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【人】 大守 威優[そんなこんなでドレスの打ち合わせをして、 並行して式場を決める。 規模は大きくなくても良い。 ただ、「チャペル」として、ヴァージンロードが存在する方が良い。] ここ良いんじゃないか、海がよく見える。 ナイトウェディングなら観光客の目に晒されることもないし。 [志麻が少しでも周りを気にせずに済むように。 チャペルの資料を見ながら提案する。 ガラス張りの教会は自然の中にいる気分にもなれそうだ。*] (43) 2023/08/30(Wed) 22:40:16 |
【人】 大守 威優[見える部分だけではなく、その下も。 見える部分だけしか気にしない性質ならば、 毎日機能性よりデザインを重視した下着を身に着けては いないだろう。 ドレスはシンプルでもコルセットにはラメを入れて煌びやかに。 ガーターは下着と調和が取れるように裾だけレースを入れて。 小さく「エロい」と言ったのは聞こえていたが、 目の前に他人がいるので「脱がせたいから」と 本音を言うのは止めておいた。 全く、オオカミに豹変できない場所で あまり可愛いことを言わないでほしい。] (49) 2023/08/31(Thu) 0:14:39 |
【人】 大守 威優ああそのシューズは良いな。 歩いていてチラッと見える時にレースが覗くのは、 ドレスの裾がシンプルな分よく映えるだろうし。 そう、これはパール糸が編み込んであるチュールらしい。 ラメよりはパールの少し控え目な反射が好きだな。 [ヴェールの長さはセンチメートルではピンとこなかったので 後でまたメジャーを身体に当ててイメージしてみよう。 軽い触れ合いだけでも志麻が恥じらう様子を見せる。 こんなの、電波に乗ってお茶の間に届いてしまったら、 一体どれだけの人間が目を奪われることか。 いっそ今決めたヴェールを被って披露宴に出て貰おうか。 タキシードにはマッチしなさそうなのが残念だ。] (50) 2023/08/31(Thu) 0:15:02 |
【人】 大守 威優お揃い、お揃いか……。 [タキシードの生地とドレスの生地は全然違う。 モチーフを入れるか?とも思ったが、 ウェディングドレスのシンプルな美しさに モチーフは浮いてしまう気がする。] 例えば、こう…… ドレスの肩にリボンをつけてもらって、 それが俺のタイと同じシルクサテンとか、 俺のポケットチーフを志麻のヴェールと同じ チュールで飾るとかは? [胸元を盛らないとなると、上半身の視線を誘導する場所がなく少し地味に見えるかもしれない。 番の証を隠したくはないから首元は空けて貰う予定で、 何かアクセサリーをするかとも思っていたが、 それだと首裏がチェーンで邪魔されてしまうのが 悩みの種だった。 肩口をシンプルなノースリーブではなく リボンをあしらえば「可愛さ」を諦めないデザインにでも できるのではないか。 志麻の反応はどうだろう。] (51) 2023/08/31(Thu) 0:16:04 |
【人】 大守 威優[普段のスーツや靴で己は慣れているが 志麻は家庭事情もあってここまで細かいオーダーで 仕立てるのは初めての経験らしい。 迷う人向けのセミオーダーというのもあるが どうせなら時間がかかってもたくさん悩んでも ふたりの胸の内から出てくるものを形にしてもらいたい。 ドレスが終われば次はブーケも選ぶ必要がある。 リングもオーダーが良いと駄々をこねて シルバーのシンプルな細い指輪に 二人の誕生石であるダイアモンド―― 瞳の色に近いブルーイッシュグリーンの カラーダイアモンドを埋め込んでもらった。 それも「お揃い」のひとつだ。] (52) 2023/08/31(Thu) 0:16:23 |
【人】 大守 威優[式場の候補は条件を入れたら自ずと絞れてきた。 男同士の挙式が出来ること、 日本人観光客が周囲にあまり来ないこと、 そしてナイトウェディング。] 海が近いところの強みだな。 ここだと砂浜から南十字星も見えそう。 [日本では見えない星も探せそうでわくわくしてくる。 夜間の写真に強い写真家のスケジュールも 押さえておかなければ。**] (53) 2023/08/31(Thu) 0:16:35 |
