【人】 闇崎 宵稚……海音、運動部と文化部、どっち入る? …俺、決められなくて。……海音と、一緒がいい。 [小学生や中学生の時、 自我が弱くなって度々そんな風に問うて、 もしかしたら困らせていたかもしれない。 心の内を比較的明かせたのは、両親と"アイツ"だった。 なんとか、アイツの背中を追って人並みの成長をした。 在り来りに歪が生じたのは、高校の時だった。] (20) 2022/08/15(Mon) 8:31:07 |
【人】 闇崎 宵稚 ……軽音同好会… [高校一年、部員募集の広告で埋まった掲示板をじっとみる。 聞けばソコは先輩達が引退して、部員数が足りなくなり、 顧問も寿退社で離れたとかで、軽音部というには静かだった。 けれど、先輩たちの残した楽器たちだけが、 倉庫にひっそり残っていて。 先生や残っていた人間に、触ってもいいかと訪ねて。 ホコリを被っていたひとつにふれた。 学生が扱ったに相応しい安っぽいアコースティックギター。 弦の爪弾き方も、譜面の読み方も知らなかったけれど、 幼少期に感じた高揚感が体の奥底から湧き上がって、 テストの成績も運動能力も少し衰えたけど、 関係なく、音楽というものに没頭した。] (21) 2022/08/15(Mon) 8:32:06 |
【人】 闇崎 宵稚[俺は好きなものを『音楽』と言えるようになって。 元々友として慕っていた"アイツ"に、共有したかった。] なあ海音、あの…笑わないで、聞いて、くれるか。 ……曲、作ったんだ。作ってみたんだ。 歌って……みても、いい? [ほんの少し前向きになって。 アイツの目を昔より見れるようになって。 気持ちを、歌に乗せるという手段を思いついてからは、 できた稚拙な曲を、聞かせた、聞いてもらった。 たくさん、たくさん。 どの曲だって、一番に聞かせたのは、お前だけなんだ。 ヘタと思われてもよかった。でも、上手いと言わせるまで、 何度だって曲を作り直して、披露した。] (22) 2022/08/15(Mon) 8:32:48 |
【人】 闇崎 宵稚["アイツ"は、どんな目で俺を見ていたんだろう。 後ろからついてくるばかりの俺の事を 『変わった』と思ったのだろうか。 『昔の姿に戻った』と思っていたのだろうか。 ──それとも、気が触れたとでも思われていたのか。 当時の俺には、わからなかった。 俺の言葉の何が琴線に触れてしまったんだろう。 …卒業式の日、どうして、アイツは──] ** (24) 2022/08/15(Mon) 8:36:43 |
【人】 闇崎 宵稚[流れるのはサブスクリプションで聞けるR&B。 女性の落ち着いたボーカルは、景色に全く合わない。 畑道にも提灯が並んでいて。 村全体でお祭りを感じる雰囲気になっていた。 商店街の方に迎えば、もっと活気づいて、 前夜祭セールみたいなものがやっていたりした。 今もそうなのだろうか。 シャッター街化していなければいいのだけれど。 歩く道なりの景色自体はさほど変わってなくて、 五年もすれば一件くらい建っていそうかと期待した コンビニすらもないものだから。 思い出が色褪せないのと同時に――、 ]鮮明に、思い出されていく。 暑さによる蜃気楼か、潮風に運ばれたのか。 はしゃぐ子供が鬼ごっこをしている気がした。 逃げ回る子供は、"アイツ"に似ていて―― (45) 2022/08/15(Mon) 14:09:40 |
【人】 闇崎 宵稚[幻覚から目を覚まされるような、 『ポコ』と、ある種聞き慣れた通知音。 不意に肩を叩かれるような心地に肩を跳ねさせる。 イヤホンをしているとコレが少し厄介だ。 …そして現代人らしく、何も考えずに通知を見る。 先程、自分が何をしたのかも曖昧のまま。 もう少し、考えて見るべきだった。 その宛名に ヒュ、 と息が詰まる。喉元に詰まるのは期待、ではなく、恐怖だった。 明確に、『何』を言われるのか、怖かったのだ。] (46) 2022/08/15(Mon) 14:10:15 |
【人】 闇崎 宵稚[畑の電柱にもたれかかり、震える親指で操作する。 揺れる瞳孔で、文面を読んでいる間の俺は、 果たして、うまく呼吸が出来ていただろうか。 汗を拭うのも忘れ、画面に一雫滴ったあと。 その内容に。恐怖の中に、安堵が混ざる。 それと同時に湧いたのは、僅かな疑心だった。] (47) 2022/08/15(Mon) 14:10:35 |
【人】 闇崎 宵稚 ………かい、と、 [曰く、あの時から変わっていないという気持ちが、 その言葉に、乗っているというのなら…。 グルグル、ジクジクと、疑心が痛みに変わる。 顔が見えないお前が怖くて堪らないのに、 縋る相手も、もはや、お前しかいなかった。 つい、震える声に、お前の名前が乗る。] (49) 2022/08/15(Mon) 14:11:23 |
