 廊下を闊歩する様子は きっとひどく目立っただろうけれど それどころではないから仕方ない。 教室の前まで来た頃には 軽く肩で息をしていたが、 それもお構いなしに扉に手をかける。 そのときだった。微かだが確かに 柔らかなピアノの音色。>>98 そんなもの、さっきはなかったはずだ。 つまり、誰かが弾いている? そのまま静止していれば、 怒号が続いた。その声はそう、 ついさっきぶつかりかけた───] (113) 2020/06/15(Mon) 0:24:27 |
【人】 転校生 矢川 誠壱雨宮くん…? [ 彼も間違いなく接客を嫌がっていた。 それが今はピアノを弾いている? つまりは、もしかして、これは 何か楽器が弾けたら逃れられるのでは? そっと背中のベースに触れる。 それに、弾いてみたい。 彼のピアノは、きらきらと、 どこか煌めきがあって。 それを拾い集める大きな布になれる。 きっと、ベースなら。 楽しいに、ちがいない。 だがだめだ。彼が弾いている曲の雰囲気と 今ここにあるエレキベースでは合わない。 いや、大丈夫かもしれないが、 それよりももっと───] (114) 2020/06/15(Mon) 0:26:53 |
【人】 転校生 矢川 誠壱[ スマートフォンを取り出す。 学校の軽音楽部室に置かせてもらっている 自分のもう一つの楽器。 メンバーに連絡すれば「鍵は開いてると思うよ」 とすぐに返事が返ってきた。 迷いなく踵を返す。 そうしてまっすぐ向かった部室の角。 置かれたケースを手に取ってまた、 教室へと戻っていく。 今度は、手を止めないまま。 扉を思いっきり開けた。 軽く、息が上がっている。 クラスメイトの視線を感じた。] (115) 2020/06/15(Mon) 0:27:14 |
【人】 転校生 矢川 誠壱───ぁ、 え、っと [ なんて、話せばいいのか、 言葉に詰まっていれば、 田中さんがこちらにずんずんと 向かって歩いてくるのが見えた。] 『遅かったじゃない。 矢川くんもはやく、着替えて。』 あ、の、そのことなんだけどさ 『できませんは通用しないよ?』 いや、そうじゃなくて、その、 [ そういって、手元に持ったケースを ずい、と目の前に差し出す。] (116) 2020/06/15(Mon) 0:27:38 |
【人】 転校生 矢川 誠壱俺、も楽器できるから。 雨宮くんと一緒に演奏するのは どうかな、スーツは、着るからさ。 [ 提案を続ければ目の前の彼女の顔は 訝しげに歪んで、こちらの顔と、 手元のケースを交互に見比べては、 「ええー」と不満げに唸った。] 接客はたぶん、向いてないよ、 やったことないしさ、でかいし、 邪魔になると思う。 「そんなことはないと思うけど」 [ そう隣から入ってきたのは委員長だった。 ああ、うーん。やはり受け入れては もらえそうにないのだろうか。 そう苦虫を噛み潰したような顔に なるのをなんとか堪える、が。] (117) 2020/06/15(Mon) 0:28:03 |
【人】 転校生 矢川 誠壱「まあ、弾いてみて、いい雰囲気に なりそうならいいんじゃない? 二人で急に、なんてできるのか わかんないけど」 …あ、りがとう [ 彼女の言葉に救われた。 ふう、と安堵のため息を落とす。 ちら、とピアノの前に座る雨宮くんの方を みてはゆっくりそちらへと向かった。] ごめんな、勝手に進めて [ そう彼に一言謝ってから 己の楽器を取り出そうか。] (118) 2020/06/15(Mon) 0:28:42 |
【人】 転校生 矢川 誠壱[ それは見た目ではよく目にするであろう アコースティックギターに見えるもの。 だがそこに貼られている弦は4本。つまり] エレアコベース、持ってきた。 これならアンプもいらないし、 …たぶん、エレキよりさっき弾いてた 曲の雰囲気には合うと思う。 [ ボディには、アコギ用の小さな カスタネットが付いている。 本当ならばドラムがほしいところだが ここにはそれが出来る人はいなさそうだから。] リズムとベースは打てる。 弾いてもらえれば、知ってる曲なら 合わせるからさ、どうかな。 [ そう、尋ねて眉根を寄せた。 その瞳は不安げに揺れるだろう。]* (120) 2020/06/15(Mon) 0:30:08 |