【人】 大守 威優[スタッフは男性である志麻用のドレスの注文にも 怪訝な顔をせず、女性の花嫁に対するのと変わらない態度で 接している。 それでもドレス着用に前向きなことを外に知られることに 気が引けるのか、志麻の口からはデザインや色味に関して 「可愛い」という言葉は控えられていた。 スタッフに出して貰った見本、ウェディング用のコルセットは 白の下に着用することを踏まえて色味は抑えてあるが、 形状はリボンで編み上げるタイプからホックで止めるもの、 ファスナーを使ったものなど様々あった。 勿論コルセットもガーターも、見本は女性用ではあるが、 男性――志麻の身体に合わせて作るのだから、 「試着で入るものを」なんて制限はない。 志麻の好みに合わせてそれを用意するだけだ。] (58) 2023/08/31(Thu) 19:59:48 |
【人】 大守 威優[お揃いがほしい、なんて可愛いお願いに提案したら、 それは彼の気に入るところとなったようで。 思った以上の反応が引き出せて満足の笑みを浮かべた。 やっと心から「可愛い」に対する好意を出してくれた。] じゃあどっちもお揃いにしよう。 リボンは縫い付けるんじゃなくて外せるようにして、 日本に帰ってから披露宴でアスコットタイとして 使えるようにして貰えば 披露宴でも「お揃い」ができるよ。 [リボンとして肩を彩る際は子どもっぽくならないように 幅を狭く折って、アスコットタイにする時には広げれば良い。 折角のお揃いだ、見せびらかしたい。] (59) 2023/08/31(Thu) 20:00:33 |
【人】 大守 威優[お揃いが決定した頃から、志麻の緊張もだいぶ解れ、 希望が口に出やすくなった気がする。 ブーケはピンク主体、己の好みで薔薇を入れて貰う。 一口にピンクと言っても色んな薔薇があって目移りしそうだ。 脇に添えるブルーの花は薔薇を邪魔しないように小ぶりの ブルースターを。 様々なことが決まる度に結婚式が楽しみになる。] うん、周りに商業施設の光源もないし、 きっと綺麗に見えると思うよ。 [朝になったら海で泳ごう、とは言えなかった。 男性物の水着で隠れるところだけに 己の独占欲が収まるとは到底思えなかったので。*] (60) 2023/08/31(Thu) 20:00:48 |
【人】 大守 威優[志麻の緊張が解れてからはスタッフの方も より熱心に志麻の方に提案をするようになった。 それまでは二人に対して提案し、 己が出しゃばるという形だったので、 志麻の方に近づけにくかったのかもしれない。 こういう場ではスタッフは「ご新婦様」と呼ぶのが 普通だろうが、「婦」という漢字を気にしてか、 「志麻さま」と名前で呼んだ。 スタッフの配慮が伺える。] 見る度に挙式のことを思い出せるから 披露宴で思い出し笑いをしないように 気を付けないとな。 [まだ式を挙げてもないのに、もう思い出し笑いをするような 出来事があると確信している。 その態度も披露宴で思い出して緊張をほぐす一助となれれば良い。] (64) 2023/08/31(Thu) 22:45:34 |
【人】 大守 威優[帰りは夜になった。 商業施設や住居の灯りが邪魔で、 ここでは南半球でしか見られない南十字星はおろか、 他の星座も目を凝らさないと見えない程だけど] へぇ、Ω星は? [なんて言いながら、繋いだ手に力を込めた。 星のない夜でもどこにいるかわかる、 彼にとってのたった一つの一番星になりたい。] (65) 2023/08/31(Thu) 22:45:50 |
【人】 大守 威優――挙式当日―― [前日から泊って時差ボケを直した後、 万全の体調で式に臨む。 花嫁である志麻は己よりも準備にかける時間が長いから、 己は自分の着替えを終えた後、そわそわしながら待つ時間が長い。 ドアがノックされた。] ――はい。 ありがとうございます、お義父さん。 [二人だけの挙式をしよう、と言っていたが。 たった一回の挙式、バージンロードを一人で歩くのは やはり寂しいと思い、志麻の家族を呼んでいた。 両親は志麻が幼い頃女の子の服を着ていたことを 知っている。 知られたくない訳ではないと思うが、 一応サプライズ登場はチャペルの前ではなく 準備中にしてほしいと頼んだのだった。] (66) 2023/08/31(Thu) 22:46:17 |
【人】 大守 威優[程なく志麻の支度部屋の扉がノックされる。 まずは、父親だけが。 許されるなら母と弟も。 内緒で呼んでいるので、志麻の心の整理がつかなければ 予定通り二人だけになる。*] (67) 2023/08/31(Thu) 22:46:31 |
