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【人】 ]Y『 塔 』 プロセラ―― 邂逅 ―― [ どっちがいい?そう考えて考えて訊ねた時考えていたのは >>0:673彼女とはまるで違う事だった。 選びたいなら選べるものだとおもっていた。 居た方が良いと思うなら、居ると思えば良い。 居ない方が良いと思うなら、居ないと思えば良い。 それだけで彼女にとってどちらの答えも真実になる。 常に七色に光ってる訳でも無ければ 空に浮かんでる訳でもないのに たかだかそれらしい痣がそれらしい場所にあるだけで 何も他と変わりのない何も特別じゃないのに、 証が如何だとばかばかしいと ずっとずっと思っていたから。 ぼくが証持ちと呼ばれる事は理解している。納得も。 けれど、「で?」っていうのがぼくの答えだった。 だからぼくが証持ちでも、そうでなくとも ほかにもいても、いなくとも、 ばかばかしすぎてどうでもいい。 ] (90) 2022/12/16(Fri) 15:16:19 |
【人】 ]Y『 塔 』 プロセラ[ ぼくにとってはそれが真実だけど 世間にとっての真実は違う事を知っている。 けれど世間にとっても真実がなんであったって ぼくにとっての真実が覆る理由にはならない。 誰にどれだけ何を言われたって、どうだっていいし ばかばかしいものは、ばかばかしいんだもの。 ぼくは彼女や他の誰かのように 数の暴力に直接晒された事は無く そういう事実があると聞いたって どういうことだかまるで理解出来なくて 無知な分だけ傲慢なまでに 自分の考えだけを信じていた。 ] 『そうだね、見て、決めると良い』 [ 何時だって好きに決めて、 何時だって好きに変えたら良い。 そう思って頷き返すのにまたのんびりすぎる間を置いて そのあいだに掴まれた手を眺めて、 ゆっくりと繋ぎ返し……―――― ] (91) 2022/12/16(Fri) 15:16:52 |
【人】 ]Y『 塔 』 プロセラ[ 何かが風を切る音に気付いて顔を上げた。 何か飛んできて、ぶつかるな、っておもいながら 目を逸らす事もせず…… ゴッ……!! 眦のあたりに当たって、鈍く骨にひびく振動。 そこからぬるりと滴る体温と同じ温度の 雫 。それは>>0:674彼女にとっては何度も 覚えがあったかもしれない経験で ぼくにとってははじめての体験だった。 のんびり足を止めていたからだろう、 >>0:670騒ぐ為だけに集まったその他大勢が 「さっさと出て行け」だとか、 そんな類の事を喚いて投げた石は 彼女より的が大きい分狙いやすかったのだろう、 別段庇った訳でもないけれど、 幸いなことに彼女ではなくぼくにあたった。 多分皮膚が切れたなぁ、ってそのまま見てた。 飛んできた方角を、便乗して騒ぐ声や 追撃しようと振りかぶる誰かを。 振動で少し首が傾いだ以外は痛がる素振りもなく 驚きも怒りも怯えも何も灯さない無機質な赤色で ゆっくりと、辺りを見渡せば その異質さに息を呑んで怯んだのは その他大勢の方だった。 ] (92) 2022/12/16(Fri) 15:17:22 |
【人】 ]Y『 塔 』 プロセラ[ 何の意味があるのか判らないし、どうでもよかっただけだ。 幸い痛みにはそれなりに強かった。 繰り返された『治療』に声を上げることも辞めた ぼくにとっては本当にたいしたこともなかったし。 或いはこれも証持ちと呼称される者に 必要な処置なのだろうか? 細やかな疑問が浮かんでぼんやり考え込んだだけだった。 彼女自身が証持ちであるから迎えが来たのに こんなにも証持ちであると周りに認識されても尚 『ほんとうにいるの?』 とうとうよくわからなくなって、彼女に視線を戻す。 彼女が訊ねたかったのは「他に」いるかどうかであって 彼女がカウントされていないという 正しい意思疎通は成り立たない侭。 ] (93) 2022/12/16(Fri) 15:17:56 |
【人】 ]Y『 塔 』 プロセラ[ もしかして自分では見えない場所の痣なのかな、 ぼくみたいに。 どの証が何処に出るか興味が無さ過ぎて 知らなかったが故にそう思い至って。 証と呼ばれる痣をみたことがないのかもしれない。 そんな素っ頓狂な答えに辿り着いたので ] 『あとでみせてあげるね』 [ 滴るものを拭いもせずそう伝えて漸く歩き出した。 言葉は理解していても会話を成り立たせることまで いきなり上手く出来る筈もないなんて知らないまま。 剥がして貼って焼いて溶かして 色々試した経歴を語る賑やかな背中に それでもしぶとく主張し続ける 背中の上から下へ向けて広がる葉脈の様な痣を見せるには 難関、シャツのボタン外しが控えていたので 凡そ少女に見せるべきではない有様な背中を晒すのは 洋館に着いた後になっただろう。* ] (94) 2022/12/16(Fri) 15:19:01 |
【人】 ]Y『 塔 』 プロセラ―― 回想・中庭 ―― [ >>0:676明るい声と笑顔を振りまいて彼女が駆けてくる。 最初の頃はぼくと似たようなものだった筈なのに きみだけが随分と笑うのが上手になっていった。 真似してみるけれど口の端がほんのちょっぴり上がっただけだ 気にしてなければ気付かない位、ほんのちょっぴり。 今日も相変わらず上手く行きそうにない。 ここに来ては楽しそうに誰かの話を聞かせてくれる。 ぼくをひとりにしないために。 根気強く、誰かの事をおしえてくれる。 きみの健気な努力に報いる為に、 少しくらい興味を持てたら良いのだけれど きみが伝えてくれる名前と実際の人物が あたまのなかで上手く繋がらなくって 今日も相変わらず上手く行きそうにないままだった。 ] (95) 2022/12/16(Fri) 15:21:04 |