転校生 矢川 誠壱は、メモを貼った。 (a34) 2020/06/15(Mon) 0:36:48 |
転校生 矢川 誠壱は、メモを貼った。 (a35) 2020/06/15(Mon) 0:39:21 |
【人】 転校生 矢川 誠壱 ──教室── [ エレアコベースを勧めてくれたのは 父だった。エレキはどうしたって、 バンドで弾くことの方が多い。 家でアンプを繋いで音を鳴らす というわけにもいかない。 小さな音でひとり、演奏するのは やはり少し寂しいものがあった。 そんなときだ。父が、持って帰ってきたのは。 一台の黒いケースを渡された。 はじめはギターを渡されたのかと思った。 だが、弦の本数は見慣れたそれで。 うれしかった。 なつかしいな、とケースを開きながら思う。 そっと撫でてから、取り出したそれを 雨宮くんに見せれば、小さく聞き返される。>>128 こくり、頷いてから説明をした。] …あんまり、見ないよな。 バンドのメンバーにもそう言われてさ 前に持ってきてたんだ。よかった。 [ 助かったという彼には「俺も」と 返しておいたから、きっとその WよかったWの意味も悟ってくれただろう。] (161) 2020/06/15(Mon) 14:46:14 |
【人】 転校生 矢川 誠壱[ 気を悪くなどしない。 己も父に渡されるまでは その存在すら知らなかったのだ。 近くにある椅子をもってきて、座る。 詰襟は邪魔だったから背もたれに掛けた。 チューニングをしようとペグを緩め、 4弦を親指ではじく。低めのEが響いた。 弦が鳴る、きゅる、という音が好きだ。 最後のGを合わせていれば、 ふと、隣の彼が口を開いたから、 自然と緩んでいた口元を引き締めて そっと目線をそちらへ向けた。 左手がうまく動かないという彼の それにそっと視線をうつして。 柔く微笑みかける。] わかった、大丈夫。 和音掴むくらいは平気? なら、コード押さえてほしい。 [ そう言って、一度ベースを持ち上げて、 かるく足をひらく。] (163) 2020/06/15(Mon) 14:46:43 |
【人】 転校生 矢川 誠壱[ さて、何を弾くか。そう構えたとき。 彼の口からジャズ、と飛び出したから、 ああ、なら…スタンダードなのを、と おもって行動に移すよりもはやく。 音が響く。柔らかく、奏でられるのは、 本来ならばベースが弾くはずのライン。 …知ってる曲だから、いいけど。 ぱちり、ぱちりと目を瞬かせてから、 かるく息を吐いて、彼の方を見つつ。 なぞるラインを後ろからカノンのように ついて奏でてみる。 困ったように笑って。 じゃあ、もうここからは ピアノにまかせるべきでしょ、と 低音に移行すれば上手くタイミングは はまっただろうか。 きらきらとやはり降り注ぐような音。 ピアノの高音のきらめきで締め括られた その曲が終われば、ふう、と息を吐いた。] (164) 2020/06/15(Mon) 14:47:04 |
【人】 転校生 矢川 誠壱[ だが、彼が休むこともなく続けたのは ポォーンと響いたEの音。そして 不思議な感覚のする音の階段を続ければ、 Intuitionをなぞっているのか、 すでに次の曲に移ったようだった。] ( せっかちなんだか ゆったりなんだか ) [ だが、選ぶ曲のセンスがいい。 しっとりと歌うように、跳ねるように。 まるで月に向かって舞っている兎のようだ。 彼の、ピアノは。 ただ、原曲の歌詞は、違う。] (165) 2020/06/15(Mon) 14:47:28 |
【人】 転校生 矢川 誠壱[ そう歌っている。 なら、ベースはその歌を口ずさみ、 舞うW誰かWを見守る大樹のように、 静かに、ずっしりと、優しく奏でよう。 そうして、曲を最後まで弾ききれば、 まばらな拍手を受けるだろうか。 ぺこりと頭を下げて、ちら、と 雨宮くんの方を見て。 目を細め、ふ、と笑った。] (168) 2020/06/15(Mon) 14:48:13 |
