厨房担当 ゲイザーは、メモを貼った。 (a33) 2023/03/05(Sun) 19:35:39 |
【人】 厨房担当 ゲイザー― 夜の駅への道すがら ― [3月の夜に冬の厳しさはもう無くとも、それでも結局は3月。 フード付きのパーカーもジャンパーも未だ現役な程に冷え込む夜道を駆ける速崎は、白のカッターシャツの上にはジレ以外何も羽織っていない。 薄手の長袖越しに寒気が肌を刺す――寒さの感覚も鈍麻したまま、駅を目指す。] ( いけない、いけない、遅く なっちゃう ) [自分の声色で脳内にストリーミング再生される、時計ウサギの焦り声。 徒歩5分の筈の目的地を異様に遠く感じたのは、街の喧騒に面した表口ならぬ裏口から飛び出したためか。 裏通りから表通りに出て程ないところで――はたと速崎の脚が止まった。] (468) 2023/03/06(Mon) 9:23:51 |
【人】 厨房担当 ゲイザー( あれ、 何か、言ってた、っけ ) [速崎がカウンターからバックヤードに駆け込んだ時、栗栖の呼び掛け>>264には振り向かなかった。 まるであたかも、何も話を聞いていないかのように。 それこそ、「もう用は無い」と誰かさんを置いて帰った、高校時代のあの日>>1:432のように。 実際、店を出るまでの間の記憶は、気が動転していた速崎の頭からはぶっ飛んでいた――この時までは。] ( ……そうだ クリ 、ス ……さん ) [当時の速崎の頭では、すぐに自分の周りの物事を処理できなかっただけで。 背中越しに掛けられた栗栖の声は、言葉は――必死さは、ちゃんと届いていた。] (469) 2023/03/06(Mon) 9:24:08 |
【人】 厨房担当 ゲイザー( だいじょうぶ、だって だいじょうぶ、 だって よかった ………ううん、全然、良くない よくない ) [相手の言葉に耳をまるで貸さない態で、背を向けて立ち去ったことに変わりはなく。 そして、今はもう、ここで店に引き返すだけの時間の猶予などないのだから。 意味もなく足が竦んで、訳も分からずに、涙が滲む。] ( …………泣いてる。私。 ) (470) 2023/03/06(Mon) 9:24:40 |
【人】 厨房担当 ゲイザー[先ほどのパニックが衝動的な行動を引き起こしたものなれば、今のパニックは逆に、身体を硬直させるもの。 荷物も置いて店を飛び出した葉月が速崎の背中に追いついた>>274のは、丁度そんな時だった。 喧騒の波がふっと凪ぎ、通りの人が疎らになった瞬間に。 再び背中越しに、今度は葉月の声>>275>>276を聞く。 混乱の所為で――涙の自覚もあって、速崎は通りに立ち尽くしたまま、振り返ることができなかった、けれど。] ……………、うれし、かったの、かなあ。 [弱弱しい、頼りない声での呟きが、ぽろっと口から零れる。 『うさぎ』のオープンキッチンではまず零すことのない涙声だった。] (471) 2023/03/06(Mon) 9:25:24 |
【人】 厨房担当 ゲイザー[いつか聞かせた「テンちゃん」の昔話。 もうニガさも苦しさも摩耗して消えてしまったと思っていた思い出の中の、その人のことを。 昔話の外にいる葉月なりに、それでも、自分の身に置き換えながら伝えてくれた予想と思い。] わかん、ない、や。 わかんない、けど。 (472) 2023/03/06(Mon) 9:25:44 |
【人】 厨房担当 ゲイザーありがと、ハヅキ ……さん。 少なくとも、俺は、って、教えてくれて。 それに、心配、してくれて。 [引き止めてごめん、と言ったその人に、振り返りはできないまま、それでも伝える。 混乱で過熱していた頭を冷やしたのは、追いかけてでも葉月が真正面から(速崎には顔は見えないが)届けてくれた言葉。そして、「お店で待ってる」と伝えてくれたこと。] 今日は、もう、行かなきゃ。 でも、お店、また、戻ってくるから。 [涙滲んだままなりになんとか笑えた口元は、互いに背を向けた状態では葉月に見えはしないだろう。 それでも「戻ってくるから」の語には、努めて声に力を籠めた。はっきりと伝わるように。 こうして速崎は、再び一歩踏み出して――駆けていく。] (473) 2023/03/06(Mon) 9:26:32 |
【人】 厨房担当 ゲイザー[実際のところ、栗栖や葉月の他にも、飛び出していく速崎の背に向けられた声はあったのだが――。 それを速崎が思い出すのは、電車に飛び乗ってからもう少しだけ後の話。 なお、スタッフや客に予め知らせておいた早退時刻は、制服から私服への着替えの時間も勘案して伝えたもの。 その着替えの時間を結果的に短縮したお陰で、ここで一時立ち止まってもなお、「オレンジのうさぎ」のままの速崎が電車を乗り過ごすことはなかった。 ……派手なサイバーマフの変なウェイターがいる、などと乗客からは思われていたかもしれないが。**] (474) 2023/03/06(Mon) 9:28:43 |
