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【人】 水分神[つまらなさそうな顔で 果物を床の上に転がす。] 美味しくないのじゃ…… どうしてかのう…… [これらは本来ならとっくに尽きて 村人たちにお代わりを要求している所。 日に三度の食事とおやつが楽しみで 間食をすることが減っていたから 抱えられるほどに残っていた。 そんなことにも気づかぬ、まま。] (0) 2021/06/22(Tue) 10:57:17 |
【人】 水分神[月が一巡りする間に 減っていったものは、他にもある。] ……あれでもするかの [毎日片付けをさせられる彼は 気づいただろうか。 幾らか読めるようになっているだろうか。 ────人の子が使うのと 異なる文字で綴られた書き物だ。] (1) 2021/06/22(Tue) 10:57:22 |
【人】 水分神[綺麗に洗われて柔らかく解れた筆を 硯の墨に浸す。 半ばの文章は時によって異なるが 出だしと締め括りは毎度同じ。 届けられることのない、故郷への便り。] (2) 2021/06/22(Tue) 10:57:31 |
【人】 水分神[ミズガミ様、ミクマリ様は 人の子らが裸で駆け回っていた時代から居る。 ずっと同じ個体ではなく代替わりをするもので ひとりの任期は二百年から伍百年程。 どこからともなく現れては勤めを果たし 元の世へ還っていく。 人の世に居る間は人の子を娶り 相手が天寿を全うするたびに 新しく娶りなおすのが常であったが────、 そうではないミズガミ様も居た。] (60) 2021/06/23(Wed) 9:24:20 |
【人】 水分神[先代が正に、そうではない方だった。 最初に得た嫁が輿入れから ほんの数年で逝ってしまった。 けれどその後差し出される替わりの嫁は全て断り 最後まで抜かりなく任を果たした。 ただひとりを想い続けたのだと言う。] (61) 2021/06/23(Wed) 9:24:25 |
【人】 水分神[当代は其れを否定した。] 人の子など取るに足らぬ存在よ 心を寄せて何になる? [彼らと我らには、与えられた時が余りに違うのだ。] (62) 2021/06/23(Wed) 9:24:45 |
【人】 水分神[彼奴の料理の腕だけは認めておる。 ……あ、あと、掃除とか、 妾に向ける笑顔とかも、すこし。 この白いやつも文句なしに美味いじゃろう。 そう思いながら咀嚼し、嚥下したが。] ……全然美味しくないのじゃ [がっかりじゃ。 けれどその手は休むことなく次を口に運び続ける。 ……最後の一つに至るまで。] (64) 2021/06/23(Wed) 9:25:51 |
【人】 水分神[彼奴も失敗することがあるらしい。 帰ったら酷いんじゃからな。] っっ、ひっく、えっぐ……っ こりぇ……塩っぱすぎるのじゃよぉ……っ [……嘘じゃ。甘ぁくてンマイのに 余計な味をつけてしまっておるのは妾じゃ。 前が見にくくて苦しくて仕方ないのじゃ。] (65) 2021/06/23(Wed) 9:26:07 |
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