【墓】 無風 マウロ【自室】 主を失った部屋には、ほんのりと煙草の残り香。 家具は最低限のもののみが置かれており、殆ど物が置かれていない。 使用感のあるものと言えば、黒のテーブルに置かれた灰皿。 そろそろ捨てるべき量の吸い殻と灰が積まれている。 その脇には、写真立て。 写真には、3人の子どもが写っている。 笑顔の男の子に、少し困ったように笑う男の子、そして、口元をへの字に曲げている男の子。 並んで撮影をした時の、少し古くなった写真だ。 そして、ベッド脇のサイドテーブルに、書きかけの便箋。 何の色のもついていない、シンプルな白のそれに、汚い文字がいくつも並んで、塗りつぶされて。 床には書き損じの便箋がいくつか転がっている。 ちらりと見える内容は、仕事に対するメモ―――あるいは、アドバイス。 結局まとまりきっていなかったのだろう。 この数日で書き上げるつもりだったのかもしれない。 しかし、この部屋に主は戻らない。 この部屋にあるものが、主の手によって何かを為すことはもう二度とないのだ。 (+5) 2022/08/16(Tue) 23:28:00 |
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