厨房担当 ゲイザーは、メモを貼った。 (a65) 2023/03/06(Mon) 9:32:44 |
【人】 厨房担当 ゲイザー[速崎が口にした自分の誕生日の話題に、今度は栗花落のほうからお祝いの言葉が返ってきた。 確かにまだ少し早いその言葉に瞬くも、それでも嬉しくなったことに変わりはなかった。] へっへへ〜ありがとうございます〜! 私は誕生日、31日ですねー。 ギリギリだけど3月仲間ってことで、どうかひとつ〜。 [同月故に、近いといえば近いが、やや離れているといえば離れているともいえたかもしれない日付。だがその辺りは深く気にしない速崎だった。 「私の誕生日には是非お店に来てください」という営業までは流石にしなかったが、誕生日当日にせよ前後する日にせよ『うさぎ』で祝って貰える分にはやはり嬉しく思う。そんな、学校の春休み時期生まれの速崎だった。 なお、この3/31の日付は後に、魅惑の賄いパーティーナイトで誕生日の件が話題に上がった際>>34>>84>>107>>116に店の面々に告げることになる。] (514) 2023/03/06(Mon) 15:20:59 |
【人】 厨房担当 ゲイザー[その後速崎がひとりごちた、アニメの『ラスト・サタデー』。 「知ってるの?」と栗花落に問われた時、独り言を聞かれてしまったことに軽くばつの悪さが過りながらも、すぐさまにうんと頷いた。] 配信のほうでなんですけど、見てたんですよ〜。 地上波放送に合わせて第一話配信されてて、 ループものかーって思って見てみたら面白くって、 そのまま最後までハラハラしながら見ちゃいました。 時々入ってくるコメディ部分もなかなか良かったですね……。 [ドラマやアニメ・映画等の定額制配信サイトで現在も試聴できるこの作品は、今でも「人気の作品」一覧によく浮上してくるタイトルだ。 放送当時のみならず現在に至るまでファンがSNS等で作品を盛り上げていること(そして『有栖川春人』のファンコミュニティも存在すること)は、SNSをほとんどやっておらず見てもいない速崎の知るところではなかったが。 そんな、自分もハマった人気作と「そっくりだね」と笑われてしまった時>>1:570は、軽いばつの悪さと苦笑が顔に浮かんだだけで済んだ、けれど。] (515) 2023/03/06(Mon) 15:29:04 |
【人】 厨房担当 ゲイザー[この場で栗花落が紡いだ台詞は、その声色や抑揚や息遣いまで含めて、まさにあの『有栖川春人』だった――。 イヤーマフ越しの速崎の耳に、はっきりと、そう捉えられた。] ツユリん、 [顔は苦笑い気味の笑みの形のまま、驚きで大きく目を見開いた。 ものすごく間の抜けた声であだ名を紡いだ後――ひとまず平常を取り戻して、笑顔で言葉を続ける。] 上手いですね〜春人の台詞! ループで繰り返しこの場面出てくるたびに せつねぇ〜ってなりますけど…… いいですよねん、このシーン。 声の響かせ方とか〜普通に声自体もー。 [至って他愛ない調子で続ける感想には。さらっと声優本人に対しての感想も混じったが、話し口はあくまで自然体で。 ブラウニーを渡した主人公が春人に返した(各ループ毎の)台詞を、この場で素人演技で返してみる程の度胸は、流石の速崎にも無かった。] (516) 2023/03/06(Mon) 15:31:00 |
【人】 厨房担当 ゲイザーそれじゃ、ごゆっくり〜。 [表情はあくまでいつも通りのゲイザーの笑顔で、内心も努めて平静を保って。 こうして速崎は、何事もなかったかのような態度で、この日の閉店までの業務に就いたのだった。 なお、この日眼鏡で勤務していた瑞野に対し栗花落が浮かべていた顔>>1:565を、速崎は見落としている。 後日、速崎が定額制動画配信サイト>>1:79のマイリストから『ラスト・サタデー』を再生し、クレジットを確認したところ。 主人公の親友としてキャスト一覧の上位に挙げられていた『有栖川春人』には、「セロ」という名前がしっかりと記載されていた。*] (518) 2023/03/06(Mon) 15:36:47 |
【人】 厨房担当 ゲイザー― 今夜、経由駅にて ― [その「セロ」――栗花落セロの姿を、速崎は今日の営業で目にしていない。 それもその筈。速崎がバックヤードに駆けていった丁度その時に、栗花落が『うさぎ』の扉を開けたのだから>>269。 帰ると告げたきり何も言わずに飛び出した、その背中に向けられた眼差しに速崎は気付いていない。] ( セロ、 ツユリ、さんは、 ……いなかった、よね ) [扉の方からの「こんばんは」の一言は、他の面々が掛けた声やいつもの店内のBGM>>2:310に紛れる形で霞み、速崎の頭では思い出せない。 思い出せないなりに、その声色の印象が記憶の中に落ちる。 そんな、イヤーマフを付けたウェイター姿の乗客はひとり、空港に向かう路線に乗り換える。**] (519) 2023/03/06(Mon) 15:37:59 |
