【人】 XIX『太陽』 ヒナギク―― 邂逅/『審判』―― [チェレスタと出逢ったのは、5年前のことだ。 洋館の人たちとは話しかけられた時以外は、 こちらから話しかけることもなく。 いつものように『塔』の居る中庭に向かおうと、 ぱたぱたと足を鳴らしていたところだった。 目の端に立ち止まったままの女性が居て、 自然と意識がそちらに向いた。 初めて私を見た時のチェレスタは、 驚いたような、泣いてしまいそうな、 ともすれば、笑いだしてしまいそうな、 とても複雑な表情をしていた。>>27 今の今まででも、そんな表情をした人を見たのは、 彼女だけだったように思う。] (211) 2022/12/14(Wed) 22:20:59 |
【人】 XIX『太陽』 ヒナギク[不思議と、嫌な感じはしなかった。 自身も足を止めて、方向を変え、 彼女の元に向かった。興味からだった。 今思えば、その時から既に 惹かれるものがあったのかもしれない。 伸ばされた手は自然と手に取った。 これは『塔』との出会いがあった影響もある。 伸ばされた手は取ってもいいのだと、 刷り込まれたみたいに、自然と握り返した。 歩き出す彼女に、また問いかけた。] 『どこにいくの?』 [その声に目を見開くようにして驚いた彼女は、 その時、何を思い、何を見つめていたのだろう。] (212) 2022/12/14(Wed) 22:21:52 |
【人】 XIX『太陽』 ヒナギク[チェレスタと名乗る彼女はかつての『審判』だったという。 箱庭でも『太陽』と隣合わせてよく語られる。 証持ちなのにどうして洋館に住んでいないのだろう? それも気になったけれど、] 『……おうた、うたうの?』 [興味を惹かれたのはそちらの方だった。 尋ねれば彼女は微笑み、花畑へと連れて行ってくれた。] (213) 2022/12/14(Wed) 22:22:50 |
【人】 XIX『太陽』 ヒナギク[花畑に広がる彼女の歌声は、遠くまで澄み渡り。 花の蜜を吸いに訪れた蝶が、 まるで彼女の歌に誘われるかのように辺りを舞った。 花は風に揺れているのか、音に揺れているのか。 楽しげに肩を揺らしているように見えた。 義父母が、町の子供が、童謡を歌うのとは違う。 魂に直接触れてくるような歌声は、 包み込んでくれるような温もりと、 感じたことのない、母の胸の中を想わせた。] (214) 2022/12/14(Wed) 22:23:26 |
【人】 XIX『太陽』 ヒナギク[歌い終えた彼女は、しばらく沈黙した。 私もまた、拍手や賛辞などを送る術を知らなかった。 彼女を見上げれば泣きそうな顔をしていたから、 何かを言おうとして、言葉に詰まる。 沈黙の後に、響いた音。>>29 その音に弾かれるように顔を上げた。 ――――味方。 そんなこと言ってくれる人は誰も居なかった。] 『……ほんとう? じゃあ、じゃあ。 チェレスタといっしょにいれば、 わたしもチェレスタのようになれる? きれいなうたを、うたえるようになれる?』 [誰かの心を、震わせられるような歌を。] (215) 2022/12/14(Wed) 22:24:24 |
【人】 XIX『太陽』 ヒナギク[それからは、彼女が洋館に訪れる日が待ち遠しかった。 今まで他の証持ちには 自発的に話しかけることのなかった少女が、 年下には比較的人当たりの良さそうな タナトスやマドカ、フォルスなどの袖を引いて、 『チェレスタは今日はここにくる?』 と、尋ねることもあっただろう。 洋館の扉が開く音に、誰よりも早く 反応を示すようになったのはそれからのことだ。 静かな場所に立ち竦んでいたままの少女は、 彼女と出会ったことで少しずつ変わっていった。] (217) 2022/12/14(Wed) 22:25:51 |