【人】 転校生 矢川 誠壱[ そうして続けてこんどはこちらから。 奏でるのは、そうだな、兎…うん、 Gからはじまるメロディラインを ワンフレーズ、ひいて、其方を見る。 彼が続きのフレーズを弾いてくれるなら、 それに重ねるようにまたベースを弾こう。 これは不思議な物語の始まりの曲。 兎を追いかけて奇妙な世界に迷い込んだ ひとりの女の子のお話。 きっと、知っている人も多いはずだ。 ああ、ワクワクする。 やはり人と奏でる音楽は楽しい。 思わず、口元がまた緩んだから、 ゆらり体を揺らしてリズムをとって。 流れるような三拍子に身を委ねた。]* (169) 2020/06/15(Mon) 14:48:47 |
転校生 矢川 誠壱は、メモを貼った。 (a46) 2020/06/15(Mon) 15:12:23 |
【人】 転校生 矢川 誠壱 ──3-A── [ 特別、この曲が好きなわけではない。 選んだのだって、スタンダードで おそらくここにくる生徒たちが皆 知っているであろう曲であること、 それから、兎みたいに、跳ねる、 きらきらしたピアノの音に この曲が浮かんだから、それだけ。 鍵盤を叩く音がする。 ピアノは打楽器だと、誰かが言ってた。 それは確かで。リズムを刻みながら、 鳴らされるその音が、心地いい。 ゆったりとしたテンポで始まった曲は 次第にその波がはやくなっていく。 ほら、また跳ねる。 きらきら、する。 それを掬い上げるのが、捕まえるのが、 それからもっと高く上げて、上げて、 いっしょに跳ねるのが、楽しい。 メインテーマに戻って来れば、 そのまま連続して同じGで始まる 別の曲へと変えてみよう。 メドレーのようにつながったそれは、 願いを込めて、星に祈った、とある 木の人形のお話。] (201) 2020/06/15(Mon) 22:26:07 |
【人】 転校生 矢川 誠壱[ 曲を切り替えたことに彼が気付くなら またメインをピアノにうつして。 それをワンフレーズ弾いてから、今度は いつか、王子様が迎えにきてくれる、と 夢見る美しい少女のお話。 これもGからはじまるから繋げるのは そう難しくない。 急にはじめたお返しだといわんばかりに、 連続して曲を変えては見たけれど、 投げたそれらに、すべて的確な答えが 返ってくるのだから楽しくないわけがない。 きっと、彼はすごくいい演奏者だ。 左手はうまく動かないのかもしれないが、 間違いなく、いまも、演奏者で。 ああ、永遠に続けばいいのにとすら、思う。 こんなたのしい時間は、まだ終わりたくない。] (202) 2020/06/15(Mon) 22:26:32 |
【人】 転校生 矢川 誠壱[ まだ、もっと、 ───だけど。 ポォーン───…と響いた音。 最後の一音が、教室の床から壁を伝い、 そのまま天井から抜けて行った。 外は、騒がしいはずなのに。 やけに、静かに感じた。] (204) 2020/06/15(Mon) 22:27:26 |
【人】 転校生 矢川 誠壱平気そうで安心したよ [ と委員長に続けてから、 おしぼりをこちらも受け取って礼を。 いつもとは全く雰囲気の違う彼女は、 とてもかわいらしかった。 「似合うね、服。」と褒めてみたら、 その表情は綻んだ。まさか目の前の彼が 取り繕うためにタバコ、なんて 口にしたとは思っていなかったから。] こちらこそ、ありがとう。 [ そういって、微笑みかける。 他にもっと口に出すべき言葉が ある気がするけれど、うまく見つからず、 一瞬開きかけた唇を結んで、 視線を左右に振った。] (207) 2020/06/15(Mon) 22:28:50 |
【人】 転校生 矢川 誠壱[ すると、彼はポケットから何やら チケットを取り出して差し出す。 次期大統領、という言葉が 気にならないわけがなかったが、 ひとまず、それを受け取った。 そこには確かに、タピオカドリンク、と 書かれている。場所は、2-Cらしい。 そしてつづいた言葉に、視線を上げて。 また少し困ったように笑った。] …まあ、並んで歩いてたら 壁、みたいになるかもしれないけど。 俺は、一人でタピオカの方が正直 難易度高いんだけど… 雨宮くんは甘いの結構飲む方? [ と飲むなら一緒に行こうよ、と 誘ってみる算段。] (208) 2020/06/15(Mon) 22:29:33 |