厨房担当 ゲイザーは、メモを貼った。 (a69) 2023/03/06(Mon) 15:55:01 |
厨房担当 ゲイザーは、メモを貼った。 (a71) 2023/03/06(Mon) 19:24:30 |
【人】 厨房担当 ゲイザー― 今夜、空港にて ― [電車を乗り継いで辿り着いた先、国内線の出発ロビーで思い返す。 『うさぎ』のロッカーに置いてきた右前のピーコートの代わりに、フォーマルの黒のジャケットを羽織って。 そのジャケットと入れ替えるように、オレンジのイヤーマフをスーツケースに押し込んで。] ( チエ、 ) [最後まで言い切れないまま、呼びかける声があった>>349。 その人のいつも通りの、「ケイちゃん」と呼ぼうとしている声だった。] ( シャミー、 ) [やはり、途中で霞んでしまったような呼び声もあった>>273 それはいつもの「ゲイザー」ではない、けい、の名を呼ぶ声だった。] (554) 2023/03/06(Mon) 20:06:54 |
【人】 厨房担当 ゲイザー[あの時場を同じくしていた誰もが、速崎が起こしたこの騒動に気づいていたか否か、それは速崎には分からない。 同じキッチンにいた瑞野なら、流石にこの退出には気付いただろうと思えども。 何か呼び掛けるような声が聞こえたわけではない>>309。 はっきりとした記憶には残らなかった栗花落の挨拶と同様に、貝沢の声>>283はほとんど聞こえていない。 神田に何か言われたような記憶もない>>372。 それでも、なんとなく覚えてはいるのだ。 ふたり分の手で手掛けたクッキーを楽しみにしてくれた「カッチ」の声があり>>267、 作り手ですら綴れない程の細やかな言葉で綴られる「カンちゃん」の評があったのだ>>334、と。 バックヤードで御堂とすれ違った記憶は未だ飛んだままだったが、記憶が飛んでいるなりに、想像はできる。 申告済みの早退なれど、その帰り方がこんな有様では。 間違いなく、ヘルプ出動以上の心配をかけさせていると>>419。] (555) 2023/03/06(Mon) 20:07:06 |
【人】 厨房担当 ゲイザー[速崎は客に対してのみならず、スタッフの素性に対してもあまり深入りしてこなかった節がある。 履歴書を覗き込みでもすれば>>0:307判ることもあろうが、そういうことも、自分からはあまりしてこなかった。 だからあの場で、自分が栗栖に零した言葉で、他に傷つけてしまった人がいたかもしれない。 そこまで速崎の思考と想像力が回るようになったのは、飛行機を待つロビーで身を落ち着けられたその時になってから。 それでも、「なんで」の後に何の言葉が続けられようとしていたのか、そこまでの想像は速崎にはできなかった。 できなかったなりに、やっと一歩進めたのに二歩後ろに戻されたような、そんな余韻ばかりが残る。] (561) 2023/03/06(Mon) 20:07:44 |
【人】 厨房担当 ゲイザー[ロビー内にアナウンスが響く中、速崎はスマートフォンでショートメッセージを送信する。 宛先は、御堂宛ての電話番号。] 『心配おかけしてると思います。ごめんなさい。 明後日にはうさぎに戻ります。必ず、戻ってきます。 速崎』 [搭乗に追われる形で急いで送ったメッセージは拙い文章だったけれども、早くに伝わるならそれに越したことはないと。] (562) 2023/03/06(Mon) 20:08:00 |
【人】 厨房担当 ゲイザー( みんなに、心配かけさせてる。 ハヅキ、さんだって、待ってるって言ってくれた。 それに、戻らなきゃ、 クリス、さんにも、マシロ、にも、謝れない。 ) [こうして速崎璥は、飛行機で星空の下を飛んでいく。] (563) 2023/03/06(Mon) 20:09:44 |
【人】 厨房担当 ゲイザー[ 「ゲイザーの誕生日」のメニューの話まで出て来て あれだけ盛り上がった、いつかの賄いの夜の騒がしさは、 夜の最終便の機内の静寂の中、どこか、遠い。 **] (565) 2023/03/06(Mon) 20:13:12 |
厨房担当 ゲイザーは、メモを貼った。 (a74) 2023/03/06(Mon) 20:17:48 |
(a75) 2023/03/06(Mon) 20:17:59 |
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