【人】 XIX『太陽』 ヒナギク[南東の地域のほんの一部しか知らなかった彼女の世界は、 チェレスタから耳にする世界を聞いて広がった。 南東よりももっと華やかな地域があること、 のどかな農村のような地域があること、 移動しながら暮らしを続ける人たちが居ること、 寒さが厳しい場所に身を置く人々。 住まう場所も変われば着るものも食べるものも違う。 聞く度に新しい話を教えてくれるチェレスタは、 なんでも知っているかのように思えて、 チェレスタが話す世界は、いつもキラキラしていた。] 『チェレスタ、眠いの? じゃあ、今日はヒナギクの部屋で一緒に泊まろう!』 [夕暮れにきらめく彼女の横顔が名残惜しくて、 そう引き止める日も、少しずつ増えていった。] (218) 2022/12/14(Wed) 22:27:51 |
【人】 XIX『太陽』 ヒナギク[だから、彼女に習って自身も歌うようになり。 少しずつ明るさを取り戻した私に、 政府から広告塔の仕事の話が出た時は、 私もキラキラした世界をこの目で見れるのだと喜んだ。 その時、彼女は珍しく笑わずに真剣な表情をしていた。 一度だけ、彼女の口から聞いたことがある。 証持ちは『特別』だけれど、迫害の対象でもあること。 ――――知っていた。 私も両親に疎まれてきたから。それだけは。 心配そうに目を伏せるチェレスタの手を>>31、 私が両の手で引き寄せ、包み込む。] (219) 2022/12/14(Wed) 22:28:27 |
【人】 XIX『太陽』 ヒナギク そういう人たちが居ることも知ってる。 でも、私が人前に出ることで 『証持ち』の印象が変わるなら意味はある。 まだ見つかってない『証持ち』の子にも、 私の声が届くこともあるかもしれない。 それに、チェレスタみたいに、 私の、自分自身の目で、世界を見てみたいの! …… 『大丈夫』 !私にはチェレスタが教えてくれた歌があるもの! (220) 2022/12/14(Wed) 22:30:31 |
【人】 XIX『太陽』 ヒナギク[少し冷えていた彼女の手を温めるように きゅっと握り込んで、彼女の口癖を借りた。 私は知っている。 世界は、酷いばかりじゃない。 美しいものだって、数え切れないほどにあるのだから。*] (221) 2022/12/14(Wed) 22:31:06 |
XIX『太陽』 ヒナギクは、メモを貼った。 (a33) 2022/12/14(Wed) 22:38:52 |
【人】 XIX『太陽』 ヒナギク―― 誕生日 ―― [洋館に来るまで教養というものを知らなかった。 実の両親はもちろん、 証持ちの子供に学を与えることなど考えもしなかった。 老夫婦に引き取られた後も、 私塾にいけるような環境下ではなく。 人とあまり話さないせいか、言葉もたどだどしかった。 文字や計算を知り、流暢に喋れるようになったのは、 洋館に訪れてから先人の証持ちたちに教わったからだ。 誕生日を祝うことも、証持ちの誰かに教わった。] (241) 2022/12/14(Wed) 23:34:50 |
【人】 XIX『太陽』 ヒナギク[ヒナギクは広告塔の仕事をしているが 給金というものはもらったことがない。 街や仕事へ出てものが欲しい時は、 メイドの人や、付添の人に払ってもらい、 その場で現物支給という形を取っている。 だから、アリスの誕生日には、 私設合唱団(withオルガン)の歌声を聴きながら、 アリスの手を取り、ダンスを踊った。 エスコートするように手を引いて、 彼女の歩幅に合わせてタップして、 小さな彼女の身体を抱え上げ、くるくると回った。 ダンスをしながら自分も歌を歌った。 小さな彼女が笑ってくれることを 心の底から喜び、微笑み、声を上げて笑った。] (242) 2022/12/14(Wed) 23:35:28 |
【人】 XIX『太陽』 ヒナギク[合唱団の輪に入ることを躊躇う人が居れば、 手を取って招き寄せただろう。 例えば少し距離を置いているエーリクを>>106。 ユグが声を掛けた誰かも増えていたかもしれない。>>195 最後にもう一度と、ゼロにも声を掛けてみたけれど、 歌声の代わりに渡されたのは喉飴だった。>>168 喉飴はしっかりちゃっかり頂いておいて、 気のせいかすっきりした喉で。 『んも〜〜〜〜〜!!』 と牛のように呻いてクリスタベルと共に去るゼロの後ろ姿を見送ったのだった。] (243) 2022/12/14(Wed) 23:36:31 |