【人】 転校生 矢川 誠壱[ だが、ちょうどその時、ポケットで スマートフォンが震えた。 そういえば、そろそろリハの時間か。] …とりあえず、俺もちょっと バンドの方行ってくる。 [ そういって、アコースティックベースを ケースへと戻す。少し迷ったが、 また弾くこともあるかもしれないし、と 教室の隅に置いておいた。] (209) 2020/06/15(Mon) 22:29:56 |
【人】 転校生 矢川 誠壱…じゃ、委員長、ちょっと リハに行ってくるので抜けます。 [ そういって彼女に頭を下げて。 そのまま教室を出ようとドアへ向かう。 が、片足を出したところで気づいた。 「あ」と小さく声を漏らして。 重心を後ろ足に戻して中を覗き。] 今日、ライブ出るので。 さっきの演奏楽しかったなって 思ってくれたひとはぜひ、 見に来てくださいね。 [ そう宣伝は忘れず。 男は体育館へと向かうのだった。]* (211) 2020/06/15(Mon) 22:32:32 |
【人】 転校生 矢川 誠壱[ ちゃっかり宣伝をして、 教室を出て、その前を通りながら 廊下の向こうへと歩いていく途中 ふと模擬店内にその姿を見れば、 少しばかり目を開くだろう。 彼がこちらに気づくなら、 口元を緩めて、顎を軽く上げて。 背中にあるベースを数度指差し、 忘れてないよね?と暗に示しつつ、 ひらひら手を振って「またあとで」を もう一度伝えるのだった。]* (216) 2020/06/15(Mon) 22:55:19 |
転校生 矢川 誠壱は、メモを貼った。 (a59) 2020/06/15(Mon) 22:58:08 |
【人】 転校生 矢川 誠壱[ 足取りは軽い。 いい音楽に触れた。いい演奏者に会えた。 それは音楽を楽しむ者としてこの上ない 幸せだと今強く感じる。 その上、このあとはリハだ。 ステージに立つのは好きだ。 あの空気が、熱が、会場が、 一体になるのはたまらなく心地いい。 ベースを背負い直す。 ああ、またコーヒーのいい香りがした。]* (260) 2020/06/16(Tue) 22:35:10 |
【人】 転校生 矢川 誠壱 ──リハーサル── 「おせーよイチ!ギリギリ!」 ごめん、 ちょっとクラスの方手伝ってて [ メンバーのいる体育館の袖にいくと、 ボーカルである坂口祐樹に怒られてしまった。 まあまあ、とその隣でなだめるのは ボーカルと同じ顔のギター担当・裕也。 ドラムの智は「間に合ったんだからいいよな」 とゆるっとした口調で笑いかけてくれる。 彼らのバンドWTwo winsWは、 ギターとボーカルを担当している双子、 坂口兄弟によって発足したらしい。 帰国子女ゆえの流暢な英語で がなるように歌い上げるのは、邦楽ロック。 英語がそれだけできるのに洋楽にする という選択肢はなかったのかと ふとしたときに聞いたことがある。 だが祐樹の答えはシンプルだった。] (261) 2020/06/16(Tue) 22:35:48 |
【人】 転校生 矢川 誠壱[ W洋楽とか邦楽とかどうでもいいW …間違い無いな、と思った。 自分たちがいいと思ったものを演奏する。 そのジャンルが今はたまたま、 ラウド寄りのオルタナティブロックだった。 で、その中でも気に入っているのが 邦楽アーティストだったというだけ。 以前は他のものもやっていたらしいが、 今回の文化祭では1組のバンドの曲に しぼって演奏する。 ちなみにオリジナルはやらない。 すべてコピー曲ばかりだ。 曲はかけない、と一蹴された。 発足したのは兄弟が中等部2年の頃で、 毎年文化祭には出ているし、 なんならライブハウスなんかでも やっているらしい。比較的、学園内では 有名で人気のバンドだ。] (262) 2020/06/16(Tue) 22:36:42 |
【人】 転校生 矢川 誠壱[ 人気の理由は…彼らの顔面偏差値に よるところもきっと大きいだろう。 身長はそう高いわけではないけれど、 整った顔をした双子。 甘いマスクから飛び出す迫力のある歌声は、 男子も女子も魅了する。 ドラムの智はおっとりとしていて、 柔らかな雰囲気なのに、曲が始まると変わるのだ。 以前いたベースも劣らず整っていたから、 正直顔面偏差値を下げた自覚はある。 背が高いだけで顔が綺麗なわけではない。 気落ちされなければ上々だ。 顔面のことばかり言ったが、もちろん 演奏テクニックもかなりのものだった。 だからこそ、ベースとして急遽加入して そりゃもう必死で練習したのだ。 運良くやったことのある曲もあったから、 救われた部分は大きい。 ベースを取り出して、取り急ぎチューニングする。 ちょうど1弦を合わせ終わったところで、 リハーサルの順番が回ってきた。] (263) 2020/06/16(Tue) 22:39:54 |