【人】 闇崎 宵稚『久しぶり』 [連絡先、俺の事なんか気にしなくても、 変わることだって、あるだろうに。 ──卑屈っぽさを、殺して。 ]『そうなんだ』 『祭りでも見に来てるのか』 [本当に居ると思ってたのだろうか。 俺は、たまたまこっちにいただけなのに。 ──疑念を、潰して。 ]『どうだろう、でも、何かっていうより。 海見てたら、海音の事思い出した』 [同じことをしてたのだろうか。 もう少し奥地の方か、港のほうか。 ──近くにいたなんて、思いもよらずに。 ] (51) 2022/08/15(Mon) 14:14:18 |
【人】 闇崎 宵稚『勘違いっていうか、勘がすごいな』 『いるんだよ、村。』 『海鳴商店街』 『の、パン屋。お前があんパン好きだったとこ』 『の、向かい。いるから。』 (53) 2022/08/15(Mon) 14:16:15 |
【人】 闇崎 宵稚[なんだかまともな長文にならなくて。 辿々しく吃音を交えたようなメッセージになった。 高校時代、高校生らしく、 よく買い食いをしていたようなお前と、 足繁く通っていた場所は幾つかあった。 ……高校の時は、俺に金がなくて。 かの正義の使者に顔を強請るかのように、 パンの一欠片をワケてもらったりもした気がする。 そこなら、多分、アイツも覚えてるだろうし。 待ち合わせには、ちょうどいいかと思い。 そこまで送って、ドッと襲ってくる疲労感。 深く息をついて、汗を拭う。 ……のんびりしてる間に、 アイツのほうが先に着いてたらどうしようもない。 路駐した車をそのままに、 足を商店街へと向けて、歩を進めていく。] (54) 2022/08/15(Mon) 14:16:35 |
【人】 闇崎 宵稚 何度も歩いた道。蜃気楼が絶え間なく揺らめく。 ― 回想 ― [通った幼稚園。まだ存在していた。 両親が背にいて、手を繋ぎながら帰る二人>>59 を、 優しく見守っている眼差しがそこにはあった。 当時の俺には、隣の海音しか見えていなかったと思う。] [小学校と中学校。 今は夏休み中だろう。静かだった。 手を繋ぐ事自体は減ったとしても、 挫けそうになる俺の手を何度も取ってくれた。>>61 小学生の後半くらいから伸び始めた身長の事もあって、 「バスケなら出来るかな」と。何もない自分に期待して。 ツートップ…に、なれたのかは、今でもよくわからない。 でも、海音とパスをするときだけは、失敗したくないと、 必死に壁打ちしたり、慣れない筋トレを繰り返した。 『誰かと居る』姿を眺めていたのは、此方だって一緒だ。 ただ、俺はそれが『普通』だと思っていた。 アイツは頼りになるし、リーダーシップもあるし。 中学の頃は部長になろうとも誘われてたのを知っている。 それでも、関係を断たず、接してくれる事が嬉しかった。 俺自身が海音の周りにいる人間の一部だと思っていた。] (84) 2022/08/16(Tue) 6:46:59 |
【人】 闇崎 宵稚 ……そうなのか? [音楽が好き、と聞いた時。 幼少期、一緒に歌を歌っていた事はすっかり忘れていた。 (『一緒に居た』事が主体だったからだろうか) 今も、一緒に出来るなら素直に嬉しくはあったのだ。] 同好会だと、予算出ないから、部になるほうがいいけど 俺達も一年生だし。顧問も見つけなきゃだし。 先輩たちに音譜の読み方から、教えてもらわないと…。 …あるものでできれば、人数は気にしないさ。 でも、いいのかよ?…バスケ、続けなくて。 [部長に誘われた位なのだから、きちんと続けてれば、 インターハイとか、体育大学とか、目指せる事はあったただろう。 宵稚はどうなんだ、といわれれば。首を横に振った。 背が高いだけで少しばかり鈍いのは直らなかった。 世話焼きのお前の事だから、 俺の事を見張ってくれてるのかと思ったけれど、 音楽やってて楽しそうなお前を見ている間は、 『本当に好きなんだな、音楽が。』と、感じたのだ。] (86) 2022/08/16(Tue) 6:48:49 |
【人】 闇崎 宵稚[別に、勉強がてんでダメって訳ではなかったから、 勉強しろと言われれば、じゃあ一緒にやろうと言えていたし。 付き合ってくれているものと思いこんでいる節があったから。 外に出れば、たまにはコートにいってみるかって、 バスケだって遊び程度に続けていたはずだ。 ……ああ、そう、そうだった。 祭りだって、何度だって訪れていたはずだろう? 俺も時期が近くなれば、バイト代を溜め込んで 焼きそばとか、焼き鳥とか、たこ焼きとか食べて。 …甘いものは海音が半分くれれば食べていた位だった。 大きな花火とかはこの祭りにはなかったから。 神事の雅楽と舞を見に行って。波の音と笙の音に浸った。 大鳥居の下、海に揺蕩う灯籠を静かに眺めた。] (87) 2022/08/16(Tue) 6:50:03 |