【人】 XIX『太陽』 ヒナギク―― そして、翌朝 ―― [前日の騒ぎで夜更かししたせいで、 寝ぼけ眼で廊下に出てみれば、妙に騒がしかった。 メイドさんに聞けば『世界』が帰ってきたらしい。 箱庭の22人が揃うのは初めてのことだという。 喜ばしいことのはずなのに、妙な胸騒ぎを覚えた。 そうして、支度を整えホールに向かえば、 知らない男性が、まるで我が城であるかのように 笑みを湛え、中央に鎮座していた。 22人もいるホールに、一滴の水が落ちる。>>5 ] (244) 2022/12/14(Wed) 23:37:00 |
【人】 XIX『太陽』 ヒナギク[息を呑み、思わず口元を抑え、 距離を取るように後退った。 満面の笑みを浮かべて、 愛子のように語りかけられるのに、 どうしてか恐ろしいもののように見えた。 幸せな世界を作る? 世界を壊す? 何を言っているの? そう口に出したくても出せない。 だって、 この人なら本当に出来てしまうだろうから。 (246) 2022/12/14(Wed) 23:38:06 |
【人】 XIX『太陽』 ヒナギク[選ぶ時間をくれただけでも、譲歩なのかもしれない。 去っていく後ろ姿をただただ眺めていれば、 とん、と膝下にぶつかる何かに気づいた。 怯えたアリスの身体が震えていた。>>@0 そっと彼女の肩を抱き、引き寄せる。] ……びっくりしたね、アリス。 [そうして、何とはなしに彼女の姿を探した。] ……チェレスタ、どうしよう。 アリスが……、 [こんな時にいつも頼ってしまうのは、 やっぱり彼女の他には居なくて。**] (247) 2022/12/14(Wed) 23:38:36 |
XIX『太陽』 ヒナギクは、メモを貼った。 (a39) 2022/12/14(Wed) 23:52:31 |
【人】 XIX『太陽』 ヒナギク―― 回想:せんせい ―― [『せんせい』は四つ上のお兄さん。 マドカがチェレスタと話している姿を見たことも>>0:605、 あったせいか、比較的声を掛けやすかった。 裾を引いて教えを乞えば、 涼やかな翠が僅かに細まった。 その時から、マドカは私にとっての『せんせい』になった。 いつもは大体図書室で。 時にはカフェテリアでお茶を飲みながら。 案内されたなら、彼の部屋でも。 文字の読めない私の隣で。 マドカが一文字ずつ指で文字を辿ってくれながら、 凛とした声を響かせて本を読み聞かせてくれた。] (389) 2022/12/15(Thu) 21:49:51 |
【人】 XIX『太陽』 ヒナギク[どんな話がいいか?と、尋ねられた時は。 最初はなんとも答えられなかった。 どんな種類の本があるのか知らなかったから。 だから、考えて、考えて。] せんせいの生まれたところのはなし。 [それは『せんせい』の生まれた地域のことを 指したつもりだったけど、言葉が足りずに 彼自身を指しているようにも聞こえたかもしれない。 如何せん悩みながらも、彼は色んな本を選んでくれた。 彼の部屋に訪れることがあったなら、 『せんせい』が目を離した隙きに 枕の赤いシミを見つけたこともあったかもしれない。>>157] (390) 2022/12/15(Thu) 21:50:32 |
【人】 XIX『太陽』 ヒナギク[チェレスタの話とマドカの読み聞かせの効果もあって、 1年もすれば、たどたどしいながらも、 詰まらずに言葉を話せるようにはなっただろう。 文字はまだバランスも悪いし、歪つだけれど。 ある日、先生から贈られたノートは>>240、 女の子らしい可愛らしいものだった。 表紙に色とりどりの沢山の花が咲いていた。 チェレスタがよく着ている 桃色 プロセラの瞳の色の 赤 先生の色の、艶やかな 翠 他にも、沢山。 洋館には何も持ってこなかったから。 『私だけのもの』というのは珍しく。 与えられたノートと鉛筆をぎゅっと抱き込んだ。] (391) 2022/12/15(Thu) 21:51:50 |
