【人】 地の底の商人 グラッド―少し前の話 エデンと― 冒険者について来た顔見知りの客>>22へ、「見せたい品がある。」と呼び止めた。 店の奥から引っ張り出してきた品を手に握りこんで、彼女の眼先で開いて見せた。 「とくと見ろ! これがかつての昔、世界最高の魔石職人と言われた男の最後の一品! 『緋色結晶の竜涙石』でぃ!」 手に握られていたのは、掌程の大きさである、透き通った紅い魔石。 何より素晴らしいのは、その美しさであろう。 既存のどのカッティングとも異なる形である上に、どこから光が差し込んでも煌めくように反射角を調整されている。 それでいて、一部の歪みも見られない。 正に至高の一品―――に、なるはずだった。 「ほら、ここだよここ。 完成する前に、男が亡くなっちまったもんでよ。 この部分だけ、まだカッティングがされてねぇんだよ。」 指で示した場所だけは、採掘された時のまま。 それによって、この品は至高の一品にはならず、流れ流れて自分の手にたどり着いたという訳だ。 (69) 2023/01/06(Fri) 22:20:05 |
【人】 地の底の商人 グラッド「ってことで、コレ。 アンタにやるから、完成させてこい。」 有無を言わさず押し付ける。 本来なら豪邸を三つ買っても、まだお釣りが来るほどの品。 同じ魔石を扱う彼女なら、品の価値はわかるだろう。 だからこそ、だ。 「ギルドに出店したいんだろぃ? じゃあ、目玉になる商品がいる。 何より、技術を盗むのにこれ程の品はそうそうねぇぞ? 金はいつかおまえさんが一人前になったら、ウチに品を卸してくれや。」 いつか、彼女が買い手ではなく、売り手として訪れる事を期待して。 彼女の造る品なら、きっと皆が欲しがるだろうから。 (70) 2023/01/06(Fri) 22:20:13 |
(a24) 2023/01/06(Fri) 22:21:57 |
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