【人】 大守 威優[現地は快晴だった。 式の当日とはいえ、招待客がいる訳でもなし (この時点ではサプライズのことはおくびにも出していない) エステやマッサージを受けてのんびりしていた。 そして準備の為にそれぞれ別の部屋に入る。 窓の外、夜の帳が降りていく。 日が完全に落ちれば、結婚準備の帰り道に志麻から聞いた 「α星」や「オメガ星雲」も観測できるようになるだろう。 式の後、ゆっくり星空を見る余裕が出来るのは 何日か後かもしれないが。] (73) 2023/09/01(Fri) 20:51:41 |
【人】 大守 威優[義父と一緒に志麻の部屋へと向かった。 義母と義弟には部屋で待機をしてもらっている。 道中、緊張しているのか無言だった義父は、 志麻の姿を見るなり「綺麗だね」と呟いた。 志麻がドレスを着ることは、義家族には伝えていなかった。 それでも開口一番その言葉が出るということは、 息子の晴れ姿に対する含みはないということだ。] 似合ってる。 俺の奥さんが世界で一番綺麗だ。 [どうやら義父の言葉は己の口から聞きたかったようで。 順番は譲ったが、特大で特別な賛辞を贈った。] (74) 2023/09/01(Fri) 20:52:04 |
【人】 大守 威優[困惑の強い志麻に、呼んだ理由を説明する。] 式をするにあたって、調べたんだ。 バージンロード――英語ではウェディングアイルって言うんだけど、 花嫁のこれまでの人生を表すんだそうだ。 教会の扉が開いて、俺が待つ祭壇まで。 小さい頃から今までの人生を振り返りながら歩いてくる時に、 志麻の隣にはお義父さんがいてほしいと思ったんだよ。 愛されて育ってきた。 愛をきちんと受け止めて歩んできた人生で、 俺と出逢ってくれたんだ。 [義父は、突然のことで驚かせてしまったことへの謝罪と、 どうか参列させてほしいという懇願を口にする。 加えて、もし志麻が望まなければ、 このまま部屋に戻って式が終わるまで見ない、と。 部屋でずっと幸せを願っている、と。] (75) 2023/09/01(Fri) 20:52:33 |
【人】 大守 威優どうかな、志麻。 [外はゆっくり暗くなっていく。 チャペルの外のガーデンに灯りが灯り、 国花であるミモザが明るく浮かび上がった。*] (76) 2023/09/01(Fri) 20:53:02 |
【人】 大守 威優[ありがとう、と聞くまでは 義父も己もどこか胸に不安を抱えていたと思う。 先に打診したらどうかと義父には言われたが、 その場合受けるも断るも、志麻の心に影響が出そうで 己の我儘で隠し通させてもらったのだ。 「自分がΩだから苦労をかけた」と思っている志麻は、 家族の為にと度々実家で家事を担っていた。 家族が来ると知ったら「自分だけの為」ではなく、 家族がどう思うかを思考の基本に置いてしまうのではないか、 それを懸念していた。 逆に二人だけだからと断れば、 見たいと願った家族の想いを無碍にしたと 罪悪感を抱いてしまうだろう。 その点、この土壇場で断るなら 己が黙っていたことの所為にできる。 ――と。] (81) 2023/09/01(Fri) 22:21:29 |
【人】 大守 威優[涙を堪えるように天を仰いだ礼の後、 沈黙が漂った。 その間、花嫁の支度を担ってくれたスタッフも 空気を呼んで部屋の隅でじっと大人しくしていた。 退室はしないだろう。 どんなに堪えても、堪えた分だけお直しの必要がある。 己が話すバージンロードの意味を聞く間、 噛み締めていた唇に引かれた「可愛い」リップや、 父親に向けた瞳の端でよれた発色の良いファンデなど、 整えて貰ってから手を取りたいし、手を取ってほしいだろうから。] (82) 2023/09/01(Fri) 22:21:47 |
【人】 大守 威優うちの母には良かったら写真を送らせて。 忙しくしてないと死ぬ病なんだあの人。 [志麻が了承してくれるなら、 世界一美しい花嫁を自慢したい。 この姿を見たらきっと母は今度は孫が見たくなる。 そうして生きてほしいのだ。 どんなに野心に溢れ親族との間に溝があった男だったとしても 愛していた、たった一人の番がいないこの世界で。] (83) 2023/09/01(Fri) 22:22:58 |
【人】 大守 威優じゃあ、祭壇で待ってる。 メイクを直して貰ってからおいで。 一度ベールを上げてもらうから、 下ろすのはお義母さんに。 ベールダウンは「子育てを終える」って意味で 母親にしてもらう習わしがあるそうだよ。 [そう言えば、またメイクを直す場所が増えるだろうか。 義弟にはフラワーボーイを頼んである。 花嫁が悪魔に攫われないように道を「護る」役を、 もう「護られる」だけの存在ではないのだと 兄に安心してもらえる姿を見せられるように。] (84) 2023/09/01(Fri) 22:23:16 |