【人】 ]Y『 塔 』 プロセラ[ ぼくは証持ちなんか信じてなくて 生まれ変わりなんか信じてなくて だからきみを訳もなく迎えに行かなければ思った気持ちは ぼく自身の欲求なんだと信じている。 経典の中では『塔』が死の切欠になったと言われる『太陽』 例えばぼくがその生まれ変わりだったのなら 例えばきみがその生まれ変わりだったのなら なかなかにばかばかしい仮説だ。 けれどもし、もしもそうならば。 ぼくはきみに決して近付こうとなんかしない筈だ。 『塔』のせいで死んだ『太陽』のことだけは 他の何もかも忘れたって覚えて居るべきで それすら忘れるなら、それはもう 生まれ変わりという名の他人で 前世なんかあって無いのと同じだ。 きみの方だって何もかもを忘れてもぼくを避けるはずだ。 きみのことだ、『塔』のせいで死んだとしても どうせ恨み言一つ言わないに決まってる。 むしろ繰り返す事で苦しむ『塔』を憂うだろう。 もしぼくらが生まれ変わりならば 本能的に距離を置くはずだ、 お互いの為に、お互いを想って、お互いに。 ] (98) 2022/12/16(Fri) 15:28:47 |
【人】 ]Y『 塔 』 プロセラ[ だからぼくは自分を『塔』の生まれ変わりだなんて これっぽっちも思って居なくて だからきみが雛鳥みたいについてきてもすきにさせた きみがそうしていることこそが ぼくらが生まれ変わりでも何でもない証明みたいに思えた。 沈黙ばかりだった二人の時間に きみの聲が零れ始め ここから巣立つみたいに、ひとり、またひとりと 親しい相手を見つけて、やりたい事を見つけて 他の居場所を見つけても きみの好きにすると良いと何にもしなかった。 悔いることも詫びることも遠ざけることも償うことも なにひとつ。 なにもかも必要のないことだと疑いもせず信じてた。 きみが隣に居てくれる心地好さを きみが次第に離れて行って、理解しても。 引き留めることも、しなかった。 ] (99) 2022/12/16(Fri) 15:30:06 |
【人】 ]Y『 塔 』 プロセラ[ 無くなってもいいと思っていた? きみが幸せならそれでいいって? いや、多分無意識に理解していた。 きみはぼくを見捨てたりしない。 無意識の底で、気付かない侭、ちゃんと理解していた。 ] (100) 2022/12/16(Fri) 15:30:32 |
【人】 ]Y『 塔 』 プロセラ[ 『太陽』の名を押し付けられるだけあって たいようみたいな彼女の笑顔は眩くて きっとみんなつられて笑顔になるんだろう。 笑い方がへたくそなぼく以外は。 それはきっとまわりを笑顔にする魔法。 幸せな気持ちを運んできてくれる、そんな奇跡。 それじゃあ…… ねぇ、きみは? 最初の笑顔を振りまくきみは ほんとうに心から笑えているだろうか? 幸せだろうか? 『太陽』の名を押し付けられていない? そう憂う気持ちは『塔』じゃなくぼくのものだ。 何時か『塔』の所為で死んだ『太陽』に、じゃなく 他に居場所を見つけても、飽きもせず、 今でも僕の傍で笑ってくれるきみへ向ける気持ちの筈だ。 みんなで食べたお菓子をぼくの元まで運んできて まるで溶け込めないぼくのことも みんなの一員みたいに扱ってくれる きみにこそ抱く気持ちだと思ってる ] (101) 2022/12/16(Fri) 15:31:17 |
【人】 ]Y『 塔 』 プロセラ[ ぼくの分と差し出された綿雲みたいな菓子を ほんのひとくちぶん引き千切って のこりを彼女に返すのでなく、渡すつもりで差し出した。 自主的にまるでなにも食べようとしないぼくに 『いっしょにたべよ』と最初にきみが誘ってくれたときから 殆ど習慣みたいになっている。 ほんのひとくちをそれでも尚持て余して、 綿雲を縒って糸を紡ぎながらも ちっちゃな一欠けらをのろのろ口に運ぶ 砂でも食むような心地のなにもかもが きみと分け合うだけでほんの少しだけ 好ましいものに変わるのだから不思議なものだ。 ] (102) 2022/12/16(Fri) 15:31:44 |
【人】 ]Y『 塔 』 プロセラ……ヒナギク、…今日も楽しかった? [ 楽しそうな笑顔を見れば疑う余地なんかないのに それでも尚、いつも、繰り返し、 まるでそれしか知らないみたいにそう訊ねる。 一緒に歌うか如何か聞かれた疑問を 話題を逸らす形で誤魔化したみたいになってしまったが そのくらいのことでへこたれるきみでも無いだろう。 最初の頃よりだいぶましになったとはいえ ぼくの会話のテンポがおかしいのなんか何時もの事だし。 きっときみは楽しかったと今日も肯定するだろう。 喜ばしい筈なのに、違う返事を聞ける日を待ち侘びている。 そりゃ毎日楽しい方が良いけれど 楽しめない日だってあったっていいんだ。 きみの笑顔はそりゃあ素敵だけど 気分じゃ無いときまで笑わなくたっていいんだ。 いつかそう伝えたいと思いながらも 今の所、その機会に恵まれてはいない。* ] (103) 2022/12/16(Fri) 15:32:16 |
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