【人】 闇崎 宵稚 あ、 [顔を青ざめさせながら、走り去る後ろ姿に、 つられるように、腕を伸ばしたけど、 足が、それ以上踏み込むことは、無かった。] …………かい と、 [言われた言葉のすべてを、思い返して。 音を刻んで、触れた熱の名残に、引きずられて、 下唇をきゅ、と甘噛し、自身の指先でなぞる。 からかったのではないと確信が出来る。 お前から聞いた初めての音に、 俺の心臓が慣れないリズムを奏でる。 不快ではなかった。 むしろ、胸の奥から、暖かくなるような。 でも、これは、海音の伝えてくれたものと、 同じ気持ち、なんだろうか?] (90) 2022/08/16(Tue) 6:55:45 |
【人】 闇崎 宵稚 …………、…… 返事、しなきゃ、 [その音の答えを知るためにも。 俺の気持ちが、どこに行き着くのかも。わからなかった。 それでも、それでも会って、話をしないことにはと。 考えられていた。 それなのに。] (91) 2022/08/16(Tue) 6:56:04 |
【人】 闇崎 宵稚[そんな店もあったんだな、という感じだった。 子供の頃は全く気にはしなかったけど。 この田舎町の名物といえば、海産物だし。 よくよく思い出せば昔からあるような店だし、 潰れないあたり、需要があるのだろう。 まだ暖簾がある所は少ないけれど、 きっと夜に訪れれば、違って見えるのだろう。 提灯は、店のものと祭りのもので混在していた] (113) 2022/08/16(Tue) 21:30:46 |
【人】 闇崎 宵稚[海音といつ会うかわからないから。 イヤホンを外して歩いていれば、 昼から空けているスナックから、 ラジオの音が漏れ聞こえている。] 『―― リクエストの一曲行ってみましょう! 新曲でありながら昔懐かしいと話題の ――』 [先程俺が聞いていた番組と同じパーソナリティ。 時間的に、ランキングが終わって、 トークがひとつ挟まって、…というところか。] (114) 2022/08/16(Tue) 21:31:58 |
【人】 闇崎 宵稚ッ、 ? [猫の鳴き声がするはずの背後から、 知らない『声』が聞こえた気がして、バッ、と振り返る。 路地裏の影が差し込んでおり、 大通りよりかは涼しくはあるのだけれど、 その『声』は、驚きの前に、先んじて寒気を齎すような。 透き通っている用に思えて、地響きの様な『声』だった。] (117) 2022/08/16(Tue) 21:35:09 |
【人】 闇崎 宵稚……?……。 [幻聴にしては、生々しかった。 諭されるような言葉に、覚えがあったから。 ――振り返っても、 そこに人一人、居なかった。 幻聴として、飲み込むしか、無かった。]* (118) 2022/08/16(Tue) 21:35:24 |
【人】 闇崎 宵稚[…お前が変わっていないのではなく、 俺が変わっていたと思われるかもしれない。 食事は杜撰なものだったけど、 なんだかなんだ続けていたバイトや運動で、 健康な体は保てていたあの頃と違って、 目の下の隈も、取れない眉間のシワも、 ]切るのも億劫で伸ばした前髪も、 メッシュを入れ忘れて、脱色した部分の後髪も、 ぜんぶ、全部。そのままだった。 人に会うとわかっていれば、 もっとまともな格好をしていたかもしれない。 (120) 2022/08/16(Tue) 21:38:26 |
【人】 闇崎 宵稚………。 [声色とは裏腹に。 ほんの少し空いた距離感に、>>83 僅かな違和を抱いたとはいえ、 大人なんて、そんなものかと飲み下して。] …………、…………。 うん。 久しぶり、……海音。 [気さくな挨拶の方法すら、呑み込んでしまった。] …………、…………。 [お前が様子を伺う時間のぶんだけ、 俺はたっぷり、その時間を浪費させる。 本当に、本当にお前の知る『俺』は、 こんなに無口だっただろうか。 どうしてだか、それすらも思い出せない。 張り巡らされた壁なんて、>>83 気づいてすら、いないかもしれない。 ただ、お前が何か話を振る前に。] (121) 2022/08/16(Tue) 21:39:04 |
【人】 闇崎 宵稚…………、今、何してるんだ。 里帰りって、言ってた、けど。 [カチ、と。止まっていた秒針を、 無理くり動かしたのは、俺からだったと思う。] (122) 2022/08/16(Tue) 21:39:34 |
【人】 闇崎 宵稚…俺も、 …話は、したかったんだ。 [何を今更、と思われようと。 緊張は、恐怖は、まだ残ってはいたけれど。 久々に出会った友人の姿と声は、 先程の不安も、此処に至るまでの不安も、 少しだけ、和らげてくれていた。]** (124) 2022/08/16(Tue) 21:40:49 |
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