【人】 転校生 矢川 誠壱「おっしゃー!いくぞー!」 [ 大きな声を出して舞台に出て行く 祐樹に困ったように笑う裕也が 「まだ本番じゃねーぞ」と声をかけた。 マイクのハウリングが響く。 肩にかけたベースが、なんとなく重い。 智に「大丈夫か?」と声をかけられる。 ああ、と微笑みかけて、ステージへ出た。] (264) 2020/06/16(Tue) 22:40:18 |
【人】 転校生 矢川 誠壱* [ 7分間のリハーサルが終わる。 セッティングは問題なさそうだった。] 「あ、そうだ」 [ と祐樹が口を開く。] 「なんかさ、1組出れなくなったらしくて。 俺ら、もう一曲なんかできねーかって。」 え、 [ 裕也と智も目を開いている。 どうやら二人とも聞かされていなかったらしい。 ぱちくりと目を瞬かせて、無言の時間が流れる。] (265) 2020/06/16(Tue) 22:40:34 |
【人】 転校生 矢川 誠壱「え、まさか、OKしてないよな?」 [ 裕也が心配そうに尋ねる。] 「え、OKした。」 [ 祐樹が悪びれる様子もなく答える。] え [ え?なんだって? だっ て、 おれは、 1ヶ月前に入ったばかりで。] 「あれやろうぜ、NAME。」 [ あっけらかんと言った。 言いのけやがった。 己が何かを言う前に祐樹の「はぁ!?」が 先にきた。思わず唇を結ぶ。] (266) 2020/06/16(Tue) 22:40:55 |
【人】 転校生 矢川 誠壱「だって、イチが入ってから 新規の曲なんもやってねーじゃん。 NAMEもやろーっつったのに、 結局時間の都合で削ったしさ。」 [ まあ、たしかに。己がやっているのは、 以前いたベース担当の代わり、でしかない。 もともとバンドで練習をしていた曲ばかり。 つまりは、この1ヶ月で新しくなにか曲を 追加すると言うことはしなかった。 いや、正確にはしたのだけれど、 間に合わないと判断して削ったのだ。 それが、WNAMEWと言う曲だ。 ブラッシュアップできていない状態で 表に出すのは特に裕也が嫌がった。 隣で唸るのが聞こえる。 智はなんにもいわなかった。] (267) 2020/06/16(Tue) 22:41:19 |
【人】 転校生 矢川 誠壱「でも、あれはまだ…」 [ 渋る。たしかに。不安しかない。 全員暗譜はしているとはいえ、まだまだ 擦り合わせられていない部分は多いのだ。 不安は、ある。 そう、不安はあるのだ。 ──────…だけど。] (268) 2020/06/16(Tue) 22:41:46 |
【人】 転校生 矢川 誠壱あの、さ 俺やりたい。 [ 小さく主張した。 あの曲の歌詞を思い出す。 今、やりたい、とおもった。 ──きっと、口に出すのもおこがましい理由。 やるべきだと思ったから。 後悔、しないためにも。 後悔、させないためにも。 やるべきだと。] 「俺も賛成」 [ 智が相変わらずゆるっとした声で賛同する。 これで、3対1になってしまった。 また、裕也が唸るのが聞こえる。] (269) 2020/06/16(Tue) 22:42:13 |
【人】 転校生 矢川 誠壱[ だが、祐樹が「なあ」と念を押せば、 もう折れざるを得ないと思ったのだろう。 「わかったよ」と頷いた。 練習する場所はない。 基本的に本番前に練習することは できない仕様になっている。 ほとんどぶっつけ本番になるだろう。 それでも、いい気がした。 祐樹の声がはずむ。 ライブの出番は、後ろから3番目。 まだしばらく時間がある。 一応譜面だけ軽く見返しておこう、 そう思いながらベースをまたケースに入れ、 体育館を一旦出るのだった。]* (270) 2020/06/16(Tue) 22:42:38 |
(a72) 2020/06/16(Tue) 22:50:09 |
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