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【人】 狐娘 レイ―― 翌朝 ―― [初めての交わりを覚えた身体は、朝陽を迎え入れても反応しないほど心地の良い疲労を訴えていた。 シャオロンが寝台を抜け出したことにも気づけず、一糸まとわぬ姿で布団の中で丸くなっている。 指輪が指先に嵌められたのにも気づかないほど、愛された身体は情交の後がしっかりと残っていて、昨夜のことが夢ではないことを表している。 ふに、と柔らかいものが唇に触れた。 重い瞼をゆっくりと開いていけば、 柔らかく微笑むシャオロンの顔があって、 つられるようにふにゃりと表情を緩めた。] ……おはよぉ、しゃおろん。 [寝ぼけ眼のまま、差し込む朝陽に照らされる愛しい人が今日も傍らに居る。 奥さんと呼ばれることが擽ったくも、嬉しくて。] (7) 2021/12/16(Thu) 0:24:52 |
【人】 狐娘 レイ……ん、ん〜〜ッ……! はふ、……朝、はやいねぇ。 [本当に早いかは知らない。 布団の中でぐううっと伸びをして、意識を覚醒させていく。 そこでようやく違和感に気づいて、ふと左手に視線を向けた。] ……ん……? [左手を目の前に持ってきて、まじまじと指の根元に嵌っているそれを見つめる。 どこか見覚えのあるデザイン。 忘れるはずもない、水晶に白い花をあしらわれた、ずっと記憶の片隅にあった、それは――――、] (8) 2021/12/16(Thu) 0:25:23 |
【人】 狐娘 レイ[瞬時に頭が覚醒して、がばっと飛び起きた。] ……ゆ、ゆびわっ! シャオロン、これっ……、指輪っ……! どうして……っ、これ……!? [指輪とシャオロンを交互に見比べて、 動揺に言葉もままならずに言葉を紡ぐ。 指輪を撫でてその存在を確かめるように。 シャオロンが泉で拾った? その割にはサイズが今のレイにぴったりと嵌っている。 「ロン」に嫉妬していたシャオロンが、「ロン」からの指輪を付けているのを許しているとも思えなくて。 混乱が混乱を呼んで、戸惑ったようにシャオロンに救いを求めた。**] (9) 2021/12/16(Thu) 0:25:34 |
【人】 狐娘 レイ[レイが驚いた理由に彼は気づいていなかった。 10年以上前に貰った、泉に落としたモノと同じデザインの指輪。 それがまさか、シャオロンの手から渡されるなんて。 これじゃあ、まるでシャオロンがロンみたいじゃないか。 なのに、シャオロンの口から語られる「ロン」はやはり他人事で。 でも、そこには確かにレイを思って作ってくれた軌跡があって。 それが大事なものだと教えてくれる。 出逢う前からレイのものだったと。 シャオロンの記憶の片隅に、ずっとレイが居たみたいに。] (16) 2021/12/16(Thu) 9:24:12 |
【人】 狐娘 レイ[彼の口から語られた過去は、胸が痛むものがあった。 その光景を、レイは確かに覚えている。 「ロン」を傷つけたのは、自身と血の繋がった兄たちだ。 記憶を失くすほどに傷つけてしまった彼が、 心の片隅で覚えてくれていた自身の名前を、今、彼が口にしている。 間違いなく「ロン」はシャオロンだ。 この指輪と彼の断片的な記憶がそれを確信させた。] (17) 2021/12/16(Thu) 9:24:23 |
【人】 狐娘 レイ―― いつかの未来 ―― [泉のほとりで、花を摘むのは毎日の日課だった。 赤と白、二つの色の花を手にとって束にしていく。] 『このおはなは?』 [幼い女の子が自身で摘んだ花を、女に花を見せた。] ええ、それも綺麗ね。 一緒に飾りましょう。 お父さんもきっと喜ぶわ。 [そうして、花束に彼女が摘んだ花を混ぜた。 力仕事と生業としている彼は、 今日も仲間たちと共に村の外に出払っている。] (19) 2021/12/16(Thu) 9:58:19 |
【人】 狐娘 レイ[傍らで小さな男の子が駆け回っている。] 遠くへ行くと危ないわよ。 ここは、魔物が出るんだから。 『おれはつよいからへいき!』 [昔に聞いたような台詞を男の子が口にする。 赤い髪の彼の腕には文様が刻まれ、その腕でぐっと自信がありそうに折り曲げる。 その様子にくすりと笑って、女は立ち上がった。] さあ、そろそろ帰りましょうか。 お父さんが、戻ってくるまでにご飯を作らなくちゃ。 [その日の夕食は、魚料理。 彼が初めて生魚を口にした時に驚いた顔は今でも記憶に残っている。] (20) 2021/12/16(Thu) 9:58:29 |
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