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【人】 宮々 蓮司信号が赤くなって車を停める。 停車中でも俺の視線は前を向いたまま、隣の子がこちらを見ていることにもまるで気を留めず。 ただ、スピーカーから聞こえる歌に合わせて指を鳴らした。 ─── パチン、パチン それもまた何処かで聴いた大切な音。 不思議だった。音に合わせて指を鳴らすたびに、脳裏に浮かんだシルエットが彩を増していく気がした。 その服はあまり趣味ではなかった。だけど、それは彼女によく似合っていた。 だから全く着なくなってしまったのなら、それはそれで少し惜しい気もしていた。 それなら誰にも荒らされたことのなかったルージュ。 それもまた、綺麗で可愛らしい彼女によく似合っていた。 そして、そう、そんな風に完璧に装っていた彼女の、意図的に作られた唯一の隙、それは──── 信号が青に変わって、車を発進させる。 自然、指を鳴らす音は途絶えた。* (78) 2022/05/28(Sat) 19:55:15 |
【人】 宮々 蓮司どうして? そんなのは決まってる。 命と恋を天秤にかけたのだ。 それで恋を取るほど馬鹿ではなかったということ。 誰だって命は惜しい。 「 死にたくなかったんだろうな。」 患った病は大した病気ではなくて、でも宮々の人間には致命的にもなり得るものだった。ただそれだけを伝えた。 それは当たらずとも遠からず。 恐れたのは死んで、永遠に瀬里を失うことだったけど。 それも今となってはわからなくなっていたこと。 (83) 2022/05/28(Sat) 21:12:09 |
【人】 宮々 蓮司恋をしている顔。 自分のスマホには二人の写真がそれほど多くはなかった。 風景だったり、それから瀬里≠撮った写真。 確かに写真の中の彼女は今横にいる彼女とは違って、とても楽しそうに、そして幸せそうな笑顔ばかりだった。 きっと、それをカメラ越しに見ていた自分も同じ顔をしていたのだろう。 「 少し、……羨ましいな。」 恋矢が重篤な病を引き起こすなら、 自分は二度と恋なんてできないことになる。 今はもう恋に憧れも何も抱いてはいないのだけど。 胸には後悔のような昏い水底へと沈むような感情がある。 結局、瀬里を失ってしまうことへの後悔が。 (84) 2022/05/28(Sat) 21:12:23 |
【人】 宮々 蓮司車は駅前に着くと静かに停車した。 「 着いた、な。」 いつか「どこにも辿り着きたくない」そんな風に言った男がいた。そいつは今のよう場面を想像していたのだろうか。 ここで、彼女が車を降りればそれでおしまい。 さっき彼女が言った通りたまに連絡が来るかもしれない。 でも、きっとしばらくすればそれもなくなる。 だからと言って何もできないし、何かしようとも思えない。 なあ、蓮司 お前はこんな終わり方も想定していたんだよな? エンジンを切ると、助手席の瀬里へと視線を向けた。* (85) 2022/05/28(Sat) 21:13:55 |
【人】 宮々 蓮司それは何か考えるよりも先の行動だった。 気づけば手を伸ばしてその涙を拭っていた。 どうしようもなく切なかった。 そして、彼女が涙を流しているのが、そうさせているのが自分なのだと思えば許せなかった。 (91) 2022/05/29(Sun) 0:49:20 |
【人】 宮々 蓮司昨日まで瀬里を愛していた事実は消えない。 彼女を愛していたのも、それだって俺なんだ。 記憶を失っても、恋心を失っても。 ──── 全部俺なんだ。 (95) 2022/05/29(Sun) 0:51:58 |
【人】 宮々 蓮司「 こんな終わり方は嫌だ。」 理由を聞かれてもわからない。 だけど、こんな終わり方は絶対に嫌だった。 昨日までの蓮司≠ェとかじゃない、昨日も今もなく俺が嫌だと思っている。* (96) 2022/05/29(Sun) 0:52:15 |
【人】 宮々 蓮司それは提案。 恋心がなくても、かつての二人に関する記憶がなくても、二人が恋人同士でお互いを深く愛していたのなら。 中身が伴わなかったとしても、 その形がもしかすると何かのキッカケになるかもしれない。 そうは言っても、恋心のない二人だ。 だから、少しずるい理由を付け加える。 「 きっと、 瀬里≠熈蓮司≠烽サれを望んでいるはずだ。」 たとえ、まるで別人の様に感じていても、 やはりそれは二人にとっても過去であることに変わりはないはずだから。 * (102) 2022/05/29(Sun) 10:37:20 |
【人】 宮々 蓮司涙が止まったのを見て手を頬から離した。 「 宮々蓮司だ。 よろしく、っていうのも何か変だな。」 はにかむ瀬里に同じ様な笑顔を見せていたと思う。 不思議なもので、恋をせずに恋人になるというのに、恋人になったと思えば、そうであることが当然の様に思えた。 (106) 2022/05/29(Sun) 19:09:23 |
【人】 宮々 蓮司「 ドライブデートか。 恋人の第一歩としてはいいかもな。」 そうと決まればシートベルトを着け直して、車を走らせようか。 ドライブのBGMには聴き覚えのある歌、透明な歌声。 お互いの知らないことを話しながら。 不思議な感覚は知らないのに新鮮味がないこと。 本当は知っていたはずのことだからか。 そんな他愛のない話。 無くした記憶を埋めていく様に。 そうやって全てを埋め直したら、また以前みたいに慣れるのだろうか。 (107) 2022/05/29(Sun) 19:09:37 |