【人】 XIX『太陽』 ヒナギクありがとう、先生。 ……大事につかうね。 [人と親しむことで、少しずつ表情が生まれていく。 このとき、初めて先生の前でも、 少女は、ほわりと温かな笑顔を見せた。] (392) 2022/12/15(Thu) 21:52:39 |
【人】 XIX『太陽』 ヒナギク[手を握られる時は、導かれる合図。 小さな手できゅっと握り返して、 高い位置にある先生の顔を見上げる。] うんっ。 チェレスタが来たら、 先生も一緒におうた歌おうね。 [洋館の人たちは、 優しい。 此処なら、虐められることもない。 私の知らないところで、 そんな先生にも苦手なものがあるなどと>>0:340、 小さな子供はまだ知る由もなかった。*] (393) 2022/12/15(Thu) 21:53:31 |
【人】 XIX『太陽』 ヒナギク―― 現在:ホール ―― [『世界』の言葉に対しての皆の反応は様々で、 喜びを顕にする人もいれば、躊躇う人もいた。 その中でも、彼の言葉を あまりにもすんなりと受け入れたユグには>>204、 驚きを隠せなかったかもしれない。 チェレスタは彼の言葉に憤りを見せていた。>>329 彼と、彼女は、正反対。 私は、何と言っていいのか分からないまま。 ぶつかってきたアリスの肩を支えながら、 二人の間でおろおろとしていた。] あ、うん。 ちょっと、……怖かった、のかな? びっくりしたのかも。 [話しかけてくれたユグに曖昧に笑う。>>265 こんな小さな子供に、 いきなり世界の明日を決めろだなんて無理な話だ。] (399) 2022/12/15(Thu) 22:31:16 |
【人】 XIX『太陽』 ヒナギク[震えを抑えようと小さな背を撫でる。 すぐに気づいたチェレスタも様子を見に来てくれた。>>331] ……そうだね。 急になんて、決められないよね。 アリス、お部屋行こっか? 送ってあげる。 [チェレスタの助言に頷きつつ、アリスを送るつもりで。 ただ、そうしている間にも、刻一刻と、 『選択』は迫られていくのだけれど。] (400) 2022/12/15(Thu) 22:31:47 |
【人】 XIX『太陽』 ヒナギク[『望むべき時が来た。』>>337 それは、一体どういうことだろう。 ユグが望んでいた? 全員が集まることを望んでいたのは知っている。 彼が不和を望まないことも。>>0:176 だからみんな集まったら仲良く暮らすんだって、 そう思ってた。 「またいつかの刻、皆で集まり幸せな世界を作ろう」 箱庭から姿を消した神が残したという言葉を思い出す。 彼は、信じているのだ。 ――――その言葉を。>>351 だから、 世界はどうなってもいい? ] (401) 2022/12/15(Thu) 22:33:24 |
【人】 XIX『太陽』 ヒナギクえっと……、 みんなが集まったのは、私も嬉しいよ。 でも、だからって……、 世界を壊そうなんて言われたら、素直に頷けないよ。 ……壊さないで、って。 お願いしたら、壊すのは止めてくれるんでしょう? なら、その方がいいんじゃないかな! [壊してしまおうとも言ったけれど>>9、 止めてくれるとも言ってくれている>>10。 なら、壊すことなんて必要ない。そうでしょう? 努めて明るい声を張りながら、それだけは主張して。] (402) 2022/12/15(Thu) 22:34:11 |
【人】 XIX『太陽』 ヒナギク……行こう、アリス! [二人からの返事が返ってくるよりも先に。 小さな手を取って、アリスの部屋へと向かう。 表立っては、小さな震える子に聞かせなくない為に。 もう一つは。 返事を、聞くのが少し怖いと思ったから。*] (403) 2022/12/15(Thu) 22:34:43 |
XIX『太陽』 ヒナギクは、メモを貼った。 (a64) 2022/12/15(Thu) 22:39:20 |
(a65) 2022/12/15(Thu) 22:39:22 |
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