【人】 大守 威優[現在、婚姻関係を証明するのは戸籍であり、 挙式の有無は公的に何も関係しない。 では何故挙式をするのか? 始まりは番の可愛いドレス姿を見たいと思ったところから。 準備をする内に、結婚の実感が湧くという利点を「実感」した。 結婚式について調べる内に、 志麻をここまで育ててくれた家族には やはり「関わってほしい」という想いが強くなった。 大切な家族を送り出す役割を得ることで 心の整理がつくものではないかと考えたのだ。 花嫁の支度部屋には今、田臥家の4人がいる。 正確にはもうパスポートには"Oogami"と書かれているが、 これが最後の「家族水入らず」だ。] (90) 2023/09/02(Sat) 0:08:56 |
【人】 大守 威優[花嫁の一歩は一年に相当すると言う。 一歩、二歩、三歩、 四歩、五歩、六歩、 ――女の子だと思って生きていた時間。 七歩、八歩、九歩、 十歩、十一歩、十二歩、 ――男の子の制服に戸惑っただろう。 十三歩、十四歩、十五歩、――体つきが男になって、 十六歩、十七歩、十八歩、――Ωとしての人生になった。 困難を抱えながら受験をして、就職して、] (91) 2023/09/02(Sat) 0:09:30 |
【人】 大守 威優[丁度二十四歩で辿り着いた訳ではない。 だから、二十五歩を数える前に立ち位置を変えた。 この位なら誤差だと開き直る。 引き継いだ志麻の手を受け止めて、祭壇へと。] "Will you love him , comfort, hornor and keep him so long as you both shall live?" (92) 2023/09/02(Sat) 0:10:48 |
【人】 大守 威優[相手が「彼」なので、一言一句同じ言葉が繰り返される。 そして志麻の口からも、己と同じ言葉が。 万感の想いで、鼻の奥がツンと痛んだ。 ああこれは、どうやら己は泣きそうになっているようだ。 最後に泣いたのがいつだったか思い出せないが、 きっとそうだ。 人は悲しくなくても泣くのだ。 涙こそ出なかったが、喉が熱い感覚がずっと続いている。 神父に促され、ベールを持ち上げて] 愛してるよ、志麻。 [躊躇なく唇にキスをした。 閉じた瞼裏に、出逢った時のことを思い浮かべながら。] [讃美歌と共に式が終わる。 扉が開かれ、ガーデンに出るよう促された。] (95) 2023/09/02(Sat) 19:53:26 |
【人】 大守 威優写真、撮ってもらうか? [ガーデンには、ミモザのアーチが設置されていて、 そこで写真を撮ることが想定されているようだ。 二人で撮って貰うのは予定にあったが、 折角なので3人とも撮ったらどうかと提案した。 ドレス姿の結婚写真は、 親族には見せることはないかもしれないが、 家族が時折開いて思い出に浸る為には 手元に残しておきたいだろうから。*] (96) 2023/09/02(Sat) 19:53:41 |
【人】 大守 威優[「愛してる」と言えるようになるまで。 志麻には少し時間が必要だった。 その間、彼の気持ちが違うと思っていたことはない。 言葉には出さなくても、態度で、身体の反応で、 己を愛しているとずっと示してくれていた。 言葉に出来なかった理由は、志麻が話したければ聞くし、 無理に聞きだす心算はない。 大切な場面で、周囲の目が合っても、 淀みなくまっすぐ伝えてくれた。 その事実で充分だ。] (102) 2023/09/02(Sat) 21:43:49 |
【人】 大守 威優[ガーデンでは、荘厳な空気から解放されたからか、 義弟がいつも以上にはしゃいでいた。 4人家族の写真をスマホで撮れば、 撮影係はお役御免で花嫁の元に促され。 カメラマンを差し置いて色々とポーズの注文をつけるのに、 ケラケラと笑いながら応える。 頬へのキス、二人でハートマークを作る、 お姫様抱っこ、そしてリングを嵌めた手を並べて。 大きな満月が海にゆっくり溶ける時間、 義弟が満足するまで撮影会は続いたのだった。] (104) 2023/09/02(Sat) 21:44:50 |
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