【人】 宮々 蓮司諦めていた。 朝、目を覚ました時に記憶が曖昧なことに気づいた。 ぽっかりと胸の中に穴が開いたような心地。 自分に何が起きたのかはわかっていた。 彼女に関する記憶をなくしていること。 抱いていたらしい恋心を失っていること。 昨日までの自分がどう思っていたのかはわからない。 ただ、きっと上手くいかなかったのだろうということは理解できた。 そして、 それならば仕方ないのだと。 失った記憶も、恋も、仕方のないことと受け入れた。 (117) 2022/05/30(Mon) 14:36:26 |
【人】 宮々 蓮司だけど、彼女は違った。 連絡してもいいかと聞いてきた。 そんなこと意味がないと思った。 彼女は、瀬里は自分のことを諦めなかった。 自分のことを取り戻そうとしていた。 彼女だって恋心なんて無くなっていて、蓮司≠フことなんて覚えてもいないのに。 そして涙を流した。 悲しみなのか、悔しさなのか、蓮司≠ネらわかったのだろうか。 (118) 2022/05/30(Mon) 14:36:52 |
【人】 宮々 蓮司それは嫉妬に近かった。 昨日までの俺が、瀬里に愛されていたということ。 今の自分ではないことが、 無性に悔しくて、 このままでは終わらせたくないと思ってしまった。 (119) 2022/05/30(Mon) 14:39:17 |
【人】 宮々 蓮司そのメールには短く、 『 もちろん 』とだけ返信をした。 不思議な感じがした。 記憶もない、 以前の 恋心もない。だけど、今たしかに彼女に恋をしている。 かつての恋ではなくても、今たしかに。 だけど 変化が訪れたのは、それから丸一日のあと。 (121) 2022/05/30(Mon) 14:42:14 |
【人】 宮々 蓮司高速を飛ばして、それから下道も飛ばす。 そうして短いようで長い道のりをやってきた。 山間には余り似合わない車を停めたのは、夕日が地平線にだいぶ近づいてからだった。 今日は はじめて の週末デート。エンジンを切って車を降りる。 もうあと数歩の距離がもどかしい。 ドアの前。 一度シャツのヨレを直して、それから三度ノックした。 (126) 2022/05/30(Mon) 20:38:41 |
【人】 宮々 蓮司今はもう頭にかかっていた靄はすっかりと晴れていた。 でも、それを瀬里に伝えてはいない。 今ここにいる自分はいったいどの蓮司≠ネのだろう。 瀬里に会う前? それとも恋人になってから? 記憶をなくして、もう一度瀬里に恋をした男? それとも──── どの蓮司¥o会っても構わないし、 それを決めるのは自分自身ではない気がした。 それは、これから目にする愛しい瀬里が決めればいい。* (127) 2022/05/30(Mon) 20:39:16 |
【人】 宮々 蓮司ドアが開いて俺の両目が瀬里の姿を映す。 それだけで鼓動が強くなっていく。 『 蓮司さん 』 瀬里の声。 俺は両手を開いて華奢な瀬里の身体を包む。 会いたかった。 この一週間はまるで何ヶ月にも感じられた。 お前を思い出してから、こうして会えるのが何よりも待ち遠しくて。 お前に会うたびに、お前に触れるたびに、恋をしているのかもしれない。 (131) 2022/05/30(Mon) 22:42:20 |
【人】 宮々 蓮司「 そうだな、まずは飯にしようか。 」 今日はどこがいいだろう。 和食?中華?イタリアン? 肉がいいだろうか、魚介にしようか。 きっとそれが何でも何処でもきっと楽しい時間になる。 「 ……今日は、泊まっていってもいいんだろ? 」 耳元に唇当てて、そっと囁いた。* (132) 2022/05/30(Mon) 22:42:44 |
【人】 宮々 蓮司それはとても不思議な感じだった。 記憶を取り戻した今でも恋心は無くしたままだった。 あのお見合いで雨宮瀬里を選び、兼光と灯歌によって結ばれた恋は治療と共にたしかに霧散してしまった。 だけど 今もたしかに 恋 をしている。記憶を取り戻したからこそ理解できる。 瀬里が目の前にいる、瀬里が隣にいる、瀬里に触れている、その一分一秒ごとにもっと好きになっている、夢中になっている。 俺は雨宮瀬里が大好きなんだ。 (141) 2022/05/31(Tue) 6:46:36 |
【人】 宮々 蓮司薄暗い部屋の中。 肌を寄せ合いながら、瀬里の言葉を聞いていた。 相変わらず蓮司さん≠ニ呼ぶ瀬里は、記憶が未だ戻らない。 なぜ二人にそんな違いが生じたのかはわからない。 瀬里にとって、思い出したくない何かがあったのだろうか。 相槌を打ちながら、時折返した言葉に瀬里は首を横に振った。 (142) 2022/05/31(Tue) 6:46:52 |
【人】 宮々 蓮司緩く抱きしめていた瀬里の身体が離れる。 それは、よく知っている赤いマニキュア。 二人を結びつけたきっかけ。 瀬里は知らないまま。 俺はよく覚えている。 「 つけてみたらどうだ? 」 何気なく口にする。 見覚えがあるとも、ないとも言わず。 それがきっかけで記憶が戻るかもしれない。 そう思ったわけじゃない。 記憶の中にある恋を失う前の瀬里がつけていたからでもない。 ただ単純に、瀬里にそれがよく似合うことを知っていたから。* (143) 2022/05/31(Tue) 6:48:01 |
【人】 宮々 蓮司『 これを? 』 俺は小さく頷く。 『 似合うかな 』 似合うに決まってる。 『 不思議ね 』 そう、たしかにあった。 俺はスマホを手に取るとライトをつけて瀬里の指を照らす。 そうして、瀬里がようやく目を覚ます。 (154) 2022/05/31(Tue) 9:37:48 |
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